「アブラの冬」④

2012-03-17 21:16:58 | 「パラダイムシフト」



           「アブラの冬」④


 アメリカは、恐らく、イスラエル軍によるイラン国内のある核施

設へのピンポイント爆撃を容認するだろう。それには大事なのは季

節で、暖房に使う石油の消費が減り、冷房に使われる電気需要が

増える前のこの時期でなければならない。そして何としても大統領

投票前に決着を付けなくてはならない。アメリカによる北朝鮮への

食糧援助などの働きかけは、その為の布石である。つまり、東アジ

アを音無しくさせておかなければならないからだ。この唐突とも思え

る米朝合意はその時期が迫っていることの証ではないだろうか。と

ころが、北朝鮮はイランとも繋がっていて、アメリカとイランの双方を

天秤に掛けた瀬戸際外交をし始めた。北朝鮮は長距離ミサイル発

射実験とみられる「衛星」の打ち上げを予告した。早速「米国務省の

ヌランド報道官は16日、打ち上げが実施されれば、北朝鮮の核実

験停止などを含む2月29日の米朝合意が無効になると指摘。『北朝

鮮もそれは理解している』と強調した。」[ワシントン16日ロイター]


 しかし、北朝鮮がいくら揺さぶったところで、イスラエルによるイラン

攻撃に大した影響は与えることはないだろう。ただ、原油価格は

暴騰するだろう。その結果、世界経済は大きな打撃を受けることに

なり、長引けば、とりわけ日本経済にとって深刻な事態になる。最

悪の場合は、デフレ不況の下でのインフレ―ション、つまり、スタグ

フレーション(不況とインフレが同時に進行する)に襲われる。


 

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「ボーダー」⑥

2012-03-17 09:58:10 | 境界性パーソナル障害(BPD)


              「ボーダー」⑥ 


 世界経済のグローバル化によって、古くから地域に根差した文化

や暮らしが大きく変わり、好むと好まざるに関わらず近代文明の波

は未開の地の津々浦々にまで遍く浸透し、大分前の話だがテレビで、

砂漠の遊牧民ベドウィン族の人がスーパーのレジ袋を提げて歩いて

いるのを観て驚いたことを思い出したが、今では、仮に彼らが駱駝

から降りてセグウェーに乗って移動していても、もうそんなに驚か

ないだろう。近代文明がもたらしたのは単に物質文明だけではなく、

地域に伝わる生活文化をも変えてしまった。機械文明は共同社会を

破綻させ、核家族化を促し、人々の生き方は個人主義的になる。そ

れまでは家族や社会に協調してきた人々も自分の部屋に閉じ籠って

自分自身と向き合う。つまり、人類は近代建築の空調の効いた部屋

の中で初めて自己を知る、否、孤独を知る。そして、

「私とはいったい何だ?」

そこで、生い立ちを遡って自分自身を探そうとする。変わらなけれ

ばならない今の自分が変えることのできない過去の自分に出会う。

アイデンティティーとは「自己同一性」と訳される。今の自分は過

去の自分によって構築された。変わらなければならない今の自分は

過去の自分と向き合わねばならない。過去の自分は何が正しくて何

が間違っていたのか。それは、自分が負わなくてはならないことな

のか?日本人であるとか、男であるとか女であるとか、生まれ育ちで

あるとか。それらは私が望んだ「私」ではない。こうして自省による葛

藤を克服して、自己同一性を獲得する。ところが、たとえば「アイデン

ティティー」という概念を提唱した心理学者エリク・エリクソンのように、

「ユダヤ系の母親の初婚の相手との間の子で金髪碧眼であり、再婚

相手のドイツ人医師の風貌とは似ても似つかない容姿であった。そ

のために自らインポテンツに悩んだという。実は、母の初婚の相手

との結婚生活はごく短期間で、エリクソンはその間の母親の不倫相

手との間の子どもであったらしい。実の父は写真家であったらしい

が、エリクソンの晩年に至るまで存命だった母親は、終生ことの真

相を明らかにしなかったという。自分は誰で、どこにその存在の根

を持っているのかという疑問が、彼の自らの心の探求の原点になっ

た。」(ウィキペギア「自己同一性」、ローレンス・J・フリードマ

ン著『エリクソンの人生』より)

と、自らの生い立ちさえも辿れなかったり、先に紹介したダイアナ

妃のように「人間になる」前に両親に見棄てられたり、或いは「人

間になる」前にチェリストに成ってしまったり、更には「人間にな

る」前の幼少時に、肉体的、精神的苦痛を受けた記憶がトラウマと

して残り、当のエリクソンによれば、アイデンティティーの喪失を

「自我同一性の拡散」と呼んでいるが、

「『自分が何者なのか、何をしたいのかわからない』という同一性

拡散の危機に陥り、その現れとして、対人的かかわりの失調(対人

不安)、否定的同一性の選択(非行)、選択の回避と麻痺(アパシ

ー)などをあげている。またこの時期は精神病や神経症が発症する

頃として知られており、同一性拡散の結果として、これらの病理が

表面に出てくる事もある。」(ウィキペディア「自己同一性」『同

一性拡散の問題』)

 つまり、生い立ちを遡ってアイデンティティーを探ることがトラ

ウマを蘇えらせてストレスになり、自己が確立されずに自己から

逃れようとして他者に依存するようになる(自己逃避と他者依存)。

もちろん軽重の程度は様々だが、ただ、他者への依存は切迫した衝

動として現れるので、感情的な激昂(すぐキレる)や見境のない性

衝動(セックス依存)、アルコール依存、過食と拒食を繰り返し、人

格が破綻して妄想を生み、遂には自傷行為にまで到る。彼らは何

らかの理由によって自己と向き合うことが苦痛を伴うので、つまり、

孤独に堪えられないので自分自身を忘れさせてくれる社会に執着

する。そして、それは実にそつなく熟(こな)される。世界の人々に愛

されたダイアナ妃のように。いったいどれ程の人が「本当のダイア

ナ妃」を知っていただろうか。



「この後は、どうすればアイデンティティーを取り戻すことが出来る

かを考えたいと思います」

                               ケケロ脱走兵


                                    (つづく)

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