ボクシング・どんな試合が面白いのか?

 早いもので明日でWOWOWフェスタで行われたボクシングのダブルタイトル
マッチから1週間が経つ。

 名城信男が強敵のウーゴ・カサレスとの死闘の末 引き分け防衛を果たした
9月30日のWBA・Sフライ級タイトルマッチから 10月6日のダルなWBAフライ
級タイトルマッチに10日のダブルタイトルマッチと11日間で4試合の世界戦が
行われた。

 特に‘これぞボクシング’とボクシングの魅力全開だったのが10日のダブル
タイトルマッチ。

 負けるイメージが全く沸かなかったWBA・Sフェザー級王者のホルヘ・リナ
レスが1Rにファン・カルロス・サルガドの左フック一撃で沈んだのはボクシン
グの怖さを改めて思い知らされたし、凱旋防衛戦となったWBC・Sバンタム
級王者の西岡利晃がイバン・エルナンデスのアゴを左ストレート一撃で打ち
抜いて骨折させ棄権に追い込んだ試合は西岡の左ストレートの威力を
まざまざと見せ付けたのだった。

 ところが試合後の某BBSを覗くと‘2試合で たった4Rとは、つまらない’
などという筋違いな書き込みが多々あった。
 そういえば日本のエースであるWBCバンタム級王者の長谷川穂積が6回
目と7回目の防衛戦が2Rで、8回目と9回目の防衛戦は 1RでKOし4試合
連続KOしているにも拘わらず‘早く終わり過ぎ’ などという声がチラホラ
聞こえるのは残念な事だ。

 88年6月にマイク・タイソンが最大のライバルといわれたマイケル・スピン
クスを1RでKOした試合のTV中継をゲスト解説した安部譲二は‘いやぁ~
なんとコクのある1Rでしたねぇ!’と感嘆の声を挙げていた。
 どうしても1Rで終わるとミスマッチと言いたくなるが、ボクシングの本場
では1RKOは‘凄いものを見た’という評価になるとジョー小泉氏が言って
いた。

  例の一家が蔓延った理由として‘最近のボクシングは判定が多く分かり
づらい、やはりボクシングはKOが魅力’というのを強調して噛ませ犬としか
思えない階級を水増しした相手をKOしまくって話題を呼んでいたのだ。

 ただしKOとは相手があるもので‘オレのパンチは宇宙一’などと吹聴して
いた次男が内藤やデンカオーセンといったホンモノの相手と戦うと いくら
打ってもパンチが効かないためか、さかんに首を傾げる見苦しいシーンが
多発していた。

  死闘と言われたWBCバンタム級タイトルマッチ・薬師寺保栄-辰吉丈一郎
戦は判定勝負だったにも拘わらず‘KOではなかったので面白くない’
と言う声があっただろうか・・・・・・ 

 ボクシングとは本来‘相手に打たせずに打つ’というのが基本。
 だから長谷川の試合こそ相手のパンチを貰わずにKOするという 最大の
魅力を実践しているし、西岡やリナレスの試合もそれを目指している。

 ボクシングを中継するTV局はケンカの延長のような扱いを
するのではなく、本当の魅力を視聴者に伝える義務があると思う
のだが・・・・

コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (怪人太郎冠者@1553)
2009-10-17 20:18:31
日本人の場合、どうしても「耐えて勝つ」をよしとすると言おうか、そういうところにボクシングはじめ、格闘技のエンタメ性を求める部分があると思います。
典型例では大場政夫VSチャチャイ・チヨノイでしょうか?
それと日本人は軽量級の試合に慣れてますから、中重量級で見られる一撃必殺の勝負に物足りなさを感じるのもやむを得ないかもしれません。

宇宙一のパンチを持つ、あの人物やその親兄弟には言っても無駄でしょうが、解体新書を訳した杉田玄白は「己上手と思わば、はや下手になるの兆しとしるべし」と言ってます。また大山倍達は「本当の強者は相手を敬うことを知っている、逆に相手を見下し自分は強いんだと言ってるものほど弱い」と言ってます。これらの言葉は、医学でも空手でもボクシングでも、何にしても当てはまります。前にあいつらには、一般常識や礼儀を教え終える頃には引退だと申しましたが、前言撤回、一般常識や礼儀を教える前に一生が終わっているでしょう。
 
 
 
Unknown (吉法師)
2009-10-17 23:23:32
昔、上原康恒さんがサムエル・セラノとのリターンマッチで、セラノのアウトボクシングにペースを掴めないままに判定負けした後、試合内容に不服なファンの怒号が飛び交うリングサイドで、TV解説の小林弘さんが「スポーツですから、こう云う結果になるのもボクシングなんですから、そこの所を判ってほしいですね。」と自国の選手の勝ち負けだけに拘泥する一般ファンに対する苦言とも取れる発言をされた事がありました。
小林さん自身、チャンピオン時代はすべて5位以上の上位ランカー相手に「負けずにタイトルを守るボクシング」をしていた為か、試合が面白くない、地味だ、と言われる事が多かったのですが、当時現役の選手だった方や、当時を知るボクシング関係者やコアなファンの声は「当時の日本人世界王者5人の中で、一番強いのは小林弘」という評価をされていました。
世界の上位ランカーを相手に、左ジャブには右クロスを合わせ、ロープに詰められてもクルリと体を入れ替えて相手の攻勢を許さない、とかく地味と言われるその実は、世界屈指の攻防技術の持ち主だった。ロベルト・デュランが、マンド・ラモスが「コバヤチは強かった」と認め、デュランとの試合の際、空港についた小林さんをパナマの民衆は国賓待遇で迎えた、とさえ言われるほどだったのです。

ボクシングに限らず、テニスなどもそうですが、一般的な日本人の傾向として「次の展開を読みながら、試合の流れとその中で生じる攻防・せめぎ合いを楽しむ事が苦手、というかしようとしない」事が強いように思います。相撲、柔道など一瞬の攻防で勝負が決まる事が多く、そういう物に慣れてしまっている事も影響しているかも知れませんが、何より良くないのが、TV局の垂れ流す「一件判りやすくて、刺激の強い物」に馴らされすぎていることの弊害なのではないか?と思います。
 
 
 
書き込み御礼&レス (こーじ)
2009-10-17 23:45:32
>怪人太郎冠者@1553様
 白井義男など優秀なアウトボクサーが輩出されているにも拘わらずピストン堀口の突貫戦法を賛美する傾向が強かったですからね。

 大場政夫も本来は堅実なアウトボクサーでしたし、
逆転KOは最後の2試合ぐらいなのですけどね。

 あのチンピラ一家は救いようがないですよ。

>吉法師様
 どうしても日本では小林弘だけでなく川島郭志や
徳山昌守など玄人受けする選手を低く見る傾向が強いですからね。

 KOだけがボクシングの華ではないのはファイティング原田を見れば分かると思うのですけどね。
 
 特に最近はTV局が分かりやすさを求めて、かえって
面白さをスポイルしているケースが多いですからね。
 
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