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目から鱗の『一点透視図法』!

2009-07-09 05:56:00 | 徒然なるままに
3年生の授業で、一点透視図法を教えた。
まずは、正方形を立方体に見せる書き方をやり、応用編として、文字を立体的に見せる描き方を教えた。
『消失点』という点の打つ位置(目線の高さ)を帰るだけで、立方体があらゆる角度から見たように描ける。

次に、一点透視図法を使った風景画の描き方。
『水平線』(地平線)を引き、見ている人の目の高さ、見ている位置を決める。
画面に対して水平線の位置が上にあるほど高いところから見下ろした絵(俯瞰図)になる。水平線が低い位置にあるほど、地面に近い位置となり、見上げた絵(あおり)となる。

水平線の位置が決まったら、その線上に『消失点』を打つ。1箇所に打てば一点透視し、2箇所に打てば二点透視になる。
消失点に向かって『集中線』を引いていきそれを基にして作図していくのだが、消失点と集中線の関係が理解できていないと、ゆがんだパースになる。
理解できて作図できると、果てしなく続く道路や、並木道、家並み、ビル郡などが画面上に現れてくる。
それが、ビルの屋上から見える風景だったり、地下鉄から地上に出てきたとたんに見える風景のようだったり・・・。

3段階めは、室内パースの描きかた。
間取図から立面図にしていくのだが、家具のサイズが適当だと、ベビーベットのようなものになったりするので、ちゃんとおおよその家具のサイズ、尺貫法も教える。『一尺』『一間』、『一畳』、『一坪』なんて、およそ中学生には縁のない言葉でも、日本で暮らしていく以上、常識として知っていてほしい。

将来、自分で部屋を借りたり、家を建てるときに、人任せではなく、自分で間取りを考え、インテリアコーディネイトができるようになってほしい。

以前、1年生でこの授業をやったとき、ある男子生徒が授業のあと、自分の部屋のパースを描いてきた。いろいろアドバイスをしてあげると、翌日着彩してきた。
翌年、彼は職業体験の授業で、建築事務所を希望し、そこで本物の製図版で製図をさせてもらったのだという。
その後、彼は、1級建築士を目指して、大学の建築科に進むべく勉強しているという。現在高2。中1のときの夢は、パティシエを目指している姉の店を設計することだったけれど。それを教えてあげたときの姉(当時中3)の嬉しそうな顔が忘れられない。二人の夢がかないますように・・・。

一通りの授業を終えた後の3年生の感想が面白かった。
『今までどうやって描くのか分からなかったが、これを使っていろんな風景や建物を描いてみたい』
『文字が立ち上がったり、空中に浮かんだりしているように描けるのが面白い。』
『同じ間取の部屋でも、インテリアやカラーコーディネイトで印象が違って見える!面白い!!』
『恐るべし!美術!!』

美術といえば、見たものを見たとおりにスケッチしたり、デッサンできないとダメ、きれいに彩色できないとダメ、人物をうまくかけないとダメ、個性的な発想を絵にできないとダメ・・・・
そう思い込んでいるのは生徒自身なのだが、そう思うようにしか教えられなかった教える側にも責任があると思う。

『美術は生活に役立つ教科である。』
色の勉強をするのは、彩色が上手になるためだけではない。色の組み合わせや、補色の効果を知っていると知っていないとでは、料理の盛り付けやファッションコーディネートだって違ってくる。好きな色やきれいな色を集めてみても、ぱっとしない。でも、その色を生かすための色の組み合わせを工夫すれば、お互いの色を引き立て合って、美しい調和が生まれる。
それを生活に応用する場面はいくらでもある。
それはまた、命を救うこともある。手術着が白衣ではないのは、血の色の補色を着ることで、手術に集中できるからだ。

生徒は面白い。
新しいことを学ぶと、黙っていられなくなる。人に教えたくなる。
本当かどうか確かめたくなる。
もっと知りたくなる。
できるようになると、もっと上手になりたいと思う。
他のこともできるようになりたいと思う。
友達の作品に対して興味を持つ。
ほめる。まねる。
自分の作品と比較する。
有名な作品に対しても興味を持って、批評までする。

教え込まなくても、生徒は勝手に成長しようと伸びてくる。
迷ったとき、躓いたとき、集中できないとき、ちょっと手助けしてあげる。
できたときはとにかくほめる!そして、次にちょっとだけハードルの高い課題を与えてあげる。頑張ってできたらまたほめる。
そのうち、生徒のほうから、『次は何やるの?』『私たちはこれまだ教えてもらっていない!』と要求してくるようになる。

だから。
教える側は、常に生徒の先を行かなくてはならない。
教材研究は大切だ。下調べ、資料作り、参考作品作り・・。
でも、時として、生徒から教わることのほうが多いときもある。
そういう時はとても新鮮だ。ワクワクする。
教える側も教えられる側も、お互いにスキルアップできる、そんな生きた授業が私の目標だ。

3年生はBOX ARTを制作する。遠近法を生かしてどんな作品が生まれてくるのか楽しみだ。

その前に。背景が描けたら、次は人物だ。
次回は、脱・棒人間をめざすぞ!