もしも彼が生きながらえていたら…
次第にラジカセから流れる声とにズレが生じ始めて、隣の社員が大きく広げた手に、飛び跳ねた足がもつれてしまった彼の体が当たってしまった。
見咎めた部長から「おい、そこ。キビキビとやりなさい!」と、声が飛んできた。
みな一せいに振り向いて彼を見た。
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もしも彼が生きながらえていたら…
午前八時二十分、始業時間十分前だ。
三階建てほどの高さのある倉庫の前で、二十人近い人間が整列している。
のりの効いた作業着を着た社長の甥である部長が「始めえ!」と号令をかけた。
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あるいは、お母さんの言葉が正しいのかもしれない。
多分そうなのだろう。病気が彼を苦しめ、精神的重圧となったのだろう。
「今度目が覚めたら、きっと違うぼくになっているから。元気な強い子になっているから」
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お母さんの話では、病気を苦にしていたとのことだ。
「一生を病人で過ごして私に迷惑をかける位なら、と自殺を図ったんです。
この子は、あなたもご存じの通り。とても気の優しい性格ですから」 . . . 本文を読む
新幹線より速かった。
どんどん速くなって、息もできないくらいなんだ。
でも、ちっとも苦しくなかった。
でね、突然に、ずんと体が重くなって、ふーって息をして目を開けたら、お母さんがいた。
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