明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(772)未来のために学びを深めよう!(美作市、島田町、西成区、高島市でお話しします)

2013年12月13日 16時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131213 16:00)

秘密保護法を使い、福島原発事故の現実を隠し、戦争に邁進しようとする安倍政権との対決のために、ますます私たちの学びが重要になっていますが、各地でどんどん学習熱が高まっています。
僕もさまざまなところに呼んでいただけますが、どこも意欲がとても高い。

例えば、8日の日曜日には広島県三次市にうかがって話をしましたが、交流会である40代の男性がこんなことをおっしゃってました。
「私は東日本大震災まで、社会問題に目を向けたことがありませんでした。そういう私の無関心な態度がいろいろな矛盾を生み出したのではないかと思って、その後にいろいろと考えだしました。
長く考えていなかったので、まだ分からないことだらけなのですが、これからも学んでいこうと思います」・・・。

僕はこう答えました。「そうおっしゃる方がとても多いのですよ。どこにいっても必ずそんな話を聞きます。僕にはそれがとても嬉しいのです。
今、日本では私たち民衆の大きな覚醒が起こっていると思います。その一つがあなたがそう思ってくださったことです。さらに一緒にいろいろと学んで考えていきましょう」。
なお、この日は講演会後に、三次駅周辺で行われている秘密保護法反対のデモにも参加させていただきました。
わざわざ尾道から三次まで駆けつけてくださった方もいたのですが、その方も一緒に秘密保護法反対の声をあげて三次の町を歩きました。なんと生涯で初めてのデモ参加だったそうです!

「東日本大震災後に目覚めた」という発言は、各地の企画の主催者の方々からもよく聞かれますが、中には原発事故から3年弱のあまりに、すでにびっくりするほどたくさんのことを吸収している方もおられて驚きます。
しかも仕事などでもともと身につけてきたさまざまな見識がそこに加わったりしている。もちろん僕が知らないたくさんのこともあり、教えてもらうことが多いです。参加者の間の相互刺激もあちこちで生まれつつあります。

この間、繰り返していることですが、秘密保護法の登場は、政府が知られたくないことがたくさんあることに起因しています。アメリカとの属国的関係や、米軍の作戦に自衛隊を大規模に巻き込もうとしている現実。
福島原発事故で、広範に拡大しつつある放射線被曝による健康被害や、原発そのもののあまりに不安定な現状などなどです。だから私たちが学びを深め、知恵をつけて、平和と安全を目指す行動の礎にしていくことがもっとも大きな抵抗になります。
そのために、学習を重ねながら、さまざまな活動を行っていくことの重要性を何度も訴えたいです。僕自身、学びを深め、常に新しい知識を吸収しながら、講演などをさせていただこうと思っています。

今週と来週末の予定を記しておきます。
15日日曜日には岡山県美作市でお話しします。この日は津軽三味線の演奏も聞けるそうです。楽しみです!
21日土曜日には、大阪の島田町と西成区でお話しします。美作、島田、西成ではともに内部被曝の脅威といかに立ち向かっていくのかが演題です。
23日月曜日には、滋賀県高島市でお話します。高島市には、放射性の木材チップが300トンも不法投棄されるという問題が起こっているので、このことに焦点をあてます。

お近くの方、ぜひお越しください。一緒に学びを進めましょう!
以下、案内を貼り付けておきます!

*****

12月15日 岡山県美作市

東日本大震災から3年目
福島を忘れない
放射能から身を守りたい

健康被害の現状と対応について
食べ物のお話もしたいですね…

守田敏也さん講演会と蝦名宇摩さん津軽三味線の演奏

とき 2013年12月15日(日曜日)
9:30~12:10(開場9:00)
ところ 湯郷地域交流センター2階(美作市湯郷826-1)

テーマ 福島原発災害の影響現在、未来

守田敏也さん プロフィール
京都市在住
兵庫県篠山市原子力災害対策検討委員会委員。同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、現在フリーライターとして活動中。
原子力政策に関して独自の研究・批判活動を続け被災地にも度々訪問。物理学者矢ヶ崎克馬氏との共著岩波ブックレットから『内部被曝』を上梓。
ブログ「明日に向けて」を通じて、連日、原発情報を発信中。

蝦名宇摩さん プロフイール

鹿児島県奄美大島出身     
秩父屋台囃を学ぶため単身上京。
和太鼓、横笛を取得しながら、本場青森県津軽三味線の名手、蝦名流家元・蝦名伴主師範に津軽三味線・民謡・尺八・民謡太鼓を学ぶ。
後、出身奄美の島唄、三線も取得。埼玉北部民謡大会総合優勝。その他各地民謡大会にて優勝十数回。三味線では、埼玉県津軽三味線大会で優勝。
3.11後、瀬戸内市へ移住し津軽三味線を通して被災地へのボランティア活動や福島の子ども達への支援などで活躍中。  

主 催 美作環境ネットワーク
連絡先 内海(090-4146-4772)

*****

12月21日 大阪府島本町

ぴあ・ネット/100万年の会講演会

ただ今、日本は原発ゼロ!
~知りたい現状と、考えなければならない未来~

この12月で、3.11から2年9ケ月になります。使用済み核燃料の取り出しという危険な作業が始まりました。
輸送容器の落下事故などがあれば放射性物質の拡散を招く恐れがあります。
しかし相変わらず高濃度汚染水漏れは日常茶飯事で、大気への放射能物質の出っ放しの状況は変わりません。
目には見えなくても日々放射能汚染は拡大しています。
この状況はまだまだ何十年と続くのです。その中で私たちは感覚がマヒしてしまわないかという危惧を抱きます。
そこで、原発ゼロの今、講師に守田敏也さんをお招きして現状を知り、未来へ向かって何を考え行動しなければいけないかを一緒に考えたいと思います。
是非お越しください。お待ちしています。

講師 守田敏也 さん(フリージャーナリスト)

同志社大学社会的共通資本客員フェローなどを経て、フリーライターとして活躍中。
原子力政策に関して独自の研究と批判活動を続け、東日本大震災後は被災地もたびたび訪問。
ボランティアや放射能除染プログラムなどに携わり、ブログ「明日に向けて」を通じて原発情報を発信。
各地で講演を行いつつ、放射線被ばくの恐ろしさを明らかにし、防護を訴えておられます。


と き  12月21日(土)13:30~15:30
ところ  島本町 ふれあいセンター 3階視聴覚室  
資料代  500円
申込み  不要
問合せ  075-961-4450    
主催:ぴあ・ネット/100万年の会

*****

12月21日 大阪市西成区

たちばな9条の会主催(原発を考えるシリーズ第7弾)

福島原発事故最新情報
~汚染水、燃料棒取り出し、健康被害~

福島原発から放射能は1日あたり2億4000万ベクレルもれ続けています。東京電力廣瀬社長が10月7日参議院で答弁した大気汚染と海洋汚染の数値は以下です。
「大気中に放出された放射性物質はセシウム134と137の2核種合わせた数値で2万兆ベクレルになるとみており、海洋への放出について、当初は7100兆ベクレル放出されたとみている。
その後地下水の汚染などにより、1日あたり最大200億ベクレルのセシウムが放出されている。」と述べています。
7月参院選挙翌日に東電が汚染水もれを発表、9月安倍首相はオリンピック招致総会で嘘をついた。
翌日アルゼンチンホテルの記者会見で安倍首相は「原発比率を下げる。そのためにこの3年は再生可能エネルギーの開発に全力で取り組む。」と行き当たりばったり。

講師の守田敏也氏は、福島原発事故を真摯に取材されているフリーライターです。いま現在も余談をゆるさない汚染水、燃料棒、健康被害についての貴重な講演です。
たちばな9条の会は、原発を考えるシリーズを息長く学び続けています。
過去講師には今中哲二先生(京都大学原子炉実験所助教)やストップザもんじゅの池島芙紀子さん。チェルノブイリを訪問され現地の子どもたちの甲状腺がんと福島とを比較された安達克郎医師。
電力料金の総括原価方式を映像化されたジャーナリストの西谷文和氏ほか。
2カ月に1度のペースで参加者みなさんといっしょに草の根学習会を参学寺(場所地図参照)で開いています。
講演後は忘年会をかねてポットラックパーティ(飲食持ち寄り)。

日時: 2013年12月21日(土)17:30開場/18:00開始
講師:守田敏也(フリーライター、著書『内部被曝』岩波ブックレット。矢ケ崎克馬氏と共著)

守田氏のブログ明日に向けて
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011

会場: 参学寺「参究道場」 TEL 06-6658-8934
大阪市西成区橘1-7-6
参学寺ホームページ
http://www.sangakuji.com/
Eメール sangakuji@cwo.zaq.ne.jp

申込:西田靖弘携帯090-9610-8780
Eメール nishiyan0213@gmail.com
もしくは米澤清恵 電話090-5647-0922 
米澤Eメール kiyoyonyon@hotmail.com

*****

12月23日 滋賀県高島市

全国に拡大する放射能汚染と汚染チップ投棄を考える交流会
~ジャーナリスト守田敏也さんを迎えて~

汚染チップ撤去スケジュールが決まりました。撤去が安全に、確実に処理完了されることを願います。
この事件に関して、地元のみならず多くの方々が関心を寄せています。
高島で見つかった300トンの高濃度の放射性物質に汚染されたチップの不法投棄は、全国で氷山の一角といわれています。
再発防止策、どのように地域を守っていくのか、どうしたら放射能汚染から身を守れるのかなど、
被災地を何度も訪れ、原発問題に取り組むジャーナリストの守田さんを迎え、一緒に考えていきませんか?
この度、大地さんのご好意で場所をご提供いただき、さまざまな角度から汚染チップ問題を捉えた意見交流会・勉強会を企画いたしました。
お気軽にご参加くださいませ☆

12 月23 日(月) 午後13:30~16:30(13:00 会場)

障害福祉施設「大地」
高島市安曇川町下小川2441-25 (湖周道路沿い)
0740-32-3860

参加費用600円のカンパお願いいたします☆(講師代)
どなたでもお気軽に参加していただけます。遠方の方、お子様連れ歓迎です。
(キッズスペース用意しております☆)

13:00 開場
13:30 ~15:15 守田さんの講演
(拡散する放射能汚染~汚染チップ問題の裏側~若狭湾原発群の影響~内部被爆について他)
15:30~16:30 フリートーク (意見交換・質疑応答・交流会)
* 内容が多少変更することがございますがご了承くださいませ。

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講師:守田敏也さん (フリージャーナリスト)

1959年生まれ。京都市在住。同志社大学社会的共通資本研センター客員フェローなどを経て、現
在フリーライターとして取材活動を続けながら、社会的共通資本に関する研究を進めている 。ナ
ラ枯れ問題に深く関わり京都大文字山での害虫防除なども実施。原子力政策に関して独自の研
究をするとともに、3.11 以降は何度も被災地を訪れ、ブログ「明日に向けて」を通じて情報を発信。
各地で講演を行いつつ、放射線被曝の恐ろしさを明らかにし、防護を訴えている。著書に矢ヶ
克馬琉球大学名誉教授との共著「内部被曝」(岩波ブックレット)がある。

その他ご連絡等090-3815-5873 (担当:梅村)
umemomosakura212781@ezweb.ne.jp

 

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明日に向けて(771)秘密保護法・・・動揺した安倍首相「反省」を表明、それなら廃案にすべき!

2013年12月12日 18時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131212 18:30)

まれに見る悪法である秘密保護法を強引に可決した安倍首相は、臨時国会の閉幕を踏まえて首相官邸で記者会見し、民衆の激しい抗議の声に動揺して「反省」の言葉を口にしました。東京新聞は以下のように語ったと伝えています。

***

「厳しい世論は国民の叱声(しっせい)であると、謙虚に真摯(しんし)に受け止めなければならない。私自身が、もっともっと丁寧に、時間を取って説明すべきだったと反省している」
首相は「審議過程では、秘密が際限なく広がる、知る権利が奪われる、通常の生活が脅かされるといった懸念の声もいただいた」と指摘。その上で「そのようなことは断じてあり得ない。今ある秘密の範囲は広がらない。一般の方が巻き込まれることも決してない」

***

「厳しい世論は国民の叱声であると、謙虚に真摯に受け止めなければならない」・・・明らかにこれは、全国津々浦々で行われいる秘密保護法反対デモに動揺して出てきた言葉です。
石破幹事長の「デモはテロ」という発言も、石破氏の反民主主義的な発想と、デモへの恐れがないまぜになって飛び出してきたものでしたが、首相のこの言葉にも、民衆の抵抗への激しい動揺があらわれています。明らかにデモを恐れています。

しかしもちろん、「謙虚に真摯に」などというのはまったく嘘です。本当にこの首相は嘘を平気でつけるひとなのだとため息が出ます。
彼は続けて「秘密が際限なく広がる、知る権利が奪われる、通常の生活が脅かされる・・・そのようなことは断じてあり得ない」と断言しましたが、福島原発がコントロール下にあり、汚染水は完全にブロックされており、現在も未来も健康被害はないと断言したこの首相を、誰が信じることなどできるでしょうか。
安倍首相が何を言おうが、法の性質は条文に記されており、その内容が「秘密が際限なく広がる、知る権利が奪われる、通常の生活が脅かされる」ものとなっているのです。だから日本中で反対の声が上がっているのです。だから「反省」など語るなら、この悪法を廃案にすべきなのです!

また多くの人が危機を感じるから、大きな反対の声を上げているのに、審議を尽くさず、強引に法を通してしまった。「謙虚に真摯に」受け止める気がある人物が、また「時間を取って説明すべきだった」と思う人物が、あのようなあまりに強引なやり方をとるはずなどありません。
にもかかわらず、安倍首相は、またも大嘘で切り抜けようとしている。本当に、この方はまっとうな倫理観を持ち合わせていない。そういう人物こそ、たくさんのことを秘密にしたがります。きちんと持論を説明することができない上に、嘘を繰り返すので、その露見をいつも恐れているからです。
ちなみに首相のお連れ合いの昭恵さんは、「家庭内野党」だそうですが、こういう嘘には反対しないのでしょうか。大嘘つきの伴侶がこの国の首相をしていることに恥ずかしさを感じないのでしょうか。どこが「家庭内野党」なのか大いに疑問です。
ツイッターでのある方の書き込みに、安倍首相の言い分は、暴力を振るった後に「もっと優しくすれば良かった」と語るDV夫のようだというものがありましたが同感です。

安倍首相の大きな動揺は、共同通信が8、9日に行った世論調査で、内閣支持率が11月の57.9%から10.3ポイント落ちて47.6%へと急落したことにも影響されたものです。不支持も26.2%から38.4%に上昇しました。
秘密保護法についても、次期通常国会以降に「修正する」が54.1%、「廃止する」が28.2%で、合わせて82.2%がこのままの施行に反対しています。法律に「不安を感じる」という回答も70.8%に登っています。
経営陣を安倍首相の息のかかった人物に変えてきたNHKの世論調査ですら、支持が60%から50%に下落。不支持が25%から35%に上昇との結果が報じています。

内閣支持率の急落は、全国で展開された秘密保護法反対行動が呼び起こしているものです。もともと安倍政権は、政治的理念での支持など受けていません。「アベノミクス」におけるまやかしの「経済効果」のみが支えです。
秘密保護法のことも、TPPへの参加も、公約にはまったくなかった。にもかかわらず戦争への道をひた走る、安倍政権の危険な姿が、ようやく多くの人々にも見えてきたと言えるでしょう。

こうした民衆の声の高まりの中で大きく動揺しつつ、一方では支持率を失う前により強権的な体制を強めてしまおうと思いながら、他方で支持率低下が気になって仕方がない姿を安倍首相とともに体現しているのが迷走を繰り返す石破幹事長発言です。
石破氏は、「デモはテロ」ととんでもない発言をして批判をあびたときにも、即刻、「テロ」発言を撤回し、「政治家は世の中に対するおそれを持っていかなければならない」と語りました。(12月4日)
デモに対して「テロ」と捉えてしまうような恐れをいだき、その上、このテロ発言批判にも恐れを抱いた石破氏が、自らの動揺を隠すために「恐れを持った」ことを「恐れを持っていかなければならない」と言い換えただけですが、石破幹事長はその後も同じことを繰り返しています。

内閣支持率の低下を受けた11日に、石破氏は日本記者クラブで会見し、秘密保護法で指定された秘密を報道機関が報じることについて「常識的に言って、何らかの方法で抑制されることになると思う」と述べました。
実際には秘密保護法の条文にすら「国民の知る権利の保障に資する報道又(また)は取材の自由に十分に配慮しなければならない」と明記してあり、正当な取材で秘密を入手した場合は処罰の対象にならず、秘密を報じた場合の罰則規定も設けられていないのであって、石破氏の発言は強権的な逸脱です。
ところが、石破氏はこの会見の2時間後に自民党本部で記者団に「(秘密を)漏洩(ろうえい)した公務員は罰せられるが、報道した当事者は処罰の対象にならないということだった」と訂正し、秘密に関する報道についても「抑制を求めたものではない」と釈明したのでした。官僚など側近に、条文への無理解を指摘されたのでしょう。

にもかかわらず12日になると石破氏は再び方向転換。ニッポン放送のラジオ番組の中で、「秘密保護法で指定された秘密情報」を報道機関が報じることに自制を求めて、「外へ出すと国の安全に大きな影響があると分かっているが報道する。(その結果)大勢の人が死んだとなれば『それはどうだろう』というのはある」などと発言しました。
いったんは、報道そのものが罰せられると語り、あわてて、罰せられないと訂正し、さらに罰せられないが自制すべきだと発言の修正を繰り返したわけです。
ここには石破氏の、より強権的な道に進もうという反民主主義的な意図と、民衆の怒りへの怯えが錯綜していることがはっきりと表れていることが見てとれます。同時に、秘密保護法があまりにあいまいで、はっきりとしていない法律であることもよく表れています。だから「常識だ」と言ったことを2時間後に訂正し、翌日、再訂正することになったのです。

安倍首相と石破幹事長の、動揺の繰り返しから見えることは、この二人はまったく反省などしておらず、反民主主義的な野望を持ち続けていますが、他方で、民衆の声をひどく恐れてもいるということです。
実はこれは現政権幹部に共通する価値観に裏打ちされた態度です。それを象徴するのが、麻生副総理が、7月参院選の自民党「圧勝」時に語った「ナチス称賛発言」です。麻生氏はこう語ったのでした。
「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」・・・。

これに対して、僕は当時、すぐに以下のような分析を出しました。

***

麻生氏は憲法9条をはじめ「改憲」の道に人びとの十分な合意などないことをそれなれりに把握しているのです。また正々堂々と、改憲について論じ合ったとき、自民党の主張がたちまち「民主主義に反している」という正論で破られてしまうことも肌身で感じている。明らかに民主主義に驚異を感じているのです。
だから、選挙民に何が重大問題であるかを気づかせないままに、徹底した嘘と暴力の発動によって、「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった」ナチスの民主主義破壊の手口に強烈に魅力を感じ、ついその本音を出してしまったのです。」

明日に向けて(720)自民党の「圧勝」?てやんでぃ!(麻生ナチス発言から自民党を支配を見る)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c085961caa38a6d04a2f23a37d178192

***

現在の、安倍首相や石破幹事長の、非常に強権的でありながら、動揺を繰り返す態度は、麻生ナチス称賛発言に通底するものであり、現政権が共有して持っているものです。
現政権は民主主義をまったく尊重しておらず、ナチスすら褒め称えるような価値観の人々によって成り立っているのです。しかし一方でその本質の露見を痛く恐れているのです。
そうであるならば、私たちの進むべき道はあまりにも明らかです。民主主義の旗を高く掲げ、さらにいっそう怒りの声を大にすること。同時に、さらに一層、民衆の覚醒を深めることです。

そのために街頭行動と、学習会活動を縦横無尽に組み合わせた行動を重ねましょう。
原発のこと、放射線のこと、戦争のこと、戦後史のことを学び、さらにあらゆる分野に知識と知恵を伸ばしていきましょう。
今は真に民主主義を育てるときです。暗黒の独裁政権か、民衆によってラディカルに支えられたデモクラシーか。大きな分岐点に私たちはいます。未来のために、子どもたちのために、力を尽くして頑張りましょう!

 

 

 

 


 

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明日に向けて(770)違憲の秘密保護法など恐れず、学びと覚醒を推し進めよう!

2013年12月08日 09時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131208 09:30)

秘密保護法が強行可決されました。さまざまな法的不備もほったらかしたままにです。この強行に対して、多くの人々がこれは「安倍内閣の終わりの始まりだ」と叫んでいます。まったくその通り。
ちなみに安倍首相は、強行採決から一夜が過ぎた翌朝、「官邸前が静かなので、嵐が過ぎ去ったと感じた」と述べたそうです。冗談ではない。嵐はこれからです!

秘密保護法は、これから施行に向けたさまざまな手続きや整備に入ります。それに1年はかかると言われています。この1年間が私たちの国の民主主義の行く末を決めます。私たちはあらゆる手段を通じ、この悪法を無効化するための努力を重ねましょう。1年をかけて、必ずやこの法律を撤回させましょう。大衆的な行動で、安倍政権を追い詰めましょう。

彼の祖父の岸信介首相(当時)も、戦前のような軍事国家への道を歩もうとしたがゆえに、日米安保改定反対デモの拡大の中で退陣を迫られました。国会議員たちの手によってではなく、民衆の直接行動が、軍事ファシズムに舞い戻ろうとする政権を倒したのです。歴史は繰り返す!民主主義につばする安倍政権も私たちの力でこそ倒しましょう。

そもそも安倍首相はあまりにも思い上がっています。この国の主人公が民衆であることを忘れている。首相は本来、公共のしもべとして働くべき存在です。そのことを根本的に履き違えている。
その上、オリンピック招致発言をはじめ、数々の大嘘を平気でついてきています。そもそも秘密保護法など、選挙の公約ではまったく触れられていませんでした。所信表明演説でもです。それどころか自民党は、TPPは絶対反対だと叫んでいたのです。ただ叫ぶだけではなくて「ぶれない」なんて啖呵さえ切っていたのです。ところがこの変わり身の早さ。「嘘つきは泥棒の始まり」という言葉を安倍首相は知らないのでしょうか。

そもそも自民党はなぜ当初はTPPに反対していたのか。日本に住まう人々のたくさんの利益を、アメリカ独占資本に差し出すことになるからです。ところが、安倍首相率いる自民党は、政権につくやすぐにひっくり返ってしまった。なぜでしょうか。この国に強い支配力を行使しようとするアメリカにすり寄ることで、政権を維持しようと欲したからです。

秘密保護法の本質もそう。アメリカ軍との軍事協力体制を強め、自衛隊を、アメリカ軍の属国軍として差し出すために、この法律をアメリカが要望したことに応えたのです。もちろん、嘘に次ぐ嘘の体制を守るため、都合の悪いさまざまな事実を強権的に覆い隠したいという意図も強く働いています。

そんな安倍首相や自民党がそれでも多数派になってしまうのは、小選挙区制をはじめ、この国の選挙制度がかなり歪んでしまっているからです。現在の自民党は、前の選挙で大敗したときよりも、もっと少ない得票率で、大きな議席を得ています。けして多数派政権などではないのです。

この歪んだ選挙制度は必ず変えていかなければなりませんが、しかし私たちが忘れてはいけないのは、民主主義を構成するのはけして選挙だけではないということです。いや、選挙制度が腐敗しているからこそ、今、重要なのは民衆の直接行動です。デモやピースウォークはその重要な柱ですが、それだけではない。ありとあらゆる手段を使って、意志を表明すること、活発に動くことが大切です。

とくに今、もっとも大切なのは、私たちの側がさまざまな領域で学習を強めていくことです。とくに秘密保護法がでてきた背景は、政府がたくさんの秘密を抱えていること、その露見を非常に恐れていることにあるのですから、ならばこの1年、よりたくさんのことを学び、明らかにし、広めていきましょう。そうして私たち民衆の覚醒を強めていきましょう。

各地で、これまでにも増した熱意で、学習会や討論会を開き、原発のこと、被曝のこと、戦争のこと、アメリカ軍のこと、自衛隊のことなどをどんどん深く学んでいきましょう。それだけではありません。TPPのこと、それに関連する農業や医療のこと、食の安全のこと、学ぶことはたくさんあります。

歴史についても理解を深めましょう。そもそも大規模な放射線被曝は、広島・長崎から始まっています。そしてビキニ環礁などでの核実験や、スリーマイル島事故、チェルノブイリ事故からも、私たちはたくさんの知恵を学ぶ必要があります。

戦後史も大切です。新しい憲法ができてから私たちの国はどのような歩みを経てきたのか。アメリカはどのように私たちの国にかかわり続けたのか。なぜ戦後、68年も経っているのに、いまだに沖縄が占領状態にあるのか。学ぶべきことはたくさんあります。

しかもこれらの歴史は、私たちの生活に直結していることでありながら、学校教育ではほとんど教えられていません。なぜか。まさにここを民衆が学ぶと政府が困るからです。現在の私たちの社会の矛盾が生成してきた歴史的からくりがここに含まれている。だから戦後一貫して、自民党はこの部分を学校教育で教えようとしてこなかったのです。

そうして一年間、学びと行動を交互に重ね合わせ、民衆の覚醒を力強く推し進めましょう。秘密保護法などでは、とても真実が覆い隠せないほどの民衆的な力を私たちは身につけましょう。ただこの悪法を撤回させるだけでは足りない。そもそもこの法律が狙っているところを私たちは打ち破らなければならない。それは民衆を事実から遠ざけ、愚かな状態に追い込み、いんちきの選挙制度で、コントロールし続けることです。だから反対の道を私たちは進みましょう。

同時に、自衛隊のアメリカ軍への協力をやめさせなくてはいけません。この点で大事なのは今こそ、イラク戦争をとらえ返すことです。なぜか。自衛隊が初めて大規模にアメリカ軍の展開の下支えをしたのがこの戦争だったからです。

イラク戦争は何のために行われたのか。「イラクが大量破壊兵器を持っていて、世界を脅かしているから」というのが戦争目的でした。日本は小泉首相のもとにこの戦争に全面協力しました。しかし実際にはどうだったのか。イラクは大量破壊兵器などまったく持っていなかったのです。

こんな理不尽なことがあるでしょうか。アメリカは「大量破壊兵器保持を許すな」といってイラクに攻め込み、雨あられと爆弾を投下し、地上軍も投入してたくさんのイラクの人々を殺したのです。しかもたくさんの民間人も巻き添えにした。挙句の果てに、フセイン大統領を捕まえ、アメリカ軍がバックアップする新政権に殺させてしまいました。しかし戦争の理由はまったくの「誤認」だったのです。

これは完全に戦争犯罪です。もっとも重大な責任を負っているのは、ブッシュ元アメリカ大統領と、ブレア元イギリス首相です。しかし小泉元首相の罪も極めて大きい。戦争犯罪に大きく手を貸したのです。
にもかかわらず、私たちの国では、小泉元首相を罰しようとするいかなるモメントも存在しませんでした。

なぜか。悲しいほどに私たち民衆の覚醒が遅れていたからです。今、思い返しても残念でなりません。
みなさん。僕はあのとき、心ある人々とともに、イラク戦争反対を叫んで、何度も町を歩きました。そのときも、一定数の人々は、戦争の本質を見抜いて大きな声を上げ続けました。

しかし民衆の大半は動きませんでした。マスコミもそうでした。そうして小泉元首相の「人気」が保持されていた。
あのときの悔しさ、無念さ、イラクの人々への申し訳なさは今も忘れられません。

それでもあのとき、イラク戦争反対を掲げてデモを続けた多くの人たちは、私たちの国の民衆がいつしか覚醒してくれるだろうことへの希望を捨てませんでした。
僕も周りの友人たちと、何度もビラを作りました。少しでも読みやすいものを、だけれどもけして主張を薄めないものを作ろうと、討論を繰り返し、毎回、心を込めて作りました。

そうしてどんなに少ない数でもいいからと、町に繰り出して歩いた。今は少数派でも、いつか真実が世の中に通るだろうと心に念じて、平和を訴え、歩き続けたのです。
そのころを知る人々にとっては、今は隔世の感があります。これほど多くの人々が連続的に、しかも全国津々浦々で歩く日が来ることはあのときは想像もできなかったからです。

しかしまだ私たちの歩みは途中です。これでもまだまだ足りない。足りないから、秘密保護法もいったんは成立してしまいました。もっと力をつけなくてはいけません。そうして私たちの力がつけばつくだけ、私たちの未来は明るくなり、子どもたちの未来の可能性も開けていくのです。
反対にここで私たちが挫けてしまえば、子どもたち、若者たちには戦争に駆り出される未来が待っている。

私たち大人は、若い人々、子どもたちに対して、たくさんの放射能を残してしまいました。これから未来世代は、私たちの世代がしでかした不始末と長きにわたって格闘していかなくてはなりません。それだけでも申し訳ないのに、その上、戦争に駆り出されるリスクなど送っていいものでしょうか。何としても私たちはこれを止める必要があります。僕はそのためだったら、すべてを投げ出してもなんら惜しくはありません。

覚醒しましょう!もっともっと。賢くなりましょう。
民衆が賢くなり、力をつけていくことこそが、民主主義を支えるのです。民主主義の語源はデモスクラチア。デモス=民衆に、クラチア=力のある状態です。それを精力的に発揮していくのがラディカル・デモクラシーです。

共に進みましょう!

*****
なお、本日は、広島県三次市で講演を行います。
食べ物のことがメインですが、放射線防護や、秘密保護法のことにも触れます!
集会案内を貼り付けておきます!


7月13日に行った講演会の反響があったので第2弾を行います
前回来られた方も初めての方も大歓迎です

「身体は、自分が食べたものでできている」
そんなアタリマエを
忙しい毎日の中で忘れてしまいがち。
 添加物や必要以上の農薬が使われ、安全性がわからない食材を
 いったいどれくらい口にしているのか・・・
 それでも何とか機能している素晴らしい体を
私たちは持っています
 でも、この先もこのまま機能してくれる?
 自分も、子どもも、家族の体も。。。

だから少し立ち止まって、
 本当に体が必要としている食べ物のことを
考えてみませんか?
 食べられる体がある限り、まだ大丈夫!
 守田先生に、今の食品の現状と対策を聞いてみましょう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

講師 : 守田 敏也さん 
       (ジャーナリスト 京都府在住)
 日時 : 12月8日(日)
 場所 : 三次ふれあい会館2階 会議室(三次コミュニティセンター)
        (三次市三次町1828-5 Tel 0824-62-3612)
時間 : 13:30~15:30(13:00開場)
 参加費 : 1,000円
   ※託児はありませんがキッズスペースをご用意しています。

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明日に向けて(769)秘密保護法案は憲法違反!「成立」したとしても無効にさせよう!

2013年12月06日 12時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131206 12:30)

秘密保護法案が成立の瀬戸際に立っています。全国津々浦々で、法案反対のデモが行われています。
僕も昨日、一昨日と、京都の街を、法案反対を叫ぶ多くの人々と一緒に歩きました。昨日は歩きながら、写真を次々とFACEBOOKにアップしました。
京都のデモの様子をご覧になりたい方は以下をご覧ください。
https://www.facebook.com/toshiya.morita.90

今日も引き続き、各地で行動が取り組まれています。僕はどうしても書かなければならない原稿(原発事故の健康被害の暴露もの)があり、今日は申し訳ないけれどもパスさせていただきますが、反対の声は日増しに高まっています。
最も大切なことは、この力があれば、例えこの法案が強行採決されようとも、覆すことが絶対にできるということです。なぜか。この法律が完全に憲法違反だからです。

この点で、参考になる弁護士さんのブログを見つけました。

街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋
どこまでもマチベンのブログ by岩月浩二@守山法律事務所(名古屋市)
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2013/12/post-664f.html

岩月さんは、このページで「超安心 秘密保護法なんて怖くない! 憲法は最強の切り札なのだ」という記事を書いています。
超安心かどうかはともかく、岩月さんの記事の核心部分を引用します。

***

「憲法21条の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」には「過度に広範ゆえ無効の法理」とか「不明確ゆえ無効の法理(あいまいゆえ無効の法理)」とかウルトラマジックな切り札が用意されているんです。
これは大学生でも知っている法理だけど、法学部生でないと知らない可能性があるから、書いておくね。

要するに、表現の自由は民主主義を支える重要な権利だから、表現行為が萎縮するような法律は厳に慎まなければならないんですね。
過度に広範だったり、曖昧だったりすると、表現行為が萎縮してしまうわけ。
そうなると民主主義自体が機能しなくなって、誤った政治が行われても、民主主義による是正ができなくなっちゃうので、表現行為はとりわけ厚く保護されてるんですね。」

「大日本帝国憲法は、法律さえ作れば、無制限に人権を制限することができることになっていましたが、日本国憲法は、法律を超える最高法規ですから、憲法違反で無効だと唱えれば、無効になっちゃうんです。(^^)V
欲張りじいさんは損をするというのは真理で、今回は「何でもかんでも秘密」とばかりに、あんまり欲張ったので、この法律は全体として無効になっちゃうんです。」

***

僕もその通りだと思います。こんな法律、完全に憲法違反です。
そこで大事なのは次の点です。私たちが今こそ、憲法を生かさなければならないということです。正確には憲法に記された人権という大きな力を発動させなければいけない。

憲法の第三章、「国民の権利及び義務」の第十二条には次のような言葉が書かれています。
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」
そう。まさに今、問われているのは、私たちの「不断の努力」による、自由及び権利の保持です。
かりに今日、法案が強行可決されるのだとしたら、私たちはただちに、同法が憲法違反であるがゆえに無効であることを主張して立ち上がりましょう!

ただし、ここで大事な点を一つ押さえておく必要があります。
この私たちに力を与えてくれる憲法が、残念なことにその対象を「国民」としていることです。
もともとアメリカのリベラリストたちが憲法を起草したときには、「国民」という言葉ではなくpeople=人民という言葉が使われていたのでした。
しかし憲法施行とともに、「大日本帝国臣民」ではなくなり、「在日朝鮮人」となる人々の力を恐れた当時の日本の支配層が、必死の抵抗で、人民を「国民」に書き換えてしまったのです。そのため「人権」から日本国籍を持たない多くの人々が排除されてしまった。

私たちはこのことを頭に入れて、運動を進めていく必要があります。デモのスローガンなどで「国民」という言葉を使用することは控えましょう。
僕自身は「国民・住民」という書き方もしますが、「民衆」という言葉もいいかもしれません。なかなかしっくりいかないかもしれませんが、この憲法の弱点も踏まえつつ、しかし私たちは先人によって与えられた人権を今こそ十二分に活用して、民主主義を守り、発展させましょう。
大事なのはただ守るのではなく、発展させることです。行動的な民主主義、ラディカル・デモクラシーを発揚するときが今です!

民主主義を発展させるために、主張しておきたいのは、秘密保護法案の反民主主義性、反憲法性を強調することは大切ですが、同法の危険性を強調するあまりに、この法律が成立したらただちに暗黒の世になるかのように宣伝することは止めましょうということです。
そんなことはない。暗黒の世は、私たちが抵抗をあきらめてしまったときにこそ訪れるのです。
繰り返しますが、私たちの手にはしっかりとした人権があります。それも単に憲法の条文に書かれただけのものではない。私たちの心の中にしっかりと根を下ろしています。

人権は私たちの常識感覚の中にも宿っている。私たちが普通に思っている感覚が、たとえば戦前とは大違いなのです。
戦前は、全ての人が「お国のために」命を差し出すことを強制されました。一部の人々が激しく抵抗しましたが、しかし多くの人々はこれに従ってしまいました。
その挙句、凄惨な戦争に連れていかれて人殺しを強要され、、あるいは大切な人を戦争に奪われ、さらに本土空襲、沖縄戦、原爆投下など、戦争の大変な惨禍にまきまれて、多くの命を失ってしまいました。
そのことに文句の一つも言えなかった。残念ながら、それが大日本帝国憲法下の多くの人々の「常識」だったのです。

戦後を十分に正してこれなかった限界は多々あるにせよ、それでも今はまったく違う。現にこれだけたくさんの人々が、民主主義に反する法案を前にしてデモを行っています。
原発の稼働だって食い止めている。自公が巨大与党を作ってもなお、すぐに再稼働なんかできない。首相官邸前に、そして各地の電力会社前に、延々と抗議行動が繰り返されているからです。
民主主義はここにこそある。これは戦後の長い年月を通じて培われ、私たちの心の中に、行動の中に宿っているもの。このあかりを私たちは守らなければならない。このあかりは大事なものであるとともにとても強いもの。今、それをたくさん集めて未来を力強く照らす必要があります。
だから今、萎縮してしまってはいけません!政府を万能のように捉えてはいけません。自主規制して主張を控えるなんてもってのほか。今こそ、政府が秘密にしそうなことの多くをより力強く暴いていきましょう。

政府がけして民衆に対して強いわけではないことは、「強行可決」の過程を見ても分かります。自民党・公明党は、なんとかして、みんなの党と、維新をこの法案に取り込もうとしている。なぜでしょうか。数の上では押し切ることも可能なのになぜ自公だけで押し通せないのか。
単純です。少しでも反対派の意見を取り入れたポーズが欲しいからです。強行採決批判を恐れているのです。国会外が怖いのです。多くの人々の立ち上がりを恐れているのです。
石破発言などはその最たるもの。デモをテロというのは、彼の心の中に民主主義がまったくないことを象徴するものですが、同時に、デモをされるだけで「テロだ」と思えてしまうほどに、民衆の声が怖いのです。心が怯えているのです。
だから封じ込めようとしている。対話で説得できる自信などさらさらないので、この法律にすがりつこうとしている。それが私たちの国の政府の中枢人物たちの実態です。こんな人々に負けるわけにはいきません。

秘密保護法が成立したら、ただちに憲法違反による無効を掲げた行動を対置しましょう。
さらに自衛隊がアメリカ軍の配下となって、戦場に送り出されることを食い止める行動を起こしましょう。もう一つ、政府が秘密にしたそうなことをめぐっての学習会を全国津々浦々で広げていきましょう。
デモも大事ですが、学習・対話もとても大事です。何せ政府はたくさんの知られたくないことを抱え込んでいる。みんなでその一つ一つを暴き、学び、知識を広げ、民衆の覚醒を押し広げましょう。

僕自身は、この悪法が通ってもまったく無視して、取材・執筆・講演活動を続け、放射線被曝の真実、原発の実態を暴き続けます。
かりに逮捕されたら監獄の中から発信するまで。むしろその方が注目が集まろうと言うもの。僕は多くの方の心の中に宿っている民主主義を信じているので何も怖くありません。
もちろん、こんな法律があることは私たちの国の恥ですから、無視するだけでなく、廃止のためにも行動します。
恐れずに、いや、そればかりか強い自信を持って、私たちが継承している人権に誇りを持って、一緒に前に進みましょう。日本の民主主義を、下から支えられたラディカル・デモクラシーを、力強く成長させる時こそが今です!

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明日に向けて(768)秘密保護法制定を阻止しよう!(下)

2013年12月02日 23時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131202 23:30)

秘密保護法に関する論考の(下)をお送りします。
前回の考察の中で、僕は孫崎享さんの歴史的考察を踏まえた見解への共感を述べつつ、僕なりに、秘密保護法の歴史的背景をまとめましたが、その最後に次のように書きました。

「ただし、ここから先は僕は孫崎さんとは違う意見を持っています。
この上に安倍政権や日本の官僚たちが、この法律の制定に動く強い動機を持っていることを感じるからです。その意味で安倍政権や官僚たちは、アメリカに対して受け身ばかりでなく、ごり押しを利用しようともしている。
その最も大きな点は、原発事故にまつわる問題です。端的に言えば、事故の実態を隠し、健康被害を隠し、 これからの福島原発の廃炉行程や、高レベル廃棄物の処理の過程を秘密にしようとすることです。
ただしさらにそれを規定しているのは、安倍政権や官僚たちの恐怖です。何への恐怖なのか。日本の民衆の覚醒に対しての恐怖です!」

・・・今回はこの続きを書きたいと思います。

常々感じることですが、こうした日本の民衆の覚醒については、実態をよく理解していない、ないし理解しようとしない政治家たちに対し、むしろ官僚たちの方が、はるかに実情をよく把握しているとも思います。
原発がコントロールなどとてもできていないこと、それどころか莫大な危険性を未だに抱えていること、さらには健康被害も深刻に拡大していることなどについてもです。
こうした問題をいかに処理するかを考えるとき、彼ら、彼女らが一番、恐れるのは、隠したい事実がどんどん露見し、社会的批判が高まることでしょう。そのことで国民・住民をコントロールできなくなることを最も恐れているのです。

とくに官僚たちが肌で感じているのは、日本の民衆の新たな覚醒だと僕は確信しています。
なぜか。福島第一原発事故以降、次々と明らかになったことは、政府や東電などの大企業が、どんなに平気で嘘をつくのかということでした。また「東京大学」など、権威をもった学者の多くも真実などまったく語りはしないということでした。
大新聞も本当のことを書かない。マスコミの多くも毒されている。そのことに、どれほどのパーセンテージかは分からないにせよ、日本に住まう民衆の中の大きな部分が確実に気がついた。
このため、「権威」によるコントロールが利かなくなりだした。誰よりもそれに気が付いているのが官僚たちです。

一方、政治家の中で、こうした民衆の動向に最も敏感なのが小泉純一郎という人物なのでしょう。そのために、日本を貧富の差の大きな国に作り変え、若者たちをワーキングプアにおいやった張本人が「原発ゼロ」を言い出している。
裏があるのかどうかは分かりませんが、少なくとも民衆の下からのエネルギーを、なんとか上から集約する必要にかられてのことだと思われます。
いや選挙制度の空洞化は、官僚のみならず、自民党の政治家たちにとっても脅威になり始めているのではないか。民衆の意志が選挙に反映しておらず、民主主義が形骸化していること、正確には民主主義という名のもとでの支配の合法性が崩れているのを、選挙の実態を通じて感じざるをえないのでしょう。

では民衆の中ではどうなのか。権威におもねらず、あるいは議員などに社会変革の可能性を委ねず、自ら学び、必要な知識を広げ、能動的に行動する人々が急速に増えだしています。その象徴の一つが、国会前や、各地の電力会社の前で、延々と続く毎週の行動などです。
これほどの動きは、労働組合など、それまで民衆の権利の砦であった組織が次々と解体されてきてしまったここ20年の中では起きることはなかった。特筆すべき能動的な行動です。

僕自身もこのことを、日々、強く実感しています。前回の記事の冒頭で、11月9日から24日までの間に9回も講演したことを書きましたが、主催者の中には中学校のPTAや地域の自治会、町づくり協議会なども含まれていました。
脱原発の市民運動団体ばかりでなく、あらゆるところで新たな学びが開始されているのです。その現場のさまざまな方たちが、「権威」ある肩書などを持たない僕を、次々と呼んでくださるのです。どの会場も非常に強い学習意欲に包まれている。深く感動します。
秘密保護法は、こうした民衆の覚醒への、政治家たちや官僚たちの恐怖によっても強く支えられ、強行されようとしていると僕は肌で感じています。

そこに象徴されているのは、この国のこれまでの支配の合法性そのものが、最後的終焉に近づきつつあるのだということです。
秘密をたくさん作り、持ちたがるのは、知られることが怖いからです。今の国の在り方から人心が大きく離れていることを、政治家や官僚たちが熟知しているのです。もう民衆を説得し、丸め込む自信がないのです。
冷戦の時のように、国民・住民を統合できるだけの社会保障制度ももはやどんどん壊れている。それどころか、官僚たちはもっと壊さなくてはいけない。自民党の中にもはや旧来のシステムを守ろうとするものは皆無です。

しかも、この国は、抜本的に内部から朽ち果てだしています。多くの企業の、とめどもない倫理的堕落はその象徴です。
産地偽装だとか、点検のごまかしだとかそんなことばかりが繰り返され、無責任体質がどんどん強くなってしまっている。真剣になって国や企業を支えようとする人士が激減しているのです。
当然にもそれは支配力のさらなる低下をもたらしています。こうした実情は私たちよりも官僚の方が熟知している。だから彼ら彼女らは、秘密の強化に走っているのです。

実は秘密の強化は彼ら、彼女らをも縛っていくものです。なぜか。政治家や官僚たちは最も国家機密に近いところにいるからです。
ただし自分の属する部門の秘密にしか触れられない。そのためこれまで政治家や官僚たちは、互いに重要情報をリークしあい、そのことで不断に「調整」を図ってきたのです。
ところがこの「調整」が秘密保持の強制によって効かなくなる。そうなれば、政治家や官僚の中ですら、事なかれ主義で動き無責任体質のものの方が有利になってしまいます。
風通しの悪いところで良い知恵など浮かぶはずがない。その意味で、秘密保護法は客観的に言っても亡国の道なのです。それでも覚醒する民衆を恐れる安倍政権や官僚たちは、この道を採る以外に選択の余地がない。

同時にまた現行の政治システムと官僚制度の瓦解と腐敗は、実はまっとうに生きようとする官僚たちの中からの、抜本的な改革への希求をも生み出していることでしょう。
それは官僚の中からの、民衆への重要情報のリークを増やすことに結果していくことになる。したがって秘密保護法には、官僚の中からの反乱の動きをけん制するモメントも強く含まれいることでしょう。
しかしそれは、彼ら彼女らの中の疑心暗鬼を強めることにしか結果しません。秘密保護法のもとでは官僚たちの中でも強く豊かなチームワークなど生まれるはずがない。だからけして国家の本源的な支配力を強くはしないのに、この道が望まれていることに、この国の行き詰まりが表現されているのです。


こうしたことを踏まえて、では私たち民衆の側はどうしたらいいのか。
何よりも強調したいのは恐れずに進むことです!
まずはこの法案を葬り去るために、残された時間を有意義に使って行動しましょう。こんな法律、つぶすに限ります。そのためにあらゆる行動を起こしましょう。
同時に、アメリカの意図と力強く対決することをめざしましょう。たとえ法案が通ろうが通るまいが、自衛隊をアメリカの属国軍として戦場に送り出すことを認めてはいけない。断固とした行動が必要です。

その際、強調すべきことの一つは、私たちの国の政府、特に長く続いた自民党政権が、北朝鮮をはじめとする諸外国を本当は信頼していたために(あるいは甘えていたために)海岸線にたくさんの原発を建ててしまったことです。
そのうちの一つの福島第一原発は瀕死の状態にあります。他のほとんどのものも、避難もままならない僻地に作られてしまっている。こんなもの絶対に軍事的に守りようなどないのです。
その意味で日本は軍事的リアリティから言っても、戦争などできる国ではないのです。いわんやアメリカの属国軍になりさがって、世界の様々な人々から恨みを買い、ゲリラ攻撃を受けるようにでもなったらとても社会を守り切れない。
私たちは憲法9条を守ることこそ、もっともリアリティのある妥当な道であることを高く掲げていく必要があります。

もう一つ、安倍政権や官僚たちが、私たち民衆の覚醒を恐れているのであれば、私たちはもっと覚醒し、学びを深め、前に前にと進んでいこうではありませんか。
そのために大事なのは、横暴を強める安倍政権に対して、あらゆる意味で萎縮せず、歩みを強めることです。とくに相手は民衆が賢くなることを恐れているのですから、さらに学びと行動を強化しましょう。

三つ目に大事なのは、例えこの法律が成立しようが、私たちにはまだまだ先人が命がけで積み上げてくれたたくさんの人権が残されていることを強く自覚することです。
実は僕はこれまで、若い時のデモ参加などをはじめ、5回ほど公安事件で逮捕されたことがあります。そのたびに警察の留置場に入れられましたが、毎回、同じことを思いました。
「共産党をはじめ、戦前の人たちだったらこれから拷問される。本当に辛かっただろう。今は絶対拷問などされない。先人の積み上げた努力がありがたい」ということです。

多くの人々が、今は戦争に突入した時に似ていると語っています。ある意味ではそうかもしれません。しかし圧倒的に違うのは、私たちの持っている人権のレベルの高さです。
これを十分に自覚しなければいけない。戦前と違って、いきなり監獄の中で袋叩きにあって殺されることなど絶対にありません。私たちはこの人権を有効に使わなくてはいけない。

世界を見渡してみましょう。私たちがいま手にしている人権に遠く届かない地域に住んでいる人々はまだまだたくさんいます。
そしてその中からも、不正義をただし、社会を変革しようとする力強い営為が、次から次へと沸き起こってきています。
私たちは、今こそその一つ一つに学び、励ましを受け、自らの持つ人権の強さに覚醒し、前に進むべきなのです。

アメリカも世界の人々の支持などとっくに失っています。日本の支配勢力も、内側からどんどん朽ちています。
一方、私たちの側には間違いなく新たな覚醒が始まっている。だから僕は今は、巨大な社会変革の入り口なのだと思います。

変革は困難抜きには達成されない。当たり前のことです。局面的には私たちはより暗い道を歩むことになるのかもしれませんが、私たちは、もっと暗い道の中から、今の幸せの根拠を手渡されてきたのです。
だから今、私たちも歴史を紡いでいくために行動しましょう。そのためにも秘密保護法廃案のために立ち上がりましょう。万が一、成立したとしても、その日から、秘密保護法廃棄を掲げた歩みを開始しましょう。

未来世代のために、そして私たち自身のために、どこまでも、頑張りましょう!

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明日に向けて(767)秘密保護法制定を阻止しよう!(上)

2013年11月30日 23時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131130 23:30)

みなさま。この間、「明日に向けて」の更新が大幅に滞ってしまいました。原因は体調不良です。
11月9日から24日まで講演9回、会議1回、打ち合わせ2回を重ねましたが、その途中で風邪から腹痛を誘発し、お腹を抱えながらの行脚になりました。
このため、行く先々の方にもご心配をかけることになってしまいました。
連続講演終了後、身体を治すことに専念し、ゆとりをもった時間を過ごさせていただきました。ご心配をかけたみなさま、大変、申し訳ありません。

さて、そうしている間にも、ご存知のように、秘密保護法をめぐる情勢が急展開し、衆院議員での強引な可決が行われてしまいました。
法案は参議院に回されています。私たちは大変な危機の前に今、立っています。

ある方から、この法案の危険性について、ぜひ分析して欲しいと言われたこともあり、この間、休みをいただきながら、いろいろな方の論考を拝見してきました。
法案があまりにひどく民主主義を逸脱していることがあって、たくさんの危険性を指摘することができ、それだけに多様な論点が出されているように思えます。
あまりに恣意的で法の運用の幅が大きいため、どのように適用することも可能なのがこの法律であり、その目的とするところを一義的に定義するのは難しいようにも思えます。

ただその中でも、この法案を歴史的経緯に遡って、もっとも明快に解析しているのは、孫崎享(まごさきうける)さんの説明ではないかと思えました。
これはIWJの岩上安見さんのインタビューで聞くことができます。ただし非会員への公開バージョンでは冒頭の15分弱しか聞けません。
非常に重要な内容なので、ぜひ会員になられるか、このページだけでも購読して、全体を聞かれることをお勧めします。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/112741

要点だけ述べてみたいと思います。僕が強く共感したのは、孫崎さんが、この秘密保護法の本質が、米国の要請によってなされているところにあると明快に語っていることです。
端的には「自衛隊が米国の指揮下に入り、共同オペレーションをする。その時に、米軍と同等の軍事機密が必要になる。自衛隊の米軍の下請け化が目的」とまとめられています。
つまり、自衛隊がアメリカ軍の下に組み入れられ、世界各地で戦闘ができるようにするため、「米軍と同等の軍事機密」が必要になり、そのために作られようとしているのがこの法律だと言うことです。

この点を理解するには、少し歴史を遡って日米関係を捉える必要があります。
戦後から1990年までの冷戦時代、日本は「自由主義圏」に属してきました。日米安保条約という軍事同盟を結んでいましたが、日本は軍事大国の道は歩まず、軍事小国・経済大国の道を歩みました。
と言っても、自衛隊の軍事規模は世界でも有数ですが、憲法9条のもと、これまで一度も主だった戦闘に参加せず、経済大国の道を歩み、自国民も経済的な豊かさのもとに統合する道がめざされたのです。
これを自民党を中心とする保守本流路線と言います。

ところが1980年代に後半に、東欧の社会主義諸国の瓦解が始まり、1990年代にいたって、東側諸国の盟主であるソ連邦が崩壊してしまいました。
このことによって世界の枠組みが激変していきます。
実は誰よりもショックを受けたのはアメリカ軍でした。ソ連軍という膨大な軍事力に対抗することで存在意義を持っていたアメリカ軍が、いきなり存亡の危機に立たされることとなったのです。
このため、軍部を中心に「新しい敵」探しが行われるようになり、「イラン」「イラク」「北朝鮮」をならず者国家と決め込んだ、新たな軍事戦略が策定され、湾岸戦争が行われました。

一方でアメリカの中には違ったムーブメントも存在していました。それはアメリカがソ連と対抗している間に、ぬくぬくと経済成長してきた日本をこそ、次の敵と考え、経済戦争を仕掛けようとする動きです。
当時のアメリカはこの両者の流れが、あるいは競合したり、反発したりしながら、日本への激しいプレッシャーをかけてくることに結果していきます。
軍事的には、湾岸戦争に「人的貢献をしなかった」というキャンペーンを張り、自衛隊の海外派兵を求めだしたことであり、経済的にはすでに1980年代から始まりつつあった「構造調整」圧力をかけ、日本をアメリカに「市場開放」することでした。

この際、強烈なイデオロギーとなったのが、「新自由主義」でした。これは冷戦時代に、社会主義との対抗から、多くの自由主義諸国がとった「ケインズ主義」を批判するものとして登場しました。
つまり、社会主義の台頭を抑えるため、社会保障制度などによって、内外格差の極端な広がりを抑制し、豊かさの中に国民・住民の統合を狙った「高福祉国家路線」への批判であり、弱肉強食の「競争」を絶対化するものでした。
このもとで「日米構造調整」などが叫ばれていくようになります。農業の保護をはじめ、自由競争の行き過ぎから人々を守らんとしてきた政策を、一つ一つ壊していこうとするものです。

旧来の自民党路線から転換し、これに全面的に乗っかったのが、中曽根元首相でした。中曽根政権のもと、日本は「日米同盟化」を強めるとともに、徐々に、新自由主義を拡大させ、労働者の権利の砦の一つであった国鉄労働組合の解体が目論まれました。
同時にそれは、国有鉄道という公有財産を、新自由主義のもと、私的に分配していくための国鉄解体=民営化路線とくっつき、労働者の権利の縮小と、公的領域の私的解体が同時に進んだのでした。
秘密保護法の前身である、「スパイ防止法」もこのころに、制定が目論まれました。

しかしこのことはまだ「左翼」勢力の力が今よりも大きく、全国的な反対運動が展開されて、法案は葬り去られました。自民党の中にも旧来の保守本流路線をめざし、軍事小国の歩みをとろうとする勢力が健在でした。
それが1990年代の世界の激変の中で大きくふるいにかけられていったのです。

当初、日本の側では、冷戦終結とともに、非米、アジアとの協調をめざす路線が生まれていきます。この流れはやがて自民党を分裂させ、非自民党政権である細川政権をも誕生させました。
ところがアメリカは日本が非米化し、アジアに近づくことに激怒。一方では経済攻勢を強めつつ、日本をつなぎとめるためのさまざまな方策を繰り返します。
とくに重要なのは、日本のアカデミズムや政財界の中に、新自由主義イデオロギーを浸透させていくことでした。ケインズ主義批判がもてはやされ、フリードマンなどに代表される弱肉強食論がさまざまな形で日本に上陸を始めます。

この流れの中で、アメリカへの完全従属の道を掃き清める形で登場したのが小泉政権でした。小泉政権は、自民党の保守本流路線を、「官僚支配」として国民・住民にイメージさせ、「自民党をぶっこわす」と宣言しました。
実際には官僚による公的領域への恣意的支配から、公的領域を解体し、民営化の名のもと、大企業やアメリカ系企業に分配していくことが目指されました。
その象徴が、郵政の民営化でした。郵便貯金はかつて、国民に質素倹約と預貯金を進め、そこで集めたお金をインフラストラクチャーの整備などに投資するための重要な仕組みでした。
そのために預金の安全な保護が確保されており、さまざまな公的サービスがそこに担保されていました。

小泉元首相はこれをぶち壊し、日本の民衆が持っている高い預貯金を、積極的に市場に引き出すために、郵政の民営化を推し進めたのです。
同時に小泉政権は、労働者の権利を次々と壊し、一部にしか認められなかった派遣労働の枠を大幅に拡大するなどして、正規雇用の道を著しく狭めてしまいました。
今日の若者の、ワーキングプア―と言われる状態、職のない状態は、みな、1980年代により推し進められてきた、新自由主義路線のもとで拡大されてきた惨劇であり、小泉政権によって社会の隅々にまで拡大されたものです。

一方、アメリカは2001年の「911事件」によって、さらに軍事行動を拡大し、アフガニスタン、イラクに全面的に攻め込みました。
とくにイラク戦争では、ついに自衛隊を、現地イラクにまで派遣させることに成功し、アメリカ軍の後方支援部隊として活動させることができました。
しかしまだ戦闘をさせるところにまでは至れなかった。今回、アメリカが破ろうとしているのはこの「障壁」です。自衛隊をアメリカ軍の配下におき、戦闘に参加させようとしているのです。

ではなぜアメリカはそのようなことを必要としているのでしょうか。アフガニスタンでもイラクでも、実際には泥沼の戦闘が強いられ、兵士の犠牲への国内での批判が高まっているからです。
そのためアメリカは一方ではたくさんのロボット兵器を登場させています。無人攻撃機などです。もちろん、兵士の損傷をさけ、国内の批判を受けないようにするためです。
一方で、属国の軍隊を使う。これならばアメリカ兵の損傷を避けられるからです。まさにそのためにアメリカは自衛隊を、日本の若者と使おうとしています。

他方でそのように軍事行動への参加を促しつつ、日本がアメリカにとって、二度と経済的な脅威にならないように、日本の力を非効率的な軍事に向けさせること。
また自衛隊や日本警察を、アメリカの士気下に組み込むことから、日本全体を監視し、アメリカにはむかうことのない国家に日本をさらに変えようともしています。
このような意図は何も日本に向けられたものだけではありません。元CIA職員のスノーデン氏が全面的に暴露したように、アメリカは「同盟国」のほとんどにも膨大な盗聴網をしかけているのです。
もちろん日本にもたくさんの盗聴行為がなされてきたことをスノーデン氏は暴露しています。その意味で日本は実はアメリカのスパイ天国なのです。ヨーロッパ諸国のような盗聴への抗議すら行わないのですから。

小泉元首相を、師匠とあおぐ安倍首相もまた、対米追従路線の著しく強い人物です。そのもとでアメリカは、日本を軍事的にも経済的にもより属国化しようとしており、その中で秘密保護法が登場しているのです。
この際、冷戦時代とアメリカの価値のおきどころが大きく変わっていることに留意すべきです。冷戦時代のアメリカは、社会主義批判のために、自由主義・民主主義を強調する側面がありました。
しかし今はその必要がまったくなくなっている。そのため、民主主義の根幹を破壊するこのような法律の策定を日本にごり押ししてきているのです。

ではこれに対して日本の保守の側はどうなのか。端的に言えば、小泉政権の猛攻撃により、保守本流派はほとんど「抵抗勢力」として撃滅されてしまいました。
むしろ今は、外務省などを中心に、よりアメリカに近づこうとする動きが強くなっており、日本の自主性を守ろうとする動きは極端に弱くなっています。
その表れが、安倍政権のもとで、中国・韓国との軋轢ばかりが強められており、それをけん制し、アジアの平和を取り戻そうとする動きが起こってこないことです。
日中、日韓が対立して、一番、得をするのはアメリカです。在日・在韓米軍の位置も安定するからです。北朝鮮もまた同じ立場にあるでしょう。

このように見たとき、秘密保護法は、まさにアメリカが自衛隊を属国の軍隊として活用するために求めている法律であり、その背後には、TPPなどでますます日本の資産を、アメリカ系企業のもとにさらそうとする動きがセットになっています。
日本の社会的安定を保証する金融システムの要であり象徴でもあったかつての郵便局に、アメリカ系企業であるアフラックなどが居座っているのもその一つの象徴です。
ちなみにここまでの歴史の流れの分析は、僕自身がこれまでの知見をもとにまとめたものです。孫崎さんのまとめとは食い違いもあるかもしれませんので、その点はご注意ください。

ただし、ここから先は僕は孫崎さんとは違う意見を持っています。
この上に安倍政権や日本の官僚たちが、この法律の制定に動く強い動機を持っていることを感じるからです。その意味で安倍政権や官僚たちは、アメリカに対して受け身ばかりでなく、ごり押しを利用しようともしている。
その最も大きな点は、原発事故にまつわる問題です。端的に言えば、事故の実態を隠し、健康被害を隠し、これからの福島原発の廃炉行程や、高レベル廃棄物の処理の過程を秘密にしようとすることです。
ただしさらにそれを規定しているのは、安倍政権や官僚たちの恐怖です。何への恐怖なのか。日本の民衆の覚醒に対しての恐怖です!

続く

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明日に向けて(766)福島原発・・・実は震災前からプール内の燃料棒が80体も破損していた!

2013年11月20日 08時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131120 08:00)

福島第一原発で、18日から4号機プールからの燃料棒取り出しが始まりましたが、その直前の15日に、東京電力がまたしても重大な過失に関する発表を行いました。
なんと震災前から1号機の中に70体もの破損した燃料体が沈められたままになっていたというのです。取り出しを開始した4号機にも3体、2号機に3体、3号機に4体、合計80体がもともと破損していたといいます。1号機ではプール内にある使用済み燃料292体の4分の1に相当する量です。

この事実が明らかにされたのは、15日の記者会見時に配布された下記の「参考資料」においてです。2枚目の「項目6 漏えい等を確認した燃料の取扱い」の末尾の備考欄に「漏えい等が確認された燃料」として記載されいますが、「発表」と言えるほどのものではありません。
実際に報道各社がこの記載内容の重大性を見過ごしたのではないかと思われますが、唯一、河北新報がことの重大性に気が付き、16日に報道したことで多くの人の目に触れるようになりました。

福島第一原子力発電所4号機からの燃料取り出しにかかる安全対策等
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_131115_08-j.pdf

河北新報によると、1号機に破損燃料が集中している理由について、東電は「1号機は当社で最も古い原発で、燃料棒の製造時、品質管理に問題があり粗悪品が多かったと聞いている。2号機以降は燃料棒の改良が進み、品質は改善した。」と説明したのだそうです。
なんということでしょうか。「品質管理に問題があり粗悪品が多い」ものを使用して、70体もの燃料棒損傷を起こしていたことを、東電は4号機からの燃料棒取り出しの直前になって、資料にこそっと書く形で「発表」したのです。
極めて重大な事実です。粗悪品を使って、核分裂発電をしていたなんて、安全性をどう考えていたのでしょうか。しかもこのあまりに姑息な「発表」では、もちろん謝罪も、責任者の追及も行われていません。事故も責任逃れもしたい放題です。

もちろん1号機プールからの燃料棒の取り出しは、かりに4号機のものがうまくいったとしても多大な困難を伴うでしょう。そもそも1号機の炉心にあった核燃料はメルトダウンしており、建屋周辺は放射線量があまりに高くて人間が近づけない状態です。
水素爆発も起こり、かつ何度も地震に揺さぶられてきた建屋の上部に燃料プールがあるのですから、これまた大変危険な状態です。4号機が1533本とあまりにたくさんの燃料が蓄積されているために、危険性が強調されてきましたが、292体もの燃料体がある危険性に変わりはないのです。
なぜなら1号機とて燃料プールが崩壊してしまえば、あまりに膨大な放射線が飛び出してきて、福島原発サイトに人が近づけなくなってしまいます。そうなればやがて他の原子炉も破たんしてしまう。結果からみれば4号機のプールの危険性も、1号機のそれも差異があるとは言えないのです。

さらに4号機に3体の破損した燃料体があることも、11月12日になって発表されたことです。これを報じた福島民友新聞には次のようなことが記されています。
「東電によると、損傷した燃料の1体は「く」の字に折れ曲がっている状態。25年ほど前に燃料を取り扱う際に失敗し曲がった。ほかの2体は10年ほど前に破損が分かり、異物などの混入で外側に小さな穴が開いた状態という。」
なんと25年前に折れてしまった燃料棒が、対処のしようがなくて、そのまま沈められていたわけです。もちろん、取り出しは極めて困難です。また他の2体は「異物混入」が原因だという。それならばがれきが降り注いだために他の燃料棒にも実はもっと大量の損傷が起こっているのではないでしょうか。

燃料棒がすでに合計で80体も破損したいた事実をこのように見てくれば、とても今後の作業が安全に進むとは思えません。震災前の、現在よりもずっと作業のしやすい条件下でも、燃料棒の取り扱いミスが多発していたのです。
しかもその都度、原因を解明し、公表し、責任者の処罰などが行われ来れば、何らかの技術の積み上げた可能だったのかもしれませんが、一切してこなかった。いや隠ぺいと、姑息な「発表」という小技だけを「発達」させてきたのが東電という会社であると言わざるを得ないのではないでしょうか。

この間、繰り返していることですが、この事態の前に「呆れて」いてはいけません。そもそも「呆れる」ことはこれまで本当にたくさんありました。「呆れる」ことにあきあきしてしまうほどにです。
大切なのは、「呆れる」ことではなく、この東電の社会的責任感、倫理観を著しく欠如した仕事ぶりに、私たちの本当に巨大な危機が孕まれていることをしっかりと認識し、危機感をもっと社会の中に深く広めていくことです。
東京オリンピックを返上して、事故収束に国力を注ぎ込むこと、この一環として、原子力災害対策を進め、避難準備と訓練を重ねていくこと、ここにまで進まなくてはいけない。このことと放射能汚染からの防護を重ね合わせて、せめて子どもたちの広域な疎開などから始めるべきです。

東電と政府をなじって済ますことを止め、「何をなすべきか」の討論を各地で巻き起こしていきましょう!

 

 

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明日に向けて(765)福島原発事故の最悪シナリオは半径170キロ圏内強制移住!250キロ圏内避難地域!

2013年11月19日 21時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131119 21:00)

昨日18日より、福島原発4号機からの燃料棒取り出しが始まりました。東電は起こるべき困難を小さく想定していますが、すでにテレビや新聞などで、東電の作業を不安視する報道が、多数、繰り返されています。
NHKですら、福島内で、作業が安全に行われるかどうか、住民の不安が高まっていることを報道しています。
しかし、これらの報道に決定的に足りないのは、「不安だったらどうするか」です。答えはいたってシンプル。周辺からの避難と、広域にわたる避難準備・訓練を行うことです。にもかかわらずこの当然の答えに踏み込んでいるマスコミがどこもないのが残念です。

危機を前にしても、「正常性バイアス」に邪魔をされて、「避難」の必要性の認識に進めない・・・この限界を超え出ていくための一つの方策として、福島原発の状態が最悪化した場合、どのような状態にいたると政府が考えていたのかを、確認しておくことが重要です。
そこで提示したいのが、2011年3月25日に内閣に提出された最悪の場合を想定したシナリオです。具体的には、福島原発1号機が再度の水素爆発を起こすなどして、現場での冷却などの事故対処ができなくなり、結果的に1号機から4号機まで、次々と破たんする事態です。
この場合、とくに4号機の燃料プールにある大量の燃料棒が大気に晒されて膨大な放射能が飛散することが予測されていました。この放射能による被曝を避けるため、国は半径170キロ圏を強制避難区域とし、250キロ圏を、希望者を含んだ避難区域として想定し、自衛隊にも避難作戦立案の指示を出していたのです。

この想定の作成者は、当時の原子力委員会の近藤駿介委員長でした。このため政府内の対策チーム内で「近藤シナリオ」と呼ばれました。最悪の事態を想定するようにとの菅総理の指示に応じて作成されたものでした。
シナリオの全文は以下から見ることができます。
http://www.asahi-net.or.jp/~pn8r-fjsk/saiakusinario.pdf

私たちが今、腹をくくって見据えておかなければならないのは、この「近藤シナリオ」で想定された最悪の事態の可能性は、未だ去ったわけではないということです。巨大地震をはじめ、何らかの不測の事態で、どれか一つの原子炉が対処不能になった場合に、この想定と同じことが起こってしまう可能性があります。
いやこれは放射能被曝の影響を軽く見積もっている政府サイドから出てきたシミュレーションですから、事態はもっと深刻になるかもしれない。強制避難区域が半径170キロよりももっと拡大する恐れすらあるということです。
このような可能性を直視するならば、私たちの国が今、東京オリンピックの準備などしている場合ではないことは誰の目にも明らかでしょう。オリンピックにかける資金の全てを福島原発事故の真の収束と、避難準備に使うべきです。それこそが真に日本を、世界を、守る道です。

このシナリオに関する問題をより詳しく捉えるために、当時、首相補佐官として事故対処にあたった民主党の馬淵澄夫議員による自著の中での記述をみていきましょう。
そもそも馬淵議員は、3月26日の夕方に細野豪志首相補佐官に電話で呼び出され、翌日26日に東京にかけつけてこのシナリオを見せられ、急きょ、首相補佐官への就任と、この最悪の事態の封じ込めへの着手を要請されたのでした。
馬淵議員は、このとき自分が突きつけられたシナリオのことを、以下のように述べています。

***

「首都圏全体が避難区域となる」
「もし原子炉の一つが新たに水素爆発を起こし、冷却不能に陥ったとしよう。格納容器は破損し、中の燃料も損傷、大量の放射性物質が一気に放出される。
高線量により作業員は退避を迫られるため、これまで続けてきた注水作業を中断せざるをえない。冷却できなくなった他の原子炉でも、格納容器や燃料プールに残された燃料がやがて露出し、そこから新たに大量の放射性物質が放出される。
つまりどこか一つでも爆発が起これば、他の原子炉にも連鎖し、大規模な被害となるということだ。

シナリオで特に危険性が高いと指摘され、シミュレーションの対象となっていたのは1号機だった。
この1号機で水素爆発が起きた場合、高線量の放射性物質が放出され、人間が近づくことすらできず、全ての原子炉が冷却不能に陥る。その結果、8日目には2、3号機の格納容器も破損し、約12時間かけて放射性物質が放出される。
6日目から14日目にかけては4号機の使用済み燃料プールの水が失われ燃料が破損、溶融し、大量の放射性物質の放出が始まる。約2か月後には、2、3号機の核燃料プールの干上がり、ここに保管されていた使用済み燃料からも放射性物質が放出される。

この場合、周辺に撒き散らされる放射性物質による被曝線量はどれほどになるのか。
最も大量の燃料を抱えているのは、4号機の使用済み燃料プールだ。このプールに保管されている、原子炉二炉心分・1535体の燃料が溶け出ると、10キロ圏内における1週間分の内外被曝線量はなんと100ミリシーベルト、70キロ圏内でも10ミリシーベルトにも上ると推測されていた。
さらにチェルノブイリ原発事故時の土壌汚染の指標では、170キロ圏内は「強制移転」、250キロ圏内は「任意移転」を求められるレベルだった。汚染の状況はひどく、一般の人の被曝限度である「年間1ミリシーベルト」の基準まで放射線量が下がるのに「任意移転」の場所でも約10年かかると試算されていた。

「福島第一原発から250キロ圏内」―それは首都圏がすっぽりと覆われるほどの広大な範囲だ。北は岩手・秋田、西は群馬・新潟、南は千葉や神奈川におよび、東京23区全てが含まれる。この圏内における人口は3千万人にも上った。
近藤シナリオにおける最大の衝撃はこの点にあった。」
(『原発と政治のリアリズム』馬淵澄夫著 新潮社 p24~26)

***

さて、ここで押さえておかなければならない重要な点は、政府がこの「最悪のシナリオ」=170キロ圏強制避難の可能性を隠し続けたという事実です。その上で枝野長官が「にわかに健康に被害はない」などと言い続けたのですから、国民・住民に対する重大な裏切りです。
しかも、このような決定的に重要な情報を隠し通したことについて、民主党議員たちはその後に居直りを決め込んでいます。
この点で、顕著な発言をしているのが、当時、内閣副官房長官として、事故処理のナンバー3の位置にいた、福山哲郎民主党議員です。彼もまた自著の中で次のように述べています。

***

「官邸はこの時点で「最悪の事態」を想定しており、原発の危機的状況について認識を共有していた。
ただ、「メルトダウンの可能性を知っていること」と、「実際にメルトダウンが起きているかどうかを知っていること」はまったく意味が違う。想定される最悪の事態が、実際にどの程度の確率で起こり得るのかについては、官邸に来ている情報では誰にも分からなかった。
たとえば、こうした事故が発生した場合、「政府は考えられる最悪の事態を国民に告知すべきだ」と指摘する識者がいる。起こり得る最悪の事態に備えて、国民は自らの判断で対処することができるからというのだ。告知しないのは「政府による情報の隠蔽だ」と批判する声さえあった。

しかし、これは極めて無責任な意見だと私は思う。事故が発生した時点では、その最悪の事態はいつ、どの程度の確率で起こるのか、起こった場合にどのようなかたちで収束するのかまったく分かっていない。
政府が優先すべきは、その最悪の事態を回避することだ。想像してほしいのだが、最悪の事態を想定して、そのまま国民に向けて告知したとする。
不安に駆られて、あるいは万が一に備えて福島周辺から、あるいは首都圏から急いで避難しようとする膨大な数の人々は、いったいどこに逃げればいいのか。逃げた先からいつ戻ればいいのか。その間の生活や経済活動はどうなるのか―」
(『『原発危機 官邸からの証言』p31、32)

***

福山議員のこの発言は驕りと開き直りに満ちています。そもそも彼は、メルトダウンの可能性は知っていたが、実際にどの程度の確率で起こり得るのかはまったく分からなかったと言っています。つまり起こる可能性が低いなどとはとても言えなかったのです。
にもかかわらず、彼は人々を逃がそうとはしなかった。また危険性を伝えようともしませんでした。
「避難しようとする膨大な数の人々は、いったいどこに逃げればいいのか。逃げた先からいつ戻ればいいのか。その間の生活や経済活動はどうなるのか」と言いますが、反対に言えば、それが確保できなければ、危険情報を伝えるべきではなかったと言って、人々を危機に晒し続けたことを肯定しているのです。

これは危機に対しての人々の自主的な対応力を極端に過小評価し、人々がパニックに陥ることのみを恐れる、上から目線で人々を見下している官僚にありがちな「パニック過剰評価バイアス」の典型です。災害心理学で、行政などが陥りやすい「避難を阻む罠」として繰り返し指摘されているものです。
もちろん、事態が伝われば、世の中は大変なことになったでしょう。しかしそのために、今よりも、大量の人々が、原発の近く・・・最も激烈な汚染地帯から離れることに結果していたでしょう。
同時に力強い民衆運動が不可避的に起こり、避難の権利が確立されて、広範囲な汚染地帯から大量の人々が脱出できていた可能性があります。そのことで生産も停滞したでしょうが、全国民・住民が一致して、原発災害に立ち向かう大きな構えが生まれたことでしょう。

少なくとも、子どもたちの疎開は大きく進んだでしょう。そうして、全国からの注視の目の中で、周囲から人を遠ざけ、今よりも格段に高い安全性を確保したうえで、廃炉作業の慎重な進捗が始まっていたでしょう。
あまりにも人々に災厄をしいた東京電力はとっくに淘汰され、責任者が逮捕されて厳しく罰せられていたでしょう。それらこれや私たちの国の、根本的な変革が始まっていた可能性が大きくあります。にもかかわらず、民主党政府は、真の危機を国民・住民から隠し通したのです。

私たちの国の民は、あの戦争の惨禍の中からも再生してきた民です。80か所の都市を徹底的に空襲され、広島と長崎に原爆を落とされ、沖縄は地上戦の末に占領されてしまった。
しかもその過程で、成年男子の多くが戦死し、都市の住民の多くも米軍に殺されてしまいました。文字通り、日本全土が廃墟になりました。
その中からこの国の民は、憲法9条を掲げた国を再生し、戦前のファシズムを超えた民主主義を紡ぎだし、自衛隊はあっても、一度も戦闘をさせることのない国の在り方をこれまで築いてきたのです。

にもかかわらず、民衆を信用しようとはしない。いや民衆が自ら力をつけて立ち上がることを、根底において恐れている。それが今の政治家や官僚たちの姿なのではないでしょうか。
民衆が目覚めてしまえば、政治家も、官僚も、ほとんどが必要のない人種だったのだということが見えてきてしまうからです。だからこそ、彼ら・彼女らはいつでも真実を伝えることを恐れる。真実を牛耳る「権利」こそが支配の力の源だと感じているからです。

そして今、私たちが何度も確認しておくべきことは、今なお、同じことが続いているということです。
「万が一に備えて福島周辺から、あるいは首都圏から急いで避難しようとする膨大な数の人々は、いったいどこに逃げればいいのか。逃げた先からいつ戻ればいいのか。その間の生活や経済活動はどうなるのか―」
おそらく自民党もこれとまったく同じことを考えていることでしょう。そのため当時の民主党と同じように、どのような危機があっても、それを国民・住民に伝えようとしないでしょう。なぜか。逃げる手段など、まったく確保できないからです。

しかしそれは確保しようとしないからでもあります。すべての人を逃がす方策は無理でも、子どもたちの安全を優先的に確保するなど、できることは今でもたくさんあります。
そのことは不可避的に、世の中の根本的変革を伴います。民衆の壮大な覚醒も伴わざるを得ません。
為政者たち=権力者たちは、まさにそのことを恐れているのではないでしょうか。だから秘密保護法まで持ち出して、真実の隠蔽体制を強化しようとしている。

安倍首相にいたっては、真の危機を覆い隠すだけでなく、自ら自身が真の危機から顔をそむけ、忘れるために、「東京オリンピック」に奔走しようとしているようにしか見えません。真の国家の危機を見据えられない根本的脆弱性を感じます。
繰り返しますがそこにこそ私たちの直面する危機の根拠があります。危機を隠したからと言って、危機はなくならないのに、人々の力を危機の突破に集中するのではなく、危機感そのものを解体せんとしているのです。その先にあるのは国家の壊滅だけです。

このことをしっかりと押さえて、私たちは真の危機を人々に訴えていきましょう。実は危機感はすでにかなり共有化されているのです。誰もが政府のことも東電のことも信じていないか、少なくとも疑い出しているのです。
しかし自分たちに自信がない。どうしてたら良いかが分からないので、「正常性バイアス」が解けないのです。しかし各地で、避難計画をリアルに作り出せば、やるべきことも、やれることもまだまだたくさんあることが見えてきます。
その動きが活性化していけば、避難の権利の拡大にもつながるでしょう。だからこそ今、私たちは今、国をあげて、原発災害対策に取り組んで行く必要があるのです。

そのためにも、もう一度、「最悪のシナリオ」が他ならぬ政府によって描かれていたという事実を広めていきましょう!
覚悟を固めて、前に進みましょう!

 

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明日に向けて(764)福島原発4号機使用済み燃料取り出し開始!避難準備を固めつつウォッチを!

2013年11月18日 23時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131118 23:00)

大地震などによる倒壊が恐れられている福島第一原発4号機からの燃料棒取り出しが本日18日から始まりました。
大変、危険な作業ですが、やらなければならない作業でもあります。しかし次々と破たんと隠ぺいを繰り返している東電に、安定的に作業が続けられるとはとても思えません。
すべてが終わるまで無事であって欲しいと誰もが祈っていると思いますが、やはり祈っているだけではいけない。避難準備を固め、今、行われている作業の危険性を社会的に共有化しながら、現場をウォッチしていく必要があります。

燃料棒は1533体あります。使用済み燃料棒が1331体、未使用のものが202体です。
ウランは核分裂すると放射能量がもとより1億倍にもなります。使用済み燃料棒には膨大な放射能が封印されており放射線と熱を出し続けています。プールに入れているのはそのためです。水で冷却し、かつ放射線を遮るためためです。
このため作業はすべて水の中で行われなければなりません。まずプールに、燃料を運ぶ輸送容器を沈めます。長さ5.5メートル、直径2.1メートル、重量91トンの「キャスク」と呼ばれるものです。ここにクレーンを使って燃料棒を水の中で引き抜いて移すのです。

キャスクに入る燃料棒は22本。全部を収納したらクレーンで燃料棒入りのキャスクを吊り上げ、プールから出して輸送用の特別トレーラーに降ろします。続いて100メートル離れた「共用プール」に移します。
キャスクを沈めて22本の燃料棒を入れ終えるのに明日19日いっぱいかかり、20日以降にクレーンを使って、キャスクをプールから出してトレーラーに。その後、共用プールに移して再度、冷却するわけですが、この一連の工程に約一週間かかります。
単純計算すると同じ工程を70回繰り返す必要があります。キャスクは2個。一回のサイクルに8~10日かかると言われており、東電は「2014年末頃」までにこの工程を完了を目指すと発表しています。

ちなみに作業初日の今日、キャスクに移されたのは4体。いずれもまだ使用されておらず、使用済み燃料棒から比べると、危険性の少ない燃料体です。
東電はこの危険性の少ない燃料体から移動をはじめ、作業への習熟を深めながら、やがて使用済み燃料の移動に移っていくとしています。かりに一回のサイクルに10日、2個のキャスクで行うために、5日で22本を運べる計算として、10日後ぐらいから使用済み燃料の移動が開始されると予想されます。
なおこの作業に向けて東電が報道向けに発表した資料をご紹介しておきます。

4号機使用済燃料プールからの燃料取り出し
2013年11月12日 東京電力
http://www.tepco.co.jp/news/2013/images/131112a.pdf

この作業にはどのような危険性があるでしょうか。この資料などで東電が発表しているのは、プール内にあるがれきの存在です。大きいものは取り除いたとされていますが、細かいものが残っており、燃料体を取り出すときに、燃料体の入っていたラックとの隙間に挟まって、燃料体が動かなくなってしまう可能性があります。
これを「かじり固着の発生」と呼び、東電は「かじり」発生対応フローを用意しています。それを読むと、かじりが発生した場合は、とりあえずは取り出しをやめてもう一度同じ位置に戻し、この燃料体をスキップして他の燃料体の移動を優先するとしています。
ではどうするのか。「クレーンで燃料吊り上げ 作業台者から吊りワイヤを揺すってクリアランスの状況を変える事を試みる」・・・ようするにワイヤーをグラグラ揺すって、がれきが落ちてくれることを願うわけです。
この作業において懸念されるのは、燃料体を覆っているジルコニウムの被覆体を傷つけ、燃料棒を破損させてしまうことであるにもかかわらず、グラグラ揺らすしか手がないと言うのです。

さらなる問題は、他の原発ではコンピューターによる自動制御で行われるこの作業が、がれきの存在などから、作業員の慎重なクレーン操作によって進められなければならないため、作業被曝が重なることです。
作業にあたるのは6人で構成される6つのチーム。合計36人ですが、一回の作業は2時間に限定されます。理想的にことが進めば良いものの、「かじり固着の発生」をはじめとした不測の事態により、操作時間が長引き、作業者の高く設定されている許容線量も満ちてしまって、作業ができなくなる可能性がある。
このような作業では、作業を重ねるだけ、操作技術も習熟していくものですが、途中で新しい作業者に交代せざるをえなくなる可能性があります。この点も含めて、何かあれば、作業者の被曝下の労働が極めて困難になることが強く予想されます。

また作業中に地震に襲われることも大きな脅威です。東電はキャスクのワイヤーを二重にし、またクレーンに大きなバネを組み込むことによって揺れのエネルギーを吸収するとしていますが、91トンのキャスクがどこまで維持されるのか疑問です。
一方、キャスクのクレーンのバネでは、燃料体の取り出し時の地震対応はできないわけで、燃料棒の取り出し時に地震に見舞われた場合、「かじり固着の発生」と同じような事態が生じる可能性が排除できません。
いやそもそも東電は、4号機のプールの耐震性には問題がないと前提しているのですが、この大前提そのものにも大きな疑問があります。汚染水問題一つとっても、これまで東電の事故対応の想定があたったことなどないのであり、まったく信頼性がない。

これらから考えただけでも、燃料棒取り出し作業が、順調にいきそうもないことが考えられますが、より大きな問題は、こうした東電による「起こり得る問題の想定」そのものが非常に小さな危機の「想定」になっていることです。
いやむしろ、「かじり固着の発生」や、作業被曝の問題等の東電による発表は、起こりうる危機を東電が把握できているかのように振る舞うための「想定」でしかないのではとすら思えます。実際には今は想像されていない何らかの不具合が発生する可能性が十分にあるのです。
なぜならこの作業は、人類が初めて体験することなのだからです。しかも高線量地帯における作業です。やってみて初めて分かることがあっても何ら不思議はない。いや、むしろ今は想像できない困難に直面しないで作業が終えられると考える方に無理がある。

東電はむしろこの「予想できない危険性」について論じるべきなのです。何が起こるか分からない。何が起こっても不思議はない。そう発表し、だから万が一のための原発周辺からの避難や、広域の避難準備を要請すべきなのです。
これは、不発弾の処理などでも当たり前に行われていることです。十分な安全な対処を目指すけれども、万が一の危険性が排除できない。だから避難を含めた何重もの安全対策が必要なのです。それでこそ現場の作業もより質が高いものになりうる。あらゆる危機に対応しうる柔軟性が生まれるからです。
しかし東電は危機を非常に小さく見積もっている。このため現実がこの小さな「想定」を超えると、すぐに対処不能になってしまうのです。汚染水問題で嫌と言うほど繰り返されてきたことです。同じような破たんにつぐ破たんが、また起きてしまいかねません。

しかもこれから始まるのは、燃料棒の破損=放射能漏れの発生・拡大という直接的な危機に直結する作業です。その作業の危険性を非常に小さく見積もっていることそのものに、私たちは危機があること、再び三度の人災の可能性があることを押さえておかねばなりません。
私たちは東電に、「いい加減に嘘は止めよ」と言わなければなりません。事態は非常に困難で、私たちはまだ大変な危機に直面しているという事実を、国民、住民に、さらには世界に、素直に訴え、事故収束への協力を訴えるべきなのです。
そのためにも原発直近からの避難、さらに広域の避難準備、訓練を行い、これから1年以上も日々、極度の緊張が強いられる現場に、すべての人のまなざしを向けてもらうことをこそ呼びかけるべきなのです。

私たちはまた、多くの人々に、いい加減に目覚めなければいけないとも呼びかける必要があります。汚染水問題に現れているのは、東電の現場対処能力のなさと事故に対する倫理観の全くの欠如です。このとんでもない企業が言う「想定」や「安全」をまだ信じ続けるのでしょうか。
政府も同じです。危険な燃料棒が1533体も壊れた原子炉建屋の高いところにあるのに、さらに、1号機から3号機にいたっては、どろどろに溶けた燃料がどなっているのかすら把握できていないのに、「原発はコントロールされている」と首相が繰り返しうそぶく。こんな政府をいつまで信用し続けるのでしょうか。
いやすでに多くの人が東電も政府も信じてはいないでしょう。にもかかわらず、原発の根本的な危機から目を背けたいという思い、災害心理学に言う正常性バイアス=危機の認識をあえてごまかし、心の平静を保とうとする思いに支配されているのではないのでしょうか。しかしその先には私たちの安全も幸せも絶対にありません。

4号機からの燃料棒取り出しの始まりに際して、各地でしっかりと原発災害対策を進めていきましょう。そのことで現場で困難に挑んで下さっている方たちと連携していきましょう。

燃料棒取り出し作業のウォッチを続けます!

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明日に向けて(763)福島の小児甲状腺がんは10万人に42人の割合!

2013年11月14日 22時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131114 22:00)

11月12日、福島県における第13回「県民健康管理調査」検討委員会が開かれ、小児甲状腺がん調査に関する最新のデータが発表されました。
朝日新聞はこれを次のように報じています。主要な部分を抜書きします。

***

「東京電力福島第一原発事故の発生当時に18歳以下だった子どもの甲状腺検査で、福島県は12日、検査を受けた約22・6万人のうち、計59人で甲状腺がんやその疑いありと診断されたと発表した。」
「累計では、がんは26人、疑いが33人。がんや疑いありとされた計58人(1人の良性腫瘍〈しゅよう〉除く)の事故当時の年齢は6~18歳で平均は16・8歳。」
「甲状腺がんはこれまでで10万人あたり12人に見つかった計算になる。宮城県など4県のがん統計では2007年、15~19歳で甲状腺がんが見つかったのは10万人あたり1.7人で、それよりかなり多い。」
「ただ、チェルノブイリでは、原発事故から4~5年たって甲状腺がんが発生しており、複数の専門医は「被曝から3年以内に発生する可能性は低い」と分析している。」

***

58人ががんないし、疑いありとされている事実、理由はともあれまずはこのことに胸が痛みます。58という数字の向こうに、「甲状腺がん」という事実に驚き、嘆き、悲しんでいる子ども、その親たち、家族や周りの人たちがいるのです。
今後、この数ができるだけ伸びないことを祈りたいですが、これまでの経過から言って、残念ながら絶対数はこれからも伸び続けるでしょう。だとしたら早期発見、早期治療の体制を徹底化していくしかない。何よりこの数字は私たちにこのことを突きつけています。

しかし他方で、毎回の発表と同じように、またも不誠実な数字のマジックが使われていることを指摘せざるを得ません。22万6千人にうち、計58人というのは、ミスリーディングを誘う発表の仕方です。それを見抜けずにそのまま書いている朝日新聞も情けない。
なぜか。前回の発表もそうだったのですが、実際にはこの数は、22万6千人全体の中の数とは言えないからです。

具体的に指摘すると、この日、福島県より発表された以下資料の2ページ目の表に「二次検査」の内容が乗っています。対象人数1559人に対して、受診して検査が確定したものは897人しかいない。割合で言えば約57.5%しかまだ検査が終わってないのです。

県民健康管理調査「甲状腺検査」の実施状況について
https://selectra.jp/sites/selectra.jp/files/pdf/251112siryou2.pdf

これが何を意味するか、もう少し詳しくみていきましょう。
甲状腺検査は、二段階に分かれています。初めに行われるのはエコー診断で一次検査と呼ばれます。この結果が4つに分類されます。

A判定 A1 結節やのう胞を認めなかったもの 
A判定 A2 5.0ミリ以下の結節や20.0ミリ以下ののう胞を認めたもの。
B判定 5.1ミリ以上の結節や20.1ミリ以上ののう胞を認めたもの。
C判定 甲状腺の状態等から判断して、直ちに二次検査を要するもの。

判定への対処が以下のように説明されています。

A判定は次回(平成26年度以降)の検査まで経過観察。
B、C判定は二次検査を実施
A2の判定内容であっても、甲状腺の状態等から二次検査を要すると判断した場合、B判定としている。

ここから言えることは、直ちに2次検査に回らないA判定の子どもたちとて、現時点では今後の甲状腺がんの発症の可能性が否定できたわけではないということです。
政府は、チェルノブイリでは4、5年目に発症数が急上昇したことを、今、発見されているがんが福島由来ではないといわんがために強調しているのですが、反対に、4、5年後に急増した事実は、現時点では子どもたちの安全はまだ確定できていないことをも物語っています。

さらに今回の検査について言えば、まだ22万6千人のうち、2次検査を受けていない子どもが662人残されています。割合でいえば約42.5%。その子どもたちを検査すれば、当然にももっとがん患児の数が増えるはずです。
またがんが26人、疑いが33人(1人はがんでないことがはっきりしているので実質32人)という言い方にも問題があります。なぜなら医学的にこの疑いは9割の確率でがんだとされているからです。およそ29人ががんである可能性が極めて高いのです。
そうなると、実際には二次検査では対象者の中の57.5%の調査で、55人のがんが認められたことになります。このためもし検査が終わってない子どもたちに、今回の調査と同じ割合でがんが発見されたとすると、およそ96人ががんである可能性があることになります。

これを10万人あたりに換算すると、約42人という数が出てきます。今回の調査で分かった福島の子どもたちの甲状腺がんの発症率は約10万人に42人になっているのです。
ところが、県の発表をうのみにしてしまうと、まだ二次検査を受けていない662人がのぞかれたままになってしまう。さらにがんの確定者だけを数えると、9割の確率と言われる32人の疑いのある子どもたちものぞかれてしまいます。それででてきた数値が「10万人あたり12人」なのです。

「ロシアの子どもの検査で4~5千人に1人がんが見つかっている」という情報の信ぴょう性を僕は分かりませんが、かりにそれを信用するとしても10万人では25人から20人で、福島では現時点で倍近い症例が出ていることになる。
しかも先にも述べたように、A判定の子どもたちとて可能性がないとは言えないので、今後の検査次第でもっと高い数値になる可能性が大きくあるのです。

この点、先にあげた県の資料の5ページ目をみると、さらに重要なポイントが明らかになります。原発直近の大熊町、双葉町など、国が指定した避難区域等の13市町村の子どもたちが23年に早々と検査を済ませていることです。
その段階でも13人のがん、ないし疑いが出ているのですが、この地域はもっともヨウ素被ばくが大きかった地域ですから、今後の検査ではもっとたくさんの患者が見つかる可能性が十分にあります。
にもかかわらずこのA判定の子どもたちも次回検査は26年4月以降になっているのです。もっと早く次回を検査を行うべきだったのであり、そうすればさらにがんの子どもが見つかっている可能性が高いです。
がんは早く見つけて治療することが重要なのに、最も被ばくが多かった地域の子どもたちが、1年目に検査されただけで放置されている。これも大きな問題です。

このような不誠実な数字の使い方そのものに、この「健康調査」が、できるだけ小児がんの発症数を低く見せようとしていることが見て取れますが、このあり方そのものが子どもたちにとっても、県民にとっても危機であると言えます。

子どもたちの危機を少しでも減らし、まっとうな医療が行われることを目指して、甲状腺問題のウォッチを続けます。

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子の甲状腺がん、疑い含め59人 福島県は被曝影響否定
2013年11月13日06時33分
http://www.asahi.com/articles/TKY201311120463.html

野瀬輝彦、大岩ゆり】東京電力福島第一原発事故の発生当時に18歳以下だった子どもの甲状腺検査で、福島県は12日、検査を受けた約22・6万人のうち、計59人で甲状腺がんやその疑いありと診断されたと発表した。
8月時点より、検査人数は約3・3万人、患者は疑いも含め15人増えた。これまでのがん統計より発生率は高いが、検査の性質が異なることなどから県は「被曝(ひばく)の影響とは考えられない」としている。

県は来春から、住民の不安にこたえるため、事故当時、胎児だった約2万5千人の甲状腺検査も始める。
新たに甲状腺がんと診断されたのは8人、疑いありとされたのは7人。累計では、がんは26人、疑いが33人。がんや疑いありとされた計58人(1人の良性腫瘍〈しゅよう〉除く)の事故当時の年齢は6~18歳で平均は16・8歳。
甲状腺がんはこれまでで10万人あたり12人に見つかった計算になる。宮城県など4県のがん統計では2007年、15~19歳で甲状腺がんが見つかったのは10万人あたり1・7人で、それよりかなり多い。
ただし、健康な子ども全員が対象の福島の検査の結果と、一般的に小児は目立つ症状がないと診断されないがんの統計では単純比較できない。
ただ、チェルノブイリでは、原発事故から4~5年たって甲状腺がんが発生しており、複数の専門医は「被曝から3年以内に発生する可能性は低い」と分析している。
県は被曝の影響とは考えにくい根拠として、患者の年齢分布が、乳幼児に多かったチェルノブイリと違って通常の小児甲状腺がんと同じで、最近実施された被曝影響の無いロシアの子どもの検査でも4千~5千人に1人がんが見つかっていることなどを挙げている。

 

 

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