昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

大長編恋愛小説 【ふたまわり:第二部】(二)の7

2011-03-04 19:32:20 | 小説
五平は、
社長である武蔵を立てる。
仕入れに関しては、
武蔵は不要である。
取引は、
全て五平が段取りを付けている。
しかし、
販売となるとそうはいかない。
海千山千の、
ブローカー相手である。
中には、
暴力団まがいの者もいる。
とてものことに、
さばけるものじゃない。
騙されたり、
脅し取られたりするのが関の山だ。

武蔵は、
五平が居なくては
物資の調達がうまく行かない。
これ程の量は、
望むべくもない。
二人三脚でなくては、
成り立たない。
といって、
欲得だけの繋がりではない二人だ。
親兄弟以上の、
強い絆で結ばれている。
そして又
最も重要な事は、
五平が武蔵にぞっこん惚れ込んでいることだった。
更に親分肌の武蔵を慕うのは、
一人五平だけではなく
他の社員達もであった。

「いいかっ!
俺一人だけ、
良い思いをしようとは思わん!
儲けの三割は、
俺が貰う。
五平にも、
三割だ。
残りの四割は、
お前達に分配してやる。
平等に、だ。
死に物狂いで働け。
儲かれば儲かるほど、
お前達の実入りも良くなる。
但し、
サボる奴は、
即辞めさせる。」

夜が明けると同時に仕事に入り、
どっぷりと暮れるまで動き回る。
男性社員は全員、
会社に寝泊りした。
自宅に帰るのは、
月に一度か二度ほどだった。
女子事務員だけは、
社長である武蔵が送迎した。
送迎と言っても、
実のところは武蔵の愛人である。
しかし、
こと仕事に関しては、
愛人と言えども容赦はなかった。
他の社員同様、
少しでも手を抜けば烈火の如くに怒った。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿