『あれから七十六年』ISBN978-4-901346-72-6 定価1650円(本体1500円+税)
◆難民は遠い国の見知らぬ人々のことではなく
ネットを見ていると、難民にまつわるニュースや寄付を募るUNHCR国連難民高等弁務官事務所の広告が出てくる。気の毒にと思う人がほとんどだと思う。
難民は、どこか遠い国の見知らぬ人々のことではない。76年前、戦争に負けて300万人をこえる日本人民間人が「引き揚げ者」と呼ばれる難民となった。住まいを失った上に、人々の多くはすぐには帰国できず、無法地帯と化した場所で、ほぼ自力で寒い冬を越さないといけなかった。満洲だけで100万人、赤ん坊から老人から、弱い人もお構いなしにである。
ちばてつや氏の漫画などで紹介されているが、祖父とか曾祖父の年代では、日本人として、難民はそう珍しい話ではなかった。他人事ではない。
「暴力と迫害から逃れて、険しい山道を越え、 ジャングルに隠れ、川を渡り、夜じゅう歩き続けて…。わたしたちは命がけで、 ひたすら安全な地へ急いだ。(ミャンマー/ロヒンギャ難民 )」
「現在、レバノンなどシリアの周辺国に避難しているシリア難民は約564万人※を超えています。これから訪れる冬の厳しい寒さは、着の身着のまま逃れてきた難民のすでに困窮している生活を容赦なく直撃し、特に幼い子どもたちや高齢者などは命の危険にさらされます。※2021年9月現在 」(いずれもUNHCRの広告記事より)
過酷な状況に胸が痛むが、そっくりそのまま多くの日本人民間人が経験したというと、信じてもらえるだろうか。人々はどのように過ごし、どうやって港に向かい、船に乗り、帰国してどのようにして暮らしていったのか。今回は、二十二人の体験記を『あれから七十六年』として上梓する。
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