俊足好打型打者に‘最低でも外野フライ’は おかしい

　野球中継を見ていてアナウンサーや解説者がノーアウトや1アウ
トでランナーが3塁にいると‘最低でも犠牲フライで1点’と連呼
する実況にはうんざりするものがある。

　つまりタイムリーヒットなしで得点できるシチュエーションでは
犠牲フライだけでなく内野ゴロなどでも点が取れるのだが、どんな
時でも‘最低でも犠牲フライ’とやるのだから特にアナウンサーは
野球を知っているのかと思うのだ。

　10年近く前に4、5点リードされたチームがノーアウト満塁の反撃
機に、左の好打者タイプがレフトに犠牲フライを上げて1点を返すと
解説の広沢克実が‘本当に最低限の仕事をしましたね’と皮肉交じり
のコメントをしていた。

　広沢が言うには‘ノーアウト満塁でレフトに犠牲フライを上げると
1点は入るものの1,2塁で流れが切れるのに対し、右中間方向に犠牲
フライを上げると1,3塁になってもう1点入る雰囲気になる’‘むしろ
○○のような俊足選手はゲッツーがないので投ゴロ以外の内野ゴロを
転がした方が併殺崩れで1点入ってなお1･3塁か2･3塁になるのだ
から下手に外野フライを打ちに行く必要はないですよ'との事だった。

　たしかに3点前後リードしたチームはノーアウト満塁のような場面
では前進守備は敷かないので俊足巧打者系の選手が打席に入ると犠牲
フライを打つよりも投ゴロ以外の内野ゴロを転がせば併殺崩れで点が
入るだけでなく、なおも1アウトで3塁にランナーを置いて攻撃を続
ける事ができるので次の1点を取れそうな雰囲気が続くのに対し下手
にレフトなどにフライを上げると2塁ランナーは3塁に進めず流れが
切れる。

　かつて評論家時代の野村克也が‘犠牲フライを打つには高めに的を
絞り右打者なら右方向を狙うとフライが上がりやすい’と語っていたの
だが、俊足巧打系の打者がコレを実践しようとすると球威に負けて内
野フライになりやすいのではないか。

　これが長打を打てる強打者系ならば‘最低でも犠牲フライ’という
のも頷けるが、俊足巧打型の選手には当て嵌まらないのではないかと
思うのである。