明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(158)滋賀県高島市で、0.4マイクロシーンベルトを検出?誤数値の可能性も

2011年06月17日 17時00分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110617 17:00 0619 15:30改訂)

この情報は、6月17日17:00に第一信を配信しましたが、その後、「0.4マイクロ
シーベルト」という、まだ確実になっていない情報が独り歩きしては
ならないと考えて、文章の構成を変えるなど大幅な改訂を施したものです。
その点を留めおいてお読み下さい。


あるメーリングリストを通じて、次のような情報が回ってきました。

「こんな情報が回ってきましたけど・・・。
ショックです。
http://matome.naver.jp/odai/2130819065065265501

守田さーーーん、
どう思われますか?????」

内容は「滋賀県高島市で0.4~0.5、名古屋市守山区で0.4マイクロシーベルト」
の放射線が計測されたというものです。

これは僕自身が裏を取った(確かめた)情報ではありません。
いつもなら自分で確からしいと判断できない情報発信はしないように
しているのですが、「守田さん、どう思われますか?」と投げられたので
これはお答えしておかなければならないなと思いました。

まず大前提として、計測器の誤作動等々、数値そのものが、まだ確実なものと
僕自身では判断できないなかでの推論であることをお断りしておきたいと
思います。

そこでこの点について、まずは高島市に尋ねてみようと考え、職員の方と電話で
話をしました。非常に丁寧に対応してくださいましたが、0.4マイクロシーベルトが
検出されたという情報があることにショックを受けていました。
ただこちらとしても機器の精度などを含め、確かな情報かどうか確信が持てていない
と断ってお話ししました。

高島市役所では、原発が近いこともあり、市議会での答弁に放射能問題が
頻繁に出て来て、市職員が対応に追われているそうです。そのためもあり、市内
各地にモニタリングカーを走らせているそうです。

その結果ですが、今のところ、いずれからも0・04マイクロシーベルトぐらいの
数値しか報告されておらず、0.4マイクロシーベルトという値は聞いたことがない
とのことでした。
高島市が公的に測って、この付近では0.04マイクロシーベルトという値の計測が
されていることをまずは明記しておきたいと思います。

これらから、今回の高島市での0.4マイクロシーベルトという計測値が、正しい
という根拠は僕には得られていません。高島市の職員の方、何人かとお話しま
したが、みなさん対応が丁寧で、何かを隠し持っている感じなどはまったく
しませんでした。

「今後も、市民の側からつかんだ情報をお届けします」とお話しすると、ぜひお願い
しますとのことでした。ただしどの担当部署で何を受け持つのか、まだ混乱している
のだそうです。健康課なのか、環境課なのかなどなど、線がなかなか引けないのだ
とか。それで情報は市役所全体を統括する、
0740-25-8000
にかけてくださいとのことでした。


その上で、一般論になりますが、数値が高くなりうる可能性を考えてみました。
一つは福島由来のものが、滋賀県にも飛散してきていることです。
まずはこの可能性が一つ。

もうひとつは、敦賀半島のもんじゅや敦賀原発、ないしは若狭湾の原発からの
放射能漏れの影響です。実際、5月初旬に敦賀原発が事故を起こし、放射能
漏れが起こっています。「ごく微量で、環境への影響は無い」と発表されましたが、
こうした発表に信ぴょう性が感じられないのはご存じの通りです。

これらの場合、他県の場合を考えてみると、やはり汚泥処理施設などで濃縮され
それが焼却されて、周辺環境を汚染しうることが考えられます。
高島市の場合は、高島市衛生センターが、汚泥浄化施設としてあります。
ただしここでは汚泥の脱水作業のみを行っており、焼却は、今津町にある
高島市環境センターで行っているそうです。ここまで衛生センターから汚泥を
運搬しているそうです。

いずれにせよ、大阪の汚泥から放射能が検出されたことにより、そうした値が
出ても、不思議には思えない面もあるのが、ある意味で現状の厳しさを物語って
いるように思えます。ただし、大阪の値を追跡調査したところ、少なくとも市の側は
非常に微量であることを強調しており、この点も継続的なウォッチが必要です。


とにもかくにも、「一家に一台、ガイガーカウンター」の時代が本当に来たのだと
思います。なかなか手に入りませんが、なんとかそれぞれで入手して、できるだけ
共同で、広範囲で使用し、計測を重ね、情報を交換しあっていくことが大事だと
思います。測ったら、行政にも積極的に伝えるといいと思います。

0.4マイクロシーンベルトは、1日では9.6マイクロシーンベルトに相当します。
放射線管理区域に近い値であり、かなり高いです。そうした地域には、放射性
物質の微粉末が浮遊している可能性があります。当該地域は、マスクを着用
した方がいいです。

またおそらくすべてこれまでの雨でいったんは地面に落ちたと思いますが、雨の
あとに晴れて乾きだしたときに、また多少は飛ぶので、雨のときの水たまりと、雨が
あがって晴れ間が出て、水分が蒸発するときにより気を付けた方がよいです。

また空間線量が高い場合は、周辺により高濃度のホットスポットがあると思った
方がよいです。その場合は、福島での放射能除染・回復プロジェクトがやっている
ような除染を行った方が良いです。

高島市の場合は、まだモニタリングカーによる計測で、0.04マイクロシーベルトしか
観測されていないので、今のところ、その可能性を裏付けるに足るデータはない
段階だと思います。だからこそ、積極的な計測を行って、よりはっきりとした値を
つかむこと大事だと思います。これは他の地域でも言えることです。何せどこも
かしこも、原発の近くなのですから。

みなさんも、自分の地域で高い放射線量の報告があったときは、ガイガーカウンター
を持っている人をみつけて、まずは測るとともに、地域の汚泥浄化センター、焼却
場所の場所を調べ、その上で行政に積極的に尋ねてみると良いと思います。

みんなで放射能への積極的なウォッチを行っていきましょう!


(追記)
その後、守山市の方からもコメントをいただきましたので、ここに貼り付けて
おきます。

eggplant
私も昨日、この情報を知りビックリしました。
が、やはり機械の誤作動の可能性が高いんじゃないかと感じます。
私は名古屋市の北隣のエリアに住んでいまして、高い数値が観測されたという
守山区は、さほど遠くはありません。
守山区には汚泥消却施設などは無い筈ですし、(守山区の隣の)北区にある放射性
物質観測点(地上三十数メートル)は連日コンスタントに、0.04マイクロ前後の
推移、恐らく地上でも、0.1マイクロ以下でしょう。
紋白蝶を始め、蝶々もよく見かけますし、私自身、体調も特に問題無いと思います。

勿論、可能性がゼロで無い事は確かではありますが‥
コメント (4)
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明日に向けて(157) 「シビアアクシデント対策」という名の安全思想の切り捨て

2011年06月17日 12時41分15秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110617 13:00)

このところ、新聞記事をみていて「それは違うだろう」と思わず口に出してしまう
ような発表が続々と行われました。
「それは違うだろう」というのは、事実の認識と、そこから引き出した結論が
全くずれていることへの僕の憤慨です。
以下、「それは違うだろう」と思わざるを得ない点を幾つか指摘します。


まず一つは「原発の安全・耐震・防災指針見直し決定 原子力安全委」という
記事です。「地震で想定外の事態が相次ぎ、総崩れになった安全確保の指針は
抜本的な見直しが迫られている」。だから来年3月をめどに報告書を作り、
今後、2,3年かけて抜本的な規制見直しに取り組むというのです。

しかしこれは現状の安全・耐震・防災指針がまったく間違っていることを
意味しており、当然にも現状の運転の「安全・耐震・防災指針」が全く間違っている
ことになります。だからどう考えても、ここからは全ての原発の即時停止をすべきだ
という結論しか導きようがない。

ところが記事には平然と?「今後、2~3年をかけて規制の抜本的見直しを
行う」ことが紹介されています。ならばせめても2~3年先まで運転をしてはならない
のではないか。それまでの運転の安全、耐震性等々は何も保障されていないことに
なるのだからです。

政府・電力会社の考えはこの点でひどく間違っているし、それを何ら指摘せずに
報道する朝日新聞は、政府・電力会社の公報の役割しか果たしていません。


これに続く次の記事、事実もまったく同様のことが言えます。
「電力各社、過酷事故へ対策 保安院15日から調査」と題したものです。
核心的な内容は次の点です。

「経済産業省原子力安全・保安院は14日、電力会社など原発を所有する11事業
者から過酷事故(シビアアクシデント)対策の報告書を受け取ったと発表した。15、
16日に全原発に立ち入り調査して対策の実施状況を確認し、月内にも評価結果
をまとめる。」

これまでシビアアクシデントを想定してこなかった経産省と電力会社が、今回の
事故を受けて、これに対する対応をし始めたと報道されている。
しかし前提として、この記事では、シビアアクシデントとは何かということが明確に
なっていません。

そもそもシビアアクシデントとは、次のように規定されてきたものなのです。
「シビアアクシデント(日本語では過酷事故)とは、設計基準事象を大幅に超える
事象であって、設計上考えられている設備や操作によって炉心の冷却や制御が
できなくなり、その結果炉心の重大な損傷(溶融など)に至る事象であり、複数の
シナリオが考えられるが、そのいずれも発生する確率はきわめて小さい。
シビアアクシデントは、規制上は想定あるいは評価を求められていない事象で
あるが、事業者毎に「確率論的安全評価」を行うことで、各プラントの発生確率
(頻度)を評価している。」

要するに「設計基準事象を大幅に超える事象」なのです。想定された安全装置
が全く役に立たなくなってしまうことを意味している。だから日本では「発生する
確率はきわめて小さい」とされ、「規制上は想定あるいは評価を求められていない
事象」、ようはありえない事象だとされてきたのです。

頻度の評価も1000万年に1回だとか、要するに絶対にありえないとされて
きた事故です。それが福島第一原発では3回(3基の原発)も起こってしまった。
いや4号機の極めて不安定な状況を考えると、4回と言うべきでしょうか。

設計基準事象を大幅に超える事象に対応するならば、設計基準を変えるしかない。
なぜって、設計のときに想定しないで作っているのですから。かりに100キロのスピード
になると止まらない車があるとする。設計基準では80キロしか出ないことになって
いた。ところが100キロ出てしまうことが分かった。そうしたらどうするか。
エンジンを作りなおして、80キロしかでないようにするしかない。あるいは100キロでも
止まれるようにブレーキを作りなおすしかない。

しかるに今回の対応では、100キロでは止まれないのに、そこまでスピードが出て
しまうことを放置したままで何かの対応をするのだというのです。しかも実際には
今回の事故と同じケースをシビアアクシデントがたどることだけを想定し、水素爆発に
いたらない工夫を加えるているだけです。

これは大変な問題です。なぜなら保安院と電力会社が、他のプラントでも福島
第一原発と同じ事故が起こることを想定しながら、その事故をなくすのではなく
事故が起こった時の対策を練り始めたと言っているのだからです。つまり放射能が
格納容器から漏れ出すことを前提にした対策です。放射能が漏れないようにする
対策、今回のような事故が起こらないための対策なのではない。


なぜそうなのか。今回のような事故が起こらないための対策をとるとなると、
まだそれがとれてない他の全ての原発を一たび止めなければいけないことになるから
です。いやまさに止めなければいけないのです。しかしそうならないために、放射能
漏れ事故が起こった時の対策を講じることで、運転を継続させようとしている。
これははじめから運転ありきの対策で、安全対策とはまったく言えません。

そもそもそのような対策をするのならば、住民にこのことを問うべきです。
「これまで深刻な放射能漏れは起こらないと考えていました。しかし今回で起こる
ことが分かりました。そのため起こった時の対応を考えますが、そのように
深刻な放射能漏れがあることを想定して運転を続けて良いですか?」と。

今回の対応は事実上、そのようなメッセージです。何とも歯がゆいことに
このことをまたもやマスコミが伝えていない。単なる事実ではなく、保安院と電力
会社の価値判断が介在しているのに、その評価をしようとしない。本当に困った
ものです。


その次の記事など、本当に唖然としてしまいます。
「水素爆発防止へ建屋にドリルで穴 浜岡原発炉心損傷対策」というものです。
浜岡原発で、シビアアクシデントになり、深刻な放射能漏れが起こりだして
水素爆発が懸念されるときに、建屋にドリルで穴をあけておくようにするというの
です。

ここでも水素爆発が前提されてしまっていて、しかも対策は建屋に穴をあけようと
いうことだけ。これに対応して言うならば、それなら2号機で起こった圧力
抑制室の損傷事故にはどう対応しようというのか。また4号機をはじめ燃料プールで
起こっている深刻な事態にはどう対応しようとしているのか。それらの対策などたて
ようもないままに、最も単純で簡単な「対策」を加えたに過ぎない。

実際には「シビアアクシデント」は、想定外の事故なのだから、どのように起こる
のか分からないものなのです。核心的なこととして、今回についても何がどのように
起こったのかまだ分かっていないのです。とくに昨日紹介したように、地震による
揺れが要因と考えられる圧力抑制室の損壊について、保安院も東電も何の説明も
できていません。

そのどう起こるか分からないこと、今回もまだ分かっていないことに、対応できる
という発想自身がおかしい。設計思想的には、どう起こるか、どう起こったかを
解明し、そうならないための処置を考え、一から設計をやり直す以外に、安全を
確保する道はない。シビアアクシデントを起こさない設計に変える以外にないのです。

それを水素漏れが起こった時に、穴をあけて水素を逃がすという本当に「小手先」の
対応でかわそうとしている。しかも水素漏れ=深刻な放射能漏れを前提にして
しまっている。しかしそんな深刻な放射能漏れが起こるというのなら、そんな
発電を誰が認めると言うのでしょうか。


以下の記事では、九州電力や、中国電力もまたシビアアクシデント対策をとり、
保安院に報告したことが紹介されています。はじめにあるようにこれは全国の
電力会社で行われていることです。

しかも同じような水素爆発対策のみが並べられている。つまり明らかに、それぞれ
の電力会社が、本当におこるべき事態を解析し、真剣に対応を検討しているの
ではなく、保安院に命令されて、横並びの回答をしていることがあけすけに
見えてくる。要するに、シビアアクシデント対応はしたという「アリバイ」作りである
ことがあまりに露骨です。悲しくなる行為です。


最後に紹介する記事も同じような構造で書かれている。
「原発災害マニュアル、全然使えず 政府、全面改訂へ」という記事です。ここでも
明らかになっているのは、私たちの国には、現実に対応できる「原発災害
マニュアル」がないということです。

だとするならば、最低でもマニュアルが作りなおされるまで、原発の運転を止める
べきです。シビアアクシデントはありうると言いだしているのに、災害対策マニュアル
すらないのですから。


まとめます。
政府と電力会社は、「シビアアクシデントはありうる」「現在の災害対策マニュアル
は全く通用しない」というあまりに隠しようのない事実を認めながら、そこから
導かざるを得ない結論・・・一たび原発を全て止めて、シビアアクシデントを
起こさないように設計を見直す、災害対策マニュアルを更新するという順当な
考えを回避し、「水素爆発対策をする」「災害マニュアルを更新する」という、
今、実際に動かしている原発への安全対策を全く無視した対応をとろうとして
います。全く間違った判断で、すべては原発の継続運転ありきを前提にするが
ゆえに導きだされたゆがんだ結論です。

ここに明らかなことは、今回の・・・まだ要因も完全解明されていない・・・事故の
教訓を生かそうとする意思がまったくみられないことです。
このような、安全思想を完全に欠落させた政府や事業者に、これほどに危険な
プラントを扱う資格はまったくないと言わざるを得ません。

私たちはいよいよもって、全ての原発の即時停止を求めていく必要があります。
他の原発でもシビアアクシデントがありうることが、認められながら、設計上の
対応もしようとしないことが明らかになったからです。


このように考える時に、彷彿とするのは、あの無謀な第二次世界大戦にいたる
日本の暴走です。あのとき、日本には国力が何十倍も違うアメリカに勝てる見込み
など全くなかった。それなのに日本政府と軍部は戦争に突き進んでいきました。

その上、戦時中も、あまりに無茶な作戦ばかりが行われた。アメリカの潜水艦が
うようよといるなかに、兵員輸送船をどんどん送り込んで、次々と撃沈されたり、
部隊への補給も考えずに兵士を送り込んだ結果、部隊が略奪集団化し、アジア
の人々の怒りに油を注いだりした。要するに戦争指揮がめちゃくちゃだった。

もちろん、もっと合理的でスマートに戦争をやるべきだったと言いたいのでは
ありません。しかしそこに顕著に示された戦略的展望のなさと、それを補完する
現場の責任感のなさが、今回のこのような対応の在り方と非常によくダブって
くるのです。挙句に日本は大破産を迎えた。今、政府と電力会社は同じような
道を歩いているのではないでしょうか。国の未来など誰もまともに考えていない
のです。

こんな人々に私たちの将来を託しておいたら本当に大変なことになってしまう。
いやすでに大変なことになっているのです。残念なことに大手マスコミも同じです。
あの戦争を鼓舞し続けたことの反省など、もうどこかに消し飛んでしまっている。
誰も身を挺して、この大危機を止めようとしない。

ならば、私たちこそが、何かをしなければなりません。
Power to the people!
http://www.youtube.com/watch?v=ppCt-ZwEN1s
起ちあがるのは今です。

****************************

原発の安全・耐震・防災指針見直し決定 原子力安全委

朝日新聞 2011年6月16日22時24分
 内閣府の原子力安全委員会は16日、東京電力福島第一原子力発電所の事故
の教訓をふまえ、安全設計審査指針や耐震設計審査指針、防災指針などを
見直すことを正式に決めた。専門家でつくる部会に検討を指示、来年3月をめどに
報告を求める。

 さらに班目(まだらめ)春樹委員長は、炉心損傷をともなう過酷事故(シビア
アクシデント)対策を規制の枠組みに入れるかなど、2~3年かけて抜本的な規制
見直しに並行してとりくむ方針も打ち出した。

 地震で想定外の事態が相次ぎ、総崩れになった安全確保の指針は抜本的な
見直しが迫られている。班目委員長は抜本的な規制見直しについて「必ずしも
原子力安全委員会だけの仕事になるかさえわからない」と話した。
http://www.asahi.com/national/update/0616/TKY201106160595.html

***

電力各社、過酷事故へ対策 保安院15日から調査
中日新聞 2011年6月15日 02時04分

 経済産業省原子力安全・保安院は14日、電力会社など原発を所有する11事業
者から過酷事故(シビアアクシデント)対策の報告書を受け取ったと発表した。15、
16日に全原発に立ち入り調査して対策の実施状況を確認し、月内にも評価結果
をまとめる。

 保安院は7日付の文書で各社に対策を指示。中央制御室での被ばく防止▽緊急
時の通信手段の確保▽水素爆発の防止-など5項目で早急に措置を取ることを
求めていた。いずれも福島第1原発では未実施だった。

 中部電力は、非常時に浜岡原発(静岡県御前崎市、全面停止中)の原子炉建屋
屋上に穴を開けるための電気ドリルなどを1セット配備した。原子炉を冷やすための
電源がすべて使えなくなった場合には、60センチ四方の穴を2カ所に開けて水素を
放出し、建屋全体の崩壊を防ぐ。

 中央制御室での運転員の被ばくを防ぐため、非常用の換気空調設備を動かす
ための発電機を2号機以外の4基にそれぞれ設置。津波などによるがれきを撤去
するための重機も4台配備した。

 福島第1と同じ沸騰水型の敦賀1号機(福井県敦賀市、定期検査中)を運用する
日本原子力発電は、水素爆発を防ぐため、来年2月までに原子炉建屋の天井に
水素を抜くための開閉式の装置を付ける。加圧水型の敦賀2号機は、2013年
6月までに原子炉格納容器内に水素濃度低減装置を設置する。

 関西電力も加圧水型の美浜原発(同県美浜町)、高浜原発(同県高浜町)などの
9基の原子炉格納容器内に、13年度までに水素濃度低減装置を付けるとした。

 原子力安全委員会や東京電力はこれまで、原発の設計指針や事故対策を改定
する際も「日本国内で過酷事故は起こりえない」として、対策を取ってこなかった。
福島第1原発の事故で国際原子力機関(IAEA)へ提出する政府報告書では、
水素爆発などの事態を「想定していなかった」と認めている。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2011061590002129.html

***

水素爆発防止へ建屋にドリルで穴 浜岡原発炉心損傷対策

朝日新聞 2011年6月15日0時52分
 中部電力は14日、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)で炉心が損傷する
「過酷事故」が起きた場合の対策を新たにまとめ、経済産業省の原子力安全・保安
院に提出した。東京電力福島第一原発の事故を受けた緊急安全対策の一環で、
水素爆発対策などを盛り込んだ。

 福島第一原発の事故では、津波ですべての電源が失われて炉心を冷やせなくなり、
大量の水素が原子炉建屋内にたまって爆発につながった。

 このため、浜岡原発の新たな対策では、水素の漏れ出しに備えて、建屋の屋上に
60センチ四方の穴を2カ所開け、漏れ出した水素を外部に放出することにした。
水素には放射性物質が混じっているが、爆発によって広い範囲に飛び散るよりは、
影響が抑えられるという。
http://www.asahi.com/national/update/0615/NGY201106140030.html

***

玄海原発の過酷事故対策を国に報告 水素爆発防止策も

佐賀新聞 2011年06月15日更新
 九州電力は14日、玄海原発(東松浦郡玄海町)で炉心溶融など設計基準を
超える「過酷事故」が起きた場合の対策を国に報告した。経産省原子力安全・
保安院が15日に立ち入り検査し、新たに配備した防護服など資機材や手順書を
確認する。
 
 国際原子力機関(IAEA)への報告書で究明された福島第1原発の事故原因と
課題を踏まえ、保安院が電力各社に5項目の対策を指示していた。
 
 対策では、全電源喪失時も中央制御室で作業できるように高圧電源車で空調
設備を動かし、室内の空気を浄化。発電所内の通信設備も電源車をつないで
維持する。
 
 作業員の被ばく防止では、高い放射線量に対応した防護服を今月末までに
20着追加して34着にする。個人線量計は既に2300個を配備。万が一、
足りない場合は他の事業者から借りる協定を結んでいることを報告した。
 
 原子炉建屋の水素爆発防止策は、原子炉格納容器から漏れた水素を容器の
横にあるコンクリート製の空間にため、電源車で排気設備を動かして外部に
放出する。今後3年をめどに、水素を再結合して水にする装置も取り付ける。
がれきを撤去するホイールローダーも新たに1台配備した。
 
 九電は「既に実施した緊急安全対策で国は安全と判断しており、今回の対策の
評価が運転停止中の2、3号機の再稼働の条件になるとは考えていない」
としている。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.1948233.article.html

***

過酷事故時の対策報告 中国電力島根原発

山陰中央新報 2011年6月14日
 中国電力(中電)は14日、島根原発(松江市鹿島町)で原子炉の炉心が損傷する
などの過酷事故(シビアアクシデント)が発生した場合の対策について、経済産業省
原子力安全・保安院に報告したと発表した。福島第1原発事故を踏まえ、水素爆発
の防止策や、津波などで生じたがれきを撤去する重機配備などが報告の柱。
7日に保安院が報告を指示していた。
【詳しくは本紙紙面をご覧ください】
http://www.sanin-chuo.co.jp/news/modules/news/article.php?storyid=526361004

***

原発災害マニュアル、全然使えず 政府、全面改訂へ

朝日新聞 2011年6月9日3時5分
原発事故が起きた場合に中央省庁と自治体、電力会社が現地で対応を調整する
仕組みを定めた政府の「原子力災害対策マニュアル」が東京電力福島第一原発の
事故では想定外の事態が重なり、ほとんど活用されなかったことが分かった。
政府は全面改訂に着手した。

朝日新聞が入手したマニュアルは1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨界
事故後、経済産業省を中心に策定したもので、A4で123ページにわたり関係機関
の対策を細かく規定している。原発近くの指揮所に対策本部を設けて省庁や自治
体、電力会社などが情報を共有。首相官邸に事故処理や避難指示について現場
に即した対策を提言する狙いがあった。

ところが、今回は指揮所が被災してマニュアルの根底が崩れ、関係機関は初動
段階からマニュアルに頼らず対応するしかなかった。

菅直人首相が3月11日に緊急事態を宣言した直後から、現地対策本部長となる
経産省の池田元久副大臣をはじめ各省庁や東電の幹部らはマニュアル通り、福島
第一原発から約5キロ離れた大熊町にある指揮所「オフサイトセンター」に集合。
ところが指揮所は停電して非常用電源設備も故障し、原子炉の圧力や温度、
原発施設の放射線量などの基礎データを把握できなかった。電話も不通で、
官邸や福島県、市町村とのやりとりは困難を極めた。

機器の操作や広報対応を担う「原子力安全基盤機構」の職員や周辺市町村の
職員は、指揮所にたどり着けなかった。出席者が集まり次第開く「協議会」は
同日中に開催できなかった。

このため首相官邸は指揮所を通さず、東電本社から情報を直接収集し、冷却機能
回復やベント(排気)を巡って指揮。福島県は東電本社に直接問い合わせ、独自の
判断で半径2キロの住民に避難を指示したが、菅首相は33分後に半径3キロ
圏内の避難を指示した。

翌12日以降、指揮所の機能は徐々に回復したが、放射線量が14日時点で
1時間あたり12マイクロシーベルトと極めて高いことが判明。15日に閉鎖し、
現地対策本部を福島県庁に移した。マニュアルは事故が1週間程度で収束すると
想定していたが、長期化で人員確保はままならず、現地対策本部長は池田氏ら
経産副大臣・政務官4人が交互に務めた。

政府はマニュアル内容の不備が指揮命令系統の乱れを生み、初動の遅れを
招いたと判断。事故調査・検証委員会が来夏に出す検証結果を待たずにマ
ニュアルの改訂を急ぐ。(鈴木拓也、山岸一生)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201106080687.html
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明日に向けて(156)地震で圧力抑制プールの機能が奪われたのでは?(原子力資料情報室の会見から)

2011年06月16日 23時30分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110616 23:30)

6月10日に行われた原子力資料情報室の会見で、沼津工業高等専門学校
特任教授の渡辺敦雄さんが、講演をされました。この方は、後藤政志さんの
東芝時代の先輩で、原子炉格納容器の設計士だった方です。

この日、行われた会見では、主に圧力抑制プールの問題が語られました。
圧力抑制プールとは、福島第一原発で使われているマーク1型原子炉の、
フラスコ型になっている格納容器をドーナツの用に取り囲んでいる装置で、
原子炉格納容器の圧力が上がった時に、それを「抑制」することを主な
役目としているものです。

これは原子炉内で深刻な事故が起こり、圧力容器の中で高圧の水蒸気が
発生すると、蒸気は弁が開放されて、格納容器の中に入ってくるのですが、
そのままでは、今度は格納容器の圧力があがってしまうために、この圧力を
減らすために設けられたものです。

どうするのかというと、蒸気を配管などによって、この圧力抑制室まで直接導き、
プール=水の中に直接に噴出させます。そうすると蒸気が水の中で、急激に
冷やされて気体から液体に戻り、体積が一気に縮小することにより、圧力が
減るわけです。それが圧力抑制プールの基本的な原理です。

この内容は図を見ながらでないと分かりにくいと思いますので、同じマーク1型
原子炉を使っている浜岡原発での説明のPDFを参照してください。
http://www.chuden.co.jp/torikumi/atom/hamaoka/detail/160/data/unten170420.pdf

さて問題はここがどのようなことが起こったことが考えられるかです。
圧力抑制プールへの蒸気の導入は「ダウンカマ」と言われる配管が、水の中に
直接に蒸気を吹くことで行われるのですが、このダウンカマが、何かの要因で
水面から上に出てしまっていると、蒸気は水の中に吹き込まれず、圧力抑制室の
空気の中に噴き出してしまうことになる。

ではそうしたことは起こりうるのかと言うと、一番、考えられるのは地震で、プール
の中の水が大きく揺れて、水面が一時的に下がってしまうときに起こりえる。
この現象はスロッシングと呼ばれます。揺れが水に伝わり、「揺動」が起こり、
水がチャポン、チャポンと左右に跳ね上がる。ことのき水面も上下するわけです。

このとき圧力抑制のために、原子炉圧力容器から格納容器へと放出された
蒸気がダウンカマを通じて、圧力抑制プールへと導入されようとする。しかし
スロッシングによって、蒸気はプールの水の中に導入されず、圧力抑制室の
空気中に吹いてしまう。

そうなると当然、圧力抑制室の気圧が上がってしまいます。このために圧力抑制
に失敗してしまい、それがさまざまな事故につながっていったのではないか
というのが、渡辺さんが行っている推論ですが、この際、重要なのは、こうした
圧力抑制の失敗が、地震によって起こった可能性が高いと考えられることです。

すでに後藤政志さんが、前回の原子力資料情報室での会見で、東電や保安院が、
事故解析の中で、原因を津波に限定しようとしていることを批判し、津波の
前の地震で、冷却材喪失事故などが起こっていた可能性があることを指摘
していることを紹介しましたが、今回の渡辺さんの会見でも、やはり津波ではなく
地震によって事故が深刻化した可能性が示唆されたと言えます。

なお渡辺さん自身、「余談」と述べられていますが、渡辺さんが原子炉格納容器を
設計したときに、「ベント」はつけられてなかったそうです。今回の事故までその
存在を知らなかったとか。

これは後藤さんが常々、「放射能を閉じ込めるのが任務の格納容器に、本来、
ベントなどというものがあってはならず、これは設計思想の破産を物語るものだ。
そのため設計士はこれを、格納容器の自殺と呼んでいる。これを開いたという
こと自身がとんでもないことだ」と怒りを込めて語られてきたことと強くマッチング
するものです。

最近の報道で、ベントをするのが遅れたから事故が深刻化したという指摘が
安易になされていますが、ベントがもともとある安全装置であるかのように
語られるこうした指摘は、そもそも絶対に放射能漏れが起きないことを前提に
認められてきた原子力発電の存立そのものを問うのがベントであることを
見過ごしたものでしかありません。この点を付記しておきたいと思います。


いずれにせよ、事故原因の解析、とくに地震と事故の連関性の問題について
継続的なウォッチと考察を重ねていきたいと思います。


以下、渡辺さんの会見をノートテークしたので紹介します。ただ内容がかなり
専門的ですので、語られているタームなどをあるいは間違って紹介してしまって
いるかもしれません。いずれにせよ、転載などされるときは、あくまでも
守田による聞き取りであることを明記されてください。

************************

マーク1型格納容器問題について

沼津工業高等専門学校特任教授
渡辺敦雄さん
http://www.ustream.tv/recorded/15284821

渡辺です。
私は1971年に東芝に入社し、格納容器を設計した。福島第一号機は
入社したときにはできていたが福島3号機、5号機、女川1号機、浜岡
1,2,3号機というマーク1型に関わる格納容器の設計に関わった。
後藤さんからその辺の話をしてほしいとのことで今日はうかがった。

原子炉格納容器は通常は機能は発揮していない。唯一発揮しているのは、
中に中性子を外に出さないものが入っていて、それが機能しているぐらいで、
事故時にならないと問題にならない装置だ。

原発では、「最大想定事故」というものを考える。配管破断による冷却材喪失
事故も考える。そのときに中に入っている放射能を、フラスコ型の容器に
閉じ込めてしまうというのが特徴だ。5重の壁のうちの4番目で、これが絶対
に破れてはいけないということになっている。

余談だが、1980年代の後半にこの格納容器にベントをつけたという話を
私は今回の事故までまったく知らなかった。
事故でベントを空けて放射能を出したという話を聞いて正直なところ、
愕然とした。え、そんな装置があったのと思った。

私が設計したときには、そのような装置はまったくなかった。現在では
シビアアクシデントの場合、格納容器が爆発することをふせぐために、ベントを
開放することになっていると認識している。私はそれがいいことだったかどうか
分からない。あまりよくないことだと思うのだが。


今日の話は圧力抑制プールについてだ。どうしてここにこのような名前が
ついているかというと、格納容器の中に(圧力容器から)蒸気が漏れてくると、
猛烈な勢い、音波を越えた勢いで出てくる。

格納容器の中には窒素が入っているが、これが蒸気によって急激に圧縮される。
これがベント管を通じて圧力抑制プールに入ってくる。正確に言うと、ベント管を
通じて、ぐるっとまわっているヘッダーというのを通じて、そのヘッダーにミノムシ
の足のようについているダウンカマーというものから蒸気は水の中に入って
圧縮される。

もっとも理想どおりにいくと、まず窒素が水の中に噴き出して、続いて蒸気が
水の中に噴き出して、圧力が正常状態に戻る。圧力容器からいったん漏れたもの
は正常状態には戻らないが、圧力そのものは下げることができる。このためここが
圧力抑制プールと呼ばれている。


今回、私が話そうとしているのは、この圧力抑制装置がもし何らかの要因で
損傷したり、(ダウンカマが)プールの水面の上に出てしまったりしたらどうなるか
ということだ。

これはありうることだ。現在の格納容器の設計では、そうしたことは起こらないと
いうことになっているが、今回、私がびっくりしたのは、格納容器の圧力が、0.8メガ
パスカルになったということだ。圧力抑制プールで、蒸気などの凝縮をして
いればそうしたことは起こらない。凝縮がなされなかったことと考えるのが
格納容器設計者の常識だ。

凝縮しなかったとなると、ダウンカマが故障するなど何らかの要因で、圧力抑制
プールの中に出てくるはずの蒸気が、水面の上から、抑制ブールを覆っている
圧力抑制室の中に漏れ出してしまったことが考えられる。

この空間に漏れると、圧力抑制室の圧力が高くなり、ここに入ってきているベント
管の側の圧力が低くなるので、ここにザックス=押し付け力が生じるので、
それを避けるために真空破壊弁という圧力を均等にする装置がある。
どうやらこの装置も働いたようで、格納容器の圧力が0.8メガパスカルで、圧力
抑制室の圧力も均衡して0・8メガパスカルになったと私は推定している。

それではここでそのような異常な事態がどうして起こったのか。
もともと今の設計基準では、確率論的に設計されている。どういうことかと言うと、
蒸気破断が起こるということについては、原子炉設計者は必ず考えている。
これは10の-3乗ぐらいの確率でおきるだろう。これが地震でおきる、別の故障
で破断する、そういうことを全部内包して、1000年に1回ぐらいは起きるだろうと
考えられている。

そのときに、緊急炉心冷却系といって、蒸気を凝縮するだけではなくて、炉心の
中で、炉心溶融が起きないように水を送り込んでくる装置だ。これが完全に
動かなくなることも考えている。これも10の-3乗と考えている。

この両方がいっぺんに起きることも考えいるがその場合は、10の-3乗×
10の-3乗で、10の-6乗になる。
ただしおきてももう一つの系統が働くと考えられていて、炉心は緊急には冷却
されると考えられている。

それも壊れるとなると、さらに10の-3乗をかけるので、10の-9乗になる。
そういうことは設計条件として考えないというのが設計基準になっている。
そうだったら、正常にとまったはずなのに、どうして今回のような事故になったのか。

この10の-3乗で考えられる系統が、それぞれ独立していて、例えば東京と大阪に
あれば、こんなことにはならない。ところがほぼ同じ建屋の中にあったため、共通
故障モードと言って、同時に故障してしまった。

これを単一故障モードで考えるか、共通故障モードで考えるか、とても難しいこと
なのだが、考えないとしてしまった。だから今回のことは考えなかったことが
起こっといえると思う。

もう一つ、問題は、圧力抑制プールの中に蒸気が入ってきたときに、必ず蒸気が
圧縮されるということが前提になっている。まず猛烈に圧縮窒素が入ってくる。
続いて蒸気が入ってくる。これは圧縮されたものが開放されるので、猛烈に
大きくなって気泡が生じることがある。

プールスエリングといって、盛り上がって、この状態でもダウンカマがむき出しに
なることもある。かりにこれでも大丈夫だったとして、蒸気が圧縮されて安定
するのが理想的な状態だが、ちょっと考えてみて欲しい。この段階になったときに
余震があったらどうなるか。

このときスロッシング、地震揺動ということが起こる。水がパチャパチャ跳ねる。
このとき、液面がさがって、ダウンカマが水面から露出し、蒸気がそこに噴き出す
ことがあり得る。

私は今回、多分、その現象が起こったのではないかと予測している。
それならばこうした状態に備えておくべきだとなると思うが、ここで重要なのが先程
の確率論だ。もともと蒸気が噴出して、緊急炉心冷却系が喪失するということで、
確率では10の-6乗を使い果たしている。

したがってそれ以上に、もういっぱつ地震がくるとすると、これが10の-3乗ぐらいの
確率だとすると、それをかけると10の-9乗になるということで、結局考えないと
いうことになる。

今回のように余震が何度もくる、とくに大きな余震がくるということは考えに入って
いない。そういうものがくるということを設計条件に入れてないので、今回、ダウン
カマが露出してしまったということが大いにあると私は推測している。

そして圧力抑制室の圧力が非常に高まり、中でドライウェルの中で圧力が弱
まっても、真空破壊弁が働いてベント管の中と、圧力抑制室の圧力を一緒に
しようとするので、この繰り返しで、ここが高圧になったのではないかと見ている。

もちろんこんなものは短時間でおこる。スロッシングが余震の時に起こって、凄い
勢いで蒸気が出ているからそれで圧力室がすぐにいっぱいになった。
その点で、今回の事故は地震が要因の一つになっていると考えざるをえないと思う。

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明日に向けて(155)福島の子どもたちが鼻血を出している・・・

2011年06月16日 22時00分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。 (20110616 22:00)

福島の子どもたちが、鼻血を出している・・・。

そんな情報がツイッターなどでまわってきたのはもうだいぶん前のことです。
何度かこれへの意見を聞かれました。内部被ばくの影響を感じましたが、
僕自身は自分で直接にその情報に 接したことがなくて、どれがぐらいの規模で
起こっているか分からず、あまりうまくお答えできませんでした。

しかしその後、何度もこうしたお話に接するようになりました。
ある福島から避難されてきた方は、友人が今も福島市内の小学校で教員として
働いているそうですが、鼻血を出す子どもたちが多く、胸が痛いという話を聞いた
といいます。

それだけではなくて、東京から京都に逃げてきた女性2人から、自分自身が鼻血を
出したという話をお聞きしました。相変わらず「規模」は分かりませんが、どうも
大人も含めてかなり広範囲に鼻血を出す現象が起こっていると思われます。

この件について、 報道での情報などを探していたところ、「京都から東日本大地震
被災者を支援する会」の滝澤さんが、東京新聞に載った情報を、転送してきて
くださいました。

「記事内容は、有料でロックされていますので、文字起こししたものを下に掲示
します。東京新聞さん御免なさい」との但し書きをつきです。
非常に重要な情報ですので、みなさんとシェアしたいと思い、ここでも紹介する
ことにします。

内部被ばくと鼻血の関係について、継続的な考察を進めます。

**************************

子の体調異変じわり
原発50キロ 福島・郡山は今
http://www.asyura.us/bigdata/up1/source/4837.jpg

東京新聞6.16特報
 「上の子が一週間くらい毎日大量に鼻血が出続けていたので、心配で…。下の
子も時期は違うけれど、やはり1週間くらい鼻血が出て」。思いつめた表情で
母親(39)が、医師に相談していた。

 NPO法人「チェルノブイリへのかけはし」が12日、福島県郡山市で開いた医師に
よる無料問診会。放射線被害を心配する親子連れ計50組が参加した。同市は
福島原発から約50キロ。

 この親子の場合、震災後いったん埼玉県内に避難したが、3月下旬に郡山市に
戻った。すると小学校1年の長女(六つ)が、4月上旬から3週間、鼻血が出続けた。
このうち1週間は両方の鼻から大量に出血。耳鼻科で診察を受けたが、「花粉症
では」と言われた。「花粉症なんて初めて言われたし、普段は滅多に鼻血を出さ
ないんですけど…」と母親は言う。長男(二つ)も4月下旬から5月に鼻血を出し
続けた。

 診察した小児科医の橋本百合香さんは、「放射線被害かどうかは判断できないが、
ひとまず小児科で血液検査をして白血球を詳しくみてもらって。記録を残すことが
大事」と助言した。

 母親によると、小学校ではクラスの1割が避難していなくなった。次々と児童が
転校するので、新入生に出席番号がつけられていない。放射性物質が濃縮され
やすい牛乳を給食で出すかどうか、学校ごとに対応が異なる。「うちは保護者の
選択制。娘が仲間外れにされたくないというので、今は飲ませています」

 福島市から4カ月の長女咲空(さくら)ちゃんを連れてきた平中昭一さん(40)は
「症状は出ていないが、24時間不安で、外出を一切させていない。自衛といって
もどうしたらいいのか」と苦悩の表情。生後、他人をほとんど見たことがないという
咲空ちゃんは、記者が近づくとおびえた。

 問診会場近くの植え込みで、放射線測定器をかざすと、毎時2.33マイクロ
シーベルトの値を示した。地面から離すと1マイクロシーベルトに下がる。郡山市内
の12日の最大値は1.38マイクロシーベルト。東京都内で計測された同日の最大値
が0.0635マイクロシーベルト。約22倍だ。市内の最大値は3月15日の8.26
マイクロシーベルトで、5月中旬からは1.3マイクロシーベルト前後で推移している。

 文部科学省では3.8マイクロシーベルトが計測された学校では屋外活動を制限する
としているが、一方で年間の積算線量の子どもの上限値を1ミリシーベルトから
20ミリシーベルトとしている。これは毎時1.3マイクロシーベルトの場所で1年間
暮らせば十分に到達してしまう値でもある。

 「医者や学者も言うことが違い、避難の基準が分からない。飯舘村は1カ月も
放射能を浴びさせて、値が低くなってから避難させた。国も県も信用できない」。
長男(六つ)を連れた母親(40)は、こう憤る。自宅は新築。避難しても経済的に
やっていけるのか、何年後に戻れるのか…。費用や子どもの心に与える影響を
考えると踏み切れない。

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明日に向けて(154)福島で「放射能除染・回復プロジェクト」が始動中!

2011年06月16日 00時00分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110616 00:00)

福島市で「放射能除染・回復プロジェクト」が行われています。
福島大学准教授の中里見博さん、京都精華大学教授の山田国廣さん、
細川弘明さんらをはじめ、多くの方たちが関わっているようです。

非常に重要な活動です。ぜひ全国から支援を寄せていただきたいと思います。
とくに目を引くのは、子どもの通学路付近のホットスポットの放射能を除去する
ために草刈りなどの実効性のあることを行っていることや、山田さんの発案で、
洗濯のりをつけたシートで放射性物質を除去する方法などを採っていることです。

放射能で汚染されたものを高圧放水などで洗浄しても、放射性物質は水で流されて
別の場所に行くだけ。かえって汚染を拡大してしまうことにもなります。そこで、のりを
つけたシートに吸着させ、除去しようというのです。

同プロジェクトは、こうした手軽だけれども効果の高い方法を開発・実行中で、これを
はじめ、活動に対する意見も求めています。

僕自身は、こうした実効性ある放射能除染方法を考案し、実践することは
素晴らしいことだと思います。

後に紹介する細川さんからのメールには、「「除染活動をすること」は必ずしも
「避難しなくてもなんとかなる」という考え方を前提にしたものではありません」と
あります。僕も、やはり除染しなければならない放射線物質がある場所、そうした
物質が多い地域からは、出来るかぎり避難を進めた方が良いと思います。

しかしさまざまな事情から離れられない現実があるのならば、徹底して除染を
進め、少しでも放射線被ばくを少なくすることが大切です。
その場合にできること、とくにローテクでできるアイデアを重ねて実効していく
ことはとても重要だと思います。

またすでにこの「明日に向けて」の中で配信したように、現在、全国16の都道府県
の汚泥処理施設から、高濃度の放射能が検出されており、その周辺地域の
放射能汚染が強まってしまっています。このことにより、除染が必要な地域もまた
急速に拡大しつつあります。

ここで紹介してきた、気仙沼のアビスさん宅、正確には岩手県一関ですが、福島
原発から170キロ離れていても、毎時0.4マイクロシーベルトという高い値の
放射線が計測されています。この例からも、今後、ますますあちこちから汚染が
見つかる可能性があります。

そのために、私たちが自ら実践できる汚染の除去方法、可能性もまた広げて
いく必要があると思います。その意味で、同プロジェクトの実践に注目し、応援
していきたいと思います。


プロジェクトの一員である京都精華大学の細川弘明さんより、緊急で内容を
紹介するメールが届きましたのでここに転載します。

メールの中で、この活動を伝える「ニュースJAPAN」の6月13日の報道内容が、
FNNのサイトで、本日木曜日まで見れると報告されていますが、ネット上にも
アップされたので、以下のアドレスからも見ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=M_z_P8jrZ-w
みなさん。是非、ご覧下さい。

また同番組の内容が、文字起こしされていますでの、これも細川さんからの
メールの下に貼り付けておきます。

僕もこのプロジェクトに何らかのお手伝いをしたいと思っています。
みんなで放射能汚染に立ち向かっていきましょう!

***************************

こんにちは、京都)細川弘明です。
Bccで失礼します。
一部内容既報、ツイッター既報
また、複数のMLにも配信しますので、重複してご覧になる方、ごめんなさい。


----------------------------------------------
6月13日(月曜)放映の「ニュースJAPAN」(FNN全国ネット、首都圏ではフジテレビ、
近畿では関西テレビ、ほか)で、小生も参加しておこなわれた福島市での「放射能
除染・回復プロジェクト」の作業のようすが紹介されました。

FNNのサイトで(3日間限定、木曜まで)録画を御覧いただけます。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00201382.html

前回(5月26日と27日)の放送の録画は、下記で御覧いただけます。
http://bit.Ly/josen526
http://bit.Ly/josen527

ぜひ御覧いただき、お気づきの点やご感想などお知らせください。
現地の皆さん(とりわけ、小さいお子さんをお持ちの若いお母さん・お父さんたち)
へのメッセージもありましたら、ぜひどうぞ!

プロジェクトでは、5月と6月の実験をふまえ、市民のための放射能除染マニュアル
DVD(+資料)を作成し、多くの方に呼びかけていく予定です。類似の活動・実践を
すすめている他の市民グループとの連携もとっていきます。

もちろん、一方で、避難・学童疎開の必要性・緊急性についても、認識をひろめて
いきたいと考えています。「除染活動をすること」は必ずしも「避難しなくてもなんとか
なる」という考え方を前提にしたものではありません。

現在のところ、「放射能除染・回復プロジェクト」は全くの手弁当でおこなっている
プロジェクトです(とりわけ山田國廣先生個人の金銭的負担が多大! 福島市民
の皆さんの時間と労力の貢献も多大!!)。今後、なんらかの助成金なり補助金を
得ていく必要がありますが、仮に得られなくても、継続していく所存です。カンパは
もちろん大歓迎ですが、受け入れ口座などまだ整っていませんので、また
あらためて呼びかけをさせて下さい。

所要経費としては、交通費、宿泊費、放射線測定器の購入費、除染用資材(PVA液、
不織布、防護服、はしご、脚立、土嚢袋、ビニール袋類などなど)の購入費、土壌
サンプルの郵送費、撮影費用、通信費などなど。

放射線測定データや土壌汚染濃度のデータについては、個人宅・私有地での計測
ということもあり、不特定多数への情報公開はいたしませんが、お問い合わせ
いただければ、プライバシーに配慮する措置をとったうえで、適宜、提供いたします。

皆さまの応援・ご支援をよろしくお願いします。ご助言、アイデアもぜひ!


細川 弘明 拝 <(_ _)>
http://twilog.org/ngalyak

<<被災地救援 ↓ 活動展開中☆応援よろしく>>
http://bit.ly/999parcic
(PARCの緊急物資調達の取り組みは4/23をもって終了しました。
 姉妹組織 PARCIC の現地支援は、中長期モードに組み直して、継続中。)

***********

ニュースJAPAN 文字起こし

福島市では、福島第1原子力発電所の事故による高い放射線量が、子どもの健康に
及ぼす影響に懸念が強まっています。
住民自身の手によって、子どもの生活圏から放射性物質を取り除く「除染」を行う
試みが始動しました。

福島第1原発からおよそ60kmの福島市には、高い放射線量のホットスポットが
存在する。
明らかにしたのは、研究者と地元市民による放射能除染・回復プロジェクトの
メンバーだった。

3週間前の調査では、平常時の560倍にあたる放射線量、28マイクロシーベルトを
記録した通学路で、新たな現象が起きていた。
95.58、99.50、100.93などと、測定器が示す数値に緊張感が高まる中、152.76マイクロ
シーベルトの表示も出た。

名古屋大学環境学研究科の高野雅夫准教授は、「相当高いですよね、これね。
なんて言いますか、あまり居たくないですね、ここに。そんなレベルです」と語った。

避難区域外の通学路に存在する平常時の3,000倍を超える放射線量。
原発から飛散した放射性物質が、雨などで流されて集まり、局部的に濃縮された
可能性があるという。

京都精華大学人文科学部の細川弘明教授は、「ほっといて改善するっていうことは、
まったく期待できないので、少なくとも子どもが普通に暮らす環境で、この状態を
放置するということは考えられない」と語った。

通学路のホットスポットについて、5月26日、文科省の坪井 裕審議官は、「町全体
とか通学路全体が高いということではないと思いますので、たぶん局所的だと
思いますが、それはちょっと実測値を見ながら、またどういった形でそれを除くことが
できるかは、測定のあとで考えていかなければいけない問題かと思います」と話した。
文科省は、通学路の被ばく対策に腰が重い。

こうした中、京都精華大学人文科学部の山田国廣教授らは、住民が自らできる
放射性物質の除染テストを開始した。

京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「まず草を刈りましょう」と語った。
現在、確認されている放射性物質は、セシウム134と137。
除染作業はすなわち草刈りだが、高規格マスクにゴム手袋、ゴーグルなどを装着して、
内部被ばくを防止する必要がある。

除染前に152.76を示した数値は、除染後は5.69と劇的に下がった。
京都精華大学人文科学部の細川弘明教授は、「草の葉っぱにセシウムが積もっていた
状態だと思われますので、草を取ったのが一番、効いていますね」と語った。

アスファルトに付着した土は、粘着テープで除去し、除染の仕上げはとろりとした
透明の液体だった。
実は100円ショップでも販売されている洗濯のりで、「山田式除染」の最大のポイント
だという。

京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「(ポイントは)水でも流さないというか、
全部こういうテープではがして、最後、はがし液(PVA洗濯のり)を塗って、乾燥して
からはがします。それで完了です」と語った。

一般に除染で広く採用されているのが、高圧洗浄水で流す方法だが、水で洗い流す
ことで放射能汚染を拡大させていると、山田教授は指摘する。

京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「固めて取るか、とにかくフィルム、
(洗濯のりで)膜を作って取るかということをしないと、結局、まあ言えば汚染の
押しつけ合いになるというか」と語った。

除染作業は、誰でも入手できる材料や道具で可能という。
次は住宅の除染に、持ち主の男性も参加して取りかかった。

住宅の放射線量が高いポイントは、軒下や雨どいなど、雨水が集中する場所だった。
計測してみると、10マイクロシーベルトを超えて、計測不能となってしまった。
住宅敷地の中にあるホットスポットを8cm掘り下げて、汚染されていない土をかぶせると、
0.451、0.454と、数値が下がった。

しかし、汚染された土を除去しても、放射線量が高い部分があった。
雨水をためておくタンクとパイプ周りで3.122マイクロシーベルト、そして庭の土や
草木、敷石でも放射線量が高い値を示した。

2.425マイクロシーベルトは、思い出の詰まったブルーベリーの木の周辺だった。
これを伐採して、表面およそ5cmの土を入れ替えたところ、0.418マイクロシーベルトに
下がった。

一方、今回の除染テストで課題も見つかった。
放射性物質を固めてはがすはずの洗濯のりが、雨の影響を受けて思うように
固まらなかった。
京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「ほとんど取れてない。乾燥しないと
だめ」と話した。

さらに問題なのは、除去した放射性物質の行き先だった。
今回、家の裏側を掘り込み、汚染された土などを一時的に保管したが、引受先は
未定となっている。
1年半前、この家を新築した吉川寛之さんは、被ばくを避けて、妻が2人の子どもを
連れ、他県に避難していた。

吉川寛之さんは「学校に行くまでとか、福島市の中でみんなこう、全体的にそういう
(除染する)ふうになっていかないと、子どもたちはやっぱり帰って来られないですね」
と話した。

今回のテストをもとに、山田教授らは、近く地域住民が実施できる除染マニュアルを
作成、提案していくという。
(06/14 00:39)


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明日に向けて(153)汚泥から放射能が。北海道・大阪でも!

2011年06月15日 09時00分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110615 09:00)

全国で、汚泥から放射性物質が検出されだしています。
見つかったのは、北海道、青森、山形、福島、栃木、群馬、茨城、千葉、埼玉、
東京、神奈川、山梨、新潟、長野、静岡、大阪の16都道府県ですが、大阪で
検出されたならば、福島原発との間にまたがる地域、愛知、京都などでも、
検出されうるのではないかと懸念されます。その意味で、検出はもっと広域から
行われることになるのではないか。

また非常に重要なポイントは、汚泥は焼却処理がなされているということです。
しかもダイオキシンを出さないために、高温での処理がなされています。
その場合、雨などによって流され、集められてきた放射性物質にどのような
化学反応がもたらされるのか。当然、沸点の低いものは、揮発して再度、大気中に
出てしまいます。

恐らくはこれらの影響もあって、汚泥処理施設の周りの放射線量が高くなっている
地域が多く、「中には汚泥の保管場所を「放射線管理区域」に指定する自治体も
出ています」とNHKは報じています。具体的には前橋市の名があげられている。

一方、こうした放射能汚染された汚泥が堆積してしまって、処理場に行き詰まりを
見せている自治体も出ています。こうした中で国は、「10万ベクレルを超えたものは
焼却処理などをしたうえで、容器に保管するなど、当面の方針を示しています」と
されていますが、焼却処理はあまりに危険です!

これまで汚泥はセメントの材料に使われてきました。一部、いや大きな部分が
すでに検査されずに出荷されてしまっているようです。また国は、すでに各自治体が
これ以上、溜めこめない状態に陥りだしていることから、ここでも基準を大幅に
甘くして、セメントへの出荷を容認する動きもみせているようです。

汚泥は他にもいろいろな形で再利用されているのですが、その一部は濃緑地の
堆肥にも使われています。汚泥は私たちの知らないところで、さまざまに加工され
利用されているのです。そのルートからどんどん放射性物質が拡散する可能性
がある。しかも一たび濃縮されたものがです。

大気中に撒かれてしまった放射能も、海に流されてしまった放射能も恐ろしい
ですが、雨で集められ、焼却で濃縮された汚泥の中の放射能も大変恐ろしい。
各地の処理センター周辺が危険地帯になりつつあります。厳重な注意が必要です。

・・・この問題については、継続的にウォッチと考察を続けて行きたいと思います。

*************************

汚泥に放射性物質 16都道府県

NHKニュース 6月14日 18時24分
東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、土などに付着した放射性物質

が雨で流され、各地の下水処理施設で汚泥として蓄積されています。NHKが全国
の県庁所在地を取材したところ少なくとも16の都道府県で汚泥などから放射性
物質が検出され、中には汚泥の保管場所を「放射線管理区域」に指定する自治体も
出ています。

福島第一原発の事故のあと、各地の下水処理施設の汚泥や汚泥の焼却灰から

放射性物質が検出されていることから、NHKは全国の県庁所在地や都道府県などに
聞き取り調査を行いました。その結果、少なくとも22の都道府県で汚泥などの検査を
行い、このうち北海道から大阪までの広い範囲に及ぶ16の都道府県で実際に
放射性物質を検出していたことが分かりました。

1キログラム当たりの放射性セシウムの濃度が最も高かったのは、▽福島市の
44万7000ベクレルで、次いで▽東京都の5万5000ベクレル▽前橋市の4万
2800ベクレル▽宇都宮市の2万6000ベクレルなどとなっていました。また、これ
とは別に▽東京の下水処理施設では3月に行った簡易検査で17万ベクレルを
検出していました。

土などに付着した放射性物質が雨で流され、各地の下水処理施設で汚泥として蓄積
されているということです。このうち前橋市の下水処理施設では、汚泥の焼却灰の
保管倉庫など2か所で放射線量が国の基準を超えたため、市は周辺を「放射線
管理区域」に指定し、作業をする際はマスクの着用などを義務づけています。また、
これまでセメントの原料として汚泥を利用してきた業者が引き取りを拒んで、保管
場所に困る自治体も出ています。

さいたま市では今月2日以降、業者が引き取りを拒否しているため、1日50トンの
汚泥がたまり続けているほか、長野市では焼却灰を保管する建物に、あと10日分
ほどの余裕しかなくなっているということです。これまで下水処理施設の汚泥などから
放射性物質が検出されたことはほとんどなく、濃度の基準もなかったことから、
国は先月、10万ベクレルを超えたものは焼却処理などをしたうえで、容器に保管
するなど、当面の方針を示しています。

しかし、福島県内に限った対応とされていることから、各地の自治体では国に対し、
汚泥などの処分法について、早急に指針を示すよう求めています。汚泥などから
放射性物質が検出されたのは、北海道、青森、山形、福島、栃木、群馬、茨城、
千葉、埼玉、東京、神奈川、山梨、新潟、長野、静岡、大阪の16の都道府県です。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110614/t10013521941000.html
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明日に向けて(152) 被災地・東北に再度、自転車を!(京都OHANAプロジェクトより)

2011年06月15日 02時30分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110615 02:30)

東北に自転車を送る「京都OHANAプロジェクト」第二弾が動き出して
います。まだ計画の途中ですが、どうかみなさま、動き出しましたら、
再度のご協力をお願いします。

以下、案内を転送します。

************************

京都OHANAプロジェクト第一弾企画でお世話になった皆様

京都OHANAプロジェクト森拓哉です。
夏らしい季節になってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか?

突貫工事で行った京都OHANAプロジェクトの第一弾企画から、
早いもので2カ月が経ちました。被災地で求められる支援は、
「今すぐ生きて行くため」という支援から、「自立に向けた」支援に
変化をしてきています。

一過性の支援ではなく、遠く京都の地から、何かをしようとしている
姿をお届けすることは、物質面だけでなく、安心感や希望につながると
考えています。

第二弾企画も計画進行中ではありますが、
まだ詳細を詰め切れておりません。

第二弾企画の企画書はこちらからご確認頂けます。
http://www.success-running.com/news/2011/06/kyoto_ohana_2nd.pdf


第一弾は「今すぐ」というニーズに応えるために行ったため、無理を
押し切っての活動でしたが、第二弾からは「持続可能なモデル」という
スタイルにこだわりたいと思っています。

どこかに過度な負荷がかかるモデルは、一過性に終わってしまうためです。
末長くできるモデルを模索しています。

現在、活動場所を確保するために、京都大学をはじめとした教育施設や、
廃校となった小学校を当たっているところですが、なかなか決め手に
欠いています。

これは、学校施設を利用するには、学校の関係者(主に学生)が主体と
なって、活動をしている事が、施設を融通良く利用できる決め手となって
くるからです。

もし、お知り合いに、サークル、クラブの代表をされているような
大学生をご存知でしたら、是非ご紹介下さい。

尚、廃校の小学校利用については、来週には回答を頂ける予定となって
おります。

6月中には第二弾企画の告知を打てるようにして、できれば7月中に計画を
完了させたいと考えております。

引き続き、できうるご協力を頂けます様お願い申し上げます。

京都OHANAプロジェクト
森拓哉
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明日に向けて(151) 611に全国各地で脱原発の声が。(新聞記事などの集計)

2011年06月15日 00時30分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110615 00:30)

全国で行われた611行動、まだ全体の集計のようなものは出ていないようです。
そこで、ネットから拾えるだけ、動画・画像・新聞記事を集めてみました。
何せ150か所?と膨大なので、これでも一部であることをご理解ください。
それぞれ興味のある記事をご覧になってくださればと思います。

ともあれ、僕の記憶にある限り、日本でこれだけ多くの都市で、いっぺんに
同じ日に、同じことを掲げて人々が歩いたことはないのではないかと思います。
本当に大きな力が示されました。私たちには力がある!

これを次のステップに進めていきましょう。
お互いを信じ合って、さらに前へ進みましょう!

************************

動画 テレビニュース
東京新宿・南相馬・名古屋・広島・福岡天神・高円寺の準備風景
http://www.youtube.com/watch?v=3g92PxtCN44

東京練馬
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210611012.html

ブログでの紹介
記事紹介に続き、新宿・京都・福岡・仙台・松本・大阪・神奈川・千葉の動画紹介
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210611012.html


画像 朝日新聞
郡山・奄美・東電前(東京千代田)・旭川・函館・青森・つくば
東京渋谷・東京国立・新潟・富山・岐阜・名古屋・伊勢・大津
高島・京都・大阪・広島・福山・鳥取・松江・山口・高松・松山
高知・福岡・熊本・鹿児島・ローマ
http://www.asahi.com/photonews/gallery/fukushimagenpatsu4/

ブログでの紹介
東京・神奈川・京都・滋賀・富山・北海道・茨城・長野・新潟
パリ・ニューヨーク
http://matome.naver.jp/odai/2130784417558719801

新聞各紙の報道
○札幌600人 函館400人
脱原発:原発の危険性訴え 100万人アクション、道内8カ所でデモや集会 /北海道
http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20110612ddlk01040142000c.html

○秋田 50人
JR秋田駅周辺で「反原発」デモ 家族連れや若者ら50人が参加
http://www.sakigake.jp/p/akita/news_photo.jsp?kc=20110612i&img=1

○新潟 200人
東日本大震災:発生3カ月 脱原発訴えデモ--新潟 
http://mainichi.jp/area/niigata/news/20110612ddlk15040037000c.html

○さいたま 120人
「安心な地球を」反原発訴える さいたま、120人がデモ行進 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20110612/CK2011061202000064.html

○新宿 20000人 
震災3カ月、各地で脱原発デモ 福島・新宿・フランス…
http://www.asahi.com/national/update/0611/TKY201106110405.html

○横浜 3000人
「さよなら原発」思い込めて3千人がデモ/横浜
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1106110025/

○諏訪 150人 松本 200人
県内各地で脱原発集会やデモ 県外からの避難者も参加 (長野)
http://www.shinmai.co.jp/news/20110612/KT110611FTI090002000.html

○名古屋 800人
6.11脱原発in名古屋。参加者800人。
http://www.janjanblog.com/archives/43200

○伊勢 70人
原発から卒業しよう 伊勢で主婦ら70人パレード
http://www.isenp.co.jp/news/20110612/news03.htm 

○岐阜 500人
「脱原発」岐阜市でも集会 500人、繁華街パレード
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20110611/201106111918_14125.shtml

○福井 100人
「脱原発」福井などでデモ行進
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/earthquake/28615.html

○高島 100人 大津 120人
楽器鳴らし「原発反対」 高島、大津で家族連れらデモ
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20110612/CK2011061202000114.html

○京都 石橋講演会 300人 市内ウォーク 640人 200人
田浦講演会 100人 嵐山スタンディング15人
東日本大震災:発生から3カ月 京都市内各地で反原発イベント /京都
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20110612ddlk26040275000c.html

○大阪 4000人
脱原発デモに4千人参加 大阪・御堂筋
http://www.asahi.com/kansai/sumai/news/OSK201106130003.html

○高松 150人
高松でも脱原発デモ
http://mytown.asahi.com/kagawa/news.php?k_id=38000001106130001

○岡山 500人
原発廃止訴え街頭パレード 岡山、倉敷で連呼、被災者と交流会も
http://www.sanyo.oni.co.jp/news_s/news/d/2011061120551619/

○松江 10人
島根原発運転停止訴え 松江で100万人アクション
http://www.nnn.co.jp/news/110612/20110612010.html

○広島 300人
震災3カ月で脱原発パレード
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201106120044.html

○福岡 1000人
音楽鳴らし「脱原発」 天神 若者ら1000人街頭デモ
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/246727

○熊本 100人
「さよなら原発」訴えパレード 熊本市中心部
http://kumanichi.com/news/local/main/20110612001.shtml

○長崎 170人
脱原発へ市民の輪拡大 長崎やパリ 各地で集会
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/246729

○鹿児島 100人
「脱原発」訴えパレード 鹿児島市で市民100人
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/246706

○奄美 40人
脱原発訴え行進 福島の避難者も参加/奄美市
http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=32972

○ニューヨーク 60人
NYで「日本に連帯」脱原発デモ 大型折り鶴掲げ
http://www.47news.jp/CN/201106/CN2011061201000085.html

○パリ 数千人
日仏団体が脱原発デモ パリで数千人
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011061101000936.html



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明日に向けて(150)東北の位置づけ変え自立を(河北新報社説より)

2011年06月14日 22時00分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110614 22:00)

河北新報が611の社説に「東北の位置づけを変え自立を」という宣言を高々と掲げました。
また記事の中で、東北と沖縄の類似性を掲げ、次のようなことを述べています。

「仙台から南へ約1800キロ。在日米軍基地の75%が集中する沖縄で、こんな声を
聞いた。「今こそ沖縄から被災地支援を」
 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先として日米両政府が想定する名護市
辺野古地区。海上ヘリ基地建設に反対する人たちが5月初めから、「米軍への思い
やり予算を凍結し、被災地支援に充てよ」と、署名活動を始めた。」

「共同代表の安次富(あしとみ)浩さん(65)は「被災者が苦しんでいるこのタイミング
で思いやり予算をもらって、オバマ米大統領は恥ずかしくないのか。基地も原発も、
アメ(カネ)で地元をがんじがらめにするという点で根っこは同じ」と明快だ。既に
6千人以上の署名を集めた。

片や文字通り基地を提供することで日本の安全保障を支え、こなた電気や食糧、
人材を首都圏に供給する「基地」として。沖縄と東北が戦後、たどった道は酷似して
いる。

震災発生から3日後、沖縄の地元紙・琉球新報は河北新報の社説を引用しながら
「共助の精神は、独り東北地方だけのものではないはずだ」と訴えた。沖縄が東北の
窮状に共感するのは単なる偶然ではあるまい。」

記事は、その沖縄が歩んできたように自分たちも声を上げよう。
「物言わぬ東北から物言う東北へ。大震災からの復興を歴史の転換点としたい。」
と結んでいます。

・・・感動しました。

この沖縄の長年にわたる声に重なった河北新報の叫び、東北の声を、他のすべて
の地域、とくに電力をたくさん使っていて、なおかつ米軍基地からも遠い都市部に
生きる私たちが受け止めていく必要があると思います。


そもそも私たちの国は、明治維新以降、長きにわたって東北に過重な負担を
負わせながら、「近代化」や「高度経済成長」を実現してきました。
電力供給の実態を見てもしかり。福島第一原発など、東京電力管内の外に立地
しながら、主に東京に電気を送るために発電してきた。発電プラントの電源事態は
東北電力から供給されているという矛盾構造のもとにあります。

ようするに原発が危険だから、東京からうんと離して福島に作った。うんと離した
福島から、電力をたくさん送って、東京圏に煌々と明かりが灯ってきた。
それは関西電力でも同じことがいえる。危ないから大阪からうんと離して福井に
原発を作った。そこにこの国の矛盾が象徴的に現れています。


とくに東北に負担を負わせる政策は、明治維新以来、一貫したものです。
明治から昭和にかけての戦争の時代も、東北は常に過酷な戦場に、最も
多くの兵士を供給させられてきた。

河北新報の本拠地である仙台市にいくと、中心部から少し郊外にいったところに
青葉城址があります。伊達政宗の開いた仙台藩のお城があったところです。
ここはさまざまな木々が植わっていて美しいところです。とくに周辺にある東北大学
植物園は、おそらく日本の植物園の中でも最大級の規模を誇っている。

最も多い樹木はコナラで約5000本、続いて多いのは、この地域に自生している
モミの木で、これが確か2000本ぐらいある。植物園と言っても、実際には大きな
山で、これそのものが、城の裏手の守りになっていたところです。

ところが、その青葉城址を登っていって、仙台市を見降ろす伊達正宗公の
銅像を過ぎて行くと、そこに護国神社が鎮座している。
ちょうどこの城跡公園の真ん中に位置しているのです。

護国神社は、いうなれば靖国神社の支社です。靖国神社は明治維新後にできた
日本の伝統からは切り離された神社で、天皇のために死んだものだけを祀って
いることに特徴がある。それがいつ建てられたのかと言えば、まさに明治維新
以降の、この地域での闘いの後なのです。


明治維新を前にして、東北の多くの県は、徳川幕府の側につきました。筆頭
だったのは、会津藩です。会津藩侯は京都守護職として、幕末維新に荒れる
京都の警備隊長になった。その配下にあったのが新選組です。

公的テロリスト集団だった新選組は、長州の幕府転覆の野望を未然に防ごうと
京都の町を駆けた。そして京都に火を放って大火災を起こし、混乱に乗じて
天皇を長州まで拉致してしまおうという、長州テロリスト集団の陰謀を察知、
「池田屋」に切りこんで、事件を未然に防ぎます。

これに対して激怒した長州は、国元から軍団を京都に送り込み、御所前で
会津軍と激戦。こう着状態が続きますが、西郷隆盛率いる薩摩軍の加勢で
劣勢となり、敗れて撤退していきます。このとき京都は、御所以南がほとんど
火事で灰燼に帰してしまいました。


やがて幕府は、「長州征伐」に打って出ますが、土佐浪人坂本竜馬の活躍で
薩長の秘密同盟が成立し、反対に討幕ののろしがあがります。
時勢はいっきに逆転し、幕府は鳥羽伏見の闘いなどで、新式銃で武装した
薩長軍に敗北。以降、東へと壊走をはじめたのです。

やがて官軍となった薩長軍は、江戸城無血開城によって、江戸を占拠しますが、
長州は積年の恨みをはらずべく会津攻撃を主張。会津藩侯が蟄居しているにも
かかわらず、会津若松に殺到し、城を徹底攻撃します。

会津の人々は籠城を選んで一矢を報いようとしますが、武力の差から攻め落と
されてしまいます。このとき官軍は、「天皇に逆らった」ことを理由に、会津藩士の
遺体の片づけすら許しませんでした。


こうした流れの中で、奥羽の諸藩は、奥羽越列藩同盟を組み、会津を支援。
その中心を担ったのが、仙台藩でした。とくに新政府が会津討伐を掲げたことに
対し、会津の赦免を懇願。これが受け入れられないと知るや、会津とともに
反官軍ののろしをあげたのです。これは東北一体から北海道にまで拡大する
勢力となった。このためこれらの地域では、維新後の戊辰戦争を、「南北戦争」
と呼称する場合もあります。日本を二分する内戦だったのです。

ところが政府軍の武力に奥羽列藩同盟は敵わなかった。次々と戦に敗れ、
やがて降伏していきます。以降、薩長政府による東北支配が延々と続いて
きたのです。

青葉城址の真ん中にある護国神社も、このときの官軍の戦死者を弔った
もので、抵抗した会津藩士や、仙台藩士はもちろんそこから除外されている。
つまり会津や仙台を蹂躙した敵軍の兵士を祀る神社を、地域のアイデンティティ
の真ん中に建てざるを得なかったのがこの地域なのです。

そのため、それ以降の日本のアジア侵略では、天皇への忠誠を示すことが
過酷に求められた。かくしてつねに最も危ない戦場に東北の兵士たち
は送り込まれた。そのときはじめて東北の人々は「護国神社」に迎えられた。
そんな歴史が青葉城址にはこもっています。

僕はかつてこの地を訪れたとき、東北大学植物園をはじめとするこの城山の美しさ、
スケールの大きさに胸を打たれるとともに、その頂上から仙台市を見降ろす伊達
正宗公の銅像に込められた人々の思い、またその横に護国神社を建てた人々の
思いに心を馳せて、長いため息をつかざるを得ませんでした。
この国の、悲しい歴史の一端をそこにみた思いがしました。


ところが、仙台の人々、東北の人々は打ちひしがれていたばかりではありません
でした。その象徴が、それこそ河北新報の立ち上げなのでした。

明治維新後、薩長政府の要人は、東北を侮蔑し、「白河以北一山百文」(白河の関
(現・福島県白河市)より北は、山ひとつ100文の価値しか持たないの意)という
蔑みの言葉を残しました。これに対して、それまでこの地域で発刊されていた
「東北日報」が経営難に陥った時に、まさに東北の意地を見せるべく、「河北」と
改題して発刊されたのが、「河北新報」だったのでした。1897年(明治30年)1月17日
の創刊でした。


その河北新報に、311を経て、今再び、「東北の位置づけを変え自立を」という
一文が掲げられた。「物言わぬ東北から物言う東北へ」というスローガンが
掲げられた。僕はこれを全身で受け止めていきたいと思います。


みなさま。
原子力発電所は差別の塊です。
最も電力が必要なところに建てるのではなく、もっとも電力を必要としないところに
この発電所は建てられる。都会から離れた地域の方たちに、放射能漏れの
リスクが強要されているのです。

しかもその労働体系も、7次受けとか8次受けとか呼ばれるような、下請け・
孫請け体制によって成り立っており、原発ジプシーと呼ばれるような、権利を
著しく制限された大量の労働者の使い捨てによって成り立っている。
被ばく労働を前提としたプラントなのです。

それが社会の中に存在していることは、私たちが差別の中に否応なしに
立たされていることを意味しています、私たちは好むと好まざるとにかかわらず、
原発地域の人々、原発の中で働く下請けの人々の犠牲の上に、灯りを
享受せざるをえなくなっている。

そのようなことはもう本当にごめんです。

誰かの足を踏みつけているものは、自分の足を踏みつけられても、声を
あげることができないと僕は思う。

誰かが差別されていることを許すことは、結局、自分が差別されることも
許すことです。だから誰かを差別することは、自分で自分の尊厳を
踏みしだくことだと僕は思います。

こうした構造をひっくり返すことこそが、本当の脱原発の道ではないかと
僕は思います。だから私たちは、東北の人々の痛みをシェアし、東北の
人々を助け、なおかつ積年の東北への負担を減らし、東北に感謝し、
東北に謝罪し、歩んでいかなければならないと思います。


以下、河北新報社説をお読みください。

***********************

東日本大震災 被災3ヵ月/東北の位置付け変え自立を


河北新報 社説 2011年06月11日土曜日
 中心に居ると、周縁が見えない。国を治める者にとって地方は政策遂行のための
客体であり、地元の意向はしばしば無視される。
 中心の身勝手さの例としては、被災地の苦悩を顧みることなく繰り返される不毛な
政争を挙げるだけで十分だろう。

 大震災から3カ月、おぼろげながら見えてきたことがある。東北は国策に翻弄
(ほんろう)されている。過去も現在も望まない役割を背負わされ、日本を下支え
してきた。震災は国土構造のゆがみを白日の下にさらした。

 日本の中の東北の位置付けを変えずして、本格的な復旧・復興などあり得ない。
東北の自立を主張すべき時だ。

 仙台から南へ約1800キロ。在日米軍基地の75%が集中する沖縄で、こんな声を
聞いた。「今こそ沖縄から被災地支援を」

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先として日米両政府が想定する名護市
辺野古地区。海上ヘリ基地建設に反対する人たちが5月初めから、「米軍への
思いやり予算を凍結し、被災地支援に充てよ」と、署名活動を始めた。

 米軍駐留経費の負担について今後、日本側が5年間にわたり現行水準(2010
年度1881億円)を維持するという協定案が成立したのは3月31日のこと。
同じ額を被災者支援に回せば、50万人に毎月5万円を3年間支給できると反対協
の人たちは訴える。

 共同代表の安次富(あしとみ)浩さん(65)は「被災者が苦しんでいるこの
タイミングで思いやり予算をもらって、オバマ米大統領は恥ずかしくないのか。
基地も原発も、アメ(カネ)で地元をがんじがらめにするという点で根っこは同じ」と
明快だ。既に6千人以上の署名を集めた。

 片や文字通り基地を提供することで日本の安全保障を支え、こなた電気や食糧、
人材を首都圏に供給する「基地」として。沖縄と東北が戦後、たどった道は
酷似している。

 震災発生から3日後、沖縄の地元紙・琉球新報は河北新報の社説を引用しながら
「共助の精神は、独り東北地方だけのものではないはずだ」と訴えた。沖縄が
東北の窮状に共感するのは単なる偶然ではあるまい。

 沖縄国際大の佐藤学教授(政治学)は「人ごとの論理が、基地問題も原発問題も
見えなくしてきた」と指摘する。本土にとって都合の悪い基地は、沖縄の民意が
どうあろうと押し込めておく。ネオンこうこうと輝く不夜城東京も、電源地帯に思いを
致すことなどしてこなかった。

 平和を望むが、基地は要らない。電気は欲しいが、原発は来てほしくない。
「人ごとの論理」とは自己中心と同義語である。地元にもたらされる公共事業と雇用、
わずかばかりの補助金がそうした矛盾を覆い隠し、都市と地方を分断してきた。

 一向に動かない基地問題にいら立ち、沖縄では「差別」と捉える見方が広がって
いる。地方を踏み台にした国の繁栄など私たちは望まない。物言わぬ東北から
物言う東北へ。大震災からの復興を歴史の転換点としたい。

http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2011/06/20110611s01.htm

******

なお記事で紹介されている署名用紙を以下からダウンロードできます。
http://shomei.cocolog-nifty.com/
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明日に向けて(149)キュリウム・アメリシウム・ストロンチウムが検出された!

2011年06月14日 08時30分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110614 08:30)

福島第一原発の直近から、あいついで非常に危険な放射性物質の
発見の報が入ってきています。

その一つは、キュリウムとアメリシウムが、大熊町から検出されたことです。
これらの物質は、ともにアルファー線を出す核種ですが、プルトニウムに比べると
半減期が短く、よりたくさんの放射線を出すことから、人間に対する毒性が
はるかに高いとされるものです。

すでに4月28日に、原発敷地内でも検出されていましたが、やはりというべきか
敷地外からも検出されました。予想されたことではあっても、ショッキングな
ニュースです。


一方、原発の地下水や直近の海水から、高濃度のストロンチウムが出てきました。
地下水については、4月に産総研より、5年から10年かけて海に流れていくものの、
原発サイトの南部、いわき市方面では内陸に向かう傾向があるとの調査結果が
発表されています。

追跡調査を行うとしながら、その後の発表がなされていませんが、このため
いわき市方面の地下水脈に、この高濃度のストロンチウムが流れ込む可能性が
あります。

海水への流出に対しては保安院が「希釈されるので大丈夫」といつもの安全の
安売りを行っていますが、ストロンチウムは生物がカルシウムと勘違いして取り入れ
てしまう物質であり、魚介類に蓄積されやすく、危険性が強く懸念されます、


いや、少し前にストロンチウムが原発周辺から見つかりだした時も、「ごく微量」
と発表されていました。ところが今度は、地下水と海水から高濃度が検出。
だとしたら、今回、初めて原発サイトの外でみつかったキュリウムやアメリシウムでも
同じことが後々明らかにされるのではないでしょうか。


・・・極めて危険なキュリウム、アメリシウム、ストロンチウムなどの
ウォッチを続けます。

*********************

土壌からキュリウム検出 福島第一から2~3キロ地点

2011年6月14日0時58分
文部科学省は13日、福島第一原発から2~3キロの大熊町夫沢の土壌から、
ごく微量の放射性物質キュリウム242(半減期163日)とアメリシウム241
(同432年)が検出されたと発表した。

 土壌は4月29日~5月1日に10キロ圏内の大熊町、双葉町の4カ所で採取した。
そのうち、第一原発から西南西約2キロと約3キロの夫沢地区の2カ所で、1キロ
あたり各0.032ベクレル、0.0093ベクレルが検出された。アメリシウムは
3キロ地点で0.028ベクレル検出された。ほかの2カ所からは出なかった。

 両物質は、体内に吸い込んだ場合に影響の大きい「アルファ線」を出す。しかし、
今回検出された値は微量で、文科省は健康に影響を与えるレベルではないと
みている。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201106130567.html

***

高濃度のストロンチウム検出 福島第一の地下水や海水

朝日新聞 2011年6月12日21時41分
 東京電力は12日、福島第一原発の地下水や周辺の海5カ所から、放射性
ストロンチウムを検出したと発表した。海では基準の濃度限度の240倍の地点も
あった。ストロンチウム90は半減期が約29年と長いうえ、体内に入ると骨に
たまる傾向がある。

 これまで原発敷地内の土壌からは検出されていたが、地下水から見つかるのは
初めて。5月18日に採取した1号機付近の地下水からは、ストロンチウム89が
1立方センチあたり0.078ベクレル、90が0.022ベクレル検出された。2号機
付近の地下水は89が19ベクレル、90が6.3ベクレルだった。原発事故で放出
され、雨水などとともに空気中や地表から流れ込んだとみられるという。

 5月16日に採取した1~4号機の取水口近くの海水でも、ストロンチウム89が
基準の濃度限度の26倍、90が53倍を検出。2号機取水口付近ではそれぞれ
67、117倍、3号機取水口付近では80倍、240倍を検出した。
http://www.asahi.com/national/update/0612/TKY201106120181.html
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