昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)胸の疼きを抑え切れなかった

2015-07-31 09:40:08 | 小説
二時間近く話し込んだ後、後ろ髪を引かれる思いで、彼は貴子と別れた。その別れ際、彼は人目もはばからずに貴子を抱きしめた。このまま別れてしまうことが、どうしてもできなかった。胸の疼きを抑え切れなかった。 「貴子さんが、欲しい」 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)己を卑下するような物言いに

2015-07-30 08:56:56 | 小説
「いえ。僕は、別に‥‥」 「ありがとう、おじさん。違うのよ、彼は。私を責めているんじゃないの。彼は、とっても優しいひとなの。彼こそ、純真なの。その純真さにつけ込んだ私が悪いの。こんな私を見ると、放っておけなくなる人なのよ。さあ、私の話はもうお終い。今度は、たけしさんのおのろけ話を聞かせて」 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五) 嘘はないと思う彼だった

2015-07-28 09:10:51 | 小説
奥まった席に座った貴子を見て、マスターの声がかかった。 「貴子ちゃん、ちょっと買い物してくるよ」 わざわざ準備中の札に変えて出て行くマスターを見て、やっと彼にも理解できた。 “町内の人は知っているんだ、貴子さんが戻った理由を。そして僕とのことも” . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)貴子の顔が一瞬翳った

2015-07-27 09:01:45 | 小説
相変わらず、一人で話し続ける貴子だった。 彼に口を挟ませる余裕を与えない貴子が、眩しく見える彼だった。 ブラウスの上にカーディガンを羽織っただけの貴子は、少し震え気味だった。 「寒いんじゃない? 貸すよ、これ」 ファスナーを下ろしかけた彼に、 「良いわよ。相変わらず、優しいのね。ここ、ここに入りましょ」 と、彼の腕を引っ張るようにして、喫茶店に入った。 「こんにちわ!」 「おお、貴子ちゃん。い . . . 本文を読む

蜂くんとのお約束 ⑨ 2015年7月12日~7月25日

2015-07-25 10:44:48 | ポートレート
蜂くんたちの、定期報告です。 たわわに実った…なんてものじゃありません。 今にも落っこちそうですよ。 重量に耐えかねて、ドスン! なんて。 「ぼくのせいじゃないからね」 今から声をかけ続けていますよ。 この混み具合は何でしょう? いよいよ、なんでしょうか? にしても、台風11号の雨風にも耐え抜いた巣です。 大したものです、はい。 助かりました、ほんとに。 今日25日は、同人の例会です。 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)プレゼントされた赤いジャンパー

2015-07-23 08:57:01 | 小説
翌日目覚めた彼は、頭の芯に爆弾を抱えていた。 時計は既に、午後の三時近くを指している。 昨晩(と言えるかどうか)アパートに辿り着いた時、日付が変わっていた。 二時近かった記憶がありはするが、それにしても十二時間以上も眠り続けたことになる。 体のだるさを抱えながらベッドから下りた彼は、冷蔵庫から麦茶を取り出した。 一口飲む毎に、頭の重さが薄れていくような気がした。 コップ二杯を飲み終えて、やっと平 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五) 激しい怒りの気持ちが

2015-07-21 09:03:18 | 小説
麗子は、彼が泣いていることに気が付いた。彼の目からこぼれている涙を、麗子は優しく拭き取りながら「大丈夫よ、大丈夫。私が、導いてあげるから」と、彼の耳元に何度も囁いた。 “導くだって? 冗談じゃない!僕の何を知っていると言うんだ、麗子さんが” . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)分かっていただけるかしら

2015-07-20 11:05:58 | 小説
「貴方はね、優しすぎるのよ。私がどんなに意地悪しても、どんなに邪慳にしても、いつも笑って許してる。残酷なことなのよ、それは。貴方の心の中に、私に対する畏怖の念といったものがあるのね。私、武士さんが好きですのよ。純真さが、眩しくもありました。 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)獲物を見つけた鷹さながらに

2015-07-19 10:05:10 | 小説
「どうして。どうして、麗子さんは僕を‥‥」 麗子の真意を掴みきれない彼は、意を決して訴えた。 「僕を、僕を一体どうしたいんですか?  その答えを、僕は麗子さんから聞かせて貰えない。地獄です、これは。 やっとの思いで、麗子さんから逃れ得たと思ったのに、また貴女の手の中だ。 どうして、僕なんかを…。 麗子さんとは、不釣り合いな僕です。いや、そうじゃない。 釣り合うとか、そんなことじゃない。 麗子さ . . . 本文を読む

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