オヤジの人間らしさが分かった日

　昨日記したように50年前の昨日74年11月17日に予定されていた
日米野球ジャイアンツーNYメッツ戦は朝からの激しい雨で中止に
なり、ガッカリした私は布団の中でふて寝していたのだがオヤジ
は趣味の謡曲の発表会に朝早くから出かけて行った。

　夜になって21：00ぐらいには帰宅するはずが戻らないので不信
に思っていたら、30分後に電話がかかって来て‘オヤジが倒れた’と
いう内容で祖父が前に住んでいる叔父さんとタクシーで出かけ祖
母が‘早く布団に入れ’と言うではないか。

　それから30分後の22：00前に家の前にタクシーが停まり、祖父
とオヤジが下りてきたのが分かったのだが…

　謡曲の口調で‘〇〇が悪いんじゃ、ワシがいらんと言うのに飲ま
せたのじゃ’と言うと祖父が‘〇〇は悪くない、オマエが悪い’と言
い返しオヤジが泣き始めた。

　2階の寝室に上がり母親が水を飲ませようとすると、こぼして
周りをビショビショにしていたようだ。

　母親は‘こんな様子を見たら子ども達が笑うよ’と言うと`息子が
笑う、娘が笑う’と言いながら、また泣き始めるではないか。

　ところが翌日オヤジは正気に戻っており前日の一件がウソの
ような感じだったのだが、実はオヤジは婿養子で祖父母に対し
普段から相当気を使って堅い雰囲気を醸し出し今一つ親しみを
感じてなかった。

　飲酒をたしなまない宇都宮家にとって酔っぱらってクダを巻
くというのは恥ずかしい事で子どもにはそんな姿は見せられな
いという考えだったのかもしれないが、子ども心に人間らしさ
が垣間見えて以降親しみを覚えるようになったのだった。