(二)
「看護婦さん、来て! 早く来て!」
半狂乱で叫ぶ小夜子の姿が、今日もまた見られた
。慌てて飛んできた看護婦に対し
「おかしいの、おかしいのよ。赤ちゃんが、私の赤ちゃんがね、おっぱいを戻しちゃったの。
先生に診て貰ったほうがいいわね?」と泣き叫ぶ。
「大丈夫ですよ、御手洗さん。ゲップを出した折にね、少し戻すことは珍しくないんですよ」
「いいえ! 何かの病気だったら、どうするの。やっぱり、診て貰わなくちゃ。早く先生を呼んで!」
一事が万事だった。些細なことを大げさにとらえては、泣き叫んだ。
「針小棒大って、このことよね。仕事にならないわ、ほんとに」
「先生が甘やかすからよ。なんでも、『はいはい大丈夫だよ、もう』なんてね」
不満の声が渦巻く看護婦たちに対し
「多額の志を頂いたでしょ。多少の我がままは辛抱なさい」と、婦長は取り合わない。
「でも、婦長。仕事になりません、あたしたち。
何でもないことで一々呼び出されたんでは、他の患者さんたちにも悪影響を与えます。
ほぼ全員から、嫌みを言われているんですから」
「まあね、確かにね。度を越してるかな? って思う時もねえ。
でもねえ、先生に言われているしねえ。
『初めての出産で、不安がいっぱいなんだ』って、わざわざ念を押されたし」
「看護婦さん、来て! 早く来て!」
半狂乱で叫ぶ小夜子の姿が、今日もまた見られた
。慌てて飛んできた看護婦に対し
「おかしいの、おかしいのよ。赤ちゃんが、私の赤ちゃんがね、おっぱいを戻しちゃったの。
先生に診て貰ったほうがいいわね?」と泣き叫ぶ。
「大丈夫ですよ、御手洗さん。ゲップを出した折にね、少し戻すことは珍しくないんですよ」
「いいえ! 何かの病気だったら、どうするの。やっぱり、診て貰わなくちゃ。早く先生を呼んで!」
一事が万事だった。些細なことを大げさにとらえては、泣き叫んだ。
「針小棒大って、このことよね。仕事にならないわ、ほんとに」
「先生が甘やかすからよ。なんでも、『はいはい大丈夫だよ、もう』なんてね」
不満の声が渦巻く看護婦たちに対し
「多額の志を頂いたでしょ。多少の我がままは辛抱なさい」と、婦長は取り合わない。
「でも、婦長。仕事になりません、あたしたち。
何でもないことで一々呼び出されたんでは、他の患者さんたちにも悪影響を与えます。
ほぼ全員から、嫌みを言われているんですから」
「まあね、確かにね。度を越してるかな? って思う時もねえ。
でもねえ、先生に言われているしねえ。
『初めての出産で、不安がいっぱいなんだ』って、わざわざ念を押されたし」
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