守田です(20190405 11:00)
統一地方選に向けた候補者インタビュー、今回は井﨑敦子さんにお話をうかがいます。井﨑さんは「草の根プロジェクト」のみんなと京都市左京区で市議選に立候補して頑張っておられます。関西無所属ネットワークにも参加し、地盤、看板、カバンもない中でみんなで頑張っています。 選挙期間があとわずかになってしまいましたが、ぜひ多くの方に井﨑さんの声を伝えていただればと思いいます。なお忙しい最中のわずかな時間を割いていただいてのインタビューとなったため、他の方より記事が短くなってしまいました。ごめんなさいです・・・。
井﨑さんのポスター
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守田
選挙期間で候補はどうしても政策を中心に訴えることになって、もちろんそこに個性も反映されると思うのだけれど、それが十分には出せない面もありますよね。 それでぜひここではふだん政策を語るだけでは表現しきれていないもの、普段出せないものを出してもらえると良いかなと思ってお話をうかがいたいと思います。 ただし井﨑さんはいつも一番自然体で自分の思いを語っているかなと思いますけれど・・・。 それでまずはなんで立とうと思ったのかからお聞きしたいと思います。
● 立ちあがった原点は福島原発事故でのみんなの痛み
井﨑
去年の夏に福島の子どもたちと屋久島に保養に行きました。一週間、一緒に過ごしました。 誰も別に福島原発事故を忘れてない。屋久島の人たちもお野菜を提供してくれたり、忙しい中でお手伝いをしてくれたりしてて、忘れたことにしたいのは政府だけやなと思いました。 子どもたちの身体のことなどを切実に考えたときに、やっぱり大人がしっかりしないでどうするんだと思いました。
あとはどんどんヘイトスピーチなんかが横行してきて閉塞感をひしひしと受けるようになって。小さな場でも「そうじゃないんだよ」と声をあげて動いていく姿を子どもにも見せるのが大事かなと思って。 政治ができることはけっこう大きいと思うんですよ。みんな制度や仕組みに左右されて暮らしているわけで。 それは誰かが勝手に作っているので「いやいや私たちに作らせて。私らのことなんやから」という感じですよね。
守田
きっかけとして福島原発のことが大きかったと。
井﨑
そうやね。きっかけは311で、そこから軽々しく「希望」ということはできないかもしれないけれど、そこから新たにつながったものが生きる社会にしていきたいと思うかな。 立会演説会もそんな感じで避難者の方にもお越しいただいて行いました。
守田
最後の週にそうした企画をやられたのはとても素敵なことですね。僕が言うのは変かもやけど嬉しい気がします。やはりそれは多くの人の共通の原点ですよね。 それでそういう場ではみんなにどんなことを知って欲しかったのかな。
福島原発事故避難者の方を招いた「立ち合い演説会」(井﨑さんFacebookより)
● 「あなたが感じていることは実は次の社会を作る原動力ですよ!」
井﨑
街角に立っていてもなんですけど、票をとるためという感覚ではなくて、でも自分の言葉が響く先があるはずだという確信があるんですよ。 その人たちに向かって「黙ってなくていいし、あなたが感じていることは実は次の社会を作る原動力ですよ」と伝えたいんですね。 「私の考えていることなんてとるに足りないわ」「私の不安なんて」とか、言葉や行動に移さない限り見えないでしょう?でもいっぱい語っていると思うんですよ。たくさんの人が。 「そのあなたの思っているものが次の世界を作る原動力や」ということが伝えたいんですよ。
守田
これが一番の井﨑さんのメッセージやね。それこそ個性というのかな。井﨑さんにしか言えないこと。本質的な言葉だと思います。 でもそれはいつも言っていることですよね。企画の中でとくに共有したかったことは?
井﨑
まずしっかりと絶望を共有することでしょうか。
守田
すごく閉塞していると。
井﨑
放射能の影響もこれからもっと出てくるやろうし。 我が子の命を守りたいと家族と離れ離れで避難してきた方々との出会いを通じて、被害にあった人たちがなぜか肩身の狭い思いをしている、それはもう原発事故は終息したとアピールしたい政府や電力会社の意図が大きいですよね。マスメディアも「まだ終わっていない」という庶民の視点で報道している番組はなぜか夜中しかやらない。 今、声を上げてくれている被災者の人たちは「この国はそんな国だよ、困った時には助けてくれないよ、本当のこと言っても無視されるよ」ということを教えてくれている。しんどいことやけど、自分の大切な人たちがそういう中で暮らしてるんやという自覚を持たなくてはいけないと思っています。
守田
そうそう。
たくさんの小さなお話会を重ねてきた・・・(井﨑さんFacebookより)
● 「つながりましょう。新しい価値観で。だからこそ毎日の暮らしが大事」
井﨑
そういう中で避難者の人たちとか、子どもを守ろうとしたり、家族を守ろうとして生きている姿に胸を打たれるんですよ。 この間も若い人、10人ぐらいと話をしたのだけれど、「みんな今の暮らし好き?」と聞いたらみんな手を上げたんですよ。そんなに上げないかなと思っていたのに。
守田
そこに何かの希望があると。
井﨑
そうなんです。一生懸命に生きようとしている。そういうことをいつも確認していきたいかな。 大変な状況の中でも、それを解決していくためにはまず大人が動きださなあかんくて、でも子どもの世代にもしかして思いもよらない解決法が見つかるかもしれない。 いまは見つからなくても次にバトンを渡さなあかんので、何もなかったことにしてはいけないわけで、大変な中、私たちは生きていかなくてはいけないということを自覚したい。 でも「大変なんだぞ」と言いたいのではなくて、「その中で自分たちができることをやりましょう。みんな一緒なんだから怖がらずにつながりましょう」と言いたい。
守田
みんなが一緒というのは同じリスクを抱えているということかな?
井﨑
平成の時代の二つの大きな震災と世界のどこも経験したことがないような大きな事故の後を生きている。「だからこそつながろう。この国から新しい価値観を育んでいこう、自分たちの日々の暮らしが大事、そこから始めましょう」という感じかな。あきらめずに。大変な経験を生かし、今の政治とは全く違う政治を作っていきましょう、とそんな思いです。
井﨑さんのチラシ 読みやすい!
● いままでつながっていなかったものが大きくつながりだしたのだけど・・・
守田
それをいろいろなことをして伝えてきたわけだよね。どうでしょう。伝えてきて。
井﨑
小さいながらも例えばオーガニックマーケットなどで伝えようとしてきたことが、選挙に出ることで大きくつながりましたね。 それぞれ同じような場所で動いている人たちがいたのですよ。でもすぐ近くにあるコミュニティともつながっていなかったことが選挙に出て分かった。それで一気につながったので、すごい収穫なんですよね。
守田
それはすごいな! でも一挙につながっていることはよくわかるんだけれども、その場合、選挙に出ることで何が違ったんだろう?
井﨑
何が違うんでしょうねえ。選挙に出ることでやっぱりね、みんな、「あきらめている」とか「無関心や」と言いつつも、「大事なことや」と分かってることが見えてきたんですよ。
それに対して今回、新聞がね、もう一回考えて欲しいと思うんやけど、選挙を報じるときに政党や労働組合やなんかの団体や、そこから紋切り型に見えることしか報道してないと思うんですよね。 市民がどういう動きをしているかアンテナを持っている人がいいひんやなと思いました。いま私が言ったようなこと、ぜんぜん記事にならないし。
守田
その点をもう少し教えてください。
井﨑
どこかの党とか組織とか既存のいままでの政治からしか見てないというか。私が左京区でつながってきているのはそういういままでの政治からはみ出している人たちなんですよね。 組織の政治には関わりたくない。だけれど大事なことやという自覚はある。でもどうしてもいいか分からへんという人たちがたくさんいたやと思うんですよ。 そこの人たちの、だからへんに政治に関わらずに自分たちで自分たちのコミュニティを育てて、そこから食べ物のこととか放射能のこととか情報をとって自分たちで配信してきた人たちがバーッと応援してくれているわけなんですよ。
それは今までの政治、そういうものの視点からではたぶん分かりにくい動きなんですよ。でもとても面白い。なんでそれを記事にしてくれないのかなと思うのですよね。 私のことというよりも、こういう人たちが動いていることをどの新聞社も書いてくれなかったなあと思うんですよ。それは左京区とか井﨑とかを出さなくても書けるはずなんですよ。
もちろんね。個々の記者さんはこのことだけでなくてもいい記事を書いてくれてもいるのは知っているんですよ。でもマスコミ全体の姿勢というか、視点が、なんか生活の場に寄り添ってないように思えて。
守田
うーん。
井﨑
今回の選挙のことでも「女性が」とか「無所属が」という切り口でとまってしまっている。 もっと「組織に入らなくてはいけない」とか、「組織を支持しなくてはいけない」ということに違和感を持っている人がいっぱいいるということにもうちょっと気づいて欲しいかな。 そういう人たちが普通の感覚のまま、事務所に来てチラシを撒いたりしてくれているわけで、それは全体から見たらまだまだ少数かもしれないけれど、すごく大きな変化だと思うんですよ。 マスメディアがそういうことに気が付かないのは残念ですよね。それがすごく大きな影響力を持っているからね。
街頭でのチラシまきも斬新
守田
それをどう表現したらいいんだろう。悩ましいなあ。 井﨑さんの言っていることって、けして既存の政治や組織を否定していることではないですよね。 でもそこからこぼれ落ちてしまうというかな。いやそれもちょっと言い方が違うかもしれない。そこには入らない、入りたくない気持ちと言うか、そこにある大切な声が井﨑さんにはよく聞こえるということですよね?
井﨑
そうなんですよ。 私は労働組合もとても大切だと思うんですよ。働く人の権利を守ることはとても大切やし、ちゃんとした強い組合に帰ってきて欲しいなと思うんですよ。
労働組合って、それぞれの場で働いていて、仕事をしていて、プライドを持っている人たちが自分たちの生活を守ろうとする場なんやしね。 だから組織を全然否定しているわけではないし、むしろ「頑張れ労働組合」って思うんですよ。かっこいい労働組合に戻ってきて欲しい。
でも自営業者さんだとか、家庭の「主婦」と呼ばれている人たちとか、組合に入れない人もいるわけですよ。 それに組合の持っている独特の雰囲気なんかなあ、「ああ、なんかついていけない」という人もいて、そういう人の感じ方も私は分かるんですよ。
しかもそういう人の気持ちを表現する場って本当に少ない。 何よりそういう人たちにあきらめて欲しくない、何かの組織に参加してなくても「そのまま思っていることを声に出していきましょう」と伝えたい。そこに私は「草の根プロジェクト」の意義があると思うんですよ。 だから政党や組合やわたしらの「草の根プロジェクト」がそれぞれに活発になっていくのが大事。それで大きく一緒にいい世の中を目指したいかな。
守田
そこはよく分かるな。でもその辺の感覚みたいなものを言葉で表すのは難しい。難しいけれどその感じは僕もとてもよく分かるし、ある意味ね、既存の組織や組合の人たちも感じているものだと思うのですよね。だってどこの組合も昔から比べれば数が減って弱くなってきているわけやし。
その意味では僕はこれまでの政治や政党と、井﨑さんや井﨑さんを支持するみんなの感覚が、大きなハーモニーを奏でるにいたる回路を探っていきたいと思うのですよね。 もちろんそれは一つの組織とか団体に合流するとではなくて、もっと互いがそれぞれの違いをおおらかに、ある意味楽しく認め合いながら、大切な何かを共有するというかな。
井﨑さんとは一緒に社会的共通資本に関する学習を重ねてきました(2018年7月 井﨑さんFacebookより)
● 「草の根プロジェクト」の今後
井﨑
その点では私も私たちの「草の根プロジェクト」だってもう一つの団体だとも思うのですよね。
そもそも私たちは選挙のために集まったのではなくて、もともと一緒にやってきたコミュニティだったんですね。そこから立ってきた。 立つときは「選挙になった絶対にもめる」とか言われたけれど、ぜんぜんもめてなくて、結束が固まってすごく良かった。これまででもすごく収穫があったなと思ってるんです。 だからこれをどんな形であれ今後に行かせていけると思います。
守田
それは素晴らしい! 僕も井﨑さんに共感しているみんなの思いを一緒になって大きくしていきたいなと思います。
今日はありがとうございました。 あと少しですが頑張ってください。もちろんその先も!
井﨑
はい!頑張ります!
草の根プロジェクトのみんなでパチリ(井﨑さんFacebookより)
終わり