愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

トラネコのテルと金色のネコじゃらし2

2006年04月18日 | ネコの寓話
 こんなふうに、テルは帰り道で出会うネコたちに金色のネコじゃらしを自慢しながら帰りました。そのおかげで、テルが金色に光るネコじゃらしを手に入れたという話は、あっと言う間に町中に広がりました。その日のうちに金色のネコじゃらしを一目見ようと、ぞくぞくとネコたちがテルの住処のお寺の軒下に、詰め掛けてきました。
「きれいなネコじゃらしだなあ。一体、どこでみつけたんだい」
「へへへ、秘密だよ」
 次々と押し寄せてくるネコたちに、テルはここぞとばかりに自慢します。みんなが金色のネコじゃらしを羨ましがることで、テルは何だか自分がとても優秀なネコになったような気がして、嬉しくてたまりません。
 初めのうちは、みんな羨まし気にネコじゃらしを見ているだけでしたが、そのうちテルの目を盗んで匂いを嗅いだり触ったり。テルは、そのつど止めに入らなければなりません。
「ダメ、ダメ。みんな見るだけだよ。触ってはダメだ。ぼろぼろになってしまうじゃないか!」
 しかし、何度止めても、何度注意しても、好奇心の強いネコたちは、すぐに匂いを嗅いだり触ったり。そんな様子を見ていて、テルは不安になっていきました。
「みんな、このネコじゃらしを羨ましがっている。だれか僕のいない間に、触りにくるんじゃないか」
 翌日、テルを一層不安にさせる出来事が起こりました。
 テルが、金色のネコじゃらしを横において眠っていると、遊びにきた子ネコが金色のネコじゃらしにじゃれつこうとしていたのです。子ネコは、ただいつものようにテルと遊びたかっただけなのですが、テルは、怒って子ネコを追い払ってしまったのです。子ネコはとても寂しそうな顔をして去っていきましたが、金色のネコじゃらしに夢中になってしまったテルは、そんなことには気づきません。それどころか、子ネコたちを寄せつけないようになってしまいました。
 それからというもの、テルは、一日中、ネコじゃらしを肌身離さず持ち歩くようになりました。寝るときもくわえているのですが、どこかでだれかがネコじゃらしを狙っているのかと思うと、おちおち寝ることもできません。
 テルは、ネコじゃらしをどこかに隠すことも考えました。しかし、自分の目の届かないところに置くことは、やはり不安です。結局、金色のネコじゃらしをくわえ、お寺の軒下に留まったまま動けなくなってしまいました。テルは、ネコじゃらしのために、十分に食事をすることも寝ることもできなくなくなってしまったのです。しかし、それでも、ネコじゃらしを手放そうとはしませんでした。
(つづく)
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トラネコのテルと金色のネコじゃらし1

2006年04月17日 | ネコの寓話
 小さな町の大きなお寺の軒下に、きれいなトラ模様のテルいう名前のネコが住んでいました。
 テルは、子ネコが大好きです。ネコじゃらしを採ってきたり、虫やネズミを捕まえてきたりして、いつももみくちゃにされ、きれいなトラ模様の体中が泥だらけになってもたくさんの子ネコたちの遊び相手になっています。テルは、子ネコの遊び相手になっているとき、とても幸せな気持ちになれるのでした。
 子ネコたちも、みんなテルのことが大好き。毎朝、早くからテルのいるお寺の軒下に集まってきます。だれもいなくても、テルが一声「にゃおーん」と呼べば、どこからともなく、子ネコたちがテルの周りに集まってきます。他のネコが呼んだって、子ネコは集まりません。みんな、テルと一緒に遊びたくて仕方がないのです。
 ある日、テルは、1丁目の空き地に子ネコと遊ぶためのネコじゃらしを取りに出かけました。
 小さいの、大きいの、いろいろなネコじゃらしがたくさんあります。
 テルが、迷っていると、奥の方に一際目立つネコじゃらしを見つけました。
 そのネコじゃらしは、とても大きくてまるで宝石のように金色に光っています。
「すごい、こんなネコじゃらしは始めてだ!」
 テルは、そのネコじゃらしを採って帰りました。
 帰る途中で、黒ネコの黒丸に出会いました。テルは、黒丸に、金色のネコじゃらしをみせて自慢げ言いました。
「黒丸、どうだい。すごいネコじゃらしだろう」
 黒丸は、テルのネコじゃらしをみて、びっくりして言いました。
「すごくきれいなネコじゃらしじゃないか!」
 黒丸は、ネコじゃらしに触ろうとしました。しかし、テルはその手をスルリと躱して、ちょっと意地悪く言いました。
「ダメ、ダメ。見るだけだよ」
「ちぇっ、ケチだなあ。じゃあ、いいよ」
 黒丸は、そう言うと怒って去って行きました。
 しばらくすると、今度は、白ネコの白丸に出会いました。
 テルは、白丸に金色のネコじゃらしを見せて自慢げに言いました。
「白丸、どうだい。すごいネコじゃらしだろう」
 白丸もやっぱり、ネコじゃらしをみて、びっくりして言いました。
「すごくかっこいいネコじゃらしじゃないか!」
 白丸は、そう言ってネコじゃらしの匂いを嗅ごうとして、顔を近付けました。しかし、テルはその鼻先をひょいと躱して、ちょっと意地悪く言いました。
「ダメ、ダメ。見るだけだよ」
「ちぇっ、ケチだなあ。じゃあ、いいよ」
 白丸は、そう言うと怒って去って行きました。
(つづく)
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黒丸と白丸4

2006年04月08日 | ネコの寓話
 入れ替わりの生活が1週間が終わりました。
 白丸は、だいぶ人間と関れるようになりました。しかし、以前のように疲れてしまっています。
 黒丸も、だいぶ人間を気にせず過ごせるようになりました。しかし、やっぱり以前のように疲れてしまっています。
 その夜、黒丸は白丸に言いました。
「実は、白丸みたいに、人間を気にしないで過ごせたら気持ちいいだろうなあと、思って1週間を過ごしてみたんだけど、何だかすごく疲れてしまったんだ」
 すると、白丸も言いました。
「実は、僕も黒丸みたいに人間に関わったら気持ちがいいだろうなあと、思って1週間を過ごしてみたんだけど、何だかすごく疲れてしまったんだ」
 2人とも、そう言ったきり腕組みをして考え込んでしまいました。
 そこへ、壁を飛び越えてタビがやってきました。
 タビは、話を聞くと2人に訪ねました。
「君たち、この1週間幸せだったの?」
 白丸と黒丸は、黙ったままお互いの顔を見つめていました。
 翌日、以前のように可愛らしい声で鳴きながら、人間に愛想を振りまいている黒丸がいました。
「もう、風邪は直ったのね」
 白丸に初めてパンをくれた女の子が、今日はチーズの包み紙をきれいに剥いて黒丸の前に置きました。
「あら、お友達がいるのね」
 いつの間にか、黒丸のすぐ後ろに来ている白丸に気付いて、女の子が言いました。
「今度から2匹分もって来なくちゃね」
 女の子は、そう言いながらやさしく黒丸と白丸の頭を交互に撫でた後、いつものように赤いランドセルを揺らしながら元気に走り去っていきました。  その後ろ姿を見ながら、黒丸が白丸に聞きました。
「もう、非常階段の踊り場での昼寝は飽きたのかい?」
「今日はちょっとあの女の子に会いたかっただけさ。すぐに戻るよ」
 白丸は、少し照れているようで、後ろ足で首の付け根をかきながら答えまると、そそくさと去っていきました。
 そして、いつもの非常階段の踊り場で、お腹の白い毛を空に向けてごろんとしていると、黒丸がやってきました。
「ちょっとの間でいいから、僕もここで昼寝をさせてもらっていいかな」
 黒丸は、少し照れているようで、横を向いて顔を洗いながら聞きました。
「僕は、別に構わないけど…」
 白丸は、わざと気のない振りをして答えました。
 2匹のネコが、非常階段の踊り場で、ごろんと横になりました。
 とてもいい天気です。
 そんな2匹の様子を、タビが少し離れたところにあるビルの屋上から、優しいまなざしで見つめていました。
(おわり)
作者・たっちーから:人が気になって、人の顔色を気にしてばかりの黒丸。人を拒絶して、かかわりを避けようとする白丸。あなたは、黒丸派? 白丸派? 無理のなく、上手に自分のペースを維持しながら楽しい付き合いを広げて生きたいですね。
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黒丸と白丸3

2006年04月07日 | ネコの寓話
 こうして、翌日から2匹の入れ替わりの生活が始まりました。
 しかし、白丸の人間不信が直ったわけではありませんし、黒丸みたいに可愛い声でなくことも、ままなりません。一所懸命に、可愛らしく鳴こうとしました。だけどうまくいきません。
「びゃご」
 何だか、風邪をひいて鼻が詰まっているかのようです。
 こんな声で、しかも今にも飛びかかりそうな体勢で鳴いているのですから、人間は寄っくるどころか、みんな逃げてしまいます。その去っていく後ろ姿を見ながら白丸が言いました。
「ちぇっ、だから人間なんて信用できないんだ」
 白丸が、匙を投げかけていると、赤いランドセルを背負った女の子が近付いてきました。白丸は、いつもの癖で、一瞬、逃げ出そうとしましたが、女の子は構わず声をかけてきました。
「今日は、声が変だけど、どうしたの?」
 白丸は、初めて近付いてくれたこの女の子に向かって、精一杯に可愛らしい声で鳴こうとしました。
「びゃう」
 失敗。今日、一番の変な鳴き声。白丸は、これで女の子も逃げていくと思いました。しかし、女の子は逃げませんでした。
「可哀想に。きっと、風邪をひいたのね。今日は、給食のパンを半分を食べないでもってきたんだよ。これを食べて、早く風邪を直してね」
 女の子はそういうと、ポケットから取り出したパンを小さく千切って白丸の前に置きました。
 そして、「じゃあね」と言うとランドセルを揺らしながら、元気よくその場を走り去っていきました。
 白丸は、細かく千切られたパンをぼんやりと眺め、なかなか食べることができませんでした。
 そのころ、黒丸は白丸の指定席の非常階段の踊り場にいました。
「白丸は、うまくやっているかな」
 小さく見える景色の中から白丸を探そうと、鼻先を一所懸命に地上に向けて覗き込んでみましたが見つかりません。
「白丸と入れ替わるなんて言わなければ良かったな」
 場所が変わっても、黒丸はやっぱり人間が気になって仕方ありません。
 黒丸は、寂しくなって誰もいない、非常階段の踊り場で、いつものように可愛らしい声で「にゃー」と一声鳴いて見ましたが空しくなるばかりです。
 黒丸は、諦めて空を見上げました。
 そこには、地上で見るよりずっと広い青空が広がっていました。
「空がこんなに広いなんて、気がつかなかったなあ」
 この場所は、いつも黒丸が過ごしている人通りの多い場所に比べ、とても静かです。
「ちょっと、昼寝でもしてみようか」
 黒丸は、ごろんと横になって静かな眠りにつきました。
(つづく)
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黒丸と白丸2

2006年04月06日 | ネコの寓話
 その日の夜、白丸は、黒丸に言いました。
「黒丸、君はいつも人間の顔色ばかり伺っているけど、そんなことでは、バカにされてしまうよ。それに、君は人間を信用し過ぎる」
 こんな、白丸の言葉に黒丸が反論します。
「白丸、何を言っているんだい? 僕たちネコにとって、人間は大事なパートナーなんだよ。君こそ人間を信用して愛想良く接してみればいいじゃないか」
 2匹は、そう言い合うと「ふん」と、顔を背けてしまいました。すっかり険悪なムードです。
 そこへ、高い壁をひょいと飛び越して、1匹のネコがやってきました。
 2匹より、ちょっとお兄さんネコのタビです。
 真っ白い毛に4本の足下としっぽの先だけが、まるでタビを履いているようにグレーの毛が生えています。実は、このタビ、ちょっと不思議な力を持ったネコです。タビは、顔を背けあっている2匹をみて声をかけます。
「君たち、どうしたんだい?」
「僕は、黒丸が人間を信用しすぎるから注意したほうがいいって、忠告したんです。だって、信用して傷つけられるのってとても悲しいじゃないですか…」と白丸。
「僕は、白丸がもっと人間に好かれるようにしたほうがいいって、忠告したんです。だって、嫌われるのってとても悲しいじゃないですか…」と黒丸。
 タビは、白丸に聞きました。
「白丸、君は人間が全然気にならないのかい?」
「だって、人間なんて信用できませんよ」
 タビは、今度は黒丸に訪ねました。
「黒丸、君はなんでそんなに人間が気になるんだい?」
「だって、みんなに好かれたいじゃないですか」
すると、タビはまず2匹に訪ねました。
「君たちは、それで幸せかい?」
 白丸は、ちょっと戸惑いながらも、強がって答えました。
「うん、ええ…まあ幸せ…ですよ」
 黒丸は、何も、答えられません。じっとタビの顔を見ていましたが、こう聞かれて視線を地面に落としました。
 タビは、そういう二匹を交互に眺めて、ちょっと不思議なことをいいました。
「君たち、ちょっとの間、そうだなぁ。1週間くらい、入れ替わってみたらどうだろう?」
「えー、そんなことできるのー?」
 黒丸と白丸は声をそろえていいました。
「できるよ。君たち2匹が入れ替わって、黒丸が滅多に人間が来ないビルの最上階の非常階段の踊り場で過ごす。白丸が人通りの多い路地で過ごす。ねぇ、ちょっとおもしろいと思わない?」
「まあ、1週間くらいなら…」と黒丸。
「うーん、そうだね。1週間くらいなら…」と白丸。
「よし決まった。じゃあ、入れ替えをしよう。目をつぶって」
 タビは、そういうと二匹が目をつぶったことを確認してから、一声「あおーん」と夜空に向かって鳴きました。すると、黒丸が真っ白に、白丸が真っ黒に変身。これには、二匹ともびっくり。
「大丈夫、1週間すると元通りになるから、じゃあ、がんばってね~」
 タビは、びっくりしている2匹をよそに、そういうとひょいと塀を乗り越えて、どこかに姿を消してしまいました。
(つづく)
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黒丸と白丸1

2006年04月05日 | ネコの寓話
 大きな街の、小さな路地裏に2匹のネコが住んでいました。
 名前は、白丸と黒丸。
 黒丸は、体中つやつやした黒い毛に覆われていて、他の色の毛は1本も生えていません。だから名前は黒丸。
 白丸は、体中つやつやした白い毛に覆われていて、他の色の毛は1本も生えていません。だから名前は白丸。
 真っ黒な黒丸と、真っ白な白丸、2匹は色だけでなく性格も正反対です。
 白丸は、人間と関わることができません。
「人間なんて心を許したら、絶対にいつか裏切られるんだ」
 白丸は、そう考えていました。
 だから、人の気配がしただけで、大急ぎで逃げて行きます。
 たまに、親切な人がエサをあげようと近寄っても、白丸は全然信用しません。一目散に逃げていき、すぐに細いビルの谷間に入り込んで、だれもいなくなるまで出てきません。
 だから、白丸は滅多に人間が来ないビルの最上階の非常階段の踊り場で過ごしています。白丸のお気に入りの場所です。
 白丸は1日の多くの時間を、ここで地上の出来事を眺めながら、1匹でごろごろして過ごしています。
 黒丸は、どうでしょう? 
 黒丸は、人間に気になって気になって仕方がありません。
 だから、いつも人通りの多い路地の端で、通りがかる人の顔色を伺いながら、可愛らしい鳴き声を投げかけて愛想を振りまいています。人間が近付いてくれば、すぐに駆け寄って行きます。
 黒丸を暖かく迎える人は少なくありません。でも、同時に、黒丸に冷たく当たる人もいます。蹴飛ばされそうになったり、空き缶をぶつけられたり。冷たくされると、黒丸はとても傷つきます。
「何が悪かったのだろう?」
 その度に、黒丸は、真剣に考えます。そして、次からはうまくやろうと、一所懸命です。
 ビルの上から、そんな黒丸の様子を眺めていた白丸が囁きます。
「まったく、良くやるよ、黒丸は…」
 そう囁いている白丸を見上げて、今度は黒丸が呟きます。
「まったく、良くやるよ、白丸は…」
 しかし、2匹はそう言った後に「でも…」と続けて、「はぁ」と大きなため息をひとつ。
「黒丸みたいに、人間と関わるのは、どんな気持ちがするんだろう」
 白丸は、ぼんやり考えます。白丸は、だいぶ疲れているようです。
「白丸みたいに、人間のことを気にしないで過ごすのは、どんな気持ちがするんだろう」
 黒丸も、ぼんやり考えます。黒丸も、だいぶ疲れているようです。
(つづく)
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