昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[ブルーの住人] 蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~

2023-05-27 08:00:57 | 物語り

(十四)Coca_Cola

 少年のボックスからは、その女の横顔がしっかりと見えた。
少しからだを傾ければ、すがた全体が見えた。
赤いミニスカートにグリーンのロングベストを身に着けている。
おかっぱ風に前髪をそろえて、横髪でみみを隠している。
クレオパトラを思わせる、髪型だ。
際立った美人でもなく、愛くるしさにあふれているわけでもない。
なんの変哲もない、ふつうの女だった。
  
 その女の手を、少年の目がとらえる。
すらりと伸びた細い指が、少年と同じくコーラを手にしていた。
Coca_Colaという文字の入ったコップは、まさに少年が手にしているコップだった。
大事そうに抱えるそのコップの文字が、少年の目にグングン迫ってくる。
その服装にはとても似つかわぬコーラ、それが少年には妙に生なましく感じられた。

 異国の地で出会った同郷人に見えた。
そしてコップを持つしぐさは、いつでもどこでも見かけるしぐさだ。
なのにこの時この場におけるしぐさが、少年の胸をざわつかせる。
原色の服とどうように、厚化粧に見える。
きついアイシャドウに隠された瞳のかがやきが、少年にはまぶしい。
鼻筋をたかく見せるための陰、ベージュ色に見える唇、なにもかもが少年の胸をたか鳴らせる。



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