日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

水道メーターの気持ち

2012年09月01日 | エッセイサロン
           

2012年09月01日 毎日新聞「男の気持ち」掲載

 私は水の門番である水道メーター。日ごろはその仕事ぶりを見られることもなく、蓋をかぶせられた地中の箱の中にいる。

 2ヵ月に1度、その仕事ぶりを確認に年配の男性が訪れる。蓋を開けメーターの数値を携帯PCへ打ち込む。そのわずか数秒の間だけ外の明るさを感じる。パタン。音とともに次の2カ月はまた闇の世界へ。それでも家庭で使われる水は私の中を通り過ぎなければ使えない。それをいつも誇りに思って仕事をしている。
 
 予定外の日に蓋が開いた。見上げると、いつもと違う感じのいい青年の顔。「メーターの定期交換です」と家の主に説明している。主は後学のためと作業を見ている。「交換は何年おきに」という質問に「7年です」と青年。ここに住み始めてそんなにたつのか。
 
 青年は私の埋もれた箇所の土を取り除く。前後のジョイントを緩め私を取り外し、交代さんを取り付けて作業は終わり。その間、わずか数分。取り外された私は作業車の荷台へ。そこには何十個もの仕事を終えた仲間か休んでいた。 

 それこそ日の当たらないところで、昼夜の区別なく、幾つもの歯車を間違いなくかみ合わせての水番。7年間、一度も異常点検を受けなかったことは務めを全うしたことになる。主がよく言っていた「やり遂げた喜び」とはこのことだったのだろう。メーカーさんで調整され、再登板となったらうれしいのだが。
コメント (8)
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