ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「ラ・ボエーム」

2014-10-24 21:31:37 | オペラ
9月20日フランクフルト歌劇場で、プッチーニ作曲のオペラ「ラ・ボエーム」をみた(指揮:K.ヤヌシュケ、演出:A.キルヒナー)。

この日、何と20年ぶりに外国でオペラをみた。
イタリア語上演、ドイツ語字幕つき。

1830年頃のパリのクリスマスイヴ。貧しいアパートの屋根裏部屋で、画家マルチェッロ、詩人ロドルフォ、音楽家ショナール、哲学者
コルリーネの4人は行き当たりばったりのボヘミアン生活を楽しんでいる。3人がイヴの町に出かけた後、ロドルフォが一人残って原稿を
書いていると、階下に住むお針子ミミが、消えたロウソクの火をもらいに入って来る。これが二人の出会いだったが、この時すでにミミは
胸を病んでいたのだった…。

日本だと開演30分前には中に入れるが、ドイツは違うらしく、カーテンを開けて入ろうとすると ”Not yet”と止められ、10分前に
なってやっと入れた。
さすがに東洋人はほとんどいない。
小さい劇場の2階正面席(A席位)。
緞帳にはボードレール?の詩のドイツ語訳が書かれている。視界の上方に3階席のゆるやかな曲線が見えて優美。

歌手はみなうまい。何より声量がある。

正面上方にドイツ語訳が出るが、割と早く変わるので忙しい。

客がうるさい。すぐ後ろの女性2人がよくしゃべる。アリアの後は拍手が続いて芝居が中断するし。残念ながらこういう点は日本と同じだ。

マルチェッロの浮気な恋人ムゼッタの衣装が真っ黒で面白くない。そう言えば主要人物はみな白黒モノトーンだ。
彼女が「ムゼッタのワルツ」を歌っている間、マルチェッロが服や靴や靴下を脱ぎ捨ててゆくのが変わっている。彼女の衣装や所作がセクシー
でないのを補っているつもりなのか?!ここの演出にはブーイングが起こった。そりゃそうだ。

児童合唱はちょっとオケとずれている。

全4幕で、2幕の後に休憩。
1幕と3幕の後は舞台装置を変える間、幕を降ろし、照明はそのままで指揮者もオケもお客もじっと待機。

最後はやっぱり泣かされた。
22時前に終わりカーテンコール。この後、みんな歩いてこの近くの家に帰るのだろう。日本のように電車で1時間もかけて聴きに来るような
人はたぶんいない。何しろ町ごとに歌劇場があるのだから。

小さなオペラハウスで素敵な経験ができた。


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井上ひさし作「きらめく星座」

2014-10-14 17:18:40 | 芝居
9月9日紀伊國屋サザンシアターで、井上ひさし作「きらめく星座」をみた(演出:栗山民也)。

時は太平洋戦争前夜、昭和15年から16年。東京、浅草のレコード屋オデオン堂の家族と広告文案家(つまりコピーライター)の
下宿人は皆、音楽大好き。しかもそれは「仮想敵国のジャズ」であったり「軟弱な流行歌」であったり…。更に陸軍に入隊していた
長男(田代万里生)が脱走、追ってきたのは憲兵伍長。オデオン堂は非国民の家と噂されてしまう。
だが可憐な一人娘(深谷美歩)が結婚相手に選んだのは傷病兵(山西惇)。非国民家族から一転、美談の家となったオデオン堂で
繰り広げられる、好きなものが好きと言えなかった時代の彼らの運命は…。

かつて木村光一演出版を見たことがあるが、今回配役も変わった。

長男正一役の田代万里生は、ミュージカル畑の人だから当然だが歌がうまい。彼は、これがストレートプレイ初出演の由。
長女みさをの夫ゲンさん役の山西惇はこの役にぴったり。「木の上の兵隊」での古参兵役もそうだったが、旧日本軍人を演じてこの人ほど
サマになる人はいない。

後妻役の秋山菜津子はずば抜けた演技力の持ち主で、今まで何度も楽しませてもらってきたが、歌を歌ったところはあまり記憶になく、
始めは、この人歌もうまい、と思ったが、声が割れそうになることがあり、声質も特にいいわけではなくて残念。でも勿論演技は抜群。
脱走兵を追って来て家の中を探し回る憲兵に、二階への階段を指し、「私がご案内します」とか言うだけのシーンなのに、その仕草の
色っぽいこと。荒々しい憲兵が思わずひるむのがおかしい。結局彼は二人っきりで二階に上がるのが不安になり、誰かもう一人に一緒に
来てもらうのだった。




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井上ひさし作「兄おとうと」

2014-10-01 23:02:58 | 芝居
8月19日紀伊国屋サザンシアターで、井上ひさし作「兄おとうと」をみた(演出:鵜山仁)。

音楽劇。伴奏はピアノ(朴勝哲:いつもながらの名演奏!)。

君主や支配層ではなく人々の利福の方法を説き民本主義を唱えた大正デモクラシーの先駆者・吉野作造には、正反対の思想を持つ弟がいた。
兄に劣らぬ秀才で十も歳の違う高級官僚・信次である。仲がいいのか悪いのか、会えば毎回大討論、そんな二人が結婚したのは賢い上に
仲のいい姉妹だった…。

役者が皆うまい。
いくつもの役を掛け持ちする小柄な女優が誰かと思ったら、宮本裕子さんだった(チラシをよく読まずに出かけたので)。
女中、窃盗犯、袁世凱の娘、説教強盗、大連の怪しげなカフェの経営者・・と八面六臂の活躍。しかも体の動きがしなやかで美しく、どの
役も素晴らしい。彼女は昔「夏の夜の夢」でハーミア?をやった時から、その名前を脳裏に刻んだ人だった。その後「十二夜」で確かヴァイオラ
も見た。
小嶋尚樹という人も同様。文部省役人、巡査、右翼の男、説教強盗、ブリキ会社社長・・。
高橋紀恵さんは「サド侯爵夫人」のタイトルロールが見始めで、その後「冬のライオン」など見てきた。
辻萬長、大鷹明良、はお馴染みの常連。
剣幸はたぶん初めて見たが、声もよく、おっとりしているようでしっかり者の奥様をくっきりと演じる。

ただ、妻たち姉妹の描き方があまりに子供っぽくて白けてしまう。
それと、こういう芝居に歌や踊りが入るのは好みではないが、作者が入れたいと思ったのだから仕方がない。評者に言わせれば、戯曲の
力の弱さを補うために歌が必要だったということになる。せめてその音楽がもう少しよかったら、恥ずかしさも薄れるのだが。

最後は舞台奥のスクリーンに「大震災」「尖閣」「特定秘密保護法」…という文字が浮かび上がり、狂気を孕んだこの時代に対峙する
演出家の意図が伝わってきた。
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