「あほリズム」
(201)
近代社会は誰もが物質文明の豊かさを追い求める時代であった。だ
から、誰もが社会の「あるべき姿」を共有することができた。とは言
っても、我々が共有した豊かさとは経済成長だけだったが。ところが、
物質文明の様々な限界が見え始めると、それぞれが現実の違いから理
想を共有できなくなった。「あるべき姿」が共有できなくなった社会
は停滞し拡散する。社会が共有するのはただ「空しさ」だけだ。誰も
が孤立して現実の絶望と向き合う。励ましの歌でさえ力を失った言葉
の聞き飽きたお経のようで、みんな同じに聴こえてきてなお空しくな
る。ああ、誰か社会が共有できる新しい理想を語ってくれ。自分自身
を忘れて生きることのできる新しい理想を。そうだ!我々は、生きる
こととは自分自身を忘れることだと思っていた。生きる歓びは自分
の外にしかないと。果たして、生きることとは自分自身を失うことだ
ろうか。しかし、停滞した社会ではそれぞれが失った自分自身を取
り戻さなければならない。我々現代人がもっとも忌み嫌う「孤独」の
時代が始まろうとしている。
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