『身代わり忠臣蔵』(20244.2.7.オンライン試写)
旗本・吉良上野介(ムロツヨシ)からの陰湿ないじめに耐えかねた播州・赤穂藩主の浅野内匠頭(尾上右近)が、江戸城内で上野介に斬りかかった。刃傷沙汰により内匠頭は切腹となったが、実は斬られた上野介も逃げ傷で瀕死の状態に陥っていた。
逃げて死んだとなれば武士の恥、お家取り潰しも免れない。そこで吉良家家臣の斎藤宮内(林遣都)の提案により、上野介にそっくりな弟の孝証(ムロ二役)を身代わりにして幕府をだまし抜こうという前代未聞の作戦が実行されることに。一方、赤穂藩家老の大石内蔵助(永山瑛太)は、お家再興を願うが…。
「忠臣蔵」をベースに「身代わり」という設定を加えてコミカルに描いた土橋章宏の同名小説を、土橋が自ら脚本を手がけ、河合勇人監督がメガホンをとった。正反対の性格を持つ上野介と孝証の兄弟をムロが一人二役で演じ分け、川口春奈、徳川綱吉役の北村一輝、柳沢吉保役の柄本明らが脇を固める。
「忠臣蔵」を描いた物語は、正統なものからこうした一種のパロディまで含めると、とんでもない数になるだろうが、上野介の身代わりが主人公で、内蔵助とも顔見知りというのは新解釈になる。その点、この映画も土橋作・脚色の“ニュー時代劇”の範疇に入る。
こうした一人二役の“影武者映画”は、例えば、チャップリンの『独裁者』(40)、黒澤明の『影武者』(80)、アイバン・ライトマンの『デーヴ』(93)、三谷幸喜の『記憶にございません!』(19)など、そのほとんどが本物が憎まれ役で影武者の方が善良という設定。この映画もそのパターンだ。
ムロによる孝証の変化が見どころの一つだが、時折ギャグが空回りするところがあるのが残念。特に、ラグビー風の首の取り合いなどは要らない気がした。
土橋作・脚色の“ニュー時代劇”
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