翌日から、マリーはこっそり家を抜け出すと、虎次郎に付いて町を歩くようになりました。そうして、虎次郎と一緒にいる時間が、マリーには、とっても幸せでした。
実は、虎次郎もマリーと一緒にいる時間に、幸せを感じていました。そうです。虎次郎も、素直で純粋なマリーのことが、好きになっていました。
大きなトラネコの虎次郎と、きれいなシャムネコのマリー。ちょっと、不思議な取り合わせですが、2匹は日を追うごとに仲良くなっていきました。
しかし、虎次郎は、マリーを好きになればなるほど、心配になってくることがありました。
ある夜、虎次郎が心配事を抱え、瓦屋根の上でため息をついていると、1匹の猫が現れました。真っ白い身体に4本の足下とシッポの先だけが、まるで足袋を履いているようにグレーの毛が生えているネコ。タビです。タビは不思議な力をもったネコです。
虎次郎は、タビの姿を見ると、コソコソっと、でも縋るように、そして「誰にも言うなよ」と何度も念を押しつつ、顔を赤くしながらいいました。
「実は、俺、あの大きなお屋敷に住んでいるシャムネコのマリーのことを、好きになってしまったんだ。でも、俺はノラ猫だからなぁ。つりあわないんじゃないかと心配なんだけど…」
「そんなことは、関係ないよ。君がマリーを好きになっちゃいけない理由なんてないよ」
「そうか、タビにそういってもらえると嬉しいよ。それで、いつも縄張りの点検ばかりではなぁって思って、今度は食事にでも誘おうかと考えてるんだよ。でも、彼女はあんなに大きなお屋敷に住んでいるくらいだから、きっといつもおいしいものを食べていると思うんだ。だから、特別に豪華な食事を食べさせたいんだけど…。なあ、タビ、君の不思議な力で何とかなんないかな?」
「まあ、ならないこともないけど…。それで、マリーが喜ぶかな?」
「だって、その辺の魚屋から盗ってきたサンマってわけにはいかないだろ?」
「うーん、そうかな?」
「頼む! タビ、一生のお願いだ!」
「そんなにいうんなら、わかったよ。明日、いつも縄張りの点検をしている時間に、マリーを川原に連れておいで。そのときまでに用意しておくから」
「ありがとう、タビ。うれしいよ」
タビは、虎次郎のお礼を背に、「あおーん」と一声鳴きながら、屋根を飛び移ってどこかに消えていきました。
(つづく)
実は、虎次郎もマリーと一緒にいる時間に、幸せを感じていました。そうです。虎次郎も、素直で純粋なマリーのことが、好きになっていました。
大きなトラネコの虎次郎と、きれいなシャムネコのマリー。ちょっと、不思議な取り合わせですが、2匹は日を追うごとに仲良くなっていきました。
しかし、虎次郎は、マリーを好きになればなるほど、心配になってくることがありました。
ある夜、虎次郎が心配事を抱え、瓦屋根の上でため息をついていると、1匹の猫が現れました。真っ白い身体に4本の足下とシッポの先だけが、まるで足袋を履いているようにグレーの毛が生えているネコ。タビです。タビは不思議な力をもったネコです。
虎次郎は、タビの姿を見ると、コソコソっと、でも縋るように、そして「誰にも言うなよ」と何度も念を押しつつ、顔を赤くしながらいいました。
「実は、俺、あの大きなお屋敷に住んでいるシャムネコのマリーのことを、好きになってしまったんだ。でも、俺はノラ猫だからなぁ。つりあわないんじゃないかと心配なんだけど…」
「そんなことは、関係ないよ。君がマリーを好きになっちゃいけない理由なんてないよ」
「そうか、タビにそういってもらえると嬉しいよ。それで、いつも縄張りの点検ばかりではなぁって思って、今度は食事にでも誘おうかと考えてるんだよ。でも、彼女はあんなに大きなお屋敷に住んでいるくらいだから、きっといつもおいしいものを食べていると思うんだ。だから、特別に豪華な食事を食べさせたいんだけど…。なあ、タビ、君の不思議な力で何とかなんないかな?」
「まあ、ならないこともないけど…。それで、マリーが喜ぶかな?」
「だって、その辺の魚屋から盗ってきたサンマってわけにはいかないだろ?」
「うーん、そうかな?」
「頼む! タビ、一生のお願いだ!」
「そんなにいうんなら、わかったよ。明日、いつも縄張りの点検をしている時間に、マリーを川原に連れておいで。そのときまでに用意しておくから」
「ありがとう、タビ。うれしいよ」
タビは、虎次郎のお礼を背に、「あおーん」と一声鳴きながら、屋根を飛び移ってどこかに消えていきました。
(つづく)