翌日の放課後、真面目派は、期待と不安とのからむ複雑な心境で、体育館にはいった。
その子の姿はまだ見えない。
と、ヒネクレ派が、更衣室の中から手招きで呼んでいる。
しかし、昨日のことはひと言も口にしない。
すこし裏切られたような、変な気持ちになった。
いつものようにグランドを走っている時、行動派がドスドスと追いかけてきた。
そして、例の風紀についてはなしあいたい、と言う。
ヒネクレ派は、即座に「嫌だ!」と、答えた。
真面目派は、「あと十分後ならいいよ」と、答えた。
行動派は、満足そうにうなずくと校舎へとむかった。
ヒネクレ派は、校舎内に行動派が消えたのをみとどけてから、
「おい、きょうはあの子にお前を会わせる予定だゾ。
そこで告白しろ。わかっているのか?」
「いいんだよ、そんなこと。ぼくだって、彼女と話しをしてみたい気はあるさ。
だけどいまは、与えられた仕事をはたしたいんだ」
「ご立派な考えだよ、それは。
しかしなあ、行動派がひとりで突っ走ったんだ。おまえが従うことはない。
おまえ、結局のところは、恥ずかしいんだろう。
大丈夫だって、おれも付き合うから」
「うん、そうかもしれない。でも、やっぱり教室に行くよ」
ヒネクレ派は、相変わらずの真面目さに、「馬鹿だなあ!」と、連発した。
真面目派が、体育館にもどる途中、その子にバッタリ出会った。
なのに、せっかくのチャンスをみずから放棄した。
その子のことなど、まるで眼中にないかのごとくに、サッサと中にはいった。
ヒネクレ派が、なにごとか話し込んでいるのが気にはなったが。
真面目派の着がえが終わったとき、ヒネクレ派がニコニコしながら入ってきた。
そして真面目派の肩をポンとたたき、ニヤリと笑った。
「なんだい、気味がわるい」
しかしヒネクレ派は、ただニヤニヤするだけで、ひとことも言わなかった。
真面目派も、連られてニヤリとした。
真面目派は、無造作にかばんを引っさげて、体育館をあとにした。
そして、追いかけてきたヒネクレ派の声にも振りむきはしなかった。
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