7月4日新国立劇場オペラパレスで、プッチーニ作曲のオペラ「トスカ」を見た(演出:マダウ=ディアツ、指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ、
オケ:東フィル、イタリア語上演)。
1800年6月、オーストリア支配下のローマ。共和派の画家カヴァラドッシは、脱獄した友人をかくまった罪で捕らえられる。
彼の愛人である歌姫トスカをわがものにしようと狙う警視総監スカルピアは、トスカの面前でカヴァラドッシを拷問し、彼の命を救う代償に
その体を要求。トスカは取引に応じ、カヴァラドッシを形だけの死刑とする約束を取り付け、出国許可証を手にするが、偶然手にしたナイフで
スカルピアを刺し殺す。明け方、見せかけのはずの銃殺刑が行われるが・・・。
20年来見たかったが事情により見られなかったオペラをやっと見ることができた。
ヒロインは自他共に認める嫉妬深い女性。おまけにおしゃべりで口が軽い。
そのため彼女の愛人は、脱獄した政治犯である友人のことを彼女に打ち明けるのをためらってしまう。
オペラの主役が、そういう、何と言うかネガティブな個性を与えられているのは珍しい。
主役のカップルは結婚こそしていないが、すでに女性の別荘を愛の巣にしている仲。
それゆえこのオペラでは、二人の出会いや、二人が恋に落ちるさまを見て楽しむことができない。
シェイクスピアの芝居で強いてたとえるなら、「アントニーとクレオパトラ」みたいな大人の恋の話なのだった。
最初のアリアが終わると盛大な拍手が。
あー、やっぱり、とがっかりしていたら、この夜はそれどころではなかった。
幕間ごとにカーテンコールがあり、歌手たちが出て来て、その都度拍手を浴びる。
まだ話の途中なのに、敵同士で互いに殺したいほど憎み合っているはずの男二人も仲良く手を取り合ってにこやかに出て来る。
そんなところ見たくないと思う評者のようなのは、どうやら少数派らしい。
ただ、ラスト近くで牢獄のカヴァラドッシが歌うアリア「星は光りぬ」の後は、さすがに拍手できないよう次の音楽が即始まるように
できていて助かった。この曲が白眉。プッチーニらしい甘美なメロディが聴けた。こんなところで拍手されたらたまらない。
スカルピアは「ヤーゴはハンカチで嫉妬をかき立てた」と言って「自分も」と別の女性の扇をトスカに見せて、カヴァラドッシの浮気を
疑わせようとする。ヤーゴって何?虫かしら?(いやそれはヤゴだし)と思ったら、「オセロー」の悪役イアーゴーのことらしい。
なぜここで唐突にイアーゴーに言及する?その後も「もう毒が回ってきた」とかイアーゴーのセリフを口にするスカルピア。
どうもこの男(と言うか原作者)はシェイクスピア好きらしい。
スカルピア役クラウディオ・スグーラは、声も演技もいい上に、背も高く押し出しがよく、権力をかさに着てやりたい放題やる悪役を
見事に造形していた。悪役がうまいことが、この種のオペラでも芝居でも重要なのだ。
カヴァラドッシは拷問から解放された後、トスカが友人の隠れている場所をスカルピアに白状したことを知り、怒る。
だが彼のことを心配するあまりの行動なのだから、もっとやさしくしてもいいのでは?
オケ:東フィル、イタリア語上演)。
1800年6月、オーストリア支配下のローマ。共和派の画家カヴァラドッシは、脱獄した友人をかくまった罪で捕らえられる。
彼の愛人である歌姫トスカをわがものにしようと狙う警視総監スカルピアは、トスカの面前でカヴァラドッシを拷問し、彼の命を救う代償に
その体を要求。トスカは取引に応じ、カヴァラドッシを形だけの死刑とする約束を取り付け、出国許可証を手にするが、偶然手にしたナイフで
スカルピアを刺し殺す。明け方、見せかけのはずの銃殺刑が行われるが・・・。
20年来見たかったが事情により見られなかったオペラをやっと見ることができた。
ヒロインは自他共に認める嫉妬深い女性。おまけにおしゃべりで口が軽い。
そのため彼女の愛人は、脱獄した政治犯である友人のことを彼女に打ち明けるのをためらってしまう。
オペラの主役が、そういう、何と言うかネガティブな個性を与えられているのは珍しい。
主役のカップルは結婚こそしていないが、すでに女性の別荘を愛の巣にしている仲。
それゆえこのオペラでは、二人の出会いや、二人が恋に落ちるさまを見て楽しむことができない。
シェイクスピアの芝居で強いてたとえるなら、「アントニーとクレオパトラ」みたいな大人の恋の話なのだった。
最初のアリアが終わると盛大な拍手が。
あー、やっぱり、とがっかりしていたら、この夜はそれどころではなかった。
幕間ごとにカーテンコールがあり、歌手たちが出て来て、その都度拍手を浴びる。
まだ話の途中なのに、敵同士で互いに殺したいほど憎み合っているはずの男二人も仲良く手を取り合ってにこやかに出て来る。
そんなところ見たくないと思う評者のようなのは、どうやら少数派らしい。
ただ、ラスト近くで牢獄のカヴァラドッシが歌うアリア「星は光りぬ」の後は、さすがに拍手できないよう次の音楽が即始まるように
できていて助かった。この曲が白眉。プッチーニらしい甘美なメロディが聴けた。こんなところで拍手されたらたまらない。
スカルピアは「ヤーゴはハンカチで嫉妬をかき立てた」と言って「自分も」と別の女性の扇をトスカに見せて、カヴァラドッシの浮気を
疑わせようとする。ヤーゴって何?虫かしら?(いやそれはヤゴだし)と思ったら、「オセロー」の悪役イアーゴーのことらしい。
なぜここで唐突にイアーゴーに言及する?その後も「もう毒が回ってきた」とかイアーゴーのセリフを口にするスカルピア。
どうもこの男(と言うか原作者)はシェイクスピア好きらしい。
スカルピア役クラウディオ・スグーラは、声も演技もいい上に、背も高く押し出しがよく、権力をかさに着てやりたい放題やる悪役を
見事に造形していた。悪役がうまいことが、この種のオペラでも芝居でも重要なのだ。
カヴァラドッシは拷問から解放された後、トスカが友人の隠れている場所をスカルピアに白状したことを知り、怒る。
だが彼のことを心配するあまりの行動なのだから、もっとやさしくしてもいいのでは?