ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
澱みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しく留まりたるためしなし。
世中にある人と栖と、又かくのごとし。
方丈記
鴨長明 1155~1216
鴨長明の生きた時代は、平安時代の末から鎌倉時代の初め、十二世紀の後半から、十三世紀初めにかけて、政治の実権が、貴族から、武士へと移ってゆく、歴史の転換期です。
方丈記は、亡くなる四年前に書かれました。解りやすい文章で、『人はどんな心を持って、万事思うに任せないこの世を生きていったら良いのか』ということを私たちに伝えています。
1185(元暦げんりゃく二)年には大地震が起きたと記述があります。
地震に伴う津波や、液状化現象、長く続く余震まで、実に的確に記述しています。
800年も前の文章、感性、教えとはとても思えない程、新鮮で、的を得ています。
現在の日本ととてもよく似た社会情勢ということもあります。
朝に死に夕に生まるるならひ、ただ水の泡にぞ似りける。
知らず、生まれ死ぬる人、いづかたより来りて、いづかたへか去る。
また、知らず、仮のやどり、誰が為にか心をなやまし、何によりてか目を悦ばしむる。
方丈記は、読みやすい古典ですので、皆様にお薦めいたします。