早川徳次の評伝『地中の星』を読んで思い出した映画。
『帝都物語』(88)(1994.4.27.WOWOW)
平将門の怨霊により帝都・東京の破壊を目論む魔人・加藤保憲(嶋田久作)と、その野望を阻止すべく立ち向う渋沢栄一(勝新太郎)、寺田寅彦(寺泉憲)、幸田露伴(高橋幸治)らとの戦いを描く。
明治末期から昭和初期という、東京がモダン都市へと変貌していく過程の裏で行われた霊能者たちの戦いを、実在の人物を絡めて描いているのだが、話があっちに行ったりこっちに行ったりのごった煮状態の散漫さで、お世辞にも傑作とは言えないものになっていた。
今の日本映画には珍しいこのSF伝奇大作を、ウルトラシリーズを撮ったことを理由に? テレビ出身の実相寺昭雄に撮らせてしまったのが、大いなる勘違いだったのではと思う。ただ、未読の荒俣宏の原作自体がこうしたごった煮の味だとすれば、一概に断定はできないが。
とはいえ、昭和初期の銀座を再現したセットなどには大いに魅せられたところもあり(美術担当の木村威夫の功績大である)、これなら、あの広瀬正の『マイナス・ゼロ』の映像化もできるかもしれないという夢を抱かせてくれた。
また、西村晃が父の真琴を演じ、実際に彼が製作した人間型ロボット「學天則」が、鬼退治をして早川徳次(宍戸錠)の地下鉄工事を助けるくだりは、ちょっと面白かった。
このミスキャストの多さ(特に重要な役で出ている石田純一は…)の中で、異様な嶋田久作とりりしい原田美枝子が光っていたのが救いだった。とはいえ、これはごった煮の中の一部に過ぎず、結局中途半端な満たされない思いが残ったのは否めない。
『帝都大戦』(89)(1994.4.28.WOWOW)
前作の中途半端さが気になり、WOWOWでの連続放送という手軽さも手伝って、続けてこの続編を見てみたのだが、これが見事な反面教師だった。つまり、前作のプロデューサーの一瀬隆童が監督をしているのだが、このあまりにもひどい出来を見ると、前作は傑作だったのではないかという錯覚にとらわれる。
とにかく、メークやSFXによるこけおどしに力を入れ、素人監督の悲しさか、カメラが意味もなく移動したり、構図が定まらなかったりで、肝心のストーリーは全くのなおざりで終わっている。角川春樹を例に出すまでもなく、プロデューサーと監督との資質の違いを改めて知らされた思いがした。