守田です。(20121130 08:00 20220331改訂=写真をアップ)
3回にわたるNONベクレル食堂オーナー、ロクローさんインタビューの最終回です。今回のサブタイトルは「危険なものを避けるだけではなく、いいものをしっかり食べることが大事!」と「NONベクレル食堂で、楽しい食事を!」です。
ぜひお読みになり、胸をワクワクさせて、ロクローさんたちの食堂においでください。遠方からの方、駐車場もしっかり完備されています。近くの名勝としては岩倉実相院などがあります。今は紅葉も見頃。京都見物と兼ねておいでください!
ちなみに、このインタビューの中でもロクローさんが話してくださった、安全に作られて、放射線も検知済みの食材の通販もついに開始されました!まずは「NONベクレル米」が売り出されています!!以下をクリックするとみれます!
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NONベクレル食堂のめざすもの(下)
危険なものを避けるだけではなく、いいものをしっかり食べることが大事!
―話を聞いていて思うことなのですが、例えば僕が避難ママさんと話をしていて感じることの中に、「魚をもっと食べさせてあげたい」という思いがあります。日本の食事は魚が中心であって、欧米食に比べて身体にいいものになっている。その有利さを捨ててしまうことはとってももったいない。だからぜひ安全なことを確認した上で、魚をどんどん食べて欲しいと思うのです。
NONベクレル食堂にはいろいろな人が集いました! 守田撮影
(ロ)そうですね。実はまだ店では魚を出せてないのです。安全だといわれているところのものを仕入れて、測って出すのは簡単なのですが、みんな、生魚(なまざかな)に飢えているから、刺身定食ぐらいしたいのですよ。それで舞鶴の漁師さんが獲ったものを直接得られないかという話をしています。
でも魚は難しいですね。今だったら僕は瀬戸内の魚や舞鶴あたりなら大丈夫だと思いますけれど、学者さんによっては数年で日本中の魚がすべてだめになるという人もいます。でもだからこそ今のうちに食べておかないととも思います。
―食べながら測り続けるというのが答えだと思いますね。日本はOECDの中でダントツに医療費が少ない国です。社会的配分が少ないという問題もあるけれども、なんといっても肥満が少なくて、生活習慣病の罹患率が低いことが要因です。OECD参加国の中でダントツに少ない。
肥満をあらわす体格指数というものがあります。体重を身長の二乗で割ったもので、30を超えると肥満と認識されるのですが、2004年から2005年のデータで、OECD平均が人口の14.6%であるのに対して、日本はトップに低い3%です。反対にワーストワンのアメリカは32.2%にもなっている。肥満人口が人口の三分の一もいるのです。
日本の状態がいいのは、一言で言って、魚をよく食べることや、野菜の多い和食の恩恵です。今の肉漬けの生活はそれ自身に太る要因がある。それよりは圧倒的にいいわけです。
もちろんその魚の中には、重金属がすでに入っている。瀬戸内の魚は、放射能は今は大丈夫だと僕も思うし、実際に検出を聞きませんけれども、実は工場からの汚染を考えると、あそこのものは食べないほうがいいという学者さんもいます。
でもそうはいっても、例えば心臓病の発生率をみると日本は圧倒的に少ないのです。先ほど述べたように、肥満人口が違うからですが、そもそもその太り方も違う。アメリカには一目で病的と分かるような太り方をしている人もたくさんいますが、あれは動物性脂肪が多すぎる食事のせいによるものが多いです。
当然にも病的な肥満は生活習慣病と直結している。こうしたことにもっと多くの人に着目して欲しいと思うのです。和食の有利さにはかなりのものがある。そういういい食事を知ってほしい。避難ママさんたちに栄養学を学んで欲しい。でも栄養学も放射線学と同じで主流的なものはだめです。そこに難しさがある。
子どもたちもたくさん集いました 守田撮影
(ロ)そうですね。ほうれん草に栄養素がこれだけといっても、今のほうれん草には実際にはそれだけの栄養が入っていないし、まあ栄養学には元からナンセンスといえば言えなくないところがある。これだけのものを食べさせないといけないという面がある。
―そうですね。もっと食べ物の作られ方を問題にしないといけない。あるいは有機と一言で言ってもいろいろあることをきちんと知ってもらわないといけない。そういえばロクローさんと一緒に訪ねた、仙台で「小さき花・市民の放射能測定室」を開設している「農民科学者」の石森さんに次のようなことを教わりました。
そもそも有機とは何なのかと言えば、「僕らが(はじめに有機農業を志した人たちが)有機とは何か、何が安全かを決めたんだ、後から国が基準を作ったんだ。同じように放射能がどれぐらい危ないのかも、僕ら、本当に安全でおいしいもの目指して、食べ物を作っているものが決めるんだ」というのです。
こうした人たちが、今の農業のあり方はおかしいといって安全なものを志して、「有機農業」を切り開いたのに、勝手に国が「基準」をつくり、しかもそれがブランド化されて、本来の安全から離れてしまっているわけですね。。
最初は農協などは、有機農業を目指す農家をいじめたのに、それが社会の中で認められたら今度はそれを商品化しだした。それで、もともと有機農業を志した人たちからすると、こんなの有機でもなんでもないというようなインチキ有機も登場してしまったわけです。
それらを踏まえて何を避けたらいいのかといえば、安全に作られていない食べ物や添加物のたくさん入ったものを避けるのがいいと思います。こういう「食品」を作ってきた人々は、放射能もきちんと避けてはくれない。
もちろん、安全なものを作ってきた人々が供給しているものの中にも、放射能が混入してる場合もあって、一概にそれらが安全とは言えないところに悩ましさがあるし、だから測定して安全を確認することの重要さがあるわけですが、しかしこれまでも安全でなかったものほど、より危険が増していることは間違いないと思います。
(ロ)そうですね。こうして店をやっていて感じるのですけれど、食材が高いのですよ。どうしても原価率が高くなる。それにしては値段をかなり安くしているつもりなのですけれど、一度、東京から避難してきた人に、放射能が入っていなければ、農薬が入っていてもいいですから、もっと安くしてくださいといわれたことがあります。びっくりしました。
子どもの大好きなスイーツも安心安全な材料でつくりあげ 守田撮影
―間違いですね。それは。それで思い出すのは、宮城県南部、角田市のピースファームにいったときのことです。このときに集まったたくさんの有機農、自然農の方たち、あるいは林業家や炭焼家などの集いから、「みんなの放射線測定室てとてと」と「小さき花・市民の放射能測定室」の二つが生まれていったのですが、そのとき、誰が言ったのか、「守田さん。放射能と抗生物質、どっちがやばいだべか」という質問が出ました。
僕はそのとき、暫く考え込んだけれども「うーん、濃度の問題でしょうね」と答えました。もちろんどっちもよくないわけですが、まったく農薬も化学肥料も使っていない数ベクレルのセシウムだけが入った野菜と、薬品付けの野菜を比べるならば、前者の方が安全なように僕には思えたりもするのです。
(ロ)そうですよね。放射能が100ベクレルのものを食べたらどうなるのか。1ベクレルのものを食べたらどうなるのか。わかりませんやん、僕ら。同じように農薬がどれぐらい使われていたらどうかということも僕らには良く分からない。でも明らかに、農家の方がマスクをして、防備をして撒いているものを、僕らに直接噴霧されたら、病院に運ばれるぐらいのことはあるわけでしょう。
―農薬の歴史を見ると、撒いている人がバタバタ死んだこともありますしね。だって生物を殺すものを撒いているわけだから。
(ロ)そうですよね。除草剤と殺虫剤でもまったく違うし。除草剤には恐ろしいものがあって、隣の農家が除草剤を使うときに、液をタンクに入れようとしてこぼれて、僕の庭の側に飛んできたのです。それを見ていたのですけれども、そこだけ、液が飛んだところだけ、ずっと草が生えないわけです。そんなものを撒いたところで農産物を採っているやし、大分、へんな話ですよね。
―除草剤の中にはダイオキシンが入っているものがあります。三里塚(成田)空港反対運動の中で、農民たちが土地を守って頑張り続けたのだけれど、力尽きて、土地を売って出て行ってしまう人もいました。そうすると公団の管理地になるのだけれど、耕作をしないので荒れていく。それが自分の畑の周りにあると、雑草がたくさん生えて種が飛んでくるし、野生動物なども発生して、畑の管理が難しくなります。それで農民たちがやむを得ず、公団の土地になったところも耕したのです。
それに対して空港公団が除草剤を撒いたのですが、それがボルシル4といって、アメリカ軍がベトナム戦争でゲリラをやっつけるためだとしてジャングルに撒いた「枯葉剤」と同じだったそうです。ダイオキシンが含まれている猛毒のものです。ベトちゃん、ドクちゃんが生まれたりもしました。そういうものが除草剤の中にはあるわけですね。
あと言われているのは複合汚染が怖いということです。物質が相乗効果で作用してくる。そのからもいろいろなものが入っているものは避けたほうがいい。結局それでいいものを売る場が必要だということにいきつく。「これが食べれるよ」という場として確立していく。
NONベクレル食堂で、楽しい食事を!
(ロ)そうですね。結局、お米に関しては、今使っているお米を作っている農家さんは、たくさん作付けしているので、しばらくは安定的に供給できると思うのですけれども、大根とかそういうものって、小農家さんの数がまだ少ないので、うまいこと切り替えていかないと、なかなか販売を続けるのは難しいです。
だけれど、例えば、僕が親しくしているフライングダッチマンのベースのキムも、それこそ有機でやっている小農家なのですが、つねに「売れ先ないっすよ」と言っています。JAは最後に持っていく場で、そこではただ同然で買い叩かれる。本当においしいんですけどね。
だからぜひいいものを作っている農家さんと輪を広げたいと思っているのですけれども、伊賀の有機農業組合の人と知り合いになったので、良ければNONベクレル食堂への供給を考えてくれるといっています。
そういえば伊賀のヤマギシに行ったときに、豚肉を供給してくれている友達が、豚の飼料をトラックで2トンほど混ぜていたのです。覗き込んだら凄くいい匂いがするんですよ。「おお、おまえ、むっちゃうまそうな匂いしているやん」と言ったら「そりゃ人間だって普通に食えるもん」というから、僕も食べてみたら、本当においしんですよ。「ああ、こんなもん食ってんのか」と思いました。
僕も京都で幾つか養豚場を見ていて、養豚場って臭いじゃないですか。それで「養豚場を見せてよ」といって、案内されて入っていったら、まったく匂いがしなかったので「あれ、ここは使ってへんの」と思いました。豚が見えなかったので「豚はどこにいるの」と聞いたら、「寝てるやん」というので、下を見たら、豚がお昼を食べて目の前で寝ているのです。
「あれ、豚がいるのになんで臭くないの」と言ったら「えっ、普通やろ。牛よりは臭いで」と言うのです。僕にしたらぜんぜん臭わない。子豚なんか抱きしめてやりたいぐらいなんです。
それであとでネットで調べてみたら、ほとんどの豚は合成飼料で、抗生物質を食べさせているわけです。だから、もともと畜産している人がきれいにしないらしいのです。抗生物質を与えているからいいということで。「ああ、豚って臭わへんのや」と意識が変わりました。あそこの豚や鳥、牛を見てきて、今まで僕が知っていた養豚場とか牛舎とか、そういうものとは全然違うなと思いました。なのでここのものは本当に安心できますね。
この友人はヤマギシに入って20数年経ちますが、その間に自分のいる農場もそれ以外の農場でもガンで死んだ人は聞いた事が無いそうです。それくらい食べ物は重要ってことですよね。
お店では東日本大震災以降、肉を食べられなかった人に、安心してがっつり肉を食べてもらいたいという思いがありますが、それだけではなくて、ベジメニューも取り組んでいます。ベジタリアンの人ってどういうものを食べてるんやろうという興味から、このメニューを頼む人も多いようですね。
子どもたちを守るためにNONベクレル食堂は奮闘しました 守田撮影
―そうすると豚肉が一番のお勧めですか。
(ロ)それはもうこの豚はほんまにおいしいですよ。トンカツと生姜焼きを出していますが、肉汁を味わえるトンカツがまずはお勧めですね。ときどき、この豚だけで作ったミンチカツも出すのですが、それも絶品です。
でも豚も美味しいんですが、とにかくなんでも本当に安心して、おいしいなあと、それだけ思って食べにきていただきたいなというのが一番の思いです。とくに放射能が心配で、食事のたびに、もやもやした悲しい思いをしてきた人に、ここで心から食べることの楽しさを味わって欲しいですね。
―本当にそうですね。そういう場を作ってくれて本当にありがたいです。僕もぜひこれからもNONベクレル食堂の発展のためにお手伝いをさせてください。今日はどうもありがとうございました!(20121110 NONベクレル食堂にて)
終わり
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