五月が去るとて
五月が去るとて
何を悲しむ。
たとえ伏す身といえど
熱き血潮をたぎらせて
生きると決したは
この五月の時では
なかったのか。
五月が去るとて
何を悲しむ。
この胸に
真白きバラを
押しつけて
進もうと誓いしは
この五月の時では
なかったのか。
五月が去るとて、
何を悲しむ。
ああ だがこの若き十六歳を
むかえての
五月が再び、まいらぬと思えば
我胸は涙でむせぶ。
矢沢 宰詩集 光る砂漠
病気の為に、21歳の若さで亡くなった矢沢さんが16歳の五月に書いた詩です。
詩集 光る砂漠は、
1970年 青少年読書感想文 全国コンクール高校生向 課題図書になりました。
矢沢君の短い一生と死は、彼の詩によって、その死後に、時間と距離を越えてタンポポのワタ毛が風に吹かれて飛んでゆくよりももっと広い土壌に、信頼と愛の種子を播いた。
そして、なんの縁もなかったように生きてきた人々とを至純な愛と信頼でむすびつけた。 周郷 博 解説文より抜粋
1970年 当時17歳の私も、矢沢少年の純粋な言葉で書かれた詩を読んで、
心に信頼と愛の種子を播かれ、69歳の今もタンポポの綿毛を飛ばしています。