田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

レイ・リオッタの映画『きみがくれた未来』

2022-05-29 06:51:32 | 映画いろいろ

『きみがくれた未来』(10)(2010.10.8.東宝東和試写室)
救命士フロリオ

 原題の「チャーリー・セント・クラウド」は主人公(ザック・エフロン)の名前。毎日、日没時にキャッチボールをする仲のいい兄弟が交通事故に遭い、兄だけが助かる。

 だが、弟は成仏できずに兄の前に霊となって現れる。罪の意識を持つ兄は、毎日弟の霊とキャッチボールをすることを誓うが…。「とても胸が痛むよ」という兄に、弟の霊が「それは兄さんが生きているからさ」と答えるところが切ない。

 死者とのキャッチボールは『フィールド・オブ・ドリームス』(89)、霊との対話は『シックス・センス』(99)、ヨットでの冒険は『ジョーズ2』(78)を思い起こさせられるが、それらの要素を混ぜ合わせて、エフロン主演の若者の独り立ち映画を作ったと言うべきか。

 亡くなった弟はレッドソックスの大ファンという設定。だからヨットの名前はレッドソックスの至宝テッド・ウィリアムスのニックネーム「スプレンディット・スプリンター」で、弟の霊はいつもレッドソックスの真っ赤なジャケットを着て現れる。

 おまけに、『フィールド・オブ・ドリームス』でシューレス・ジョー・ジャクソンを演じたレイ・リオッタが救命士役で、『ナチュラル』(84)に出ていたキム・ベイシンガーが母親役で出演と、野球映画ネタも散りばめられていた。

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『炎の少女チャーリー』新旧2作

2022-05-29 00:41:42 | 新作映画を見てみた

『炎の少女チャーリー』(84)(1988.9.27.ザ・ロードショー)

 政府の薬物実験「ロト6」を受けて超能力を得た両親の間に生まれ、パイロキネシス(自然発火)能力を持つ少女チャーリーに、軍事利用を企む謎の組織ザ・ショップの追手が迫る。

 スティーブン・キングの小説『ファイアスターター』を映画化。製作ディノ・デ・ラウレンティス。ジョン・カーペンターが降板し、マーク・L・レスターが監督を引き継いだ。音楽はタンジェリン・ドリーム。当時8歳のドリュー・バリモアがチャーリー役で主演。

 前半は父(デビッド・キース)とチャーリーの逃避行を描き、そこにアート・カーニーとルイーズ・フレッチャーの老夫婦が絡む。

 後半は、組織に拉致された父娘と絡む、組織の親玉役のマーティン・シーンと、特殊工作員レインバード役のジョージ・C・スコットが大芝居を見せる。特にチャーリーに対してロリコン的な興味を示すレインバード=スコットの異常性が際立つ。

 ただ、全体的には雑なところが目立ち、もやもやさせられるし、ラストも、まるでチャーリーによる大量殺人を見せられたようで困惑するところがあった。また、この映画の後、バリモアの身に起きた試練を思うと、複雑な思いを抱かされた。


『炎の少女チャーリー』(22)(2022.5.27.東宝東和試写室)

 38年ぶりのリメーク作。チャーリー(ライアン・キーラ・アームストロング)と両親(ザック・エフロン、シドニー・レモン)との関係、レインバード(マイケル・グレイアイズ)の役割など、人物設定は、84年版よりも丁寧に行っている印象を受けたし、ストーリーも整理されていた。また、84年版よりも、チャーリーの屈折を掘り下げ、同じくキング原作の『キャリー』をほうふつとさせるところもあった。監督はキース・トーマス。

 製作者の一人にラウレンティスの名(恐らく一族)を見付けたのと、音楽を84年版で監督を降りたジョン・カーペンターが担当していたのには驚いた。

 チャーリーは、『エクソシスト』(73)のリーガン(リンダ・ブレア)と同じく、ある意味、呪われた役ともいえる。今後、アームストロングにバリモアやブレアのような不幸が訪れないことを願う。

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レイ・リオッタの映画『コリーナ、コリーナ』

2022-05-28 07:30:31 | 映画いろいろ

『コリーナ、コリーナ』(94)(1996.1.1.WOWOW)

 大学を卒業したものの、差別によって仕事に恵まれず、家政婦として働く黒人女性コリーナ(ウーピー・ゴールドバーグ)と、母親の死にショックを受けて口がきけなくなった娘モリー(ティナ・マジョリーノ)のためにコリーナを雇った父親のマニー(レイ・リオッタ)との心の交流を描く。

 この映画は、ハートウォームを装いながら、1950年代後半の人種差別の様子を見え隠れさせるしたたかな映画だった。特にこの映画の前に『フィラデルフィア』(93)でのデンゼル・ワシントンの弁護士役を再見したばかりだったので、隔世の感があった。

 しかも、またもやジェシー・ネルソンなる女性の監督作品である。確かに、この映画のような、少女の微妙な心の動きなどは男には分からない。だから、過去に作られた“女性映画”と呼ばれた一群も、実は男の勝手な視点から撮られていたのかもしれないと考えさせられる。このあたりに、わずかではあるが、映画界の変化が感じられる。

 この映画を見るきっかけは、ドン・アメチーの遺作と知ったからだった。もちろん若き日の全盛期は知らないが、『コクーン』(85)での見事な復活以降、粋なじいさんを演じさせたら天下一品だった。だから、今回のせりふなしでの動きだけの演技は、見ていて悲しかった。

【今の一言】犯罪者やサイコ役が多いリオッタが、この映画では珍しく娘に振り回されるいいお父さんを演じていた。

 

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レイ・リオッタの映画『不法侵入』

2022-05-28 07:13:28 | 映画いろいろ

『不法侵入』(92)(1993.1.20.丸の内ピカデリーⅡ)
警官ピート

 ある夜、ロサンゼルスの高級住宅地に住む夫婦(カート・ラッセル、マデリン・ストウ)の家に泥棒が侵入する。捜査に来た警官の一人ピート(レイ・リオッタ)は、彼らに優しく接し、その後もいろいろと助言をする。だが、やがて、ピートの裏に潜む狂気が浮き彫りになる。警官に狙われた夫婦の姿を描いたサイコスリラー。

 この映画を見ると、嫌でも最近起こった二つの事件が思い浮かぶ。ロスの白人警官による黒人暴行事件、そしてハロウィーンに起きた日本人留学生の射殺事件である。
 
 と、われわれ日本人はつい意識的に結び付けて特別なものとして考えてしまうが、アメリカという巨大で、雑多な問題を抱える国では、むしろこうした事件は日常的で、身近な問題なのかもしれない。
 
 そこがうすら寒くて怖いというべきか。最近のアメリカ映画で多発される家族ものやベトナムものをも凌駕する形で、この映画のようなサイコスリラーが幅をきかせている。それらは勧善懲悪や謎解きの面白さとは違い、見終わった後で、一体誰を、何を信じて生きていけばいいのか、といったやるせなさや空しさを感じさせる。

 例えば、マーティン・スコセッシの『ケープ・フィアー』(91)同様に、この映画も被害者側に、豪邸に住むお気楽なヤッピー族という、素直に同情できないようなキャラクター設定がなされており、彼らに対して、過酷な仕事をしながらそれに見合った生活ができない警官の屈折が描かれる。そこで、無意識の差別や階級差が生み出すゆがんだ犯罪像が浮かび上がってくるわけである。

 ただし、ジョナサン・カプランの演出がいま一つで、例えば、シドニー・ルメットの骨太な問題提起映画などと比べるとしまらない。というわけで、折よく予告編が流れたルメットの『刑事エデン/追跡者』(92)も見てみるか。

 先に、ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズ共演の『レナードの朝』(90)を見た時に、こういう個性の強い俳優が共演した際は、その役柄を取り換えて考えてみるのも面白いと思った。その例でいけば、この映画のラッセルとリオッタの“逆転配役”にも興味が湧いた。

 

   

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レイ・リオッタの映画『フィールド・オブ・ドリームス』『グッドフェローズ』

2022-05-27 10:33:06 | 映画いろいろ

 レイ・リオッタが映画撮影のために滞在していたドミニカ共和国で客死したという。リオッタといえば、『フィールド・オブ・ドリームス』のシューレス・ジョー・ジャクソンと『グッドフェローズ』のヘンリー・ヒルという、対照的な役が印象に残っている。

『フィールド・オブ・ドリームス』(89)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/14ca2cc584bf1b56a6168081f39d5d34


『グッドフェローズ』(90)(1990.11.20.丸の内ルーブル)

 大物ギャング、ポーリー(ポール・ソルビノ)のアジトであるブルックリンで育ったヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)は、物心がついた頃からマフィアに憧れていた。やがて念願の“グッドフェローズ”の仲間となり、強奪専門のジミー(ロバート・デ・ニーロ)、野心旺盛なチンピラのトミー(ジョー・ペシ)と共に犯罪に犯罪を重ねていく。だが、麻薬に手を出したことからCIAの捜査の手がヘンリーに迫る。

 『キング・オブ・コメディ』(82)以来、久々のマーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロのゴールデンコンビの復活。しかも2人の共通のルーツであるイタリアの血を引くマフィアものである。

 さらに、『フィールド・オブ・ドリームス』(89)でシューレス・ジョー・ジャクソン役を好演したレイ・リオッタと『リーサル・ウェポン2/炎の約束』(89)で見事な助演を見せたジョー・ペシが加わるのだからと、見る前はかなり期待していた。

 ところが、いざ見始めると、多用されるモノローグとバックに流れる「いとしのレイラ」をはじめとする名曲ばかりが気になる。また、スコセッシの前作『ニューヨーク・ストーリー』(89)の時にも見られた、ブライアン・デ・パルマもどきの移動撮影の多さにも面食らい、ストーリーに集中できない。

 そして、スコセッシの「神話のマフィアではなくリアルなマフィアを描こうと思った」という言葉通り、『ゴッドファーザー』シリーズや『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)にあったような、哀愁や人情や泣かせの部分を削ぎ落して、ドライにバイオレンスを強調して描いているのだが、これが見ていてあまりいい気持がしない。

 確かに、実際のマフィアやヤクザの世界に、義理人情やきれいごとは存在しないのだから、これが現実に近いのだろうが、もう少し主人公ヘンリーの成り上がりと挫折、それに絡む人間模様についての深みを持ったドラマが見たかった気がする。

 こうなると、公開が待たれる『ゴッドファーザーPARTⅢ』(90)につい期待してしまう。

By.the Way.この映画はデ・ニーロ主演をうたいながら、本当の主役はリオッタだった。この2枚目が、どんどんボロボロの顔になっていくところが面白かった。

 それはそれとして、かつてのデ・ニーロなら、たとえ脇に回っても、一番目立ったはずなのに、この映画では何か精彩がなく、ソルビノにすっかり食われていた。『ジャックナイフ』(89)を見た時に、ついにデ・ニーロも“普通の役者”になりつつあるのかと感じたが、その思いに拍車がかかってしまった。このままで終わってほしくはないのだが…。

【今の一言】これを書いた時から30数年がたったが、デ・ニーロはこちらの杞憂をよそにいまだ健在だ。

 

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「午後のロードショー」『デイライト』

2022-05-27 07:38:45 | ブラウン管の映画館

『デイライト』(96)

傑作になりそこなった感じがした
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/19fa26bc6565f6f5361bb7fd628fb4df

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【ほぼ週刊映画コラム】『トップガン マーヴェリック』

2022-05-26 06:31:37 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
“生きること”を強調したところに、この映画の真骨頂がある
『トップガン マーヴェリック』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/?p=1331766&preview=true

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「BSシネマ」『ダイヤルMを廻せ!』

2022-05-25 06:32:32 | ブラウン管の映画館

『ダイヤルMを廻せ!』(54)(1975.1.25.土曜洋画劇場)

 ロンドンのアパートで暮らすトニー(レイ・ミランド)とマーゴ(グレース・ケリー)は、一見仲のよい夫婦だったが、関係は冷えきっていた。ある日、マーゴの浮気を知ったトニーは、妻を殺害する完全犯罪を企てるが、想定外の事態が発生、犯罪計画は思わぬ方向へと向かう。

 もともとは舞台劇。立体映画(3D映画)として製作されたアルフレッド・ヒッチコック監督作。

 ところで、初めてこの映画のノーカット版を見たのは、1983~84年にTBSで放送された「SONY PRESENTS 名作洋画ノーカット10週」の中の1本としてだった。(1984.5.12.)

 この番組は、ソニーが自社のベータマックスのプロモーションを兼ねて提供したもので、ノーカット、ニュープリント、二カ国語、途中CMは1度だけ、という、当時としては画期的なものだった。当時はまだビデオテープが高価だったため、全作は録画することができず、悔しい思いをしたことを覚えている。

 この後、ベータはVHSとの闘いに敗れて消え去ったが、今やビデオテープ自体がほぼ消え去った。まさかこんな時代が来ようとは、当時は全く予想もできなかった。

「名作洋画ノーカット10週」のラインアップは

83年.『ジャイアンツ』(59)『ロミオとジュリエット』(54)『男と女』(66)『夜の大捜査線』(67)『真夜中のカーボーイ』(69)『荒馬と女』(61)『騎兵隊』(59)『マイ・フェア・レディ』(64)『あなただけ今晩は』(63)『サイコ』(60)

84年.『レット・イット・ビー』(70)『フランス軍中尉の女』(81)『理由なき反抗』(55)『チキ・チキ・バン・バン』(68)『ダイヤルMを廻せ!』(54)『ペーパー・ムーン』(73)『白鯨』(56)『華麗なるギャツビー』(74)『鉄道員』(56)『アメリカン・グラフィティ』(73)

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トム・クルーズ来日記録

2022-05-24 19:35:15 | 仕事いろいろ

 トム・クルーズの来日は、今回で24回を数えるという。こちらも結構取材に行った。こうして改めて並べてみると、ちょっとした歴史だ。

『ナイト&デイ』(10)

ジャパンプレミア(2010.9.28.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a09f915d8636d76fd30ba578d5091b07


『アウトロー』(12)

ジャパンプレミア(2013.1.10.)
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/28042
コラム
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5e64684ba25bb95ddc79d3487252095c


『オブリビオン』(13)

来日(2013.5.6.)
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/40001
記者会見(2013.5.7.)
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/40032
コラム
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/43208


『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)

記者会見(2014.6.27.)
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/845277
コラム
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/868702


『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(15)

来日(2015.7.31.)
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1009568
コラム
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1010762/2


『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』(16)

記者会見(2016.11.8.)
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1076348
コラム
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/cb6df3e44c4abcb281824ff8b605bf9f


『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(18)

記者会見(2018.7.18.)
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1157294
ジャパンプレミア(2018.7.18.)
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1157365
コラム
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1159224


『トップガン マーヴェリック』(22)

記者会見(2022.5.23.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/32e375551c58f2f2e055a6909627ff1a
ジャパン・プレミア(2022.5.24.)
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1331513

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『トップガン マーヴェリック』来日記者会見

2022-05-23 18:55:26 | 仕事いろいろ

 『トップガン マーヴェリック』トム・クルーズ&ジェリー・ブラッカイマー来日記者会見に出席。
2人ともよくしゃべった。まあ、それだけこの映画に対する思いが強いということか。
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1331244


『トップガン マーヴェリック』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0328682d4b3ab718690dc231421f0e27

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