17日(土).わが家に来てから今日で809日目を迎え,安倍首相が来日中のロシアのプーチン大統領と 長門市に次いで東京で会談し,日本側の経済協力の総額を3000億円とすることで合意した というニュースを見て 感想を述べるモコタロです
経済協力だけで北方領土返還交渉は進展なし? 恐ロシア プーチン大統領!
閑話休題
昨日,NHKホールでNHK交響楽団 第1852回定期演奏会を聴きました プログラムは①ブリテン「歌劇”ピーターグライムズ”~4つの海の間奏曲」,②プロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調」,③ラヴェル「チガーヌ」,④オネゲル「交響曲第2番」,⑤ラヴェル「バレエ音楽”ラ・ヴァルス”」です ②と③のヴァイオリン独奏はワディム・レーピン,指揮はN響名誉音楽監督シャルル・デュトワです
オケの態勢は,左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,その後ろにコントラバスという並び,コンマスは伊藤亮太郎です
1曲目はブリテンの歌劇「ピーター・グライムズ~4つの海の間奏曲」です 歌劇「ピーター・グライムズ」は北海沿いのある漁村を舞台に 粗野な漁師のピーターと料簡の狭い村人たちとの軋轢を描いた悲劇ですが,幕間に置かれた間奏曲にタイトルを付けて管弦楽曲として出版したものです 第1曲「夜明け」,第2曲「日曜の朝」,第3曲「月の光」,第4曲「嵐」の4曲から構成されています.私が一番印象に残ったのは第1楽章「夜明け」の冒頭で,ヴァイオリンとヴィオラが煌めくように対話する場面です 聴いているうちに,かつて新国立オペラで観た「ピーター・グライムズ」の各場面を思い出していました
2曲目はプロコフィエフの「ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調」です 1916年~17年にかけて作曲されましたが,第一次世界大戦のため初演は1923年10月になりました 第1楽章「アンダンティーノ」,第2楽章「スケルツォ:ヴィヴァチッシモ」,第3楽章「モデラート」の3つの楽章から成ります
白髪のワディム・レーピンが登場します.私はレーピンというと太ったイメージがありましたが,ホンモノは長身でスマートでした 1971年 シベリア生まれで,17歳の時に史上最年少でエリーザベト王妃国際コンクールで優勝しています
この曲で一番プロコフィエフらしいと思うのは第2楽章です この楽章はプロコフィエフ自身が「スケルツォの中のスケルツォ」と呼んだそうですが,まさに超絶技巧を凝らした聴き応えのある音楽です レーピンは1733年製ストラディヴァリウス『ロード』を駆使して超難曲に挑み,美しい音色で色彩感豊かにプロコフィエフの世界を描き上げました
3曲目はラヴェル「チガーヌ」です ラヴェルは演奏旅行中の1922年7月にハンガリーのヴァイオリン奏者イェリー・ダラー二に出会い,彼女のために演奏会用狂詩曲である「チガーヌ」を作ることを構想し,2年後に完成しました
再度レーピンがステージに登場しましたが,会場の拍手が止まないうちに序奏部の演奏に入りました カデンツァ風の唸るような音楽に続いて主要テーマが奏でられます しばらくレーピンのヴァイオリン独奏が続きますが,中盤で早川りさこのハープが加わり幻想的な雰囲気を醸し出します その後は様々な超絶技巧が駆使され,時にハンガリーの民族楽器ツィンバロンのような音色を表出し,「果たしてこれが1本のヴァイオリンで弾かれているのだろうか」と疑問に思うほどのテクニックで見事に弾き切りました それも,さも大変そうに弾くのでなく,あっけないほどアッサリと弾くので呆気にとられます
この曲はチョン・キョンファのヴァイオリン独奏,アンドレ・プレヴィン指揮ロン同交響楽団によるCD(1975年10月録音)で予習しておきました
休憩時間はロビーに出ましたが,相変わらず男性用トイレは長蛇の列でした まだ列が続いているのに後半の開始のチャイム(電子音)が鳴っていました 最近,各オケのコンサートの休憩時間が20分から15分に短縮されたようですが,こうした実態を見ると,短すぎるように思います
後半の最初はオネゲル「交響曲第2番」です ステージを見て驚きました.管楽器はトランペット一人だけ,あとは弦楽セクションのみです この曲はオネゲルが1940年に作曲した作品ですが,ちょうど第2次世界大戦と重なったため,曲の中に戦争の光と影が現れています 第1楽章「モルト・モデラートーアレグロ」,第2楽章「アダージョ・メスト」,第3楽章「ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポープレスト」の3つの楽章から成ります
聴いていて一番印象の残ったのは第2楽章のコントラバスのうねりです トランペットは全体を通して演奏されるものとばかり思っていたら,最後の最後に”勝利のファンファーレ”のように吹かれただけでした 演奏後,デュトワは曲の中で独奏を担当したコンマスの伊藤亮太郎,ヴィオラ首席の佐々木亮,チェロ首席の藤森亮一に握手を求め,さらにコントラバス首席の吉田秀にも握手を求めました デュトワからみて弦楽セクションは会心の演奏だったのでしょう
最後の曲はラヴェルのバレエ音楽「ラ・ヴァルス」です この曲はロシアのバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の主宰者セルゲイ・ディアギレフの依頼により1919~20年に作曲されましたが,ディアギレフは「傑作だがバレエではない」と拒否したため,この曲は管弦楽曲として初演されることになりました 本人が述べているように「ウィンナ・ワルツへの一種の賛歌」という曲想で,8つのワルツが現れます この曲と「ボレロ」との大きな共通点を挙げると,全体が大きなクレッシェンドの中に組み込まれているということです この”仕掛け”は聴く側に大きな興奮を呼び起こします
管楽器も,弦楽器も,打楽器も,すべてひっくるめて熱狂的な演奏の中で曲を閉じます 会場いっぱいの拍手とブラボーです デュトワの指揮で聴くのは本当に久しぶりですが,さすがに”フランスもの”は色彩感豊かに,しかもダイナミックに表現します.そんなデュトワの指揮にN響のメンバーはよく応えていました