度重なる真理子の母親からの手紙に、悩まされる彼だった。
さすがに非難めいた言葉はないが、「連絡はありませんか?」と書かれた文面は堪えた。
痛みを感じつつも、その都度返事を出し続けた。
それにもまして彼の気持ちを苛立たせたのは、早苗だった。
本人としては親切心なのだろうが、茂作の痴呆状態や母親の行状を、事細かに報告してきた。
余計なことを! と思いつつも、一日置きの手紙を丹念に読む彼だった。
そして必ず、追伸として「デパートでお洋服を買ってくれる約束、絶タイに忘れないでね」と付け加えてあった。
しようがない奴だなと思いつつも、どこかで心待ちにしている気持ちもあった。
しかし幸か不幸か、早苗の希望は叶えられずになってしまった。
早苗の両親が猛反対したのだ。
「真理子さんのように、家出する!」
そんな早苗に対して彼は、こちらに来てもアパートに泊めることはおろか、会うこともしない、と告げた。
両親の危惧する気持ちが、今は痛いほどに分かる彼だった。
そして心待ちにしていた自分を、厳しく戒めた。
可哀相な気もしたが、一過性の熱病であってくれと祈る彼だった。
真理子の二の舞だけは踏みたくないと考えた。
約束のプレゼントとして以前に欲しがっていた服飾本モード・エ・モードを送り、何とか早苗を思い止まらせた。
そんな九月の終わりに、高木から手紙が届いた。
心配をかけましたが、真理子が帰ってきました。
君と別れた後、京都に向かったようです。
自活しようと試みたらしいのですが、世間は甘くなく就職が出来なかったようです。
少しの間アルバイトをしたようですが、矢張りのことに自活できるだけの収入は得られなかったようです。
手持ちの金がなくなり、泣く泣く戻ってきました。
幸いなことに、真理子のご両親が折れてくれました。
少し時間を置こうということになったようです。
婚約者も、真理子の気持ちを第一に考えてくれました。
中々に、良い人のようです。
そうそう、君との事はご両親には内緒にしているようです。
安心してください。我々も、一安心です。
佐知子は、真理子に相当怒っていました。
何せ、会うなり張り手一発でしたから。
その後、二人して大泣きしていました。
取りあえず、ご報告まで。 高木
さすがに非難めいた言葉はないが、「連絡はありませんか?」と書かれた文面は堪えた。
痛みを感じつつも、その都度返事を出し続けた。
それにもまして彼の気持ちを苛立たせたのは、早苗だった。
本人としては親切心なのだろうが、茂作の痴呆状態や母親の行状を、事細かに報告してきた。
余計なことを! と思いつつも、一日置きの手紙を丹念に読む彼だった。
そして必ず、追伸として「デパートでお洋服を買ってくれる約束、絶タイに忘れないでね」と付け加えてあった。
しようがない奴だなと思いつつも、どこかで心待ちにしている気持ちもあった。
しかし幸か不幸か、早苗の希望は叶えられずになってしまった。
早苗の両親が猛反対したのだ。
「真理子さんのように、家出する!」
そんな早苗に対して彼は、こちらに来てもアパートに泊めることはおろか、会うこともしない、と告げた。
両親の危惧する気持ちが、今は痛いほどに分かる彼だった。
そして心待ちにしていた自分を、厳しく戒めた。
可哀相な気もしたが、一過性の熱病であってくれと祈る彼だった。
真理子の二の舞だけは踏みたくないと考えた。
約束のプレゼントとして以前に欲しがっていた服飾本モード・エ・モードを送り、何とか早苗を思い止まらせた。
そんな九月の終わりに、高木から手紙が届いた。
心配をかけましたが、真理子が帰ってきました。
君と別れた後、京都に向かったようです。
自活しようと試みたらしいのですが、世間は甘くなく就職が出来なかったようです。
少しの間アルバイトをしたようですが、矢張りのことに自活できるだけの収入は得られなかったようです。
手持ちの金がなくなり、泣く泣く戻ってきました。
幸いなことに、真理子のご両親が折れてくれました。
少し時間を置こうということになったようです。
婚約者も、真理子の気持ちを第一に考えてくれました。
中々に、良い人のようです。
そうそう、君との事はご両親には内緒にしているようです。
安心してください。我々も、一安心です。
佐知子は、真理子に相当怒っていました。
何せ、会うなり張り手一発でしたから。
その後、二人して大泣きしていました。
取りあえず、ご報告まで。 高木
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