『母性』(2022.10.20.ワーナー試写室)
湊かなえの同名小説を映画化した心理ミステリードラマ。“娘を愛せない母”と“母に愛されたい娘”それぞれの視点から過去を振り返り、現在までの経緯を描き出す。
同じ出来事を別々の視点から描くというのは、ミステリーではよくある手法だが、今回は母と娘、それぞれの視点というところが珍しく映った。
ただ、娘を溺愛する現実離れをした乙女チックな母(大地真央)。その母に異常なまでに依存するルミ子(戸田恵梨香)は、娘の清佳(永野芽郁)を、母に気に入られるように厳しくしつける。
ルミ子の夫(三浦誠己)は、感情を表に出さないが、その母(高畑淳子)は、娘(山下リオ)を溺愛し、嫁のルミ子を口汚くののしる。
といった具合に、典型的な母と娘ではなく、どこかズレた、異様な母と娘しか登場しないので、見ていて何とも嫌な気分にさせられる。
原作者の湊によれば、「女性は子どもを産めば必ずしも母性が芽生えるわけではない」というのがテーマなようだが、極端な設定や異常なキャラクターを介さなければそれが表現できないのかという、暗たんたる気持ちになる。これは最近の映画やドラマによくみられる傾向だ。
女優たちはそれぞれこの難役を巧みに演じている。中でも、『キネマの神様』(21)『そして、バトンは渡された』(21)『マイ・ブロークン・マリコ』、そしてこの映画と続く、最近の永野芽郁は注目に値する。
エンドロールに流れるJUJUの歌を聴きながら、「何だか『火曜サスペンス劇場』みたいだな」と思った。