新富士病院院長で、詩人のかわかみまさとさんの新しい詩集夕焼け雲の神謡(ニーリ)が出版されました。
詩も素晴らしいのですけれども、あとがきが気に入ったので、紹介します。
前略
どうして綿々とГ詩」に関わるのだろう?
繰り返し問いかける。
ふと、大事な忘れ物をしている想いにとらわれる。
富士山の麓に在る職場からは、小さな運河のような田子の浦の先に駿河湾が見渡せる。
中略
しばし、海を眺める・・・。こころがざわつき、瞬時に故郷の少年時代にタイムスリップする。
中略
夕凪の海辺で防波堤に寝そべって雲の動きや色合いの変化を観察した。
夕陽に照らされた雲は、いっそう透き通った悲哀と愛しさを解き放つ。
少年の想像力は自在である。
貧しい生活を救うため、あの夕焼け雲を切り売りしたら、「どの程度の値がつくだろう」「心やさしい人に贈ったら喜ぶだろう」と、まじめに考えたりした。
いつの間にか、何処からともなく生まれ、何処へともなく消えてしまう雲の成り立ちに生命の甦りを感受するようになった。
雲には形なき生命の記憶が潜んでいる。物静かな気分や切羽詰まった泡立つ感情をなだめてくれる。
DNAに刻まれた記憶というより、もっと太古の原形質の海に漂うまぼろしのごとき生命の記憶に違いない。
中略
ここに修めた作品は夕焼け雲に魅せられた感性が紡いだ生活世界の言葉である。後略
認知症や、脳卒中、難病の患者に毎日真摯に対応してくださっている院長先生。
生まれ育った宮古島の与那覇湾のように穏やかで、瑞々しい感性です。
魚になりたい かわかみまさと
魚になりたい。
魚になりたい。
水を清める、
小さな魚になって、
みんなのこころの海で、
すいすい泳ぎたい。