今年の選抜高校野球を見ていて気付いたのはスクイズによる決勝
点がない事だ。
今大会スクイズでの印象的な得点シーンといえば明徳義塾が智弁
和歌山戦で延長11回裏に1点リードされた場面での同点スクイズ
ぐらいで、広島商OBの迫田守昭監督率いる新庄が引き分けた桐生
第一戦でも10回裏に1アウト満塁のチャンスでスクイズをせずに
打たせて1塁ゴロ併殺でサヨナラを逃している。
また佐野日大-明徳義塾戦の10回裏に1アウト満塁から7番にも
拘らず中間守備を敷いた佐野日大がセンター前に抜けるような打球を
併殺で処理しサヨナラを免れ11回に勝ち越して勝った試合など以前
なら考えられないパターンだ。
かつての高校野球では2アウト以外でランナーが3塁にいたら
例え4番でもスクイズが当たり前だったし同じようなケースで下位
打者に打たせて得点できなければ采配ミスと批判されていたので、
70年夏に1度もスクイズをせずに優勝した原貢監督率いる東海大
相模などは例外中の例外だった。
原貢氏は86年のNumber高校野球特集号でも
‘スクイズは3塁走者のスタートと打者のバントが完璧でなければ
成功しないし、完璧にやっても1点しか入らず失敗すると流れが
相手に行ってしまうという労多くして益の少ない作戦’
と否定的に語っていたし
‘高校野球ではスクイズが予想される場面になると前進守備を敷く
のでヒットゾーンが広がるからタイムリーが出やすく外野に打球を
飛ばせるように練習させた方がいい’
とスクイズよりも打たせる方のメリットを強調していた。
ロス五輪で金メダルを獲得させた日本代表監督で高校野球でも名
解説で有名だった松永玲一氏もパワー野球への挑戦という著書の中
で
‘スクイズというのは同点に追い付くシーンや勝ち越すシーンでは
なく とどめの1点を取りに行く時ぐらいの時に使うべき’
と記している。
池田の登場以来パワー野球が高校野球でも主流になっているので
スクイズで1点づつ積み上げても・・・という考える指導者が増えたと
いう事だろう。
さらにスクイズはランナーがスタートするタイミングを間違えずに
打者が少々ボール球でも転がさないといけないので、練習時間も
それなりに必要だから貴重な練習時間を労多くして益少ないプレー
に割く事に抵抗もあるのではないか。
だから最近は3塁ランナーが投球と同時にスタートする通常のスク
イズよりも送りバントのように転がったのを確認してスタートをする
セーフティースクイズの方が増えたのも偶然ではないだろう。
こうしてみると打力のレベルアップが通常のスクイズを駆逐した
形になっているし、これからはスクイズは文字通り意表を突く奇襲
攻撃の意味合いが強くなるのではないかと思うのだ。