明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(750)福島原発事故の真の収束のために私たちは何をすべきか 下

2013年10月09日 17時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です(20131009 17:00)

講演文字起こしの続きす。今回で完結です。

明日に向けて(750)福島原発事故の真の収束のために私たちは何をすべきか 下
4、広がる健康被害2

東京でもさまざまな健康被害が出ています。原発事故があったときには、たくさんの子どもたちが大量の鼻血を出しました。町田市で聞いた話ですが、5歳の男の子が「25分から30分ぐらい、水道の蛇口を全開にしたような鼻血を出した」というのです。ほかにもさまざまな報告があります。
こういう鼻血のことはあちこちで聞くのですが、京都に避難してきているお母さんからも直接、聞いたことがあります。小学生の息子さんを避難させるために京都に来られた方ですが、その方はご本人がすごく鼻血を出されたのです。営業中だったそうです。
「それでどうしたの?」と聞いたら、女子トイレに駆け込んで、便器を抱えていたそうです。ティッシュやハンカチなどは論外。鼻血が出るだけ出るのを待ってから、携帯電話で上司に電話して、着替えを持ってきてもらって、家に帰ったといいます。

関東の話しに戻って、データで出ていることを挙げると、茨城県の取手市の小学校と中学校の子どもの集団検診で、心電図異常が前より明らかに増えていることが報告されています。2011年度と2012年度を比較すると、精密検査を要する子どもが28人から73人。2.8倍になっています。
心臓に何らかの既往症ありという診断が2010年度9人に対して、2011年度は21人、2012年度は24人。QT延長症候群といって、心室性不整脈により突然死につながるリスクありという診断が、2010年度1人に対し、2011年度2人、2012年度は24人となっています。

それ以外にどのような健康被害があるのかというと、ざっくりと言って、みなさん、免疫力が下がるからだと思うのですが、いろいろな病気が治りににくくなっています。東京の僕の友人が、「ものもらいがなかなか治らないんだよ」というのです。近畿では「めばちこ」、もっと西では「めいぼ」といいますが、それが治らないという。
それで「体の調子が悪い時は、ものもらいが治りにくいことぐらいあるんじゃない?」と言ったら「違うんだよ。もう半年も治らないんだよ」というのです。あるいは風邪にかかって、なかなか治らない。のど風が何か月も続いたという話もあります。
他によく聞くのは視力の低下です。原爆被害でも白内障になることがあることが明らかにされています。水晶体が放射線に弱いからです。そのために視力の低下が起こる。
記憶の低下を訴える方もたくさんいます。記憶をつかさどる脳の「海馬」というところが、やはり細胞分裂が激しくて、放射線に弱いからですが、そんな中で南相馬の方とお話しした時に、お医者さんが「この地域の認知症が5年進んだ」と嘆いていたと聞きました。介護を考えてもどんなに大変か分かると思います。

こういう事態から予想されることは、東北・関東の医療界の疲弊です。間違いなくそうなります。というか日本の医療はもともと疲弊していたので、それが急速に深まっていく。それを見越してどうやって支えるかを考えていかないといけない。
ところが厚生労働省の官僚の方たちは、とても頭が良いです。というより僕に言わせれば中途半端に頭が良いのですが、明らかに官僚の方たちは、僕と同じような認識を持っています。それは役人たちの打ち出す政策をみているとよく分かります。もちろんそこからやろうとしていることは、僕の考えとは真逆です。
まず生産労働人口の医療予算の確保のために、介護保険の切り縮めを始めました。これまで60分だった枠がいつの間にか45分にされてしまっています。高齢者対策を減らし、生産人口に振り向けようと言うのです。
さらに昨年、「ダウン症児の出生前診断」の新しい技術を認可しました。アメリカで開発されたもので、血液検査で高い確率で分かるというものですが、要するにその検査をして赤ちゃんがダウン症だと分かれば「おろせ」ということなのです。

今まで原発事故による放射線の被害によってダウン症児が増えることがデータで出ています。その場合どうするのか。僕は障がいを持って生まれてくる子どもたちが増えるのだったら、その子どもたちがいかにすれば幸せになるのか。みんなで腹をくくって、いかなる子どもたちも迎える社会を作るべきだと思うのでね。そもそもダウン症児を持ったお母さんと話すと「ダウン症=不幸と言うのは貧困な見方だ」とも言われます。この子たちならではの可愛さがあり、周りに幸せをくれる存在だからです。僕も実際にダウン症のお子さんと周りの人々が作る温かい輪を知っています。
ところが厚労省が考えているのは、いかにして「障がい者を減らすか」です。減らしていかにそこでかかる社会的予算を減らすのかを考えている。
だから実際にはこの検査を受けて陽性となったお母さんたちは「おろせ」というものすごいプレッシャーを背負うことになります。そういう形で周りからプレッシャーを受けて堕胎した女性は、多くの場合、心に傷を負って生きていかなくてはならなくなります。それに対するケアもなにもありません。
そういうことがいろいろな形で進行しています。

今、日本政府はTPPの交渉を行っていて、次々と「聖域」だと言っていた領域も差し出しつつありますが、一番、狙われているのは医療の自由化です。公的保険制度を解体して、自由診療を拡大する。お金のあるなしで受けられる医療が極端に開いていく方向に私たちの国は向かおうとしています。
その中でも一番に狙われているのは、なんと抗がん剤の自由化なのです。つまり今後、がんがもっと増えていくことを分かっているのです。その上でこの領域でのお金儲けが画策されているわけです。


5、東京オリンピック開催は不可能だ!

こうした事態の拡大をみたときに、僕は東京オリンピックの開催など、とてももう無理だと思います。なぜかというと、これからの7年間で、原発がコントロールできていないことも、深刻な健康被害が拡大していることも、とても隠せないからです。
まずはアスリートが不安になります。トップのアスリートの方たちは、とても体を大事にされていますけれど、実はあまり健康であるとは言えないのです。なぜかというと、トレーニングをやりすぎているからです。
マラソンランナーの多くは短命だとも言われています。女性選手では現役のときに生理が止まってしまう方もいます。健康を維持するレベルを超えているのですね。100メートル競走のランナーでも、スタートを失敗すると、自分の筋力で、筋肉の断裂を起こしてしまうことなどがあります。
逆に言うと、あの方たちは、何かの要因で自分の体が壊れてしまうことへの危機感を強く持っていますから、汚染地帯に行くのを非常に嫌がるのです。北京オリンピックでも、アフリカの金メダル候補のマラソンランナーが参加を拒否しました。当たり前です。大気汚染が凄いからです。

それを考えると東京オリンピックは非常に深刻です。たとえばカヌー競技があります。東京湾は今、セシウムの汚染がもの凄いのです。川が関東一円に降った放射能を集めてきてしまっているからです。それが河口にたまっています。
それらは下の方に沈んでいるので、上澄みにいる魚を採ってきてもそれほどものすごい放射線値は出ませんが、台風などでものすごい水が流れ込むと、底にたまっているものが攪拌されてしまいます。その上でカヌーなどをやるのは、選手にとって地獄の思いだと思うのです。
そういう情報はすでに世界にどんどん流れています。その意味で僕は東京オリンピックは絶対に返上した方がいいと思うし、あるい意味ではオリンピックの曲り角にきたのだとも思います。

オリンピックは今、お金儲けの手段になっています。僕が子どもの頃は、アマチュアリズムが支配していて、プロの選手は出てはいけなかったのです。それが1980年代、新自由主義の台頭とともに、オリンピックはお金儲けの象徴になってしまいました。
その一つの頂点が、拝金主義を走る中国で行われた北京オリンピックだったと思います。最近、中国では次のオリンピックにでるための「中国の五輪」が行われいたのですが、大変なことになっています。お金儲け主義が選手の中に蔓延してしまってひどいことになっているのです。

例えば、レスリングでは負けそうになった側が相手にかみつきました。あるいはある競技では、判定をめぐって女子選手が殴り合いを始めたそうです。ドーピングも横行してしまっている。お金儲けのためにさもしくなってしまい、フェアプレーの精神が大きく後退してしまっている。
メダル獲得競争のための選手強化でも、体育予算の著しい不平等配分ばかりが進んでしまっているし、同時に小さいころから集められ、メダルを獲るための訓練だけをさせられた子どもたちの大半が、途中で社会に放り出されることの問題も深刻化しているそうです。
こうしたことを考えても、オリンピックの在り方そのものも問い直すべきときにあるのだと思います。その点も含めて、僕は東京オリンピック開催は不可能であるとともに、私たちの手で返上すべきものだと思います。


6、福島原発の危機にしっかりと向かい合おう

これらのことを考えて、今、私たちのなすべきことは何かというと、福島原発の現場の危機をもっともっと大きくクローズアップすることだと思います。
なぜかというと、今、現場の作業員の方たちはものすごく気の毒な状態にあるのです。作業員の方たちは現場の惨状を知っているから、朝、「じゃあ、今日も地球を守ってくっから」と言って出かけていくわけです。しかしあの方たちが地球を守ってくれていることをほとんどの人が知らないわけです。
光が当たってないわけです。そんなに苦しい現場だったら、士気も下がって当然ではないですか。しかも「なんだよ、ネズミのショートでダウンかよ」とそんなことばかりを言われて、笑われたりする。「東電はだらしない」とばかり見られてしまう。
現実には笑って済ませる状態ではないのです。ぎりぎりの状態であの方たちが現場を維持して、私たちの命を守ってくれているのです。だからそのことに全国から意識を集中していかなくてはいけない。東電幹部ではなく、現場の方たちをみんなで支えていかないといけない。

そのためには現場の方たちが持っている危機感を共有化すべきなのです。そのためにも原発災害訓練をどんどんやるべきなのです。そうやって周りで多くの方たちが避難訓練を始めたら、現場の方たちはやっと、「多くの人たちが自分たちが直面しているものは分かってくれた」という思いを持ち、現場の士気はあがると思うのですね。
僕自身は、地震を止めることはできません。当たり前ですね。誰にもできません。しかし現場の方たちの心を支えることはできると思うのですね。なので、日本中をあげて、日本を守るために、世界を守るために、この原発が危機の中にあるということをちゃんと直視してそれと向き合うことを進めるべきだと思います。


7、憲法9条でしか日本は守れない

にもかかわらず、安倍さんはこの現実とまったく向き合わず、戦争が好きで、火遊びのようなことばかりを行っています。安倍さんのような方を「タカ派の平和ボケ」というのだそうです。軍事アナリストの方が言っていて知りました。
平和ボケで来てしまったから軍事的リアリティを持っていない。戦争においては、敵を減らして、味方を増やすことが常道であるのに、彼は敵ばかり増やしているからです。
しかしそもそも日本はもう戦争などできる国ではありません。なぜか。日本政府は、北朝鮮をはじめ諸外国を本当は信頼したから、日本の海岸中に原発を作ってしまったわけです。54基もあります。これを攻撃されたらひとたまりもない。こんなもの、とても守り切れないですよ。
しかも福島原発事故で、あんなに簡単に壊れることが分かってしまった。原子炉を壊さなくても、燃料プールを壊せば終わりなのですよ。そのことを考えるならば、僕は軍事的リアリティからいって憲法9条を維持することがもっとも大事だと思います。これ以外で、日本の安全は守れっこないですよ。

そういうことも含めて、この原発の危機的状況をみなさんで共有していきましょう。共有することはしんどいことですが、いったん、この危機をちゃんと見据えて、みんなで立ち向かっていく意志を作ることができれば、私たちの安全を、したがって幸せを守る可能性を一番広げることができると僕は思うのです。
そのために僕もこれからも努力していきたいと思います。どうもありがとうございました。

 

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明日に向けて(749)福島原発事故の真の収束のために私たちは何をすべきか 中

2013年10月07日 23時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131007 23:00)

前回の講演文字起こしの続きです。

福島原発事故の真の収束のために私たちは何をすべきか 中
2、今必要なのは避難訓練!

この危機に対してどうやって対処したらいいのか。東京や関東、東北の方とお話しすると、みなさん、4号機や原発サイトが危ないという意識はある程度はあるのですが、お手上げ状態なんですね。そういうことが起こったらどうするかといっても自分が現場にいって止めることはできない。
だからそういう事態になったら、みんなが滅んでしまうのだから、そんなことを考えても仕方がないという風になりがちです。それは間違いです!
僕がずっと主張しているのは、関東、東北は広域の避難訓練をぜひともやるべきだということです。絶対にやるべきです。西日本はどうなのかというと、ここでも原発事故に備えた避難訓練はぜひともやるべきです。
日本中に原発があります。今、すべてが止まっていますが、危険な燃料がプールなどに入っています。原発がすべて廃炉になり、燃料が安全なところに安置されるまで、危機は続くのです。

実は僕は今、兵庫県篠山市の原子力災害対策検討委員会に入って、避難計画を作っている最中です。だけどリアルに避難計画を作ろうとすると、少しでも被曝を減らして犠牲者を少なくするしかなくて、全員が逃げるのはとても無理なのです。
例えば京都府の舞鶴市はもうお手上げ状態になっています。なぜなら舞鶴市は一気に逃げるためには600台のバスが悲痛用で、それなら10時間半で避難が必要とされる13万人が移動できると試算されています。
その場合、600台のバスをどこから持ってくるかが問題になります。それで舞鶴市が京都のヤサカ観光バスに問い合わせたそうです。するとヤサカ観光バスは74台のバスを持っているけれども、常時70台ぐらいは使われているので、緊急に集められるのは4台ぐらいしかないという。
さらに他のバス会社が重大な発言をしました。「協力したいが、運転手に『放射線の高い所に行け』とは言えない」。これは実に重要な問題です。危険な時に誰が迎えに行くのか。

この点は篠山市でも悩んでいます。重篤な病を持った方、障がいを持った方がおられて、すぐに逃げ出すことができません。その方たちを守る絶対的な必要性があります。それだけではなくて、小さいお子さんや妊婦さんなどもすぐには逃げにくい。だからこうした逃げにくい人をいち早く逃げ出す体制を作る必要があります。
しかしそうなると、反対に最後には誰が残るのかが問題になる。その人は自力ではすぐに逃げられるけれども、自ら被曝の可能性をおかしながら、人を助けなくてはいけない。
篠山市の職員の方には「自分がそれを担います」という方が多くおられるのですが、それでも僕はその方たち、とくに若い方たちに業務命令としてその役割を担えと言えるのか、大変、悩んでしまいます。すごく深刻です。

こうした仕事は火事現場で活躍している消防士の方たちなどが現に常に担っています。それに準じることができるかもしれませんが、そこで思い悩んでしまうのは、政府の被曝基準が非常に甘いので、人を助けるために被曝した人の保証がどれだけなされるのか大きな不安があるということです。
というか、実際に福島原発事故で、たくさんの公務員の方が、業務中に被曝されながら、健康調査すら受けていない場合が大変多くあるのではないでしょうか。
いやそれだけではなくて、今、行われている福島第一原発のサイトでの事故収束作業もまったく同じです。多くの方が被曝しながら働いています。その健康補償はちゃんとされるのでしょうか。大きな疑問があり、監視が必要です。

しかしこうしたいざというときのための計画は、各原発の周りで立てておかなければならないのです。原発が稼働していなくたって大災害になる可能性があるからです。悩ましい計画をみんなで作っていかざるをえません。
そうした計画を住民参加で作り、少しでも避難を円滑にすすめるための教育は訓練を行うことが、今、日本中に問われているのです。


3、広がる健康被害

さらにもう一つ、重要な問題があります。健康被害の問題です。福島の方の中には、安倍さんの嘘のうち、「今現在も、未来においても、健康被害はまったくない」と言ったことが一番許せないと言われる方もいます。
なぜかというと、現在まで、原発事故で亡くなられた人は、推定で1300人以上いるのです。これは原発関連死という概念で数えられたものです。
もともと復興庁が「震災関連死」という概念を出しています。震災関連死というのは、津波や地震で亡くなった方ではなく、その時は助かったのだけれど、それ以降に、避難などをしている最中に亡くなられた方のことを指します。
その震災関連死を、今、原発のことで一番頑張って良い記事を書き続けている東京新聞が、原発災害に当てはめて、「原発関連死」という概念のもとにカウントを行いました。

福島の方たちは、津波の被害で避難しなければならなかった方よりも、原発事故のせいで避難しなければならなくなった方の方が多いのです。原発事故がなければ逃げなくてもよかった方です。
その方たちが避難の途中で亡くなったことが「原発関連死」とされているわけですが、これが今年の3月の調査で910人と数えられています。
ただし400人以上の震災関連死の出ている南相馬市などが、原発関連死のもとでの推計をしていません。その部分が未カウントなのですが、市の職員の方に聞くと、ほとんどが「原発関連死」にあたるということで、それをプラスすると1300人以上という数になるのです。

つまり低く見積もっても、東京電力は1300人以上をこの事故で殺したのです。浪江町という原発の近くの町の議会が安倍さんの発言に抗議声明を出しました。浪江町で原発関連死で亡くなった方は271人です。
僕はこの方たちは、高濃度の放射能を被って、その害でも命を縮めていると思います。もちろん避難のストレスそのもののとても大きかったでしょう。人間の死は複合的な要因によってもたらされます。東京新聞は死因まで特定していません。しかし原発関連死ということで1300人以上が亡くなっているという事実が明確にあるのですね。
なのに東京電力は誰一人つかまっていません。訴追はされたけれど無罪になってしまいました。1300人殺したけれども無罪になるというそういう状態がまかり通っているのです。

さらに健康被害はすごく出てきています。この点についても政府はなかなか認めようとしませんけれども、今、起こってきているのは福島の子どもたちの甲状腺のがんです。どれぐらい起こっているのかと言うと、19万3千人を診察して、43人の子どもがほぼがんだろうということになっています。
ところがその検査のあり方をよく見てみると、1次検査をやって危ない子どもをあぶりだして、二次検査で確定していくのですね。ところが二次検査はまだ半分しかやっていないのです。19万3千人のうちの43人ではなくて、19万3千人の半分のうちの43人なのですね。だから単純に考えれば倍になります。
ただしヨウ素がより流れた地域の子どもが後回しにされたりしていて、倍以上になる可能性もあるのですが、この19万3千人のうち、大雑把に考えても80人以上の子どもたちが甲状腺がんになっているのではないかと思われます。
この病気の大人の発症率は子どもの10倍ぐらいありますから、そうすると福島には今、わかるだけでも800人以上の大人たちの甲状腺がんが発症している可能性がある。しかも子どもの検診とてまだ半分ぐらいです。子どもたちも大人ももっとたくさん、患者、犠牲者が出てくる可能性があります。

この甲状腺がんの発症の国際水準は100万人に1人であると言われています。今、福島で起こっていることは100万人に400人以上の数です。にもかかわらず政府はこれは原発のせはないと言い放っています。
しかしもしそうだとしてもこの400人とは何なのか。ほかの深刻な要因があることになります。だからいずれにせよ福島の子どもたちに深刻なことが起こっているのは間違いないのです。
僕自身はやはりこれは原発の放射能のせいだと思います。さらにそれだけではなくて、今の日本の子どもたちは、チェルノブイリの原発事故のときの子どもたちに比べて、大変な量の化学物質の暴露を受けているので、その複合的な要因で病が激発しているのではないかとも思えますが、とにもかくにも、福島の子どもたちの甲状腺がんがどんどん出ていることはもう事実としてあるのです。

最近、話を聞いた東本願寺のお坊さんが二本松で経営している幼稚園の卒園児でも、1人、甲状腺の手術をすでにした子がいると言っていました。
僕の京都の友人で40歳台の女性がいるのですが、彼女の宮城県の高校時代の友達にたまたま電話したら、甲状腺全摘出手術をした直後だったそうです。そういうことがどんどんおこっているのです。

さらに放射能の害は何かしら癌にしかならないような言い方がされていますが、これまでの調査で他のいろいろな病気を引き起こすことも分かっています。
とくにベラルーシーのゴメリ大学でバンダジェフスキーという医学博士が、チェルノブイリ原発事故の犠牲者の遺体解剖をたくさん行ったところ、恐ろしいことに心臓をはじめとしたあらゆる臓器にセシウムが入っていたそうです。
心臓に入ったセシウムは心不全を引き起こします。それで亡くなっている方が多い。僕は東北・関東にいろいろな形で関わっていますが、取材をしていると本当に、突然死の情報が入ってくることが多い。福島だけではないのですよ。

ぞわっとしたリアリティを感じたことをお話しすると、僕は三陸海岸にもボランティアに行っています。そこのある町のお寺さんで放射能の話をさせていただきました。放射線測定をすると汚染がしっかりと確認されてしまうところです。
そのとき前日に和尚さんと打ち合わせをしたのですが、和尚さんが「放射線の害はがんに現れるのですか」と聞かれるのです。それで僕が心不全による突然死の話などをすると、和尚さんがため息をつかれて「それでですか。最近、突然死のお葬式ばかり出すのです」とおっしゃったのです。

こういう話はいくらでもあげられます。あるとき川内村にいた方にお会いしたのですが、その方の知人が、最近、一週間に5回もお葬式に出られたというのです。
それで南相馬の方にお会いした時に、そのことを話したら「さすがにそんなことはない」と言われました。「それではどれぐらい?」と尋ねると、その方も初めて、今年になって出られた葬儀の数を調べてみた。そうしたら12日に1回の割合で出ていたことが分かりました。
みなさん、考えてみてください。これまで12日に1回の割合でお葬式に出たことがあったでしょうか。
あるいは僕が話をしている仙台の方は「うちの両親の悩みは、最近、喪服をしまう暇がないことだ」と言われました。

これらの一つ一つの死について、僕もすべてが放射能のせいだとは思っていません。それこそ避難のストレスによって体を悪くされた方もいるでしょう。あるいは放射能以外の重金属の化学物質の影響もあるのではと思えます。
しかしそうした状態の中で放射能も降ってきていて、それらの複合的な要因で体を悪くされてしまったのではないでしょうか。

続く


 

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明日に向けて(748)福島原発事故の真の収束のために私たちは何をすべきか 上

2013年10月04日 11時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131003 11:30)

下京福祉事務所職員組合のお招きで、お昼にお話をしてきました。「福島原発はその後どうなっているのか」を聞きたいという要請でした。
昼休みで、みなさんご飯を食べながらの場だったので、最初に、楽しく食べたいご飯のときに、しんどい話をすることになるので申し訳ないとお断りを入れて話し始めました。以下、話の内容の文字起こしをお送りします。


「福島原発事故の真の収束のために私たちは何をすべきか」上
1、瀕死の状態にある福島原発と向き合おう!
守田敏也 2013年10月3日 京都市下京区役所にて 

まず群馬大学の早川先生の放射能汚染マップをご紹介します。これで大きく見て欲しいのは、放射能の汚染は福島県に限らないということです。東北、関東の非常に多くの地域で濃度の高い放射能が降っているのです。
ではどの辺まで汚染が来ているのかというと、長野県を東西に二つに割ったラインから愛知県に降りてくるぐらいまで、高い汚染が認められます。京都はどうなのかというと、うっすらとした汚染はありますけれども、東日本と比べると雲泥の差です。
チェルノブイリ原発事故では、1000キロ、2000キロ離れた所でも高濃度の汚染がありました。その感覚から言うと、京都で福島原発からの距離が600キロぐらいですから、西日本は奇跡的に汚染を免れたといえます。
それだけにこの西日本のきれいなポテンシャルを使って、いかに東日本を支えていくのかということがとても重要な問題だと思います。

今の原発の状態ですが、この間、東京五輪招致の発言で、安倍首相が、「原発は完全にコントロールされている」とか「汚染水は完全にブロックされている」という発言をしました。まったく嘘ですね。
あの発言に対して福島の方がなんと言ったのかというと、「ああいう発言が自分たちを一番傷つける。原発がコントロールできていないから、汚染水がブロックできていないから、福島の人は苦しんでいるからだ」ということでした。「それを考えると許し難い」と。

では状態はどうなっているのかというと、福島原発は今、瀕死の状態です。プラントとして完結していないのです。人間でいえば、病院の中で重篤な状態で、いっぱい管がつけられている状態です。スパゲッティ症候群です。そのためどれかの管が外れてしまうともうどうなるかわからない状態なのです。
しかも1号機、2号機、3号機は燃料が溶け落ちてしまって、放射線がものすごく高くて、とても近づくことができないのです。これは決定的な問題です。近づくことができないということは中で何が起こっているのか、はっきりわからないということなのです。
人間が近づけないならロボットを見にいかせればいいではないかと思う方もおられるかもしれませんが、何度もやっているのです。放射線はそのロボットの容易に壊します。あまりにも放射線が高いので、ロボットも途中で止まってしまうのです。
だからドロドロに溶けて落ちていった燃料がどの辺にあって、どんどん入れている水がどれぐらいあたっているのか、もう何もかもわからない状態なのですね。

4号機は上のほうに大量の燃料棒があります。ほかの原子炉にもあるのですが、ここに一番たくさん入っています。燃料棒というのはプールに入っていて、この水が抜けてしまうと、冷やすことができなくなります。
そうすると溶けだして、ものすごくたくさんの放射能を出してしまいます。もしこの時点で水を補給できなければ、もう福島原発サイトから撤退しなければならなくなります。その場にいれば、すぐに死んでしまいます。
そうなるとどうなるのか。ほかの原子炉の手当てもできなくなるのです。つまり福島のサイトでは一つうまくいかなくなると全部だめになるのです。5号機や6号機もだめになる。
さらに最悪なことにもう一つ共用プールというのが地上にあって、そこには1万本以上の燃料棒が入っているのです。これらが全部だめになるとどうなるのか。軽く見積もっても東日本壊滅です。そういう危機が私たちの目の前にまだあるのですね。

2011年末に出された毎日新聞の記事をお見せします。ここには「最悪170キロ圏が移住」と書いてあります。実は2011年3月に、日本政府が、4号機が倒れるのではないかということで、そのことにどういうことが必要なのか、シミュレーションしていたのですね。
当時、菅首相の記者会見で、出てきた菅さんがしばらく何もしゃべらなかったことがあるのを覚えていらっしゃるでしょうか。涙目でしばらく立ち尽くしていました。あれはこのときなのですよ。4号機が倒れる可能性があった。
そのときに内閣で試算したのは、最悪170キロ圏強制移住です。東京を含む250キロ圏が、希望者を含めた避難区域です。この場合、強制移住しなければならない人の数が3000万人だそうです。
それで自衛隊に作戦をたてよとの命令が出ていました。のちに統合幕僚幹部が漏らしているのですが、これを聞いて、自衛隊の側は絶望したそうです。自衛隊がいっぺんに動かせるのは数千人程度。それはそうでしょうね。3000万人なんてまったくのお手上げ状態です。

重要なことはこの危機がまだ去っていないことです。それが最も重大なことです。あそこはプラントとして完結してないのです。完結しているとは、何かがあったときに耐えうる体系が確保されていることです。
ところが完結していてすら、地震であれだけやられてしまったのです。そして今も応急手当てを繰り返している状態です。ですから一番恐ろしいのは大地震です。前回の地震に対する大きな余震ですね。
これまでも震度5強ぐらいのものはたくさん起こっています。何度も揺さぶられています。そこに大きな余震として震度6とか7のものとかが来る可能性があります。そのとき福島原発が耐えうる保証はまったくありません。まったくないのです。
そのような地震が来るときはほかの原発サイトも壊れる可能性があります。福島第二原発や女川原発がです。もともと私たちは長くこうした危機の前に立たされてきたのですが、福島原発はかなり壊れているので、危険性ははるかに高いです。今、日本が、いや世界が重大な危機の前に立っているということを知って欲しいのです。

最近、福島の方の話を聞いたら、その方の知り合いの方も、原発サイトにいかれているそうなのですが、朝、「今日も地球を守ってくっから」といって原発に向かうそうです。そういう形で仕事をしているのが現状です。
だから安倍さんの発言はただの嘘ではすまないのです。ああいう発言が危機を深めるのです。なぜ危機を深めるのかというと、今、私たちがしなければならないことは、福島原発が抱えている危機に対して、きちんと向き合うことだからです。
みなさん。今年の3月にあったことを覚えていますか。ねずみが配電盤をショートさせて、すべてのクーリングシステムがダウンしてしまいました。あのときに電気配線の基礎を知っているかたたちは、「なんでいまだにそんな配線をしているのか」といって怒りました。
配線をするときは、ショートして電気がいかなくなることがありうることを前提にする。だから重要な施設には一つ一つに独立で配線するのが常識なのです。ところがすべての原子炉のクーリングシステムを一つの配線でつないでいたから、一か所、ネズミがショートさせただけで、全部が止まってしまったのです。電気配線における非常識です。

ところが現場を責められないのです。なぜかというと、大変な高線量なので、普通の常識で考えられるような仕事ができないのです。だからその点だけ責めると現場はかわいそうなのですよ。
このときは僕も青くなりました。僕は次の危機は大地震によってもたらされると思っていました。ところがネズミでもそういう危機が来てしまうのかということで、本当に恐ろしくなりました。それが私たちの前に、今、あることなのです。

安倍さんはそういうことを全く無視して、現実を見ようとしていません。何なのでしょうね。第二次世界大戦に突入した時の日本政府ととてもよく似ていると思います。
強いという意味ではないですよ。みなさん、ご存知ですか。NHKスペシャルで放映されたことがあるのですけれども、第二次世界大戦に突入した時に、日本政府の天皇の前で行う御前会議に出ていた大臣たちの中で、アメリカに勝てると思っていた人は一人もいなかったのそうです。
一人もいなかったのですよ。ところがアメリカは日本に中国から撤退しろという要求を突き付けました。すでに日本兵が20万人死んでいました。だからここでアメリカの要求を飲むと国民に何を言われるか分からないと思ったのです。
それで陸軍は海軍に無理だと言って欲しかった。海軍は陸軍に言って欲しかったのです。そうやって誰もが責任をなすりつけあっている間に、誰も、勝てると思ってはいない戦争に突入していったのです。それが日本の姿でした。
そのことが何ら罰せられていないし、責任をとらされていないのです。それで日本国民だって300万人死んだし、日中戦争を合わせると、アジアで数千万人を日本軍が殺したわけです。そういう歴史がただされていなくて、安倍さんも現実の危機をまったく見てない。

それで7年後のオリンピックなんて、僕はできるわけがないと思います。なぜか。汚染がどんどん進んでいるわけです。汚染水だってどんどん漏れてしまって、昨日も、今日も、また新しく漏れたという話が出ています。
ちなみに東京電力は今、政府に対して決定的に有利な立場になってしまったのです。東京電力は自分を守ることについてはとても頭がいいですよ。だから安倍さんが発言をした翌日には記者会見をして、「いやいや、コントロールなんてできていませんから」と発言しました。
その後に、実はあのタンクも漏れていた、あそこも漏れていたという情報をどんどん出しているのです。なぜかというと、今、東電がいくら漏れているといっても、政府がかばわざるを得ない立場に立っているからです。

安倍さんの発言を政府としては守っていかざるをえないとなっている。東京オリンピックを獲得するために、世界に公言してしまったからです。
だから東電はここぞとばかりに、実はここも漏れていると言い出しています。しかし実際はどうなのかというと、汚染水漏れは、昨日、今日、分かったことではないのです。構造的に2011年のあの事態から止まってないのです。
ではどれぐらい漏れているのかというと、1日あたり、政府の試算で300トン、東電の試算で400トンです。400トンですよ!それだけの地下水が、建屋にたまっている高濃度の汚染水と触れてから海に流れているのです。だからコントロールされているなどという事態ではまったくありません。

何よりもみなさんに、こうした大変な危機が今、私たちの前にあり、それと向いあわなくてはいけないのだということを知って欲しいのです。

 

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明日に向けて(747)福島の声をもっといろんな人たちに知って欲しい!(真行寺佐々木住職談)下

2013年10月02日 08時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131002 08:00)

福島県二本松市の真行寺佐々木住職の発言の後半をお送りします。
なお佐々木さんの発言の最後の方に「悲願」という言葉が出てきますが、これは佐々木さんの前に話された長田さんの講演内容を受けたものです。長田さんはそこで「悲願」について述べられましたが、これは仏教、とくに真宗のみなさんにとってとても大切な言葉です。
真宗大谷派のホームページを開いてみると、悲願について「仏・菩薩が衆生の苦しみを救うために誓われた願のことで、特に阿弥陀仏の本願をさす言葉」という説明が出てきます。これを頭の隅に置きつつ、まずは発言後半をお読みください。
http://www.higashihonganji.or.jp/sermon/word/word60.html

*****

福島の声をもっともっといろんな人たちに聞いて欲しいし知って欲しい(下)
佐々木道範

二本松というところに僕は住んでいますが、原発から50キロぐらい離れています。そこに浪江町というところの人たちが二千と何百人か避難されてきています。二本松市には浪江町の役場もあります。
二本松の人はあまりよく言わないのです。避難してきた人のことを。「だってあいつらお金をもらってるんだべ。日中パチンコやって、夜は酒を飲んで」というような偏見がありました。実は僕もそう思っていた。だってパチンコ屋にいったらいっぱい車があるから。補償金もらって、いい暮らしをしているんだなって。

でも僕の後輩がエアコンの工事で、浪江の人のアパートに行ったときに、エアコンの工事だから家の中に入っていきます。そうしたら昼間っからお父さんが飲んだくれている。寝たきりのおばあちゃんがいて中学生ぐらいの娘さんがおばあちゃんの世話をしていて。それで2階にいったら、高校生ぐらいの女の子が、夏ですよ、こたつに入ったまま、ずっとテレビを観ている。
「エアコンの工事をさせてください。失礼します」と言っても何の反応もなくて。ずっと、エアコンの工事が終わるまでテレビを観ている女の子がいて。それで工事が終わって帰ろうとしたら、お母さんの遺影があって。津波で亡くなったのですよね、お母さんは。
その工事をやった後輩が「浪江の人たちは金もらっていい暮らしをしてるって思ってたけれど、ぜんぜん、幸せそうに見えなかった」と言いました。
お金じゃないんですよね。僕たちが放射能によって奪われたものは。なんていうのかな。福島の人たちの生きざまだったり、誇りだったり。大切なものをね、この放射能によって奪われてしまったのです。僕はどうにか取り戻したいと思うけど。

南相馬市に原町別院(注 真宗の寺院)があります。そこの門徒さんが7人自殺されました。70、80のお年寄り、おじいちゃんたちです。南相馬市は子どもが6割ぐらい避難しています。お母さんたちも一緒です。おじいちゃん、おばあちゃんたちは元気がない。作付もできない。
福島は自然が豊かなところでね、本当に自然とともに生きていた人たちがたくさんいたのですけれどね。そういう生き方を放射能が奪ってしまって。おじいちゃんたち、おばあちゃんたちが自殺しているという事実もなかなかニュースにならないしね。
農薬を飲んじゃうんだって。発作的にね。昨日、お茶を飲みに寺に来ていたのに、次の日に農薬を飲んで死んでたってね。
南相馬の別院で頑張っているご夫婦がいるんですよ。もう2年半ですよ。なんていうのかな。背負っているというか。苦しみや悲しみを聞き続けているのですよね。そのおじいちゃん、おばあちゃんたちがつぶれないかなって、おれ、心配でね。月に何回かコーヒーを飲みにいくんですけど。

そういう人たちと、僕は出会い続けたいなと思います。僕は、胸が痛いけど、でもこの胸の痛みが、本当に生きるということなのかなと最近は思ったり。無関心に、自分の都合の悪いことを知らずに生きていくことよりも、悲しみや苦しみと出会って、胸が痛くなりながら生きている方が、僕は本当に生きているような気がします。

二日前に岩手の真宗会館でお話しさせてもらいました。そこに旗がかかっていて、「いのち皆、生きらるべし」って書いてありました。「これをスローガンにやってきたんだ」と真宗会館の館長さんが言っていましたが、いい言葉だなと思いました。キリスト教のリルケという方の詩の言葉だそうですけれども。
でも「大経(注-大無量寿経)の『皆当往生-今まさに往生すべし』という言葉じゃないかな」とその館長さんがおっしゃっていて。福島のみんなにも伝えないなと思って、旗を一つもらってきました。

浄土真宗って、成仏ということよりも往生を大事にする教えだと思うのです。本当に生きるという。僕ら一人一人がね、本当に生きるってどういうことなのかなって、考えなくてはいけないのではないかなと思うし、震災があって、僕の価値観や、僕を根底からひっくり返したなあ、ひっくり返されたなと思います。
一番、震災で感じたのは、さっきもいったけど、国が人間を見捨てるのだなということと、だから僕が自分で感じて、考えて、自分で行動する、歩みだす、それが大切なことなのだなあって、この震災で教えてもらいました。
本来は、当たり前のことだと思うのです。人として人間として、生きていく上で、自分で考えて歩みだしていくということはね。でもそういう生き方を僕はしてこなかった。やはりいろいろなものに流されて、無関心に生きてきたのですよね。
でもだからこそ、人間が人間と出会っていける、1人が1人と出会っていける場を作っていきたいと思うし、出会いを大切にしていきたいと思います。

震災後、NPOで活動していますが、何が正しいか自分でもよく分からないんです。子どもたちを守るためにということで、子どもたちの口に入るものの放射線の測定とか、子どもたちの内部被曝の検査とか、あとは除染、暇さえあれば除染をしています。子どもたちを保養につれていったりとか。考えられることはみんなやろうと思ってやっていますが、それが正しいのか間違っているのか、ぜんぜん分からない。
僕が除染することで、福島から避難する人が減るんだと。「だからお前は子どもたちを殺しているんだ」ということをね、何度も言われました。なんとなく言っていることは分からないでもないですが、でもそこに生きている人たちがいるんです。そこに生きている人たちがいる以上、僕は一生、除染するんだろうな。

僕もみんな避難して、福島がきれいになってから戻ってきたらいいと思うけれど、なかなかそうはならなくて、もちろんそこに生きている人たちがいます。その人たちに僕は何ができるのか。子どもたちに少しでも被曝して欲しくない。僕もしたくないですよね。被曝なんか。
被曝していい人間なんていないですよね。でも僕が被曝しなかったら、誰かが被曝するし。よくは分からないけれど、僕ができることは僕がやろうと思うし。

今の原発もそうです。6割から7割の作業員は福島の人たちです。僕の知り合いも、未だに原発に行っています。朝、「地球を守ってくっから」つって。たまらないですよね、それは。
なんで被災した福島の人たちが、被曝し続けて、原発を止めようとしているのか。でもその人たちがいなかったら大変なことになってしまうし。そこもみんなに知ってほしい。福島の人たちが、今も被曝し続けているお蔭で、原発が何とか保っているということをね。事実をきちんと知って欲しいと痛切に感じています。

最後に、原発事故で分かったことがあります。それは間に合わないんだということです。僕も暇さえあれば除染をしているけれど、僕が死んだって放射能なんかなくならない。僕がどんだけ除染しても、福島は広いんですよね。中途半端で死んでいくんだって、それだけは分かっています。
でも少しでも福島をきれいにして、次の世代にバトンタッチしたいのですよね。僕が生きてる間に福島がきれいになるはずなんかないことも分かっています。でも、僕はやり続けます。それしか考えつかないんですよね。どういうふうにして生きたらいいか、僕にも分からない。でも少しでもきれいにして次の世代に福島を残して生ききりたいなあって思ってます。

さっき長田さんが「悲願」っていったけど、僕が間に合わないって思い知らされたところに本願があったんですよね。「がんばれ」って、「歩め」って、「行け」って、阿弥陀さんが迎えにくるから、中途半端で死んでもいんだ。「倒れたところに迎えに来っからいけ」って。「歩め」って。「頑張れ」って。言ってくれている。願いがね。ありました。
だから本当に悲願だなって思います。悲しみのそこのところに願いがあったのですよね。本当にありがたいですね。

僕は終わりなき歩みを、出会った人たちと生きたいと思います。本当はこんなことをしたくはないんだけどね、家族と楽しく生きたいんだけど。今の福島には、なかなか、やらなくてはいけないことがあって。
でも子どもたちはね、きっと命を大切に、生き生きと、生きてくれると思うのですよね。なんでお父ちゃんが除染しているのかって、今は分からなくても、なんでお母さんが毎週、県外に遊びに連れていくのか。夏休みになったら遠くに連れていくのか。子どもたちも大人になったら感じると思います。
だから福島の子どもたちは、命を大切に、生き生きと、生きてくれるだろうなと思っています。

最後に、やはり僕たち大人が歩み出さないといけないと思います。未来への責任を、きちんと大人たちが背負って歩み出すことが大切だと思います。
未来への責任を背負わないで、今を生きたら、また人間は(過ちを)繰り返すと思います。原発が無くなったとしても、原発ではない原発のような何かを作り出していくのではないかなと思います。
日本に原発が54基もできたのは、きちんと未来への責任を、大人たちが背負わなかったからだと思います。だから僕たちにできるのは、未来への責任を背負って、今、歩み出すことなのだと思います。

たくさん歩み出している人たちがいます。あきらめて立ち止まっている人たちもいるけれど、少しずつですが、歩みだすことで、福島の人たちが元気になったらいいなと思うし、この放射能の問題は時間がかかると思うので、どうか福島のことを忘れないで、事実を知ってください。どうもありがとうござました。

*****

いかがでしょうか。真宗の門徒でもない僕が解説をするのはおこがましいですが、僕の感想を含めて、少し補足をしてみたいと思います。
先に悲願について「仏・菩薩が衆生の苦しみを救うために誓われた願のことで、特に阿弥陀仏の本願をさす言葉」という真宗大谷派の解説を紹介しましたが、その阿弥陀仏=阿弥陀如来は、如来になる前、法蔵菩薩のときに、すべての人を救いたいという強い願いを持たれたのでした。
ちなみに「如来」とは悟りを開いた人のこと、「菩薩」とは悟りに向けて修行している人のことですが、大乗仏教では、すでに悟りを開けるのに、人々と苦楽を共にし、ともに悟りに至ろうとしている人のこともさしています。人々=衆生とともに、大きな乗り物で悟りにいたらんとするので「大乗仏教」であるわけです。
こうした道を歩むことを菩薩道といいます。あるとき、茨城県取手市から保養キャンプで京都に来ていたママさんを京都の南禅寺にお連れし、如来像を一緒に拝観しながらこの菩薩道のことをお話ししたら、「守田さん。分かりました。私は菩薩だったんだ。いやあ、今日はそれが分かって超嬉しい」と言われたことがありました。
何とも言えない不思議で豊かな感性と霊感を持っている方でしたが、妙に納得させられてしまった一幕でした・・・。

それはともあれ、すべての人を救いたいという願いを発せられた法蔵菩薩は、自らその力を得て、(という解釈でいいのか不安ですが)阿弥陀仏になられました。本願を成就されたのです。そしてすべての人が、臨終に際して「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで、西方浄土へと迎えに来て下さることになったのです。
この法蔵菩薩のお話が説かれたのが、佐々木住職の発言の中に出てくる「大無量寿経」です。佐々木さんは「大経」という略称を使われています。これに対して阿弥陀仏がおられる「極楽浄土」について説かれたのが「阿弥陀経」、この浄土へとお迎えに来て下さる話を説いたのが「観無量寿経」です。
例えば10円玉に彫られている宇治の平等院は、阿弥陀経に出てくる極楽浄土をイメージして建てられています。観無量寿経の内容は、その鳳凰堂の阿弥陀如来像の周りに絵巻として描かれています。

こうしたことを前提に、長田さんも佐々木さんも、「今、自分がやっていることは中途半端で終わる。道半ばで自分は倒れる。きっと生きているうちに自分の思いがかなうことなどない」「でもそれでいいのだ。そこに阿弥陀如来が来て下さるのだ。だからたとえ志半ばで倒れようとも、自分は進むのだ」と語られたのだと僕は思いました。
僕は淡い信心しか持っていませんが、そうした宗教者としての長田さん、佐々木さんの信念に胸を打たれるものがありました。
福島の現実は、苦しみと悲しみに満ち溢れている。しかしその中に、自分が生きる意味がある。だから自分はこの苦しみの中を生きていく。倒れるまで生きていく。前に向かって生きていく・・・そう語られていたのだと感じ、共感しました。

解釈が間違っていたらごめんなさいですが、だから佐々木さんの言葉は、苦悩の吐露でありつつ、同時にほとばしるような宗教的信念の発露であったのではないかと僕には思えました。それで佐々木さんには「僕も分からないことだらけですが、一緒に頑張りましょう」と伝えてきました。
この信念、苦しみの中を息抜き、その先に光を観ようとする思いを、みなさんにシェアしていただけたらと僕は思います。・・・すみません。言語化しないと(上)で書きながら僕の思いを書いてしまいました。邪魔になってしまったら申し訳ないです。いろいろな受け止め方が可能であるに違いないのでみなさんそれぞれで受け止めていただけたらと思います。

最後に、福島の今を語ってくださった佐々木さんに感謝したいと思います。また長田さんはじめ、素晴らしい会を催してくださった真宗大谷派のみなさまにも心から感謝を捧げます。どうもありがとうございました。

 

 

 

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明日に向けて(746)福島の声をもっといろんな人たちに知って欲しい!(真行寺佐々木住職談)上

2013年10月01日 23時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131001 23:30)

9月27日東京、28日加古川、29日京都と連続で講演し、またまたたくさんの人たちと出会いました。あまりに多くのことがあり、記録や記事化がまったく追いつかないことが歯がゆいです。
ともあれ各地で出迎えてくださったみなさん、講演を聴きにかけつけてくださったみなさんに、心から感謝をささげたいと思います。

さて今日は、京都で行われた真宗大谷派の原発問題の企画に参加し、長田浩昭さん(京都教区法傳寺住職)の「原発と国家」という講演と、佐々木道範さん(福島県二本松市真行寺住職)のお話を聞いてきました。
どちらも聞きごたえのある内容だったのですが、とくに福島の今を語った佐々木さんの話しは、胸の中にぐいぐいと入ってきて、思わず涙をこぼさずにはいられないものでした。大変、共感したので、帰りにあいさつし、ブログへの掲載の許可をいただいてきました。

佐々木さんは、福島県二本松のお寺で幼稚園もされている方です。TEAM二本松という測定所も開設されています。その奮闘の姿が、映画監督鎌仲ひとみさんが撮られた『内部被ばくを生き抜く』の中でも紹介されています。
http://www.naibuhibaku-ikinuku.com/

子どもたちを守るために、必死になって除染を繰り返す・・・しかしそんな姿に共感とともに「除染ではなく避難すべきだ」という強い声も返ってきているそうです。
僕はそんな佐々木さんの話をぜひ一度、じかにお聞きしたいと駆けつけたのですが、何というのでしょう。佐々木さんの語り方があまりに切なく、しかし奥底に強い何かが流れているのを感じて、とにもかくにも胸を締め付けられてしまいました。
文字起こしで伝えられないことを最初に書いておくと、佐々木さん、何度も話の中で深くため息をつかれるのです。ふーっ、ふーっと。そして「僕にも何が正しいか分からないのですよね。でも」と語りつづけられる。そしてまたふーっと息とつく。
それを繰り返しながら、とつとつと語りつづけられるのです。文字通り、絞り出すようにしながら、それでいて、淡々と、淡々と語りつづけられるのです。

佐々木さんが語っているのは、福島の今の苦しみと悲しみです。しかしそのもう一方で、佐々木さんは、その苦しみと悲しみに寄り添う、ご自身の生きる意味を確かめながら話されているようにも思えました。
その語りは、嘆きの吐露のようでありながら、他方で、力強い、信仰の告白であるようにも思えました。その切なさと、しかしその底で強い何かをつかみ取ろうともがいているように見えるその姿が、僕の胸を締め付け、深く揺り動かしました。
ここには今の私たちがみんなでシェアすべきかけがえのないものがあると僕は思っています。ただそれが何であるかを文字化することはせず、みなさんの受け取りに委ねようと思います。どうかぜひ佐々木住職の声に耳を傾けられてください。
なお講演タイトルは「27年後のチェルノブイリを訪れて」でしたが、発言中の言葉の中からより内容にフィットしたものを僕がセレクトしました。長いので2回に分けます。

*****

福島の声をもっともっといろんな人たちに聞いて欲しいし知って欲しい
佐々木道範

福島県の真行寺の住職をしています佐々木です。

震災後はNPO立ち上げて、子どもたちを放射能から守る活動をしています。日々やっている除染の映像とチェルノブイリの写真を観てもらいました。事故後27年目のウクライナに行ってきましたが、チェルノブイリ事故はまだ終わってないというのが僕の率直な感想です。
いろいろなところを視察させていただきました。幼稚園や学校や病院や市場。あと住めない村から避難している人たちに会ってきました。僕はちょっと光が見えたなあと思いました。
その場所で未来をイメージしながら必死に生きているウクライナの人がいたのが僕にとっては光でした。やはりウクライナから学ぶことが多いと思って、行ってきました。

僕が行ったときにちょうど、内部被曝の検査をやっていました。医療従事者の検査をしていましたが、27年目でも内部被曝している方たちがいるのです。高い方だと体の中に3000ベクレルの放射性物質が入っている看護師さんがいました。
もちろんゼロの方もいましたが、どういう食生活をしているのかというと、森のものキノコやベリー類などを食べている人は内部被曝を今でもしているようでした。
子どもたちの学校給食は汚染地帯の外からのもので作っているのですが、こんな言い方は良くないかもしれませんけれど、貧しい国なのですよね。日本から比べるとずいぶん貧しい国で、首都はベンツとかが走っているのですが、そこからチェルノブイリにいくと馬車が走っています。

市場に行ったときは、ちょうど牛乳に基準値以上のものが出て、出荷停止になっていました。捨てなくてはいけなそうです。
福島では牛に牧草は食べさせられません。高い金を出して飼料を食べさせています。そのため牛乳からは今のところ放射能は出ていません。チェルノブイリではそんなことはできないので、牧草地にいって食べさせる。
牧草地の中に汚染されているところもあって、いまだに牛乳から放射能が出ます。森のものからも出るのですね。森は除染をしないですから。
福島もそうです。春先になるとテレビにテロップが流れます。「山菜は食べないで下さい。食べたい方は測ってください。近所の方にわけないでください」とテレビで流れます。

チェルノブイリにいって福島よりいいなと思ったのは、きちんと子どもたちを守る法律ができているということです。子どもたちの保養、放射能汚染されていない地域に一定期間、子どもたちを連れていく事業が、きちんと国の事業として行われています。
ベラルーシは当初は年に3回、ウクライナは2回。国がきちんとやってくれています。一か月ぐらい保養している子どももいるようです。僕が行った幼稚園の子どもたち、どれぐらい行っているのですかと聞いたら、5割ぐらいかなと言っていました。27年たっても保養を続けなくてはいけない現実がそこにありました。


ウクライナの報告も大事なのですが、やはり福島のことを話させていただきたいと思います。2年と6カ月が経ちましたけども、僕にはやはり、復興しているとは思えません。
少し前にオリンピック開催が決まりましたが、福島の人たちは複雑な思いで聞いていたのではないかと思います。
僕も総理大臣の発言に対しては腹が立って仕方がない。「コントロールされています」「完全にブロックしています」という発言ですね。実際にはコントロールできなくて、ブロックされてないから、福島の人々は苦しんでいるのです。
僕の知り合いの南相馬の漁師さんも試験操業が9月からできるということで張り切っていたのに、汚染水のお蔭でできませんでした。そういう福島の現実を前に「ブロックしています」と言ってしまえる総理大臣が、僕はちょっと分からないです。
「コントロールされている」「ブロックしています」というのは、福島の人からしたら許せない言葉だったと思います。

福島のことについは時間が経つにつれて悪いニュースが流れてくるというかね。汚染水のことでもそうですし、子どもたちの甲状腺がんのこともそうです。なかなか福島の人たちは元気が出ないですよね。なかなか前に歩みだせないというか。
自殺も増えています。関連死というものもあります。震災後、何人の方が亡くなられたのかを国がカウントしていますが、福島では直接死んだ人の数よりも関連死の方が増えてしまっています。比べられることではないかもしれませんけれども、宮城や岩手の人の何倍も福島の人は関連死しているのですよね。どうしたものかと思う。

子どもたちの健康被害ですが、甲状腺がんも含めていろいろあります。
先月、うちの幼稚園の運動会があったのです。次の日に新聞に載ったのですが、市内各地の幼稚園、保育園も運動会をされましたが、うち以外はみんな体育館でした。
うちの幼稚園は、借りたグラウンドを除染して、子どもたちが裸足で走れるような環境を作ったので、外で運動会をすることができましたが、他のところは、まだ体育館で運動会です。

甲状腺がん、さきほども示されましたが44人です。100万人に1人の病気が福島では44人です。福島の18歳未満の子どもたちは36万人です。1人も出ないような数です。しかし44人の子どもたちががんになっています。うちの幼稚園の卒園児も1人、がんになっています。

子どもたちもそうですが、お母さんたちが苦しんでいます。自分の子どもを被曝させてしまった、病気にさせてしまったということで、お母さんたちが自分を責めている状況が続いています。
大震災がおきて、水も電気もガスも止まってしまって、僕たちも毎日、水をくみに並んだんですよね。ポリタンクを持って、給水ポイントというものがあって、そこに毎日使う水をくみに並んでいました。しかしそこには、僕たちは知らなかったけれど、放射能が降っていた。
あとミルクもおむつも、当時、なかったのですよね。だからどこどこの駐車場でミルク売ります、どこどこの駐車場でおむつ替えますとなると、お母さんたちは赤ちゃんをおんぶして何時間でも並んでいたのです。そこには放射能が降っていた。なんで僕たちに教えなかったのかなって思いますけども。
お母さんたちは自分を責めちゃうんですね。「なんで水をくみにいったんだべ。なんで赤ちゃんをおんぶしておむつを替えにいったんだべ」ってね。お母さんたちが悪いはずがないのに、お母さんたちが自分を責めてしまっている状況になっているのです。

映像では僕は楽しそうに除染をしていますが、別に楽しいわけではないですよね。でも楽しくやらないとどうにもやりきれないです。どうにかして福島の人たちを笑わせたい。どうやったらみんなが笑うのか、僕はよく分からないけれども、僕は笑わなくてはいけないなと思っています。
明るいニュースが出てこない福島ですけれど、前に向いて歩んでいくしかない。事実を知って欲しいのですよね。テレビでは流れない。新聞でも流れない。
甲状腺がんのニュースなんか、朝日新聞の夕刊にしか載らなかった。本来なら、凄いニュースだと僕は思うけれども。100万人に1人の病気が福島でこんなに出ているということは。でも朝日新聞の夕刊にしか載らなかった。テレビでも放送されないし。
福島では流れますけれど、県外では流れない。だから福島の事実を知って欲しいし、聞いて欲しいんです。そんなに明るいことばっかりではないのです。

何日か前に酪農家のおじいちゃんが僕のところに訪ねてきました。80ぐらいのおじいちゃんですけれども、新聞の切り抜きを大量に抱えてね。農水省にも行ったし、県にも行ったし、行政にも行ったけれども、誰も相手にしてくれないって。商工会議所にいったら、真教寺さんに行ってみろと言われて、おじいちゃんが来ました。
おじいちゃん何をしてえんだと言ったら、「震災前と同じ暮らしがしてえだけなんだ、だから原発止めてくれ。野菜作ってべこと一緒に暮らしてえんだ。だから原発止めてくれ」って。

娘さんは飯舘村に嫁いだのだけど、今は人が住めない村です。それでおじいちゃんのところに避難してきています。おじいちゃんもどうしていいか分からないですよね。
それで二時間ぐらい僕としゃべっていましたけれど、最後に「愚痴ってごめんな。ありがとう」と言って帰って行きました。
「僕も何ができるか分からないけれども、おじいちゃんの話を聞いたことは忘れないから。僕が何ができるか考えるわ」と言って、おじいちゃんと別れましたけれども、なんかね。
聞いてくれる場所がないんですよね。みんないろいろ抱えているんだけれども、それを吐き出す場所もないし、聞いてくれる場所もないんです。だから僕は福島の声をもっともっといろんな人たちに聞いて欲しいし知って欲しい。
この真宗大谷派が小さき声をね、苦しみの声を、悲しみの声を聞く場であって欲しいなと僕は思っています。

原発、放射能の問題で、国は人間を見捨てたんだなあと思いました。福島の子どもたちのことよりも、何か別のものを選んだのですよね。
いろいろな社会問題、ハンセン病や水俣や沖縄の問題などもそうだと思います。この国は人間を見捨てていっています。だから僕はこの教団だけは人間を見捨てない教団であって欲しいと思います。

ハンセン病の療養所でもね、うちの幼稚園の保養の受け入れをしてくれたり、福島の人が元ハンセン病の患者さんたちと出会っていく、素敵な場ができているし。人が出会っていくことでしか分からないものってあると思うのですよね。新聞やテレビやニュースでは分からないね。
僕の生き方もそうだったのですよね。イラクの子どもたちが死んでも、僕は痛くもかゆくもなかったのです。どっか遠くの国の子どもたちが何十人殺されても、僕は痛くもかゆくもなかった。でも震災後は痛いんですよ。

僕は子どもが5人いるのですけどね。一番下が幼稚園に入って運動会に出たのです。1か月ぐらい前から運動会の練習で走り回っていました。そうしたらね、毎晩夜に息子が泣くんです。筋肉痛で。幼稚園児ですよ。毎日、筋肉痛になって泣いている。
それは僕も悪いと思う。外にも出さなかったし。放射能の問題でね。幼稚園児がきちんと育ってないです。そういう姿を見るとね、胸が痛いですし、酪農家のおじいちゃんから話を聞いた時も胸が痛いし。

続く

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明日に向けて(744)安倍首相の五輪招致発言に福島県浪江町が真っ向から抗議!浪江町議会を応援しよう!

2013年09月22日 16時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20130922 16:30)

安倍首相による五輪招致発言での「状況はコントロールされている」「(汚染水は)完全にブロックされている」「健康への問題は全くない」という大嘘発言に対して、原発直近の浪江町議会から、きわめてまっとうな抗議が出されました。
毎日新聞に短く記事が載ったので、全文をご紹介します。

*****

福島第1原発:汚染水問題 浪江町議会、首相に抗議 制御発言に意見書
毎日新聞 2013年09月21日 東京夕刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130921dde018040035000c.html

福島第1原発の汚染水問題を巡り、安倍晋三首相が国際オリンピック委員会総会で「状況はコントロールされている」などと発言したことについて、原発事故で全域が避難区域に指定されている福島県浪江町の町議会は20日、「事実に反する重大な問題がある」とする抗議の意見書を全会一致で可決した。
意見書によると、原発から1日推計300トンの汚染水が流出している「深刻な事態」であり、「『コントロール』『(港湾内で)完全にブロック』などされていない」と指摘。
「健康への問題は全くない」と発言したことには浪江町だけで震災関連死が290人を超えるとし、「福島を軽視する政府、東電に憤りを禁じ得ない」と訴えている。【三村泰揮】

*****

発議は共産党の町議さんがされたそうですが、とても共感しました。とくに僕が大事だと思ったのは、汚染水問題もさながら、「健康への問題は全くない」と安倍首相が発言したことに対して、浪江町で震災関連死が290人を超えることを突きつけている点です。
「震災関連死」とは、震災での直接的な死は免れながらも、その後の避難の過程などで亡くなられたことを指します。とくに福島県の場合は、津波や地震の影響ではなく、原発事故によって避難を余儀なくされた方たちが多数おり、その場合の震災関連死は「原発事故関連死」であると言えます。
これは東京新聞が独自に集計して明らかにしたもので、本年9月11日現在、浪江町では291人が原発事故関連死で亡くなっています。福島県全体では確定しているのが910人。ただし震災関連死が431人と最も多い南相馬市がこのような区分をしておらず、同じくいわき市などもこうした統計がなくこれらの数が入っていません。
南相馬市も、大半が原発事故関連死であると南相馬市の担当者が述べており、東京新聞はこれらを入れると約1300人にのぼると述べています。なお福島県の震災関連死数は8月末で1539人。直接死1599人に迫っており、「上回るのは確実」と言われています。

この1300人の死は、原発事故がなければ起こらなかった死であり、まさに事故そのものによって強制された死です。1300人もの方が原発事故で殺されてしまったのです!このことが明らかになっているのに、誰一人も裁かれていない。なんということでしょうか。
その上、「健康への問題は全くない」と首相が世界に公言したのです。これは亡くなった方の魂や、遺族の方の心を踏みにじるに等しい行為です。浪江町議会の怒りの声は、このあまりに理不尽な政府の姿勢に対するやむにやまれぬ叫びです。安倍首相はこの声を受け止め、謝罪して発言を撤回すべきです。
なお、1300人の方が亡くなったのは主に「避難のストレス」のせいだと言われていますが、僕は避難のストレスに被曝のストレスが加わったと考えています。被曝があったのは間違いないことだからです。震災関連死の直接死に対する割合が、福島県だけ突出して高いことも、このことを示しています。
ただし避難のストレスに被曝のストレスが加わったのは、福島県だけのことではありません。宮城県や茨城県などでも同様のことは起こりました。それらの死因のすべてが放射線と関連付けられず、避難のストレスだけにカウントされてしまっていますが、この点をどうにかしてひっくり返していく必要があります。

そのことをも考慮しつつ、今はこのまっとうな怒りの声を発してくれた浪江町議会を、全国から応援していきたいと思います。さしあたり、意見などを投稿できる浪江町のフォームをご紹介しておきますので、共感された方はぜひメッセージをお寄せ下さい。僕もすぐに共感と応援の約束を送信しました。

浪江町 お問い合わせ
https://www.town.namie.fukushima.jp/form/detail.php?sec_sec1=2&inq=04&check


さて浪江町議会の抗議に見られるような全国・全世界で高まる怒りや懸念の声を前に、首相は福島第一原発に乗り込み、再び、「完全ブロック」発言を繰り返しました。厚顔無恥とはこのことですが、引っ込みがつかなくなっているとも取れます。
これについて朝日新聞が報じた短い記事を紹介しておきます。

*****

安倍首相「完全にブロック」強調 汚染水漏れ現場を視察
朝日新聞 2013年9月20日0時48分
http://www.asahi.com/politics/update/0919/TKY201309190430.html

安倍晋三首相は19日、東京電力福島第一原発を訪れ、放射能汚染水漏れの現場を視察した。首相は視察後、汚染水の影響が一定範囲内で「完全にブロックされている」との認識を改めて示した。
ただ、汚染水の海洋流出は続いており、「ブロック」の実態について論議を呼びそうだ。一方、首相は東電に対し、福島第一原発の5、6号機を廃炉にするよう求めた。
首相は免震重要棟で作業員を激励後、汚染水が漏れたとみられる貯蔵タンクや放射性物質除去装置、汚染水の拡散を防ぐため港湾内に設置された幕(シルトフェンス)などを視察した。
首相は視察後、記者団に対し、7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会での東京五輪招致演説と同じ表現で「汚染水の影響は湾内の0・3平方キロメートル以内の範囲で完全にブロックされている」と改めて強調。
「福島への風評被害を払拭(ふっしょく)していきたい。汚染水処理についてはしっかりと国が前面に出て、私が責任者として対応したい」とも語った。

*****

再び嘘を重ねている。というよりそのことが言いたくて、わざわざ福島第一原発に乗り込んだのだと思いますが、こうした姿勢は、今後の事故対応を非常に悪くすることをここで指摘しておきたいと思います。
なぜなら首相は「汚染水処理についてはしっかりと国が前面に出て、私が責任者として対応したい」と語ったわけですが、当たり前の話、事故処理において一番大事なのは現状認識です。
しかし首相は初めからそれを大きく捻じ曲げているわけです。それでどうして「責任ある対応」などできるでしょうか。むしろこの先、ますます自分の大嘘を正当化するために、現状を曲げ続ける可能性が大きくあります。
これに対して、東電は首相の嘘によって政府に有利な立場になったので、「今のうちに」と次々と、現場がコントロールなどされておらず、汚染水があちこちから漏れ出していたことを公言していますが、政府はそれの否定にやっきになってしまっています。

確実に言えることは、この点をきちんとけじめない限り、ずさんな事故処理、またアンコントロールな実態の隠ぺいが続くということです。そことが現場の士気をも著しく下げる。日本に住まう人々、いや世界の人々のために現場で危機と向かい合っていることもが隠されてしまうからです。
そればかりではありません。こうした事態は、必ずと言っていいほど、責任のなすりあいを生み出し、その余波が被害者の側に回されてくることにもなります。そうした事態はすでに起こり始めています。
数日前に開催されていた国際原子力機関(IAEA)総会の関連行事として16日夕、ウィーンで開催された日本政府主催の福島第1原発汚染水漏れ問題に関する説明会の席上で、次のようなことがありました。
当然にも各国から汚染水漏れの深刻化を問う発言が相次いだのですが、これに応えた日本政府の担当官が、なんと、汚染水処理は漁民が反対しているのでうまくいかないなどと述べたというのです。これを報じた毎日新聞の記事から当該部分を引用します。(記事の全文は末尾に)

***

これ(日本政府への厳しい批判)に対し、廃炉機構の担当者は、汚染水の漏えい部分の発見と修理に手間取っている▽原子炉建屋に流れ込む前に地下水をくみ上げて海に放出する計画が漁業関係者らの反対で困難になっている−−と説明。
経産省の担当者が「法的な責任は東京電力にあり、我々はサポーターの立場。東電には資金もアイデアもなく、2年間も良くない状況が続いてしまった」と釈明すると、会場から「責任転嫁ではないか」との失笑が漏れた。

***

「漁業関係者らの反対で困難になった」・・・汚染水を海に流すのをやめてくれと必死に叫んでいる被害者に責任を転嫁!これはあまりにひどい。記事には東電のせいにしたことに対して苦笑が漏れたとありますが、東電には確かに責任もあることに対して、漁民の方たちには何の責任もないのです。
これらのことはこれだけの原発事故がありながら、全政党の中で唯一原発政策の継続を掲げ、再稼働に邁進しようとしてきた安倍政権の考え方そのものから出てきたものに他なりません。その根幹にあるのは、嘘とでたらめで人々を騙して自分たちの都合のいい道を切り開こうとする、本当にひどい価値観です。

しかし嘘では現実は変わらないこと、放射能が減らせるわけではないことに、安倍首相や自民党政権は目をつぶり続けてもいます。信じがたいことですが、自分たちに都合の悪いことを想定する能力そのものが欠如しているのです。そこにこそ私たちの巨大な危機の実態があります。
首相に大嘘の撤回を迫りましょう。繰り返し、アンコントロールな実態を私たちの側から明らかにし、また大嘘を批判するまっとうな声を広めあいましょう!浪江町議会の怒りをみんなでシェアして進みましょう!

*****

福島汚染水:各国から厳しい指摘 IAEA説明会
毎日新聞 2013年09月17日 11時06分(最終更新 09月17日 12時01分)
http://mainichi.jp/select/news/20130917k0000e010137000c.html

国際原子力機関(IAEA)総会の関連行事として16日夕、ウィーンで開催された日本政府主催の福島第1原発汚染水漏れ問題に関する説明会で、各国の専門家から抜本対策の遅れや規制当局のあり方などを問う厳しい指摘が相次いだ。
第一義的な責任は東京電力にあると繰り返す日本側の説明からは「政府が責任をもって取り組む」(山本一太科学技術担当相)との意気込みが伝わらず、責任の所在のあいまいさを印象付けた。【ウィーン樋口直樹】

説明会には、原子力政策を推進する経済産業省と、同省から独立した原子力規制委員会、廃炉に関する研究開発を行う国際廃炉研究開発機構などの担当者が出席。汚染水漏れの現状と、凍土壁の設置や浄化装置の増設などによる政府主導の解決策について、会場を埋めた100人以上の専門家らに説明した。
だが、会場からの質問は今後の対策よりもむしろ、汚染水漏れの深刻化を招いた責任を問うものだった。スロベニアの規制当局者は「汚染水問題は原発事故直後から予想できた。なぜ2年以上もたった今まで持続的な解決策を見いだせなかったのか」と、厳しい口調で切り出した。
これに対し、廃炉機構の担当者は、汚染水の漏えい部分の発見と修理に手間取っている▽原子炉建屋に流れ込む前に地下水をくみ上げて海に放出する計画が漁業関係者らの反対で困難になっている−−と説明。
経産省の担当者が「法的な責任は東京電力にあり、我々はサポーターの立場。東電には資金もアイデアもなく、2年間も良くない状況が続いてしまった」と釈明すると、会場から「責任転嫁ではないか」との失笑が漏れた。
一方、原子力規制委員会のあり方にも疑問の声が上がった。2007年に調査団を率いて訪日した仏原発安全当局者は「規制委員会の技術顧問が、問題解決を図るため東京電力にアドバイスするのは、原子力安全の責任分担をあいまいにするものだ」として強い懸念を表明。
規制委員会側は「規制当局は電力事業者と一線を画すべきだが、福島第1原発事故に限り、問題の拡大を防ぐために行っている」と説明した。


 

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明日に向けて(743)福井原発銀座の近くに米軍基地(Xバンドレーダー)?とんでもない・・・(2)

2013年09月20日 06時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20130920 06:30)

昨日の続きを書きます。

安保条約があったから日本が平和を享受できたというのは間違いだ!

「安保条約があったから日本が平和を享受できた」という論に応えて欲しいとのことですが、その場合の平和とは何でしょうね。僕は人殺しが少ない!という意味での平和は享受できていると思いますが、それはアメリカの核の傘のせいではないです。
なぜかと言えば、傘を持っているご本人が、ものすごい殺人社会の中にいるのですから。その意味でこの平和を守ってきたのは、核の傘の下に置かれようとも、軍隊の戦闘を認めてこなかった憲法9条とそれを守ってきた人々の営々たる努力だと僕は思います。

一方で、「核の傘のもとでの平和」という場合は、産業の発達のことを指す場合が多いと思うのですが、この点では血塗られていて恥ずかしい面も多いです。なぜって日本が戦後復興に向かったのは朝鮮戦争の特需があったからでした。かつて日本が植民地化して踏みしだき、戦後不幸にも分断支配を受けた朝鮮半島で戦争が起こったからこそ、日本は景気が回復し、特需で伸び上っていったのです。
さらに高度経済成長は、ベトナム戦争特需が大きな支えになりました。アメリカが戦争物資を主に日本で調達したがゆえに、私たちの国は大儲けしたわけです。団塊の世代の方たちによる学生反乱は、このことへの抗議を中心にしていましたが、それでも沖縄から連日、ベトナムに爆撃機が飛び立って、信じられないほどの爆撃が行われました。ベトナムは今もその後遺症で苦しみ続けています。
非常に悲しいのは、この朝鮮戦争の空襲も、ベトナム北爆も、同じ司令官が指揮していたことです。名前はカーチス・ルメイというのですが、実はこの人物は東京大空襲の作戦立案者であり、その後の都市空襲から原爆投下の総責任者でした。ルメイは、日本空襲で味をしめたことを朝鮮半島で、ベトナムで繰り返したのです。しかも今度は日本を出撃拠点にしてです。
そのルメイに日本は最高の勲章を送っています。航空自衛隊の創設に貢献したからだそうです。僕はこうときにこそ使う言葉が「国辱」なのだと思っています。

こうしたアメリカへの協力のために、第二次世界大戦におけるアメリカの戦争犯罪は一つも訴求されず、むしろ日本政府は被害隠しに奔走しました。その最たるものが原爆被害のものすごい過小評価でした。そのために原爆の熱線と放射線を浴びたヒバクシャが悶絶の苦しみを経なければなりませんでした。
しかもアメリカは、ビキニ環礁核実験以来の世界の核兵器反対の声を抑え込む秘策として日本に原子力発電所を持ち込みました。そのとき、広島・長崎での被害隠しに使われた非常に緩い放射線評価が持ち込まれ、それが今、東北・関東の人々を苦しめる元凶になっています。
こう考えるならば、確かに私たちは、人殺しがうようよいるような状態から解放されてきましたが、アメリカの属国として戦争に協力させられ、手を汚してきた暗い過去を持っています。

さらにアメリカへの戦争協力の下で、かつての戦争のときの人権侵害がなんら正されずに社会に構造的に残ってしまい、そのことがかつては「社畜」と言われるまでに働かされた日本の人々の姿を作りだし、今は正規雇用が激減してまともに働けない若者が激増するような社会構造が生み出される根拠になっています。
日本社会に特有の構造的暴力を象徴する数字があります。さきほど日本はOECDの中で、人に殺される可能性が一番低い国だといいましたが、実は自殺率は韓国についで2位と非常に高いのです。背景にあるのは人権が弱く、構造的暴力にさらされている人々を守る力が社会的に弱いことです。
その意味で、アメリカの暴力にくみしだかれてきた私たちの国は、本当の意味での「平和」にはまだまだ遠いところにいると思います。沖縄に基地の矛盾が押し付けられ続けていることを考えても、とても平和とは言えません。真の平和を創造する努力が問われています。

朝鮮半島は今、戦争の中の休戦状態であるころが知られていない。

昨日のやり取りで気になったのは、北朝鮮ないし、朝鮮半島情勢をいかに捉えるかです。
というのは、少なくとも建前的、つまり原則的には、北朝鮮はアメリカと交戦状態にあります。交戦状態の中の休戦状態なのです。正確にはアメリカを中心とする国連軍と北朝鮮が交戦中なのですが、その北朝鮮が国連に参加しているというネジレ状態です。
その中で北朝鮮が望んでいるのは和平条約を結び、戦争状態を終結させることです。ところがアメリカは、戦争状態がなくなると在韓、在日米軍の駐留根拠が失われるので、現状維持を望んでいます。対して北朝鮮は、核カードなどを使い、アメリカを交渉に引っ張り出そうとし続けているのです。

この大前提がほとんどの人に理解されていません。まずはここに大きな問題があります。もちろん報道が悪いからでもあります。その最たるものは「六か国協議」という言葉の使い方についてです。
というのは、これは戦争当事者を含み、互いに国家として承認しあってないものたちを含む会談です。だから英語では、必ずsix partyによる会談とかかれるのです。六つの国家による対話などとは書かれないのです。
いや英語だけでなく、試しに外務省のサイトをご覧になってください。そこにも「六か国協議」などとは書かれていません。「六者会合」と書かれています。外務省のサイトは海外の日本語のできる人が読むことが多いのため、「六か国協議」などとは書けないのです。

六者会合関連協議(外務省サイトより)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/index.html

実際、北朝鮮の地図上の領土は朝鮮半島全体で、韓国も同じなのです。互いに相手はないもの、ないし北部、南部を不法占拠しているグループという立場なのです。
ところが「六か国」と言った途端に、この軍事的緊張関係が見えなくなってしまいます。事実、大多数の日本人はこの大前提を理解していません。日本が北朝鮮と正式な国交を結んでいないこともよく理解されていない。意図的に伏せられてもいる歴史的関係性が理解できていないのです。
しかしこの大前提をしっかりと見据えるならば、日本の平和のために一番必要なのはアメリカと北朝鮮との交戦状態の解消=平和条約の締結であることは明らかなのです。その場合、南北朝鮮が互いを国家としてクロス承認することが必要で、そこにも困難があるでしょうが、今の流れではけして不可能ではないでしょう。
日本は朝鮮半島に、植民地化や朝鮮戦争への介在で多大な迷惑をかけてきたので、半島和平の促進をこそ、積極的にお手伝いするべきです。もちろんそれが日本の平和を大きく支えることになります。

ちなみに過去に戦われた「朝鮮戦争」という言葉だって、一般化などしてないことを知って欲しいと思います。あの戦争、北にとっては祖国解放戦争、南にとっては韓国戦争、中国にとっては抗米援朝戦争です。アメリカやイギリスはKorean Warと呼称しました。
このように、何気なく思える言葉に、前提的な認識や価値観が埋め込まれているのであり、それを歴史的に振り返って捉えることが大切なのです。歴史を丁寧に振り返れば、今ある矛盾の根拠もたいていは見えてきます。
反対に言えば、だからこそ私たちの国では、現代史をきちんと教えないのです。そこにこそ日本的マインドコントロールの秘訣があると言ってもいいぐらいです。だからこそ今、歴史の捉え返しが重要です。

平和を積極的に創造しよう!

以上が、「8のわ」に投稿したものをまとめたものですが、最後に、平和の積極的な創造という点を提案したいと思います。
平和は守るべきものですが、しかしただ軍隊が戦争をしていなければ平和だとも言えないことを、これまで論じてきました。社会に構造的な暴力がはびこる限り、真の平和な社会とは言えないからです。
その点で私たちの国は歴史的な反省に立った作り変えがまだまだ必要です。そのことで何よりも私たちの人権を、もっともっと強くしていかなければなりません。

僕はそのことをこそ、福島原発事故との向き合いの中で、果たしていく必要があるし、果たしていくのが、これだけ深刻に世界を汚染してしまった私たちの国の民が、世界のためになしていくべきことだと思うのです。
なかんずく、人類を本当に苦しめてきている核の時代を終わらせる真の可能性を、福島原発事故が起こった私たちの国から作り出していく必要があります。そのためには、世界中で生まれたヒバクシャのことを思い、その歴史を問い直し、被曝に終止符を打つことを目指していく必要があります。
歴史が進んで、人類が今の時代を振り返った時、「フクシマ」こそが転換点だったと言いうるような何か、核の時代を終わらせる営為を時代に刻み込むことを目指しましょう。そこにこそ今の私たちの平和の積極的創造があると思います。その手始めの一つとして、米軍基地に全国どこでもノーを突きつけていきましょう!

終わり

***

再度、署名のお願いをば

京丹後(京都)米軍レーダー基地計画を考えなおしてほしい!
http://goo.gl/LL5JSg


 

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明日に向けて(742)福井原発銀座の近くに米軍基地(Xバンドレーダー)?とんでもない・・・(1)

2013年09月19日 18時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20130919 18:00)

福井原発群の直近、京丹後に米軍基地が作られようとしています。Xバンドレーダーという、アメリカ本国に向かう弾道ミサイルを追いかけるレーダー基地で、完成されれば米軍と軍属160人が配置されることになるといいます。
これに対して、地元、宇川の人たちや、丹後半島、若狭湾周辺の方たちが、活発な反対運動を展開しています。京都市内からも呼応する動きが出ていて、明日、20日に市内で反対集会が開かれます。
しかし京都府知事が、府民に一切の説明もなしに受け入れに向かっており、今日、明日中にも了解してしまうかもしれないということで、府役所前で今、抗議の座り込みも開始されているようです。

僕もこの問題に、若狭湾周辺の方たち、「サステナわかさ」などに集う人たちなどが作った「8のわ」というFAESBOOK上のコミュニケーショングループに加わり、意見交換をしてきました。
そこで行われている署名運動や、チラシ作りなどに、ほんの少しですがお手伝いをさせていただいています。
今回は、このFB上で行ってきた対話の中で、僕が書きこんできた内容を紹介し、みなさんに原発の集中する地域への米軍レーダー基地建設の反対をともに訴えてくださるようにお願いしたいと思います。

以下、「8のわ」に投稿した内容を多少、修正してここに掲載します。(長いので2回に分けます。なおサブタイトルは読みやすいようにあとからつけました)

***

原発がたくさん海にあるこの国を軍事で守ることなどできない。憲法9条の完全実現の道しか現実的な選択肢はない!

ようやくこの間のみなさんの発言を読みました。
まだ十分にこの問題を把握できてはいませんが、大まかに感じることとして僕は米軍駐留反対から出発して、自衛隊の存在をも批判していくことが大事なように思えます。
京都府北部・・・というより若狭湾の安全を考えたとき、なんと言ったって、あの膨大な原発群が襲われないことが重要です。福島原発事故で分かったように、あんなもの、簡単に壊れます。原子炉が破壊されなくたって、プールに穴があいてしまえばそれで終わりです。しかも一か所でもやられて放射能が飛び出してしまえば、全員撤退しなくてはならなくなる。
要するに、とてもではないけれど、軍事的に守りきれるものではないのです。それをあんなにたくさん作ってしまった。僕はある意味、日本政府は実は北朝鮮をものすごく信頼しているのだと思うのです。よもや原発の攻撃なんかしないだろうと。実際、北朝鮮もまったくそんなことは考えていないでしょうが。

その点から言っても、若狭湾の安全、いや西日本の安全、それどころではない。日本とアジア、いや世界の安全にとって、絶対にこの原発密集地域を軍事的緊張におかないことこそが大切です。そのためにはアメリカ軍がリンクしている自衛隊だっていない方が絶対に良い。米軍のレーダー網の中に組み込まれているイージス艦もどかした方が良いです。
ましてや安倍政権は集団的自衛権の行使に動いています。どこかで自衛隊がアメリカ軍の展開に手を貸したら、どこでも報復を受ける可能性が出てきてしまいます。その際、原発群は標的としては恰好です。とても守りきることなんてできるわけはないからです。
現実にそんな攻撃を考えている人々など今は皆無だと思いますが、日本が非道な戦争を続けているアメリカに手を貸したら、反撃の機運もうまれかねません。しかし若狭湾に限らずこれだけ海寄りの僻地にたくさん作ってしまった原発を守りきることなどできるでしょうか。絶対に不可能です。

これは軍事戦略論からも言えることです。というのはかつてこの道の大家であるイギリスのリデル・ハートという人が、『戦略論』という本を書き、「非対称的戦争の論理」という概念を打ち出しました。たとえば中国に侵略した旧日本軍と、迎え撃った中国共産党紅軍(八路軍)の関係などがその典型です。
侵略軍である日本軍は広大な占領地を守らなくてはならなくなってしまったので、1年間365日、防衛戦が強いられました。これに対して遊撃戦というゲリラ戦法をとった八路軍は、365日のうちの1日だけ攻撃に成功したら勝利になります。これを「非対称的戦争」とリデルハートは呼び、軍事戦闘においては、防御の側に立つものが圧倒的に不利であることを主張したのです。
ベトナムに侵略したアメリカ軍がベトナム側のゲリラ戦に疲れ果てて敗北していった過程も同じ事が言えるし、アフガニスタンに侵攻したソ連軍の敗北も同じ構造からもたらされました。侵略地を守る側は365日、絶え間なく警備して「勝ち」続けなくてはならない。警備対象がたくさんあれば、その分、守りにさく力も大きくしなければならなくなります。防御に立つと圧倒的に不利なのです。

その点から、攻撃に非常に脆弱な原発が海沿いにたくさん立っている日本は、とても戦争などできない国なのだということを認識することが大切です。いや、国土が狭くて人口が密集している日本には、他にも攻撃に弱いものがたくさんあります。海側には各種のタンクも並んでいるし、攻撃目標には事欠かない。戦前の旧日本軍ですら、狭い日本本土の国防は難しいと考え、植民地を増やし、「絶対防衛ライン」とかを築こうとしたわけです。
これらから言えば、私たちの平和は、日米安保条約を離脱し、世界で無法に暴れまわっているアメリカと手を切ることの中でこそ大きくなります。何せアメリカは、「大量破壊兵器の製造」を口実に、実際にそんなもの持ってなかったイラクに武力侵略したような国です。そんなアメリカとの軍事条約こそが危険です。安保条約をなくして、代わりに平和友好条約を結ぶことが大切です。
再度、強調しますが、日本は今、瀕死の福島原発を抱えており、それ以外にも海辺にずらりと原発を並べていて、とても防衛などしきれるような国ではありません。だからこそ、世界に対して「攻撃しないでください」と言い続けるしかないのです。それが本当の「国防」の道です。だからこそ今こそ憲法9条の精神が大事なのです。憲法9条でしか、原発が林立する私たちの国は守れません。

ちなみに、原子力規制庁が出した原発災害対策には、原発が攻撃されたらどうするかを書いています。攻撃に備えて、今ある制御室とは別に制御室を作っておくのだそうです。でも本当に攻撃されたら、そんなところに人がいれるのでしょうか。あるいはその制御室も一緒にやられたら、もう終わりなのではないでしょうか。まさに絵にかいた餅の典型です!
しかも若狭湾には、いつも事故を繰り返している危険極まりない「もんじゅ」まであります。台風で土砂崩れが起きただけで孤立してしまうような半島の先にうじゃうじゃ原子炉があって、原発災害に備えて避難計画を考えても、とてもまともに逃げる道など確保できなような地域なのです。そんな若狭湾周辺に、これ以上に緊張など持ってこないでくれ!と私たちは叫ぶ必要があります。
いや福島原発事故がまったく収束の目途が立たず、常に危機に直面しており、さらにこれからどれだけの人材や予算を投入しなければならないかもわからない私たちの国に、さらに各地の原発を軍事的に守る余裕などさらさらありません。このリアリティの上にたって、真の平和の道を歩もうとの声をあげていきましょう!みなさま。いかがでしょうか・・・。


米軍基地の周りではどこでも性犯罪が多発!軍隊は性暴力と構造的にリンクしている!

8のわに投稿している女性たちから「米兵が来るとそれだけでストレスになる!」という書き込みがありましたが、まさにその通りです。これも大事な点なので少し掘り下げて論じておきます。

ここから述べることは、最初に沖縄の女性たちで作る「基地と軍隊を許さない女たちの会」の方たちが主張し始めたことなのですが、軍隊と性暴力には強い親和性があります。
というのは、アメリカ人とて平均的な若者は人を殺すことができないそうです。少なくとも大きな心理的な抵抗があります。軍隊はこの抵抗心をつぶして、人を殺人マシーンに変える組織です。
そのために兵士の中の心の中にある「お母さん」を殺すことが問われているそうです。なぜかというと、人は、とくに若者は、「こんなにひどいことをしたらお母さんはどう思うだろう」という思いが、暴力への心理的なストッパーになっているのだからだそうです。

そのために心の中の母を殺す。そのことが女性の尊厳に対する侵害につながり、ひいては性暴力に発展しやすいというのです。
ただし最近では米軍は兵士=男性ではありません。女性兵士もたくさんいます。アフガン戦争やイラク戦争の中で、米軍の中にはものすごい性暴力がはびこっているのですが、その中には女性上官が男性兵士に性暴力をふるうことも含まれています。
僕はこの場合も、彼女の中のお母さんが殺されてしまったのではないかと思います。「基地と軍隊を許さない女たちの会」は、このことに気がついて「基地」だけでなく、人間を殺人マシーンに変える「軍隊」という組織そのものを許さないという立場をとって活動してきています。

ちなみに、こうした米軍の姿をリアルに撮った映画に『フルメタル・ジャケット』というものがあります。必見です。前半で兵士たちの訓練シーンが出てくるのですが、教官をしているのは役者ではなく、もともとは演技指導に来ていた本物の教官です。
なぜ本人が出演することになったのかというと、訓練の中で、ものすごいスラングを使って兵士たちを罵倒し続け、それに「イエッサー」と言わせ続けるのです。もちろん母親への罵倒もすごい。そこに性的な表現が混じりこみます。
実はこれを聞いた役者さんが、「道義的に言って、とてもそんな言葉は自分は言えない」ということになり、本物の教官の登場になったとのことです。(だから必見といってもみるのが苦痛な方もおられると思います。字幕で見る分にはともかく、とくに英語の堪能な方には辛いかも。)

ともあれそれらから、普通の良き若者だった人物が、軍隊に入ることで人格を変えられ、歪んでいってしまいます。そんな人々がそばにいるだけで、ストレスだけでなく、身に危険があるのが当然です。
その証左にアメリカはOECD諸国の中で、外を歩いていて、銃で殺される確率が一番高い社会です。これに対して、もっとも低いのは、軍隊がまだ人を殺してない私たちの国、日本です。町を歩いている人々の中の、殺人経験者の率が圧倒的に少ないからこそです。
こうした軍隊と暴力の問題、性暴力の構造からも、軍隊を近づけない方がいい。この点も非常に重要です。

(対話の中で、映画『ONE SHOT ONE KILL 兵士になるということ』も必見だと教えてもらいました。戦争大国アメリカの現実を描いてきた藤本幸久監督が、アメリカ海兵隊の新兵訓練に迫るドキュメンタリーだそうです)

続く

***

なお、レーダー基地反対のための行動を紹介しておきます。1つは署名。もう1つは明日、20日に京都市で開かれる集会です。良ければご協力を!

京丹後(京都)米軍レーダー基地計画を考えなおしてほしい!
http://goo.gl/LL5JSg

【9月20日】
****************************************************
京都に米軍基地はいらない!9・20緊急集会
~止めよう経ケ岬のXバンドレーダー・危険な戦争準備を許さない~
****************************************************
■日時 9月20日(金)午後6時30分~9時
■会場 キャンパスプラザ京都 第四講義室
      (京都駅から西へ徒歩5分) 
■参加費 500円


■主内容 丹後のたたかいの報告と住民からの訴え 
           9月7日・8日のフィールドワークの報告 
       これからのたたかいの課題・方針の提起など
■主催   緊急京都府民の会南部連絡会 http://no-xband-radar.jimdo.com/

◆ 京都に建設されようとする新たな米軍基地
京都府北部の丹後地域は、豊かな自然に恵まれた地域で、多くの人々が自然と共生して生活してきました。
ところが日米両国政府は今年の2月、丹後半島の最北端にある京丹後市の経ケ岬に約160人の米軍・米軍属が常駐する新たな米軍基地を建設し、Xバンドレーダーを配備すると発表しました。
経ケ岬のXバンドレーダーは、グアムの米軍基地を攻撃する弾道ミサイルの迎撃を目的としたもので、日本の防衛とは何の関係もありません。京都府北部には、イージス艦が配備された海上自衛隊の舞鶴軍港が存在しています。
このXバンドレーダー基地が建設されるならば、京都府北部の軍事化、戦争態勢が一挙に強化され、東アジアの軍事的緊張をさらに高めるものとなることは明らかです。

◆地元の住民の不安と怒り
京丹後市をはじめ丹後の人々は、この新たな米軍基地建設に大きな不安を抱いています。豊かな丹後の自然や漁場が破壊され、強烈な電磁波によって危険にさらされるのではないか。
米軍や米軍属による事故、犯罪が起こっても、日米安保にもとづく日米地位協定によって米軍や米軍属が特権的に保護され、住民の生活と命が脅かされるのではないか。
戦争が起これば、この米軍基地が攻撃の対象となり、丹後の多くの人々が犠牲になるのではないかと。まさにあたりまえの不安です。
8月7日に地元で開催された京丹後市による説明会では、住民の不安と怒りの声が噴出し、Xバンドレーダー基地建設に反対する意見が次々と表明されました。

◆ 私たちの声と行動で新たな米軍基地建設を止めよう
私たちは、このような丹後の人々としっかりと結びつき、Xバンドレーダー基地建設を中止させるために力を合わせていきたいと思います。
防衛省は関連自治体や地元住民にXバンドレーダー基地の受け入れを迫り、京都府知事や京丹後市長もまた、条件付きで受け入れるという意向を示しています。
事態は緊迫しています。この新たな米軍基地建設をとめることができるのは、私たち一人ひとりの声と行動だけです。
ぜひ、この9月20日の集会にご参加ください。平日夜の京都での集会ですが、京都のみならず大阪・兵庫・滋賀・奈良など関西各地からのご参加をお願いします。

緊急京都府民の会南部連絡会 
共同代表:大湾宗則・白井美喜子・上岡修・仲尾宏

 

 


 

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明日に向けて(741)福島原発汚染水大量漏れの考察(3) 東電が「実はもっと漏れていた」と次々に告白!

2013年09月18日 23時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20130918 23:00)

台風18号がもたらした「記録的な大雨」の中で、もんじゅと福島原発がまたしてもトラブルを起こしました。
このうちもんじゅのトラブルについては、すでに報じましたが、もんじゅの現状をモニタリングするデータ回線の切断そのものが、やはり台風によって起こった土砂崩れによるものでした。
このためケーブルが張り替えられ、17日午後8時50分頃にデータ送信が再開されました。42時間の送信停止でした。

これでもんじゅについては、ひとまず危機は去ったかと思いましたが、本日18日午前11時10分ごろ、今度は冷却材のナトリウムの漏えいを監視する検出器が停止してしまいました。使用済み核燃料などの貯蔵容器からナトリウムが漏れてないかを検出するものです。
中央制御室で異常に気づいて確認したところ、空気やガスなどを検出するために通常は開いている弁が閉じていたとのことです。約1時間後に復旧しましたが、なぜ弁が閉じてしまったのかは明らかにされていません。
また半島の先にあり、一本道しかないためのいざとうときの構造的な脆弱性はもちろん未解決なまま。今すぐ、重大な危機に向かっているということはないですが、それでももんじゅについては一刻も早く廃炉を決め、危険な液体ナトリウムが回っている状態をストップし、燃料棒を安全な場所に移すなど、解体に向かうことが大切です。


さて今回は同時に起こった福島原発の汚染水問題を分析したいと思いますが、こちらの方がより深刻であり、同時により裏がありそうです。というのは単に台風の風雨で汚染水が海に流れてしまったということにとどまらないからです。
おそらくはこのタイミングを東電が狙ったのだと思いますが、実はタンクからの沁みだしは1年8か月前から起こっており、その間、ずっと風雨によって放射能が流され、海に入っていたと思われることを東電が告白したからです。それだけではなく、これまで漏れてなかったはずの他のタンクからも、漏れていたとまで言い出しました。
いつものように東電は悪い情報を出すときは、これでもかというようにいっぺんに出してきます。そうすると実態も、もっとも悪いものが何かも、見えにくくなるからです。この「汚染水問題の連続展開」とでもいうべき事態を解析する必要があります。

情報を整理しましょう。まず台風で何が起こったのか。タンクの周りにあるコンクリートの堰(地上30センチ)が風雨によって溢れそうになってしまいました。そのため東電は、この堰のドレンバルブを開けて周辺に汚染水を流しました。
溢れそうになったから流した・・・といっても、実態は溢れたことと何ら変わらないのですが、その際、東電によれば汚染水は、ベータ線を出す核種が1リットルあたり24ベクレルで、ストロンチウムの排出基準である30ベクレルを下回っていたから問題ないと判断したと言います。
そのためガンマー線核種であるセシウムについては測りもしませんでした。汚染水をストロンチウムによるものと仮定し、セシウムについては無視して排出したのです。流した総量は1130トンとされています。

ここでまず問題を指摘すると、福島原発に限らず、海への放出規制が、1リットルあたりの値で測られていて、総量が問題となってないことです。いわば薄めればいくらでも捨てられる。実際、今回も1130トンという膨大な量が排出されています。
その多くは排水溝に流れ込んで海に出てしまったでしょう。しかもこの排水溝の出口は、福島原発の前の港湾とは別のところにあります。安倍首相が「完全にブロックされている」などと語った場所よりももっと遠いところからじゃんじゃん排出しているのです。
たとえ1リットルあたり1万ベクレルあったとしても、1リットルしか放出されないなら海に漏れる量も1万ベクレルになります。しかし今回は30ベクレル以下といっても1130トンです。ではどれぐらいが出たのか。ベータ線核種で約885万ベクレルと推定されています。これ自身が大問題です。

しかしこの1リットル30ベクレルという「基準」を上回る汚染水の排出もされてしまったという。15日午後1時過ぎ、「Bエリア」のタンク群から1リットル当たり37ベクレルの汚染水が漏れ出したというのです。ただし5分間のことで、総量は少ない。というか全体の話しの中ではこれは「ささい」なことで、むしろ他の話との混同を誘っているようにしか見えない。
より問題があると思われるのは、8月19日に高濃度の汚染水300トンが漏れた「H4」タンク群近くの用水路で、タンク群からの排水をせき止める土のうが流れてしまい、2時間にわたって水をせきとめることができなかったことです。
ただこの点も非常にわかりにくい発表になっている。H4のタンクの堰から漏れたとは書いていない。その近くの排水路が(B排水路)が、海に流れ出ている次の排水路(C排水路)に合流する前を土のうで防いでいたけれど、それがはずれたというのです。

H4タンクから8月19日に300トンも漏れ出したのは、ベータ線で8千万ベクレルというとんでもない値のものでした。それが周辺の地面などにも浸透している。そこを流れる雨が流れ込むのがB排水路で、だから猛烈に汚染された地面の上を流れた雨が海に入らないように、C排水路との合流を止めていたと思われます。
しかしそれならこの付近に降った雨自身はどうなるのか。まさか雨をすべてタンクに入れるわけにはいかない。しかし排水路をせき止めれば行き場を失うはずです。
それで当該の土のうの様子がどうなってみるかを調べると、ただ流れてくる排水路に並べられていただけのものであることが分かります。これが押し流されたというのですが、水量が増えれば、水は土のうを越流するだけではないか。これで何が止められていたのかもよく分かりません。以下、東電の配布資料をご覧ください。

福島第一原子力発電所 台風によるB排水路土のうの流出に関して
東京電力 平成25年9月17日
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130917_02-j.pdf

ここから考えられることは、タンクから漏れ出して地表を汚染していた放射能は、雨によってどんどん海に出ていたのではということですが、なんと17日になって東電が「その通りだ」という発表しました。ここが一番、重要な内容なので、読売新聞の記事をそのまま貼り付けておきます。

***

汚染水、1年8か月間流出の可能性…東電発表
読売新聞 9月18日(水)7時57分配信
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130917-OYT1T01024.htm

福島第一原子力発電所の貯蔵タンクから漏れた汚染水中の放射性物質が、雨水とともに約1年8か月間にわたって、周辺の地中や港湾外の海に流出し続けていた可能性があると、東京電力が明らかにした。
東電の説明では、2012年1月と2月に、2区画のタンクからの汚染水漏れを見つけ、漏水部分をふさぐ補修工事を行ったが、タンクを囲む汚染水の外部流出を防ぐせきの排水弁は当時から開きっぱなしにしていた。先月に300トンの汚染水漏れなどが見つかったタンクがある2区画とは別だった。
東電は15日、台風18号の接近に備えてせき内にたまった雨水を採取し、検査を実施。その結果、この計4区画のせき内の雨水には、ストロンチウムなどの放射性物質が1リットル当たり17万~2400ベクレル含まれ、国の放出基準値(同30ベクレル)を大幅に上回っていた。
東電は17日、「せき内に残っていた放射性物質が雨水と混ざり、排水弁を通じてせきの外に流出した可能性がある。外洋への流出も否定できない」と話した。

***

なんと、1年8か月にわたって、タンクから漏れ出した汚染水が、雨水とともに海に流出し続けていたというのです。台風による大雨のために、タンクのまわりの堰から排出したものが1130トンになったという話をしている最中に、「そんなことは1年8か月前からやっていました」と言い出したのです。
世の中が全体として、台風の被害に意識を奪われているときに、東電も福島原発が台風の影響を受け、汚染水を流してしまったという話から始めながら、いきなり今回の台風とは関係のない、これまでの1年8か月の汚染水の雨水による海への漏れを語りだしたのです。
さらに同じく17日、東電はこれまで漏れが確認されていたのとは別の、新たな7つのタンク区域でも、過去に汚染水漏れが起こっていたということも発表しています。タンクの位置などの図がある東京新聞の記事をご参照ください。

福島第一汚染水 別の7タンク群漏出か
東京新聞 2013年9月17日 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013091702000227.html

話しをまとめましょう。初めに東電は、今回の台風でタンクの周りの堰が溢れそうなので、排水をした。1130トンだった。ベータ線核種で最大でも1リットル20ベクレルで、ストロンチウムの法令基準30ベクレルを下回っていると発表しました。
ところが続いて、一か所では37ベクレルあったと言い出し、さらに8月に300トンも漏れた高濃度の汚染地帯のそばの排水路が、他の排水路と合流する地点の土のうが流されてしまった。2時間かけて直したと発表。ああ、やはり法令を上回る汚染水が漏れたのかと思える内容を語ったことになります。
その後、17日になって、このような汚染されたところを雨水が流れ、汚染水が海に入ったことは1年8か月前からあった。実は他のタンク区域からも漏れていた・・・と言いだしたわけです。この一連の事態の中で一番、重要なのは1年8か月、他のタンクからも漏れていて、それが海に入っていたとという事実です。

端的に言って、この1年8か月、この重大な事実に気が付かなかったのか。そんなことは絶対にない!確実に分かっていたはずです。その発表の機会をうかがっていて、今回の台風被害のどさくさに紛れて打ち出したとしか思えません。
さらに東電がなぜ今、この時期、隠していた汚染水のことを一気に語りだしているのかというと、明らかに、安倍オリンピック招致発言の大嘘の影響があると思えます。なぜか。これで東電は政府に対して一気に有利になったからです。
なにせ東電が「漏れている」と言っても、政府が「そんなことはない」とかばってくれるわけです。絶対に今はこの件で政府から責められることはない。なぜか。今、東電を責めたら、安倍首相の大嘘発言が鮮明化するばかりだからです。政府は愚かにも、何があっても汚染水が「完全にブロックされている」ことにしなくてはならなくなってしまった。

私たちの危機は実はここにこそ大きくあることを認識すべきです。どういうことか。東電の汚染水管理は完全に破たんしているのです。しかもかなり前からです。汚染水は原子炉がメルトダウンして以来、一貫して海に漏れ出ていたのでした。
その上、タンクに一部を移してもそこからも漏れ出し、雨が降るたびにそれもまた海に流れ込んでいたのでした。地下水の流入による海への直接な流れも、くみ上げたタンクが次々に漏れを起こしてしまうこともまったく止められずに来たのです。汚染水の海への流入は一貫して続いていた。
しかし安倍首相が大嘘の国際公約をしてしまったために、政府はなんとしてもその事実を認めるわけにはいかなくなった。東電がどんなに失敗をしていようが、政府が自らのためにそれを隠し続けなければならないはめに陥ってしまったのです。だから東電はここぞとばかりに「実は漏れていた」情報を出しているに違いない。

東電の狙っているものは何か。ただただ自らの訴追を逃れることだけです。東電の発表に汚染水問題を解決する何らかの意図があるわけではない。そうではなくて、今のうち出せるだけの不利な情報は出しておいて、政府に責任をとらせ、金も出させ、自分たちは完全につぶされることのない道を切り開こうとしているのに違いない。
そして政府はその罠にまんまとはまってしまったと言えるのではないか。その意味で安倍首相は、自らのパフォーマンスで、東電にイニシアチブを握られてしまったと言えます。東電に強気に出れなくなってしまった。東電を悪者にせずに、しりぬぐいをさせられる形に自らはまり込んでしまったのです。
しかしそうなると今後は、東電と政府がなれ合いつつ、事態の深刻化を覆い隠して進むことになります。そこにこそ私たちにとっての最も大きな危険性があるのです。

明らかにしなければならないことは、台風の問題以前に、汚染水漏れが激しく起こっていたという事実です。一番、重要なのは、地下水が流れ込んできて、1日に400トンもさまざまな箇所の汚染水がまじって、海に流れ込んでいたことです。
同時にタンクへの貯蔵も失敗し、繰り返し敷地内に漏れ出していて、それもまた風雨によって海に入っていしまっていた。その意味で、汚染水問題一つとっても、福島原発はまったくのアンコントロールな状態にあるのです。
この状態をはっきりと認め、事故収束宣言の撤回を世界に向けて明らかにし、国を挙げて、事故収束に向けた最大限の努力を傾注することをこそ公約しなければなりません。これにはいくらお金がかかるかわからないのですから、こんな状態でオリンピック開催なんてもってのほか。とてもそんな余裕などありません。

私たちはこのことをこそ内外で大きな声をあげて訴えていこうではありませんか。もう一度いいますが必要なのは、事故収束宣言の撤回と、危機の宣言です。またまったく対処能力を失い、倫理観ももともと欠如している東電をここで断固として処理、処断すべきです。倒産させて完全な国有化をはたすべきなのです。
汚染水問題が私たちに突きつけているのはこのことです。


 

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明日に向けて(740)もんじゅでトラブル、道路も寸断・・・自然災害と原発災害双方からの避難準備の強化を!

2013年09月16日 23時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20130916 23:00)

台風18号が日本中を席券しました。とくに京都府の福知山市、京都市などで川が氾濫し、大きな被害が出ています。すでに「明日に向けて」の(734)で、「特別警報が出たら「ただちに命を守る行動」を!」というタイトルで水害対策を呼び掛けましたが、その「特別警報」が今回、初めて京都府と滋賀県に発令されました。
この間、明らかに雨の降り方、気象の変わり方が従来と変わってきています。原因として温暖化などが考えられていますが、ともあれ事実としておさえるべきことは、災害に対するこれまでの想定が次々と突破されてしまっていることです。災害対策の見直しが必須です。
また、その上に重要なのは、今回の台風災害でも原発サイトでのトラブルが重なった点です。自然災害と原発災害を同時に起こるものとして備えねばならない必然がより大きくなりました。この点を分析するために、今回は、現にトラブルが継続中のもんじゅの問題について分析しておきたいと思います。

もんじゅに起こったのは、もんじゅの原子炉の状態などをモニタリングし、原子力規制庁下の原子力安全基盤機構(JNES)に自動送信するシステムにトラブルが生じ、データ伝送ができなくなったことです。16日午前2時56分に発生しました。
同時に台風18号による2か所の土砂崩れが重なりました。1か所はもんじゅから約2.5キロ離れた県道上ですが、もんじゅにつながる一本道であるため、もんじゅへのアクセスが遮断されました。さらにもう1か所、もんじゅ敷地内の正門付近でも土砂崩れが起きました。
このためシステムトラブルを修理するエンジニアが現場に入れない事態が生じてしまいました。これを書いている16日23時現在、なんとかエンジニアが入れたようですが、すぐさま修理を行うことができなかったこともあって、システム回復の目途が立っていません。このためもんじゅは今、監視体制が手薄な状態にあります。

問題のシステムは「緊急時対策支援システム(ERSS)」と名付けられたものです。これは原発事故などの緊急時に、当該の原発から送られてくる情報を解析し、問題のプラントの状態や事故の進展を予測するシステムです。
「情報収集システム」「判断・予測支援システム」「解析予想システム」から成り立ち、このうち「情報収集システム」が各原発サイトからの情報の自動送信システムと、受信システムで構成され、後者は、経産省の安全保安院・緊急時対応センター内に設置されています。
あとの2つは、入力された情報と、これまでデータベースに蓄積された情報を比較・解析し、事故状態の判断と、その後の進展予想を計算するものです。前述の原子力安全基盤機構(JNES)におかれています。

このシステムが立ち上げられたのはJCO事故による原子力災害法の制定と、防災基本計画改定を契機としています。重大事態が発生した場合の現状把握と、瞬時の予測が目指されました。さらに新潟県中越沖地震を踏まえ、大規模自然災害発生時にも、プラントから情報が伝送されるようになりました。
また中国電力管内のダムでデータ改ざんがされたことを契機に、原子力事業者の「隠す行為」へのけん制効果をも狙ったものとして、情報の常時自動転送システムが作り出されたのです。
ところが福島第一原発事故に際しては、全電源が喪失されたため、このせっかくのシステムがダウン。もっとも重要なデータが得られませんでした。このため、原子力規制庁は、同庁発足後に最重要課題としてこのシステムの運用改善に取り組み、昨年9月に同システムの「運用マニュアル」を策定しました。以下にURLを示しておきます。

緊急時対策支援システム(ERSS)における運用マニュアル(内規)
平成24年9月原子力規制委員会 原子力規制庁
http://www.nsr.go.jp/activity/bousai/data/120919_erss00.pdf

ところが、今回、このシステムのうちのもんじゅからの送信が途絶えてしまったのです。システム側からみれば、もんじゅの様子がまるで分らなくなってしまったことになります。
これに対して、原子力規制庁は、もんじゅを管轄する原子力開発機構に対し、電話やFAX、メールなどでデータを送るように指示したとのことですが、システム全体のことを少し調べてみると、それではまったく意味がないことが見えてきます。
というのは、さきほどのマニュアルのP25~27、「表1―3 研究開発段階発電用原子炉施設 常時伝送データ一覧(もんじゅ)」をみれば明らかなように、常時伝送情報は約140項目にも上るからです。

もんじゅで何らかのトラブルが起こった時、これらの数値に異変が記録され始めます。それがリアルタイムで収集されて、データベースとの照合のもとでの計算に回され、ただちに現状把握や、予想がはじきだされるわけです。
しかし140もの項目について、電話・FAX・メールなどを使っていては、膨大な時間がかかってしまいます。あるいは情報の誤記、ご伝達なども生じやすい。それが重大な間違いであれば、たちまち計算ミスになり、現状把握も予測も間違ってしまうことになる。
そのため、常識的に考えて、非常時には、電話・FAX・メールなどで代替できるシステムではないのであり、それを行っている現状は、事実上、システムが死んでいる状態なのです。

もちろん、もんじゅそのものにトラブルがない状態であれば、システムもとくに威力を発揮せず、計算が行われなくても問題はありません。だから電話などでのんびり情報を送っていても問題にならないのかもしれません。
このシステムは、非常時にこそ期待された本来の力を発揮するように設計されたものだからです。ということは現状のもんじゅは、非常な事態になった場合にそれを把握するシステムそのものがダウンしている状態にあることになります。
その意味で、現在、炉心などに何らかの危険が迫っているという兆候があるわけではありませんが、非常事態時のモニタリングシステムがダウンしているという形で、危険な状態におかれていることをみておく必要があります。過去に1万点以上の点検漏れのあったずさんな管理のもんじゅがです。

さらにこうしたシステムのダウンを、すぐに直しにいけないというのは、もんじゅの決定的な脆弱性のうちの一つです。それはもんじゅをはじめ、日本の多くの原発が、過疎地に建てられてきたことに孕む構造的脆弱性でもあります。
これでは原子炉にもっと深刻な何かが起こった時、たとえば福島原発事故のように、自然災害の中で、電源喪失などが起こった時、すぐに現場に急行して対応することができない可能性が大であることを物語っています。
今回はたまたま土砂崩れが2か所ですみましたが、もっと多発する可能性があります。いや、今回の降雨で地盤が緩んでいるために、可能性は確実に高まっていると言えます。

これらから言えることは何か。一つにこのシステムが復活するまで、もんじゅに対しては最大級の警戒をしなければならないということです。今、事故があったら、国の側のシステム的な防備はまったく手薄です。
そのため危機の兆候があったら、ただちにできるだけ遠くに逃げた方がいい。事故の状態や進展の方向性を計算するシステムがダウンしているのですから、どんな兆候でも対応した方が無難です。
もんじゅのお近くの方は万が一の観点に立って、避難準備を行ってください。またもんじゅで何かあった場合は、通常の原発よりも危険ですから、僕のいる100キロ圏内に入る京都市などでも万が一の観点に立った備えをした方が良いです。

さらにもう少し長いスパンで見るならば、今後、自然災害と原子力災害の複合事態を想定した対策の強化を図る必要があります。対策の大きな柱が避難計画ですが、自然災害の中での原発災害からの避難を考えなくてはいけない。というよりも、今後、私たちは自然災害に見舞われたときに、常に原発災害を意識する必要があります。
台風や豪雨、竜巻などが、原発を襲うことを嵐が来る前から想定しておく必要があるということです。そのためには水害で避難するときには、さらに原発災害で避難することが重なることも想定して行動した方が良い。実際に、福島第一原発事故のときはそうだったのですから。忘れ去られがちですが、これほど恐ろしい実例はありません。
もちろんそれは非常に困難なことですが、平時に可能な限りの対策を練っておけば、その分だけ非常時に命を守れる可能性を広げることができます。まずは自然災害と原発災害の双方について、基礎的なことを知っておくこと。学習を深めておくことが大事。さらに双方を想定した避難計画を各自でたてておくことがとても重要です。

気象庁は、特別警報が出たとき、私たちに「直ちに命を守る行動をとる」ことを求めていますが、そのときは同時に、お近くの「原発の今」に十分な警戒を払い、直面する水害に、原発災害が重なりうることをも意識して行動しましょう。
そのための準備、訓練を重ねていきましょう。かっこたる信念とリアリティを持ち、自然災害対策+原発災害対策を進めていきましょう。

 

 

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