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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

USTREAMで今夕生中継 ! ~ハーディング=新日本フィルのマーラー「第5」

2011年06月20日 07時12分05秒 | 日記
20日(月).今夜7時15分から,すみだトリフォニー・ホールでダニエル・ハーディング指揮新日本フィルによるマーラー「交響曲第5番」のコンサートがあります 3.11東日本大震災チャリティー・コンサートと位置付けられています.

3月11日の午後,ハーディングは新日本フィルとのマーラー第5交響曲のゲネプロへ向かうために,都内を移動中でした.その途中で大地震に遭遇しました.当日午後7時15分からのコンサートには1801席ある大ホールのうち席を埋めたのはたったの105人でした.オーケストラとほぼ同じ人数といってもよいでしょう.それでもマーラーを演奏しました.私は翌12日のコンサート(同じプログラム)を聴く予定でしたが,それが叶いませんでした 最終的に彼は16日に日本を離れましたが,最後までコンサートの再開に向けて試行錯誤していたようです.

3月12日の代替公演は明日(21日)開催されるので聴きに行きます それに先立つ本日(20日),ハーディングの強い希望により同じマーラー「第5交響曲」によるチャリティー演奏会が挙行されます.ハーディングは次のようなメッセージを寄せています.

「このチャリティー演奏会においてマーラー第5番を演奏できることは私にとってこれ以上ないことです.この作品は,愛,悲劇,生命と死を描いた壮大な物語です.この交響曲を指揮することは私にとっていつも特別ですが,特に今回は,震災で亡くなられた方々,愛する人を失った方々,住む場所や生きる力を失った全ての方々に前身全霊を込めて捧げたいと思います

今夜の公演はUSTREAMで生中継されます.会場に行けない人はパソコン画面でご覧になってはいかがでしょうか アドレスは以下のとおりです.(新日本フィルのホームページからもアクセス可能です)

http://www.ustream.tv/channel/harding-njpcharityconcert


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凄い!ダムラウの「ルチア」~メトロポリタン・オペラ日本公演から

2011年06月19日 17時35分01秒 | 日記
19日(日).午後,東京文化会館でメトロポリタン・オペラ=ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」を観ました.出演者はルチア=ディアナ・ダムラウ(ソプラノ),ルチアの恋人エドガルド=べチャワ(テノール),ルチアの兄エンリーコ=ルチッチ(バリトン),牧師ライモンド=アブドラザコフ(バス)ほか.指揮はジャナンドレア・ノセダ.演出=ジマーマン.座席は前方真ん中といっていい1階4列10番.世界的なオペラをこれほど舞台に近い席で聴いたのは初めてのことです.歌手陣の顔の表情がよく見えます

来日公演のうちプッチーニ「ラ・ボエーム」とベルディ「ドン・カルロ」が東日本大震災の影響で出演者変更が相次いだ中,この「ルチア」は予定通りのキャスト.われわれ日本人にとっては嬉しい限りです

ポーランド生まれのべチャワは「ラ・ボエーム」でロドルフォを歌っていたので,その声の素晴らしさは認識していましたが,このルチアのエドガルド役でもその実力を如何なく発揮していました.この人は無理なく余裕で歌っているという印象があります

今回のメインはドイツ出身ダムラウの歌う「ルチア」です.彼女はMETオペラビューイングのロッシーニ「オリー伯爵」でアデル伯爵夫人を歌っていたので,その美しいソプラノは知っていました.彼女は最近お子さんが生まれたばかりだと思いますが,今回の来日公演には予定通り参加しました.根性があります

第1幕第1場でハープの前奏に続きルチアが歌うアリア「あたりは沈黙に閉ざされ」はしみじみと心に沁みます.同じ第1場でエドガルドと共に愛を歌う「そよ風に乗って届くでしょう」は情熱的です.

何といっても,このオペラの白眉は第3幕第2場.ルチアが新郎アルトゥーロを刺し殺し,発狂して歌う”狂乱の場”です.重々しいオーケストラの伴奏に乗ってルチアが登場し「あの方の優しい声が」と恋人エドガルドとの幻想を歌い続けます.このシーンはコロラトゥーラの技巧とともに迫真の演技力が求められる過酷な場面です.演技をしながら20分以上も歌い続けなければなりません

ダムラウの歌唱力,演技力を何と表現したらいいのでしょうか ルチアが彼女に乗り移ったかのような狂気に満ちた迫真の演技,素晴らしい歌唱です.観客はただシーンとして彼女の姿を追い,その声に耳を傾けるばかりです.”狂乱の場”が終わって照明が落ちた後もしばらくが鳴り止みませんでした.すごいとしか言いようがありません

今回のメトロポリタン・オペラの来日公演を3つとも観に行ったわけですが,最も印象に残ったのは何と言っても今日の「ルチア」です 最後に一発逆転でした

 
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ダニエル・ハーディング=新日フィルのブルックナー「第8交響曲」を聴く

2011年06月18日 18時11分31秒 | 日記
18日(土).夕べは株主総会の打ち上げで飲んで2次会にカラオケに行ったので帰宅が深夜になってしまいました.今日は午前中マンション管理組合の定時総会に出席して,午後,錦糸町のすみだトリフォニー・ホールに出かけました.夕べの疲れが残っていて辛いものがありましたが,今日の新日本フィルの第478回定期演奏会の指揮者は1975年生まれのイギリス出身のダニエル・ハーディング,演奏するのはブルックナーの「交響曲第8番ハ短調」という大曲なので,前から楽しみにしていたプログラムです.聴かないわけには行きません.

オーケストラの配置は,第1バイオリンと第2バイオリンが左右に分かれる対向配置を取り,さらに舞台に向かって左側奥にコントラバスが配置され,チェロ,ビオラ,第2バイオリンという順に並んでいます.ピアノの鍵盤に近い配列です.ハーディングが指揮をするときは必ずこの対向配置を取ります.

第1楽章「アレグロ・モデラート」のときは体が疲れているせいか,眠くてたまりませんでした.なかなか音楽に集中できず,頭の中が朦朧としていました.コンサート・マスターはあの葉加瀬太郎似の崔文珠.きょうは椅子の高さがいつもよりは低いようです.いつもは中腰スタイルです.第2楽章「スケルツォ」からだんだん目が覚めてきて意識を集中して聴くようになりました.何といってもこの曲の白眉は第3楽章「アダージョ」でしょう.「荘重にゆっくりと,しかしひきずらないように」と題されたこの楽章をハーディングは丁寧にメロディーを歌わせていきます そして第4楽章「フィナーレ」はブルックナーの指示通り「荘重に,速くなく」力強くオーケストラを鳴らします.それにしても休憩なしで約90分弱のコンサートは2日酔いの身には堪えるプログラムでした

第4楽章あたりで気がついたのですが,すぐ斜め前の席の白髪の老紳士が,さかんに頭を右左に動かし,足を組んでは解いて,落ち着きがありません.どこかで見たような人だと思ったら音楽評論家の宇野功芳氏であることがわかりました.この人は特定の演奏家を熱狂的に推薦する特徴を持っていることで知られています.一昔前の指揮者でいえばハンス・クナッパッーツブッシュやカール・シューリヒト,日本人では朝比奈隆などです.今でも「レコード芸術」誌や「音楽の友」誌などにCD評や演奏評を書いているのではないかと思います.私も昔は定期購読していたのですが,最近はおもしろくないのでまったく読んでいません.最近彼が何を書いているのかも知りません

演奏が終わってブラボーの嵐の中で,一人覚めて拍手もせずにすぐに退席してお帰りになったようです.どうも彼にとっては今日の演奏はお気に召さなかったようです.いずれ何かの媒体にコンサート評を書くのでしょうが,楽しみです それにしても,演奏中に落ち着きなく頭を動かしたりするのはやめてほしいと思います.音楽を聴くことにおいてはプロのはず.どんなにりっぱな演奏評を書いても,聴くマナーが悪くては信用できませんね

終演で袖に引っ込んだハーディングが花束を持って再度登場し,男性の第1バイオリン奏者に手渡しました.彼は花束を手に楽団員の拍手を受けていました.年のころ「アラ還」のようなので,今日の演奏会を最後にこのオーケストラを定年退職するのでしょう.去って行く者をみんなで温かく見送る・・・家族的でいいなぁと思います





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アベ・べルム・コルプス~モーツアルトの天国の歌

2011年06月17日 06時36分06秒 | 日記
17日(金).15日に株主総会が”無事”に終了し,昨日から役員登記の準備などで慌しく過ごしています.本当は昨夕,東銀座の東劇でMETオペラ・ライブビューイングワグナー「神々の黄昏」を見たかったのですが,上映時間が5時間以上かかることから開始時刻が午後5時20分となっていたため,仕事の都合で諦めました 今夕は株主総会の打ち上げで遅くなり,明日の土曜日は午前中,マンション管理組合の定期総会,午後は新日本フィルの定期公演(ブルックナー「第8交響曲」),日曜日はメトロポリタン・オペラ=ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」を観に行きます 毎週のように週末はコンサートを中心に予定が入っていて体を休める暇がありません 本当は良くないこととは分かっているのですが,ほとんど半年前から予定を組んでしまっているので今更どうにもなりません.ほとんど病気です

ところで,きょうはモーツアルトの「アベ・ベルム・コルプスK618」が完成した日.今からちょうど220年前の1791年6月17日のことです.この半年後の12月5日に彼は永眠します.

「アベ・ベルム・コルプス」とはカトリックで用いられる聖体賛美歌のことです.モーツアルトは妻コンスタンツェの療養を世話した合唱指揮者アントン・シュトルのためにこの曲を作曲しました.混声四部合唱と弦楽,オルガンで演奏されるアダージョ曲です.たった3分程度の小曲ですが,天国のように穏やかな曲です.

アベと言えば地下のテナントさんの受付にアベマリアと一文字違いの美人がいらっしゃいます.ということで(どういうことだ!?)いま聴いているCDはレナード・バーンスタイン指揮バイエルン放送管弦楽団による1991年の録音です.まさに曲の完成から200年後の演奏です



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エロイカはどこで聴いてもエロイカか~岡田暁生「西洋音楽史」を読む

2011年06月16日 20時56分43秒 | 日記
16日(木).最近読んだ本から.読んだ順に佐藤正午「ありのすさび」,シューバル,バール共著「笑う警官」,佐藤正午「カップルズ」,赤塚不二夫「人生これでいいのだ」,岡田暁生「西洋音楽史」の5冊.ここではもちろん「西洋音楽史」を紹介します.新書版の帯封に次のうたい文句が書かれています.

「18世紀後半から20世紀前半にいたる西洋音楽史は,芸術音楽と娯楽音楽の分裂のプロセスであった.この時期の音楽が一般に”クラシック音楽”と呼ばれている.クラシック音楽の歴史と,その前史である中世,ルネッサンス,バロックで何が用意され,クラシック後には何がどう変質したのかを大胆に位置づける.音楽史という大河を一望のもとに眺め渡す」

クラシック音楽の歴史は中世からの1000年以上続く長い西洋音楽史の中のたったの200年に過ぎないのです さらに著者は「まえがき」で次のように書いています.

西洋音楽史は,楽譜や録音といった,音楽をいつでもどこでも可能な限り正確に再生できるメディアを,高度に発展させてきた ややもすると人々は,東京で聴こうが,ウイーンで聴こうがナポリで聴こうが,ベートーベンの「エロイカ」はいつも「エロイカ」だと思いがちである だが,私自身は,たとえ西洋音楽といえども,それはあくまで深く「場」に根ざした音楽,つまり徹頭徹尾「民族音楽」であると確信している.たとえそれが「世界最強の民族音楽」であるとしても.

さらに彼は続けます.「どんな音楽にも適切な聴き方がある.どんなに素晴らしい音楽も,場違いなところで聴けば台無しだ.場違いだとどうしても音楽から得られる歓びが減じられてしまう” いつどこでどう聴いてもいい音楽”などというものは存在しないのであって,”音楽”と”音楽の聴き方”は常にセットなのだ」

私などはコンサート会場で聴いても,家で寝転がって聴いても「エロイカ」(交響曲第3番「英雄」)は「エロイカ」だと思うのですが,著者によれば後者の聴きかたは邪道ということになるのでしょうね

そうした観点から著者は西洋音楽史を紐解いていきますが,私自身にとってはあらためて音楽の歴史を大雑把に振り返る意味で,いい刺激になりました.また,まったく知らなかったことを知ることもできました.たとえば「中世において音楽は,決して”音”を”楽しむ”ことではなかった,つまり当時の人々にとって音楽とは「世界を調律している秩序だった」ということなどです

おもしろかったのは,ロマン派の音楽について触れているところです.彼は次のように書いています.
「リストやワグナーが”未来音楽”といい,マーラーが”やがて私の時代が来る”と述べた背景にあったのも,同じ歴史意識である.”作曲家にとって大事なのは,”過去”の大いなる遺産に匹敵する記念碑を”未来”に残すことであり,”現在”など取るに足らないものなのだ.そして,”あまりに偉大なものは,浅はかな同時代人には受け入れられないのだ”という考え方であった」

まさに100年前,マーラーは指揮者としては認められていましたが,作曲家としては一部の人々にしか認められていませんでした.そして100年後の今,彼の予言どおり作曲家として認められ”マーラーに時代が来た”のです

クラシック音楽に全く興味のない人には勧めませんが,少しでも興味のある人には面白いと思います.推薦します







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コンサートに行った時に気をつけたいこと~「モンスター・オーディエンス」になるな!

2011年06月15日 05時52分40秒 | 日記
15日(水)。昨日は「コンサート会場で気をつけたい人」について書きましたので、今日は「コンサートに行った時に気をつけたいこと」を書きます。

最近よく経験するのは、奥の席に入るのに「前を失礼します」とも何とも言わずにズカズカと入ろうとする強引な人たちです 私の場合、定期会員になっている7つのオーケストラやオペラの座席をはじめ,単発で買うチケットの座席がほぼすべて通路側であるため、早めに席に着こうものなら、後から後から、奥の席の人が入ってきます 経験から言うと,その際「前を失礼します」と声をかける人と、黙って足を入れてくる人とは半々ぐらいだと思います。これは老若男女を問いません。会場には開演30分前までに着くよう心がけていますが,不愉快な思いをしないように、座席に着くのは直前か、せいぜい5分位前にするようにしています。

コンサート会場の座席は、前席との隙間がそれほど余裕がありません。したがって、人が入ってくる時には身を後ろに引くか、立ち上がって通してあげるか、どちらかになります。中に入ろうとする人は礼儀として「前を失礼します」と一言声をかけるべきだと思います。「いやだ」と言う人はいませんから.

もう一つは,聴くときには膝の上には物を置かないことです.とくに会場入り口で配布されるビニール袋入りのチラシ類は要注意です.ピアニッシモの微妙な曲を聴いている時に,突然「バサッ」とチラシを落とす不届き者がいます.あれは最低です 膝の上には物を置かないこと,置くなら床に直接.これは常識です また,雨の日などに傘を会場内に持ち込む人がいますが,立てかけておいて何かの拍子にバタンと音を立てて倒す人がいます.会場に持ち込むのなら,入り口にある傘様ビニール・ケースに入れて,床に横たえておきましょう

頭を右や左に傾けたまま聴くのはやめましょう.座席はあくまでもまっすぐ前を向いて聴くように配置されています.頭が傾いていると,後ろの人が前方が見えなくなり迷惑します.気を付けないと喧嘩の種になります また,音楽に乗って体を動かしたくなる気持ちはわかりますが,指揮者のまねをして拍子を取ったり膝をたたいたりするのはやめましょう.あなたは指揮者ではありません 何年か前に読響定期を聴いている時,私の左の席の人が指揮者のまねをして手を動かしていたのを,私の右の席の人が注意して,真ん中に挟まれた私が非常に困ったことがありました.”三つ巴”にならないように気をつけましょう

ケータイの電源を切っておくことについてはあえて触れませんでしたが,常識以前の問題だからです これが守れない人は演奏会を聴きにくるべきではありません コンサートが台無しになります.私は以上のような常識をわきまえない人たちを「モンスター・ペアレンツ」に倣って「モンスター・オーディエンス」と呼んでいます.コンサートに行ったときの合言葉は「モンスター・オーディエンスになるな」です.

以上「コンサートに行って気をつけたいこと」を書きましたが,あくまでもお互いに楽しく音楽を聴けるようにするためです.”だからクラシック音楽は堅苦しいんだ”とおっしゃらずに,マナーを守っていい音楽をいい環境で聴きましょう

話は変わりますが,昨日はモーツアルトが「音楽の冗談K522]を完成した日です.1787年6月14日でした.この曲は同時代のヘボ作曲家とヘボ演奏家をおちょくってワザと下手に演奏させるように書かれています.いいメロディーだなぁと思っていると,いきなり音程が外れ 最後は目茶苦茶な不協和音で終わるというトンデモ音楽です 冗談大好き人間・モーツアルトにしか書けない音楽です

それにしても,これほど下手に演奏するのは返って難しいのではないかと思うほど見事な外し方をしているのはウィリー・ボスコフスキー指揮ウィーン・モーツアルト合奏団による演奏です.つまり、楽譜通りに演奏しているということですね。
下の写真=1960年代録音によるLPレコード(SLC6054).

 
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コンサート会場で気をつけたい人~その対処方法

2011年06月14日 06時30分37秒 | 日記
14日(火).昨日ブログに書いたサントリー・ホール(小)での「パシフィカ・カルテット」を聴いている時に経験したことを書きます.

12日(日)午前の部でベートーベンの「弦楽四重奏曲第7番」を聴いていた時のことです.通路を隔てた右ひとつ前の男が,突然後ろを振り向いて,明らかに私の顔を見ながら,口に人差し指を当てて「シーッ」と合図したのです.もちろん当方は手や足で音を出している訳でもなく,声を出してしゃべっていた訳でもなく,まったく身に覚えがないのです チノパンを履いていたその男は,年のころはアラサーといった感じで,ごく普通の顔立ちでした.私の後ろの席の人に向かって注意を促したのかとチラッと後ろを見たのですが,後ろは通路でだれもいません.”明らかにこいつはおかしい”と思ったので無視することにしました.休憩時間になると,チノパンはせっせと退席して会場を出て行ったので声もかけられませんでした.もっとも声をかけようとも思わなかったですが

休憩時間が終わって席に戻り,チノパンの席を見ると,何とまったく別の人,しかも女性が座っているではありませんかつまり,その席は元々チノパンの席ではなく,もぐりで会場に入ってきて図々しく良い席に座っていたのでしょう.呆れた男です

コンサートに行くと時折こうした風変わりな人物に出会うことがあります.かつて東京シティ・フィルの定期公演で,前に座っている人の態度が気に食わないと言って休憩時間に大声で罵倒している”紳士”を見かけました.何とその同じおっさんが東京交響楽団の定期公演で,楽団の責任者相手に大声で文句を言っているのを目撃しました.どこに行っても同じようにクレーマーをやっているようです.お金さえ払えば自分は神様だと思っているヤカラです りっぱなスーツを着て高そうなカバンをもっていたので会社に戻ればそれなりの地位の人なのだと思いますが,こんなやつの下で働きたくないよなと思うようなイヤミなやつでした.こういうヤカラには定期会員の更新をして欲しくありませんね

コンサート会場で,理論が通じないこうしたヤカラを前にした時には,決して口論しない方が良いです.不愉快になってコンサートどころではなくなってしまうからです.深呼吸をして,何のためにコンサートに来たのかをもう一度よく考えて,相手を無視して音楽に集中することです どうしても気が済まない,あるいはラチがあかない場合は,自分で何とかしようとしないで,ホール・アテンダント(会場係の人)に事情を説明して,その人に注意してもらうのがベストです

もう一つの方法は,相手の座席番号を控えておき「要注意人物」として主催者側に伝え「ブラック・リスト」に載せてもらうことです.とくに定期会員であればなおさらです.毎回”定期的に”トラブルを起こされていたのでは何のために会費を払って会員になったのかわかりませんから 

ところで,きょう会社帰りに神保町の「チケットぴあ」でチケットを買ってきました ①7月12日・日経ホールでの「サー・チェン」のピアノ・リサイタル(リスト中心)②9月20日・東京オペラシティ・コンサートホールでの「オーケストラ・アンサンブル金沢」のモーツアルト(ミサ曲ハ短調,第25交響曲)③10月10日・オペラ・パレスでの「スーパー・コーラス・トーキョー特別公演」(モーツアルト「レクィエム」,ブルックナー「テ・デウム」)の3枚です.中でも特に聴きたいのはモーツアルトの「ミサ曲ハ短調K427」です.感動的な名作なのに滅多に生で聴く機会がないので




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パシフィカ・カルテット「ベートーベン・マラソン」を聴く~サントリー・ホール”ブルー・ローズ”

2011年06月13日 07時20分22秒 | 日記
13日(月).昨日サントリーホール(小ホール=ブルー・ローズ)でパシフィカ・カルテット・ベートーベン・マラソンを聴きました これはサントリー・ホールの主催で,アメリカの弦楽四重奏団「パシフィカ・カルテット」が6月10日から12日までの3日間,ベートーベンの弦楽四重奏曲・全16曲を5回に分けて演奏するという企画です.昨日は最後の4回目と5回目のコンサートでした.座席は午前が7列6番,午後が9列7番でいずれも通路側です.

プログラムは午前11時から①第2番ト長調②第7番ヘ長調”ラズモフスキー第1番”③第14番嬰ハ短調の3曲,午後3時半から①第4番ハ短調②第10番変ホ長調”ハープ”③第15番イ短調の3曲です.各回のプログラムはベートーベンの弦楽四重奏曲を1番から順番に演奏するのではなく,初期,中期,後期からそれぞれ1曲ずつを選んで演奏する構成になっています

メンバーは第1バイオリンが女性のシミン・ガナートラ,第2バイオリンがシッビ・バーンハートソン,ビオラがマスミ・パーロスタード,チェロがブランドン・ベイモス(以上男性).

最初の第2番の演奏を聴いて感じたのは,このカルテットは第1バイオリンの表情,弾きぶりを良く見ながら他のメンバーがフォローする姿勢が鮮明であるということです.4人が対等の立場で演奏するというよりも,第1バイオリンの女王を他の兵隊たちが盛り立てるというスタイルです.ビオラのバーロスタードが異常に高い椅子で,ほとんど中腰スタイルで演奏していたのも,対向の位置にいる第1バイオリンを譜面越しに良く見るためだったと解釈できます

午前の部では第7番の「ラズモフスキー第1番」がポピュラーなこともあり,好きな曲です.評論家の小林秀雄があるエッセーで,銀座のレコード屋に行って「ラズモフスキーをくれ」と言うと,店員が「何番にしましょうか?」と訊くので「全部くれ」と答えるというシーンがありました.あのエッセーはどこで見たのか思い出せません.英雄交響曲のような勇壮な曲想で始まります

午後の部で好きなのは第4番です.この曲はモーツアルトの短調の交響曲やピアノ協奏曲に通じる劇的なメロディーが展開します.ベートーベン版”疾走する哀しみ”とでも言ったらいいのでしょうか.

最後の第15番を演奏するにあたり,第2バイオリンのバーンハートソンがマイクを持って現れあいさつしました.
「3月11日の大震災の被災に対し心からお見舞い申し上げる.この惨事にもかかわらず,困難に立ち向かう日本の方々に敬意を表する.今回,生涯でたった1回のチャンスであろう,3日間でベートーベンの弦楽四重奏曲全16曲を演奏する機会を与えてくれたサントリーホールに感謝の言葉を述べたい これから演奏する第15番ほど今の日本に相応しい曲はないと思う.ベートーベンは様々な苦しみを経験し,それを乗り越えてきた.この曲の第3楽章は「癒えた者の神への聖なる感謝の歌」,「新しい力を感じて」と記されている.これらが交互に現れる二重変奏になっている.演奏からそうしたことを感じ取っていただけたら嬉しい
その第3楽章は平穏に満ちた”感謝と祈り”の曲でした.彼らは心を込めて切々と奏でていました.

今回,1日で6曲のベートーベンの弦楽四重奏曲を一つのカルテットによって聴いたわけですが,”ベートーベンって,やっぱりいいな”と思いました.今回あらためて発見したのはアダージョ楽章の美しさです.ベートーベンはこんなにも美しい曲を弦楽だけで書いていたのか・・・・と再発見した想いです.パシフィカ・カルテットは名前も知りませんでしたが,チラシを見たとき”これはいい演奏が期待できるぞ”というカンがありました.その”第六感”は当たったようです.

そういえば,午後の部が始まってすぐ,私の前の席のおっさんが,曲に合わせて頭を左右に揺らすので”うざいなぁ”と思っていたのですが,休憩時間に前に行って顔を見るとチェリストでサントリーホールの支配人・堤剛さんでした 堤さん,スイングしたい気持ちはわかりますが,後ろの席の人が迷惑するのでやめてください.揺らすのは休憩時間に飲むワインだけにしてください,サントリーのでいいですから

  

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ショスタコービチ「第10交響曲」を聴く~東響第590回定期公演から

2011年06月12日 06時46分43秒 | 日記
12日(日).昨夕サントリー・ホールで東京交響楽団の第590回定期コンサートを聴きました プログラムは①ルトスワフスキ「小組曲」②シマノフスキ「バイオリン協奏曲第2番」,休憩後③ショスタコービチ「交響曲第10番ホ短調」の3曲.ポーランドの作曲家による2曲とソビエトの作曲家による1曲です.指揮はポーランド出身・28歳の俊英ウルバンスキ.

開演にあたり,東響の大野楽団長が舞台に現れあいさつしました.
「東京交響楽団の本拠地ミューザ川崎は,東日本大震災の被害に会い,客席上部の天井の仕上げ材や鉄骨が落下し,会場が使用できない状況が続いている.皆様から励ましの声や支援を頂いたことにお礼を申し上げる.ミューザ川崎での演奏が可能になるまで2年かかるという専門家の診断が出ている.その間,神奈川県内の各会場で公演を続けるので,是非お出かけいただきたい」

舞台の楽器編成を見るといつもの東響と違います.通常は向かって左から「第1バイオリン,第2バイオリン,チェロ,ビオラ,その後ろにコントラバス」なのですが,今回はチェロとビオラの位置が入れ替わっています.これは指揮者の指示によるものです.

もともとオーケストラは第1バイオリンと第2バイオリンとを左右に対照的に分ける「対向配置」(世界最古のオーケストラ=ゲバントハウス管弦楽団が取っていた態勢だったため”ゲバントハウス方式”と呼ばれています)を取っていたのですが,「ファンタジア」や「オーケストラの少女」で有名なアメリカの指揮者レオポルト・ストコフスキーが,舞台に向かって左から右へ,音の高い方から低い方へバイオリン,ビオラ,チェロ,コントラバスの順に並べ替えたといわれています.これはステレオ録音の登場と密接な関係があると言われています.

1曲目のルトスワフスキ「小組曲」は名前のとおり11分程度の短い曲です.第2次世界大戦当時のポーランドは社会主義国家の一員となったことから,作曲家は「社会主義リアリズム」に従うことを強いられました.つまり,社会主義を賞賛する標題音楽や民謡に基づいた音楽を創作することが求められました.この曲はその産物と言えます.ワルシャワ近郊の村の民謡に基づいて作曲されましたが,小曲ながらなかなかおもしろい曲でした

シマノフスキの「バイオリン協奏曲第2番」のソリストは諏訪内晶子.1990年のチャイコフスキー・コンクールで最年少で優勝しましたが,翌年から日本での演奏活動を休止して渡米,名門ジュリアード音楽院とコロンビア大学で学びました.世界的なコンクールで優勝すると各方面から演奏のオファーが殺到し自分のペースが守れなくなるという懸念があったのでしょう.コンクール優勝時は確か18歳でしたから,今は・・・やめましょう.彼女も熟練しました  が,この人には華があります.日本音楽財団から貸与されているバイオリン=1714年製のストラディバリウス「ドルフィン」を繰って,シマノフスキの非常に難しい曲を見事に弾き切りました 全体は単一楽章なので,メロディーに酔っているとアッと言う間に終わってしまいます.終わらない拍手に応えて演奏したのはJ.S.バッハの無伴奏バイオリン・ソナタ第3番の「アンダンテ」でした.深く静かに心に沁みました

さて,休憩後のショスタコービチの交響曲第10番です.彼も「社会主義リアリズム」の制約の下で作曲することを強いられていましたが,1953年3月にスターリンが死去します.その年に彼は第10交響曲を作曲します.彼は自分の名前を曲の中に織り込みます ドイツ語音名による音名DSCH(レーミ♭ードーシ)=ドミトリー・ショスタコービチ=をこの曲に織り込むことによって,スターリンの圧制に苦しめられ,創作活動を制限されてきた彼の自由への叫びを表現したのです.第2楽章のアレグロは威嚇的な音楽が疾走しますが,圧制者スターリンを描いたものと解釈されています.第4楽章のクライマックスにDSCHが現れ,熱狂的に全曲が閉じられます.

ウルバンスキは第1楽章と第2楽章を間を置かずに演奏,第3楽章と第4楽章も間を置かずに演奏しました.意図があってのことでしょう.終演後は熱狂的なでした.全体的な彼の印象は「高速道路をスポーツカーですっ飛ばすようなスピード感溢れる爽快な演奏をする指揮者」といったところでしょうか.いつも感じるのですが,東京交響楽団は若手のいい指揮者を呼びます.今後も新しい芽を紹介してほしいと思います

  

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メトロポリタン・オペラ第2弾~ベルディ「ドン・カルロ」を観る

2011年06月11日 09時23分42秒 | 日記
11日(土).昨夕NHKホールでメトロポリタン・オペラ東京公演第2弾=ベルディ「ドン・カルロ」を観ました.座席は1階C16列1番で,中央ブロックの左通路側です.どうしても通路側にこだわってしまいます

一昨日と同じように,開演に先立ってメト・オペラのピーター・ゲルブ総裁があいさつしました.
「東日本大震災で被災された方々とご家族に心からお悔やみ申し上げる.今回,急なキャンセルで来日できなかった歌手がいるが,考えようによっては新しい才能に接するいい機会にもなる.代替歌手は日本ではそれ程知られていないが,アメリカではすでに高い評価を得ている歌手ばかりである.ポプラフスカヤ,リー,グバノバなどである.きょうの公演はメトが自信を持ってお贈りする.お楽しみいただきたい

一昨日のコン・マスは女性でしたが,昨夕は男性でした.レバインに代わってタクトを振るのはファビオ・ルイジ.歌手陣はドン・カルロ=ヨンフン・リー(テノール),ロドリーゴ=ホロストフスキー(バリトン),エリザべッタ=ポプラフスカヤ(ソプラノ),エボリ公女=グバノバ(メゾ・ソプラノ),フィリポ2世=ルネ・パーぺ(バス),宗教裁判長=コーツァン(バス)ほか.

ポプラフスカヤは,ラ・ボエームのミミ役に回ったフリットリの代役です.METオペラ・ライブビューイングでは「トゥーランドット」のリュー,「ドン・カルロ」のエリザべッタを歌っていたので,その実力はある程度わかっていたのですが,実際にナマで聴くと説得力あるソプラノといったらいいのか,相当の実力者です.第5幕のアリア「世のむなしさを知る神」などは思わず聴き入ってしまいました

ヨンフン・リーはカウフマンの代役で,韓国出身の新鋭です.すでに世界中のオペラ劇場で歌っており高い評価を得ているとのことです.ナマで聴いて納得しました.ここでも韓国パワー恐るべしといったところでしょうか.

ルネ・パーぺはMETオペラ・ライブビューイングでは「ボリス・ゴドゥノフ」でタイトル・ロールを歌っていました.第4幕第1場のアリア「妻は一度も私を愛したことはない」は孤独と寂寥感があふれていました.恐らく現在最高のバスではないでしょうか.

そして何といっても実力・人気ともに備わっているのがホロストフスキーです.シルバー・グレイの長い髪がトレード・マークで,その立ち姿はカッコイイの一言です METオペラ・ライブビューイングでは「イル・トロバトーレ」でルーナ伯爵を歌って盛んなを浴びていました.第2幕第1場のカルロとロドリーゴの二重唱「共に生き,共に死ぬ」などは力強く素晴らしいの一言.

グバノバはボロディナの代役です.第2幕第2場の「美しいサラセンの宮殿の庭に」は優雅で,第4幕第1場のアリア「むごい運命よ」はドラマチックでした.

ベルディの「イル・トロバトーレ」は主役級の歌手を4人揃えればよいのですが,この「ドン・カルロ」は6人揃えなければなりません.そのうち3人が代役での公演でしたが,この水準の高さをどう表現したらいいのでしょうか

最後に特筆すべきは,ファビオ・ルイジ指揮によるメトロポリタン歌劇場管弦楽団の演奏です.第1幕冒頭から深い音楽性に支えられた素晴らしい演奏でしたある時は歌手に寄り添い,ある時は自ら歌っていました.メト・オペラの底力を感じさせられました.

午後6時に始まった公演が終わったのは10時40分を過ぎていました.ホールの外へ出ると小雨が降っていました.オペラの余韻を楽しみながらなしで渋谷の街を歩きました.

次のメト公演は19日(日)にドニゼッティの「ランメルモールのルチア」を東京文化会館に聴きに行きます.ダムラウのタイトル・ロールの「狂乱の場」が今から楽しみです

[写真右はロドリーゴ役のホロストフスキー]

  
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