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昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十二) ご臨終です。

2014-03-22 12:48:19 | 小説
(九)

母親の呼びかけが病室に響く。
激しく勝子の体を揺すって呼びかける。

医師に哀願の眼差しを向ける。
しかし、医師が静かに首を横に振る。

「ご臨終です。竹田勝子さんは、永眠されました」

「勝子、勝子。やっぱりお母さんは、あんたに長生きして欲しかったよ。
病院のベッドの中だとしても、やっぱり生きてて欲しかったよ。
あんたには酷なことかもしれないけれど、ゆっぱり、やっぱり、やっぱり…」

ベッドの脇に泣き崩れる母親の背を、小夜子が軽く叩いた。

「ごめんなさい。やっぱり、死期を早めてしまったのね。
勝子さん、ほんとのところはどうだったの? 

もっと生きていたかった? 
外出なんかせずに、ここでじっとしていた方が良かったの? 
もっと生きていたかったの?」

沈痛な面持ちで、小夜子が問い掛けた。


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