緑の季節
富士山麓は、この時期一面に新茶の緑に包まれます。
茶畑の緑色は萌黄色から黄緑色、刈り取られて、クリクリ坊主の薄茶色まで、面白いように、毎日変化します。
陽の当たる場所と日陰の場所。
同じ畝でも南面と北面で、芽の伸び方に差が出ます。
普通太陽が沢山当たった方が良いと考えてしまいますが、霧が深い方が、良いお茶が出来るのです。
わざわざ黒い沙を被せている所もあります。
せっかく出た新芽が、遅霜にやられないように、茶畑には、扇風機が付いています。
テレビでは、毎日遅霜注意報を流しています。注意報が出たら、扇風機で風を起こして、新芽が霜にやられないようにするのです。
私の実家は、昭和30年頃には、製茶工場を経営していました。近所の茶農家からお茶葉を買って、荒茶を製造するのです。
自分の家の茶園も沢山持っていました。昼は茶摘み。夜は製茶。お茶の季節は、お茶工場は昼夜休み無し。
毎日お茶の値段が下がって行くからです。
『みるい』という静岡独特の方言があります。
新芽が幼くて、軟らかい。とても新鮮という意味です。
茶葉の一枚一枚が、お金と同じと教えられ、お茶畑に育てて頂きました。高等教育も受けさせて頂きました。
新茶の季節になると、むせかえる程のお茶工場の薫りを懐かしく思い出します。
二十年以上も前に、親は亡くなって今は、離れた所に住んでいますけれども、同じように茶畑の中に住むことになったのも、先祖の苦労や、恩を忘れないようにと言う、先祖の教えだと思っています。