昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(七十七) 仕切り始めた勝子

2014-01-07 21:17:03 | 小説
(二)

起き上がるやいなや、仕切り始めた勝子。
竹田は、黙々と勝子の指示に従っている。

“勝子さんの前では、竹田も形なしね。
会社じゃ敬われているのに。

ま、竹田の機敏さは、勝子さんのおかげね。
でも、覇気が感じられん! って言う武蔵だけど、なるほどよね”

「さあさ、お口に合いますかどうですか。
田舎料理でございますが、どうぞ召し上がってください。

味はしっかりと染み込んでいるはずでございますけれど、
味付けはお宅お宅で違いますから」

大きな丼の中に、こげ茶色の芋やら人参やら白ねぎやらが、ごちゃごちゃと入っている。
申しわけ程度にイカの足が所々に顔を出しているのは、ご愛嬌か。

「小夜子さんは、料理屋さんでの食事が多いんでしょ? 
あたしも死ぬまでに一度ぐらいは、食べてみたいわ。

勝利。あんたは、食べてるわよね。
社長さんに連れて行ってもらってるんでしょ? 

この間、すっごく良い匂いをさせて帰ってきたわよね。
あぁ、あたしもこんな体じゃなかったら富士商会に入社して、
おいしいものをバンバンご馳走してもらうのにな」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿