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明日に向けて(1786)PCR検査は対象しぼって行う方が断然良い!―新型コロナの脅威を民主主義的に越えていこう!(3)

2020年04月01日 17時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200401 17:00)

PCR検査は医療上の意義が少なく精度も低い


防護服を着用して新型コロナウイルスのPCR検査を実施する職員=浜松市保健環境研究所 静岡新聞より

新型コロナウイルスに関する考察の続きです。前回、専門家会議や日本の医療界をもっと信頼しようと述べましたが、今回はその点で大きな位置を持っている「PCR検査」について論じます。
「オリンピックを行いたい安倍政権が意図的に検査を遅らせ、感染者を少なく見せてきたのでは」という懸念についてお答えしたいからです。端的に言って、僕はそういう事実はまったくなかったと思っています。
そもそも当初から専門家会議は「感染症予防の観点からは、全ての人に新型コロナウイルスの検査をすることは、有効ではない。また、設備や人員の制約のため、全ての人に新型コロナウイするの検査をすることはできない」と語っています。(2月24日の提言)

それはこの感染症には特効薬がないので、陽性でも治療方針が変わらず、治療上の意味が少ないことを理由としています。検査は感染の広がりを把握していく疫学的な意義からなされてきたのです。
もちろん治療現場にとっては感染症対策の必要性からも検査に意義があります。その点で医師が必要性を感じたら、直ちに検査できることは大切です。

しかしこの検査は精度が低い点んでもやっかいなのです。陽性の人を見つける「感度」はよくて7割。3~5割と唱える人すらいます。一方で陰性の人を正しく判断する「特異度」は高いようですが、それでも100%はありえない。仮に99%としましょう。
それで仮に30万人を検査して、陽性が7千人とします。3割以上は間違うので、陽性者3千人以上が陰性と判断されてしまいます。残りの29万人以下は陰性ですが、1%の2900人が陽性と判断されてしまう。
そうなると本当の陽性者7千人の8割の軽症者5600人と、本当は陰性の2900人と合わせて、元気な8500人に医療を施さなければならなくなってしまいます。日本なら即入院です。感度や特異度がもっと低ければこの数はもっと多くなります。


感度と特異度 ネットより

この点でこの検査は陽性の人をキャッチしきれず、一方で多数の人を陽性と誤解してしまう限界を持っています。陽性が陰性と間違われる偽陰性、反対の偽陽性がたくさんでてしまい、その分、重症者に振り向ける医療資源を無駄に奪う可能性があるのです。
しかもこのウイルスは感染性が高い。症状が出る前から感染させるので検査によって感染が広がってしまうかもしれない。だから一般の病院やクリニックではとても行いにくいのです。
これらからこの検査は、限定なしでどんどん行うと混乱を招く可能性が高い。だから肺炎が疑われた時にしぼって行っていった方がいいので、実際に医療界はそのように判断し、他国のようにどんどん検査をしなかったのです。

そのことでこそ院内感染を防ぐとともに、重症者にきちんと高度な医療を振り向けて救命措置ができている。だからこそ今日の段階で死者を66人におさえられているのです。医療界の奮闘に感謝です。


日本は検査に優位なCTスキャンの台数が多い

しかし必要な検査を行っても間違いが出る可能性にはどう対処しているのでしょうか。重要なのはCTスキャンです。この肺炎は肺の五つの葉のすべてに起こり、周辺部が犯されやすいのでCT画像を参考にできます。ただし確定診断は難しいようですが。
クルーズ船の感染者100人余りを治療した自衛隊中央病院がこの経験を論文化してくれています。PCR検査の信頼性が低いことを踏まえつつCTでの判断を併用したことが述べられています。肺炎像は軽症の方にもみられたとか。
論文は「医療従事者限定」として公開されていますが、広い意味で医療に関わっていると思う方は誰でもアクセスできるので興味のある方はご覧ください。

自衛隊中央病院HP
https://www.mod.go.jp/gsdf/chosp/


自衛隊中央病院HPより

実はこの点で日本はとても優位な立場にあります。CTスキャンの国民あたりの台数が、他国に比べてダントツに多いからです。MRIもダントツです。
被曝防護の観点からは問題もありますが、いまはそれは横において、CTとMRIの台数をみると100万人あたり日本は112―55台、アメリカ45―36台、OECD平均27ー17台、イタリア35―29台、スペイン19―16台です。
CT台数は日本は同じ人口あたりイタリアの3.2倍、スペインの5.9倍もあります。MRIとともにレントゲンの数も多いので、それらを駆使して肺の状態をより適切につかみ、新型コロナの感染かどうかの見極めがなされています。


OECD Healtu Statistics 2019 より

さらに肺炎が疑われた場合、CT検査とともに他の肺炎の検査も行わっているそうです。黄色ブドウ球菌など細菌性肺炎、マイコプラズマなど微生物による非定型肺炎、そしてインフルエンザなどのウイルス性肺炎などです。
可能性が高いものから優先的に検査され、それらが陰性な時にPCR検査が行われますが、先にも述べたように治療そのものは、呼吸の補助などの形ですでに進行していて、陽性だからといって変わるわけではありません。
このように病状を絞り込んで検査を行っているので、日本ではPCR検査の精度の低さから生じる混乱を上手に抑え込み、院内感染もかわして、医療資源の損失を避け、医療のパンクを防げているのです。

こうした素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれている医療界をもっと信頼しましょう!

続く

***

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