レイ・リオッタが映画撮影のために滞在していたドミニカ共和国で客死したという。リオッタといえば、『フィールド・オブ・ドリームス』のシューレス・ジョー・ジャクソンと『グッドフェローズ』のヘンリー・ヒルという、対照的な役が印象に残っている。
『フィールド・オブ・ドリームス』(89)
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『グッドフェローズ』(90)(1990.11.20.丸の内ルーブル)
大物ギャング、ポーリー(ポール・ソルビノ)のアジトであるブルックリンで育ったヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)は、物心がついた頃からマフィアに憧れていた。やがて念願の“グッドフェローズ”の仲間となり、強奪専門のジミー(ロバート・デ・ニーロ)、野心旺盛なチンピラのトミー(ジョー・ペシ)と共に犯罪に犯罪を重ねていく。だが、麻薬に手を出したことからCIAの捜査の手がヘンリーに迫る。
『キング・オブ・コメディ』(82)以来、久々のマーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロのゴールデンコンビの復活。しかも2人の共通のルーツであるイタリアの血を引くマフィアものである。
さらに、『フィールド・オブ・ドリームス』(89)でシューレス・ジョー・ジャクソン役を好演したレイ・リオッタと『リーサル・ウェポン2/炎の約束』(89)で見事な助演を見せたジョー・ペシが加わるのだからと、見る前はかなり期待していた。
ところが、いざ見始めると、多用されるモノローグとバックに流れる「いとしのレイラ」をはじめとする名曲ばかりが気になる。また、スコセッシの前作『ニューヨーク・ストーリー』(89)の時にも見られた、ブライアン・デ・パルマもどきの移動撮影の多さにも面食らい、ストーリーに集中できない。
そして、スコセッシの「神話のマフィアではなくリアルなマフィアを描こうと思った」という言葉通り、『ゴッドファーザー』シリーズや『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)にあったような、哀愁や人情や泣かせの部分を削ぎ落して、ドライにバイオレンスを強調して描いているのだが、これが見ていてあまりいい気持がしない。
確かに、実際のマフィアやヤクザの世界に、義理人情やきれいごとは存在しないのだから、これが現実に近いのだろうが、もう少し主人公ヘンリーの成り上がりと挫折、それに絡む人間模様についての深みを持ったドラマが見たかった気がする。
こうなると、公開が待たれる『ゴッドファーザーPARTⅢ』(90)につい期待してしまう。
By.the Way.この映画はデ・ニーロ主演をうたいながら、本当の主役はリオッタだった。この2枚目が、どんどんボロボロの顔になっていくところが面白かった。
それはそれとして、かつてのデ・ニーロなら、たとえ脇に回っても、一番目立ったはずなのに、この映画では何か精彩がなく、ソルビノにすっかり食われていた。『ジャックナイフ』(89)を見た時に、ついにデ・ニーロも“普通の役者”になりつつあるのかと感じたが、その思いに拍車がかかってしまった。このままで終わってほしくはないのだが…。
【今の一言】これを書いた時から30数年がたったが、デ・ニーロはこちらの杞憂をよそにいまだ健在だ。