ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

チェーホフ作「三人姉妹」

2012-02-27 17:30:39 | 芝居
2月13日紀伊国屋ホールで、チェーホフ作「三人姉妹」をみた(文学座公演、演出:坂口芳貞)。
坂口玲子による新訳。

母を亡くし、父も一年前に亡くした三姉妹と一人の兄弟とが、田舎の屋敷に召使いたちと暮らしている。
その地に駐屯している軍隊の軍人たちが屋敷に出入りしている。彼女たちはかつて住んでいたモスクワに再び住む
日を夢見ているが・・・。

ドクトルから三女イリーナへの誕生日のプレゼントは原作ではサモワールだが、白いドレスに変えられた。この意味
するところは?そもそも独身女性にサモワールを贈るというのはどういう意味なのだろう。ただ場違いでトンチンカン
ということか?それとももっと深い意味でもあるのだろうか。

2幕で次女マーシャとイリーナは軍人たちと歌い踊る。

長女オリガ役の人が小柄で弱々しいのが意外。確かに義理の妹ナターシャに対しては一貫して弱いが。

文学座らしからぬほころびが何か所かあり、情けない。セリフをとちる、間が空く・・。したがって、迫力・緊迫感
に欠ける。
ヴェルシーニン役の清水明彦、クルイギン役の高瀬哲朗、男爵役の沢田冬樹は好演。
アンドレイ役の人は体型だけで選ばれたのか?

新しい訳で、ずっと分かり易くなった。
「未婚の娘で、恩給をもらっている」というところは「亡父の遺産からの年金」になってやっと意味が分かった。

マーシャが言う例の「アモー、アマース、アマット・・」(ラテン語の動詞「愛する」の活用)のところなんか
そのまま上演するわけにはいかない。ここは日本語で「愛さない、愛します・・」となっていた。これで特に
教養があるという印象にはならないが(マーシャはここで「私これでも教養があるのよ」と言いたいのだ)、
筆者も他にいい案が浮かばない。

イリーナに限らず、人を好きになったことがない女性はけっこう多い。どんな環境にあってもすぐに誰かを好きになる
女性もいるが、果たしてどちらが幸せか。
チェーホフのヒロインはたいてい片思いに胸を焦がしてきりきり舞いしているが、彼女は珍しく、醒めた女だ。
人を愛することを知らない。美しくて冷たい。だから彼女の前では男たちがきりきり舞いする。
男爵も、彼女と婚約できて結婚の日取りも決まったのに、彼女が自分を愛していないことで深く悩む。
日本には「馬には乗ってみよ。人には添うてみよ」という言い回しがある。
昔の日本だったら、婚約者が自分を愛しているかどうか気にする男性は少ないだろう。






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寺山修司作「くるみ割り人形」

2012-02-11 16:29:16 | 芝居
1月30日吉祥寺シアターで、寺山修司作「くるみ割り人形」をみた(脚色:岸田理生、構成・美術:宇野亜喜良、演出:水嶋カンナ、
監修:金守珍)。

寺山が人形映画のために書いたシナリオ「くるみ割り人形」を岸田理生が浅草版として戯曲化した作品の初演。
美女劇第3弾とか。

昨年夏に初めて寺山の芝居(「伯爵令嬢小鷹狩掬子の七つの大罪」)をみてその魅力を知り、これが二度目の体験。
結果は期待以上だった。面白過ぎるほど。

E.T.A.ホフマンの「砂男」と「くるみ割りとねずみの王様」をもとに書かれた「幻想の悲劇譚」とか。
その他にもいくつもの童話の要素をちりばめてある。眠り姫、カエルの王様、赤い靴・・。
影を切り取る話って何だったっけ?(誰か教えて下さい)

「大女優」役(笑)の毬谷友子がいい。この人をみるのは3度目だが、これまでどうも自分の女性性を出し過ぎるように
思えていやだった。端的に言えばあまりにもコケティッシュ(いつでもどこでも)で、そういう役しかやらない人という
印象だった。が、この日の役柄に母性という面もあったからか、臭みもなく、その貫禄ある演技と存在感に圧倒された。

台本、音楽、踊り、どれも素晴らしい。よく訓練された集団の踊りと演技を見る喜びを味わえた。

ただ、始めに主人公の少女がいきなり自分の影を切り取ってほしい、と言い出すのが唐突で、そこだけが残念。

ところで「浅草版」てどういう意味なのか、これもどなたか教えて下さい。

今年11月には芸術劇場で新作上演の由。もちろん行くつもりです。



コメント (2)
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オペラ「修道院での結婚」

2012-02-03 20:50:33 | オペラ
1月15日新国立劇場中劇場で、プロコフィエフ作曲のオペラ「修道院での結婚」をみた(指揮:飯坂純、演出:八木清市)。

日本初演。珍しい作品の時お世話になるネットのオペラ辞典にも載ってなかった・・。
全4幕。原語(ロシア語)上演。

18世紀のセヴィリア。貴族ドン・ジェロームは金持ちの船主メンドーザと取引している。彼はメンドーザに、娘のルイーザ
との婚約を承知する。だがルイーザには既にアントニオという恋人がいた。
一方、ルイーザの兄フェルディナンドはクララという娘と愛し合っている。彼女は厳しい継母のいる家を出て修道院に
籠る。
またルイーザの乳母ドゥエンナは、金目当てにメンドーザとの結婚をもくろむ。
この3組のカップルが織りなす楽しい物語。原作はR.B.シェリダン。

冒頭、様々な魚のお面を頭につけた女性たち登場。メンドーザがドン・ジェロームに「マスを食べてみて」とか「クルマエビ
をかじってみて」とか勧めると、何と彼女らが本当に魚の役を演じる。このように、全体に学芸会のようなにぎやかさと軽さ
が支配する。

演出がいい。衣装もいい。(オケはあまりうまくない)

メンドーザ役の村田孝高は芝居っ気たっぷりで楽しい。声もよく、動きに切れがある。

初めてみるオペラで、予備知識もなかったが、楽しく分かり易い話だった。
めったに上演されないロシアオペラのために、ロシア語と格闘(?)してくれた歌手の方々に拍手!
皆さん、お疲れさまでした。
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