今から20年前の日本時間の今日11月6日にラスベガスのMGMグラ
ンドガーデンで行なわれたWBA&IBFヘビー級タイトルマッチで45歳の
挑戦者ジョージ・フォアマンが王者のマイケル・モーラーを10Rに
逆転KOし20年ぶりに世界王者に返り咲いた日である。
遡る事20年前の74年10月に当時 無敵といわれたフォアマンは32歳
のモハメド・アリから8RにKO負けしてタイトルを失い、その後 引退
していたのだが87年に38歳で突如カムバックして勝ちを積み重ね91年
に42歳でイベンダー・ホリフィールドの持つ世界ヘビー級タイトルに
挑戦し判定で敗れたものの善戦して賞賛を浴びた。
とはいえ2年後の93年にトミー・モリソンとのWBOタイトル決定
戦に出場したものの打ち合いを避けるモリソンの前に空転していたので、
モリソン以上にスピードのあるマイケル・モーラー相手では厳しい
だろうというのが試合前の評判だった。
実際に試合が始まるとフォアマンは攻勢に出るラウンドと、休む
ラウンドを分けていたが休むラウンドは確実にポイントを失って
いたので判定では厳しい。
しかも打つパンチはワン・ツーのみで得意の左フックは出さずに
右ストレートも打ち抜かない軽打ばかりで、20年前にアリから倒さ
れた因縁の8Rも最初の1分は攻勢に出たものの終盤はスタミナ切
れでペースダウンしジリ貧のムードが漂い始めた。
ところが10Rになるとフォアマンが渾身の力を込めた左フックを
打ち始め、これを警戒した王者のフットワークが右回りになったとこ
ろをフォアマンが右ストレートを打ち抜いてダウンを奪いKO勝ち
となったのだ。
常識的に考えてフォアマンが勝つには前半KOしかないという予想
だっただけに、10RでのKO勝ちというのは意外な結果だった。
ただ前半から左フックを封印して右ストレートを軽打するワン・ツ
ーのみしか打たなかった事が王者に右ストレートへの警戒心を薄めさ
せ、10Rに左フックを強振し始めると本来なら危険な右ストレートの
シュートレンジに身を置く事になったのだからフォアマンの作戦勝ち
だろう。
20年前にモハメド・アリから奇跡を起こされてKOされたフォア
マンが今度は自らが奇跡を演じたというドラマチックな事がある
からこそボクシングは人気があるのだと実感したし、生中継されて
いたWOWOWに加入していてよかったと痛感したものだった。
余談ながら その後この試合のドキュメント=奪還が沢木耕太郎の
密着取材&台本執筆で制作されNHKでOAされたのだが、生中継を
見た私にとって更なる感動を覚えたのである。