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明日の記憶 読んだ。 リアリティがあってブルーになりますな

2011年08月04日 00時38分39秒 | 読書評
明日の記憶 (光文社文庫)
荻原 浩
光文社
明日の記憶を読みました。

若年性アルツハイマー症が発病した中高年サラリーマンと家族のストリー。

数年前、映画になったことをすっかり忘れて本をとってみた。
ちなみにかみさんは映画を見たらしい。本のタイトルをみて話の
内容を理解していた。

50歳のサラリーマン、それなりの職位につき、部下ももち、それなりの
実績を出し、子供もなんとか成長してきたという環境で、ある日突然
自分の記憶生涯が気になるが、認めたくない自分。

かみさんの進めで、通院すると若年性アルツハイマーと診断される。

前半は、診断前後の自分自身が失われるのか、どうかという自身への
葛藤が痛々しい。日頃の生活のなかでなくなる記憶をつなぎとめるため
の努力がなんとも言えずリアリティがあって、鬼気迫るものがある。
読んでいると気持ちがブルーになるというか、主人公の症状とその努力
に気持ちが埋没するような感じがする。

後半は、失われる記憶、なくなる自分自身を受け入れ、そこに向き合う
主人公の姿を切々と描写している。
会社も退社し、社会から離脱することで、1段階病気が進行。
娘が結婚することで、もう1段階進行。
孫が生まれることでもう1段階進行。
気持ちが緩和することで、症状が進行する描写は、同じ世代の自分への
危機意識をあおってくる。

最後は、自分ひとりで若い日に通った陶芸の釜へ向い、その当時の陶芸家
が生存し焼き物を焼くため数日滞在する。釜を後にしてその山を降りると
妻がまっていて、悲しい最後が切なさを増す。

個人的には、あっても不思議でない日々の物語だけに、印象の強い一冊
だと思う。

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