発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
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新聞掲載

2011年12月25日 | 本について
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『博多港引揚』発刊。←クリックすると、『博多港引揚』のページに飛びます。

 12月24日の西日本新聞夕刊で、『博多港引揚』が紹介されていた。西日本新聞webでも紹介されている。

◆新たな「戦い」のはじまり
 戦争とは、おなかがすくこと。心細いこと。寒いこと。すべてが不足すること。なにより、平時のときは当然のように得られるような種類の助けが期待できないこと。人の尊厳が集団的に同時に損なわれることである。 
 そういう意味では、戦闘が終わっても、生活レベルでの「戦争」は続く。引き揚げは、その最たるものである。戦争は、なかなか終わらないのだ。兵器とか軍事作戦の行使といったものは、戦争のほんの一部分なのだ。
 むしろ敗戦国となり、旧植民地から追われることとなった引揚げ者については、終戦以降の方が「戦争」だったのだ。帰国するときにはほとんどすべてのものを置いて来ざるを得なかった。戦災で疲弊し混乱する日本で、ほとんどゼロから生活を立ち上げていかなければならなかったのだ。
 
 『博多港引揚』と、併せて読んでいただきたいのが『日本に引揚げた人々』←クリックすると、『日本に引揚げた人々』のページに飛びます。引揚げの聞き書き。あのころ、何が起きていたのか、知っておいてほしい。

 『日本に引揚げた人々』聞き書きは、ひとつずつ序説と小括でまとめてあって読みやすい。
 特に、今回初出の、河野?(あきら)氏の聞き書きは、すごい。
 11月に毎日新聞紙上で、子供の頃、講談社絵本の『満洲見物』という本を買ったら、それを見たご尊父が、翌朝トランクひとつ持って満洲に行ってしまった、のちに呼び寄せられて一家で満洲に行ったが敗戦となり苦労して日本に引き揚げたという話が紹介されていた。その話はこの本にも、当然収録されているが、それは河野氏の話の、ほんの一部なのである。
 帰国してからの十数年の話も書かれているが、それもまた凄まじい闘争の日々なのである。戦争なしには、おそらくは味わうことはなかった辛酸。その間は戦争は終わらないのだ。


コメント
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