彼岸花は曼珠沙華とも言います。
私の故郷では、『はっかけばあさん』と呼んでいました。
はっかけばあさんは、歯の欠けたお婆さん。
有毒で触ると歯が欠けてしまうと子供たちに教える為に『はっかけばあさん』と言う分かり易い呼び名が伝わっているのだと思います。
綺麗だからと言って摘んで家に持ち帰ると家が火事になると教わりました。
彼岸花は文字通り秋の彼岸に咲きます。
葉知らず、花知らずの花です。
畑の隅の屋敷墓や田んぼの畦道等にまとまって咲きます。
村の共同墓地等には、数百本の彼岸花が群生しています。
彼岸花は有毒物質を含む為に、土葬した死体を野生動物に襲われない為に、墓地の周りに植えられました。
現在も墓に供えるシキミ(コウバナ)の木も、同じ様に墓の周囲に植えられて、
屋敷墓を守る役目をしています。
屋敷墓とは、子孫たちが畑や屋敷を売らないように、その屋敷の一番隅に建てられた墓のことです。
田んぼの畦道の彼岸花はもぐらや野鼠等が収穫前の大切な稲を荒らさないように植えました。
咲く時期が丁度秋の彼岸の頃で、夏までは地上ではどこに植わっているのか全く判りません。
お彼岸が近付くと茎の先に蕾の付いた花茎がぐんぐん伸びて来て、真っ赤かな花を咲かせます。
彼岸花が咲くと、亡くなった父、母が偲ばれます。
墓参も済んで秋の夜長に虫の声等を聞くと余計に亡くなった御先祖様を始め友達等が恋しくなります。
彼岸花に種が出来る頃、根元から水仙の葉によく似た葉が出て来ますが、丈も花茎に比べると短く気付く人もあまり
いません。
葉知らず花知らずの花です……
今は朱色の在来種だけでなく、白色やピンク色の彼岸花もありますが、やはり田舎の田んぼ道に沢山咲いている
火のようなはっかけばあさんが郷愁を誘います..