中学に入学後は、さすがに小夜子の添い寝を拒んだ。
「大丈夫だよ、もう。僕、中学生だよ。一人で寝られるから」
「どうして? お母さんが嫌いになったの? お母さん淋しいわ」
そんな会話が暫くの間続いた。彼としても母親の添い寝が疎ましくなったのではない。
友達に知られることが恥ずかしかったのだ。 . . . 本文を読む
「このままでは世間の荒波に飲み込まれてしまう。何とか荒波に立ち向かう気概を持たせねば」
と考えあぐねていた。
貧弱な体を鍛えようと、早朝の寒風摩擦を強いてみたりもした。
しかし母親の強い抵抗に合い、ものの三日と続かなかった。
親離れをさせようと彼に部屋を与え、“夜の就寝を一人で!”と厳命もした。 . . . 本文を読む
小学校時代の彼は、都会っ子として女子児童の憧れの的であり人気者だった。
常に彼の周りに、女子児童が集まっていた。
彼が、別段面白い話をするわけではない。
言うよりは、無口な彼に対し女子児童があれこれと世話を焼いていた。 . . . 本文を読む
”これが最高学府の講義なのか”
彼の失望は大きかった。次第に勉学に対する情熱が薄れ、彼はアルバイトに熱中するようになっていた。
”デパートでのバイトの方が、余程に活きた講義だ!”
そんな思いがよぎるようになっていた。
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昨日の土曜日に、作家 池永 陽さんに来て頂いて、お話しを聞きました。
初めてお目にかかるのですが、正直イメージが違いました。
もう少し、おっさんおっさん(失礼しまた!)したお方かと思っていましたが、
実にダンディな方でした。 . . . 本文を読む
空から白いものが、チラリホラリと落ちてきた。
「あらっ、雪よ! もう春でしょうに」
「ホントだ、風花だね。〇〇山から下りてきたんだ」
貴子の腕が彼から離れ、その綿帽子のような雪を両手で受け止めた。
「ねえ、ステキね。すぐに溶けちゃうけど。ねえ、見て見て!」 . . . 本文を読む
”こんなに笑ったのは、ホントに久しぶりだわ”
彼の存在が、貴子の心にしっかりと広がり始めた。
痛い、痛い! と大げさに騒ぐ彼の腕に、貴子はそっと腕を絡ませた。
気恥ずかしさもあったが、”たけしに全てを預けてみたい”と思い始めたのだ。
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当時の貴子は未だ十八歳であることを考えれば、無理からぬことではあった。同窓生の中には既に経験済みの者も居はしたが、ほんの一握りだった。その後次第にその男からの誘いがなくなり、貴子から連絡を取っても生返事が返ってくるようになった。そして別の女性との交際を知った。 . . . 本文を読む