昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十)  ひとり言を言います

2014-02-14 21:38:08 | 小説
(二)

しかしそれでも諦めない小夜子だ。
診察時間外であることを確認している小夜子だ。

「先生、無理を承知なんです。それじゃ、こうしますわ。
私、ひとり言を言います。違っている時だけ、首を横に振ってください」

有無を言わせぬ強い口調で、小夜子がにじり寄った。
医師にとっては迷惑な話ではあるが、上の方に武蔵から多額の金員が渡っている。
そして医師自身も、幾許かのおこぼれに預かっている。

「最大限の便宜を図るように」との厳命もある。
渋々ながらも、小夜子の提案に乗ることになった。

「竹田の話では、快方に向かっているとか」
医師が首を振る。

「悪いんですね、相当に」
反応を見せない。眉間にしわを寄せている。

「一年、ですか?」
思い切って余命に踏み込んだ。
ギョッとした表情を見せつつも、目を落として首を振る。

「六ヶ月?」
また、首を振る。

「ま、まさか…三、ヶ月?」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿