守田です(20210304 17:00)
【ご注目】 3月7日午後2時から舞鶴市でお話しますがzoomからもご参加できます。お申し込みはこのアドレスまで kssbkeep-shikeep@yahoo.co.jp 詳しくは「明日に向けて(1995)」をご参照ください
● 政府は被爆者をまったく救おうとしなかった
前回、ビキニ環礁における水爆実験と第五福竜丸などの被爆を契機に、日本の中で女性たちを中心とした大きな運動が巻き起こり、1955年の第一回原水爆禁止国際大会が開かれたことなどを紹介しました。
誇るべき歴史ですが、しかし僕は強い胸の痛みも感じました。1954年を境にした運動の高揚は、それまで広島・長崎の惨劇、被爆影響のもとでの苦しみが国内にほとんど知られず、被爆者に光が当たっていなかったことをも突き出しているからです。
強い憤りとあまりの悲しさを感じます。あれほどの惨劇にあわされ、その後も悲劇の連鎖が続いてた人々が、9年間も放置されていたのです。その間にどれだけの方が悶絶死していったことでしょう。
NHK「その時歴史は動いた」から 右は長崎で被爆し東京に移り住んだ田中熙巳(てるみ)さん
このひどい仕打ちが続いた理由は、1952年まで日本占領を続けた核攻撃の加害者であるアメリカーGHQが、原爆に関する一切の報道を、「占領目的阻害行為処罰令」という法律の下に禁止したためでした。
同時に戦後に全面的にアメリカに追従し、様々なアメリカの戦争政策に協力することの中で自己保身を図った日本の支配層もまた、何らの救済も試みませんでした。被爆者は長く見捨てられ続けていたのです。
それだけではありません。前回、ご紹介したNHKの番組では、原水爆禁止署名運動の盛り上がりに対して、「日米両政府が沈静化を画策した」ことが指摘されています。
具体的には1955年1月4日に第五福竜丸の被爆に対する補償問題での日米両政府の合意がなされたことでした。法的責任を問わない見舞金として200万ドル(約7億円)をアメリカが支払い、日本が一切の請求権を放棄するというものでした。
実はアメリカ政府にとってこんなに都合の良い条件が出されたのは、日本が水面下で戦犯に対する免責を要求したからでした。詳しくは高橋博子さんの報告をお読み下さい。 http://hikaku-kyoto.la.coocan.jp/takahasi0915.pdf
日本政府は、ようやく始まった原水爆に対する民衆の怒りをすら、自分たちの免責のために利用したのでした。
● 国と民衆を分けて考えなければ真実が見えない
ただただ深い憤りと悲しみを感じますが、この史実を前にしたとき、よりいっそう「被爆国」という限界の多い言い方をいまこそ越えていこうと提案したいです。
戦中の日本政府は、無謀な戦争に国民・住民を弾きこんだ挙句、アメリカ軍から空襲などの大量虐殺攻撃を受けたのにいたずらに戦争を長引かせ、沖縄上陸や原爆攻撃など、さらなる惨劇に民衆をさらし続けました。その責任を問わねば。
さらに戦後の日本政府もまた、自らの責任のもとに被爆し、大変な苦しみを背負った被爆者をなんら助けようとせずにきました。そこにもとても重い責任があります。
ところが「被爆国」などというと、あたかも被爆者が十分な援助や補償・保障・保証が受けられているかのような誤解を招いてしまいます。
事実僕は幼少期の頃から、この国の中で被爆者がとても大切にされ、充分な手当てなどを受けているのだとばかり思って来ました。そういう誤解は多いのではないでしょうか?事実は逆です。政府は被爆者を打ち捨ててきたのです。
状況を少しずつ変えてきたのは、被爆者自らとこれに共感した民衆の努力によってでした。かくして1957年、戦後12年経ってようやく「原爆医療法」ができ、被爆者手帳が作られるようになりましたが、それとて余りに不十分なものでしかなかった。
そもそも未だに日本政府は被爆者に対しての謝罪と補償を行っていません。いや都市空襲にしてもそうです。沖縄戦にしてもそうです。それどころか政府はいまだに米軍に基地の提供を続けている。沖縄をはじめ多くの人に大きな負担を強いてです。
それほどにひどい政府がアメリカを後ろ盾にしてまだ存在していることを明らかにするためにも、「被爆国」という正しくない言い方を越えていきましょう。
繰り返し言います。日本政府はあの戦争の被害者ではなくて加害者なのです。さらに戦後も加害者アメリカと共に、被爆者を苦しめ続けてきたのが日本政府なのです。
その日本政府に真っ当な怒りをもって向き合わなくてはいけない。
民衆への加害責任に対する謝罪と補償を求めましょう。その中で核兵器禁止条約に参加すべき義務をつきつけましょう!
高橋さんの論稿から 全文はPDFでご覧下さい。
続く
#被爆国 #占領目的違反 #戦犯免責 #原爆医療法 #核兵器禁止条約
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