ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「死との約束」三谷幸喜版

2023-08-11 15:54:21 | テレビドラマ
先日、撮りためておいたテレビドラマ「死との約束」(2021年放映)をようやく見た。




これは、アガサ・クリスティーの同名小説を三谷幸喜が翻案したもので、彼によるクリスティー作品の翻案第3弾となる。

「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ・・・」エルサレムを訪れていたポアロが耳にした男女の囁きは闇を漂い、やがて死海の方へ
消えていった。どうしてこうも犯罪を連想させるものにぶつかるのか?
ポアロの思いが現実となったように殺人は起こった。
謎に包まれた死海を舞台に、ポアロの並外れた慧眼が真実を暴く(ハヤカワ文庫の解説より)。

原作は1938年に発表された長編小説。
それを読んでから見たので、始まるとすぐに犯人が分かったが、そんなことはどうでもいい。
と言うか、この原作を読んで、途中で犯人を当てることのできる人はいないと思う。
そういう意味では、この小説も本格推理とは言えないだろう。
クリスティーらしい様々な人間模様を楽しみ、あの人もこの人もみんな怪しく、そしてみんながそれぞれ別の家族を犯人だと思って
かばい合う、という作者の仕組んだ錯綜した状況にミスリードされ、右往左往しながらそれを楽しむのが醍醐味だろう。

本堂家の人々は家族旅行中。母親、長男夫婦、次男、長女、次女の6人。
父親は亡くなり、母親は後妻で、次女以外の3人は先妻の子供。
彼らには、何やら奇妙なところがあった。
次女以外は皆、もういい大人なのに、何でも母親の言いなりで、自分たちで物事を決めることができないようなのだ。
実は、この母親は人を支配することに異常な喜びを覚える性格で、再婚直後から子供たちを支配してきた。
彼らはまるで催眠術にかけられたかのように、母親に牛耳られていたのだ。
莫大な財産を相続した母親は、子供たちを養ってはいるが、外で働くことを許さない。
彼らは自由になりたいと思うものの、働いたことがないため、どうすればいいのかわからない。
だが彼らも、このままではいけない、僕らはそのうちダメになる、と切迫した思いに駆られている。
みな、母親を憎んでいるが、その気持ちを顔には出さず、表面的には従っている。
そんな母親が、年取っていたとは言え直前まで元気だったのに、急死する。
それを知っても家族は誰も驚かず、悲しまない。
全員に動機があり、チャンスがあり、疑わしい・・・。

原作を読んだ時、最初は、例の有名な某作品のように、みんなでやっちゃったんじゃないか、と思った。
だが名探偵・勝呂武尊(野村萬斎)も言うように、それにしてはみんな、その後の行動がバラバラで計画性がなさ過ぎる。
では、やはり「彼女を殺してしまわなきゃ・・」と言うのを勝呂に聞かれてしまった次男が犯人か。
だが動機から言うと、妻に離婚を切り出された長男が一番怪しい・・・。

今回もまた、三谷さんの凄さが分かった。
彼は舞台を中東から日本に置き換え、時代を昭和30年に設定。
つまり、戦後の混乱がまだ尾を引いている頃ということ。
そして、カラカラに乾いた暑い砂漠を旅する物語は、緑したたる熊野古道の鬱蒼とした森の中に移された。
このアイディアはどこから湧いてきたのか。
たぶん、天狗伝説でしょう。
原作で重要な役割を果たす「原住民」をどうするか考えた結果、天狗に登場してもらおうと思いついたのでしょう。

キャスティングもいい。
代議士・鈴木京香、異常な支配欲で家族に君臨する母親・松坂慶子、気弱な編集者・長野里美、地元の警察署長・阿南健治。
長男夫婦が山本耕史とシルビア・グラブというのは、ちょっと意外だった。
後は知らない人たちだったが、皆さん好演。
ただ、主役ポアロ、いや勝呂を演じる萬斎が、相変わらず異常に作り込んだキャラで、キモい。
声も顔もとにかく普通じゃないし。
こんな人、そばに来たら誰だって逃げるでしょう。

代議士・上杉穂波(鈴木京香)と勝呂との前日譚をしっかり描いているのが重要な伏線。
何と彼女は、旧姓「佐古」で、かつては「猫の目」と名乗る怪盗だった!(笑)
その時、彼女を逮捕したのが、当時警官だった勝呂だったのだ。
そんな彼女も、今では上杉穂波という名前に変え、亡き夫に代わって代議士となっていた。

勝呂は、本堂夫人(松坂慶子)がかつて刑務所で女看守として働いていたことを知らなかった。
そこは原作と違う点だが、この前日譚のおかげで、破綻なく、不自然さもない。

穂波と勝呂との淡いロマンティックな関係を入れたことで、話がふくらんで香り豊かな印象になった。
このアイディア、素晴らしいと思う。
ただ、せっかくのこの設定も、萬斎がキモイので、思いっきり感情移入したいのにそれができないというまだるっこしさがあった。
実に残念で腹立たしい。

長男の妻を秘かに愛し、支えようとする男(坪倉由幸)・・・これがだいぶ違う印象になっている。
原作では、誠実で信じられないほど献身的なアメリカ人男性で、そのままでは現代日本ではまるでリアリティがないから、仕方ないだろう。
だから、独裁者だった義母の突然の死後、女が言いにくそうに(夫と別れて彼と再婚することを承諾したが)やはり夫をそばで支えたい、と告げると、
彼女を責めることなく、その申し出を寛大に受け入れ、自分は彼女の幸せだけを願っている、と美しいセリフを述べるが、
その間、何やら妙に感動的な、胸に迫る音楽を流しておいて、振り返ると・・・というコミカルなシーンに。

「黒井戸殺し」の時と同様、三谷さんは、原作を補っている!
たとえば、穂波と本堂夫人がホテル内で秘かに会っていたこと。
また、穂波が本堂夫人に、ベンチで待つようにとのメモを渡していたこと。
これらは原作にないが、きっとあったはずのシーンだから、原作の読者はそれを想像しなくてはならなかった。

穂波に付き添う編集者で、暗示にかかりやすい女性・飛鳥ハナを長野里美が好演。
配役を見ただけで誰が誰をやるか分かったが、彼女は特にピッタリだと思った。

登場人物の名前が可笑しい。
サラはそのまま沙羅だが、次男レイモンドが主水(もんど)、カーバリ大佐が川張署長に(笑)。

ラストの処理がまた素晴らしい。
土地の景観を活かして、無理なく美しく終わらせている。
(原作でも、警察は事故死として処理した)
精神的に不安定だった末娘についても、簡単に、だが自然に無理なく触れて、今後の明るい展望を感じさせている。
とにかく、あちこちに三谷幸喜の才気が感じられる。
どうしてこんなことができるのだろう。
彼の翻案の才能には、脱帽するしかない。
今回も、めちゃくちゃ楽しかったです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「鎌倉殿の13人」

2023-01-14 23:37:08 | テレビドラマ
昨年は久々に大河ドラマを堪能できた年だった。
三谷幸喜の大河ドラマは欠かさず見てきたが、何しろ筆者は宮沢りえと草笛光子と鈴木京香のファンなので、こんなに楽しい一年はなかった。
男性陣も、新納慎也、成河、栗原英雄、柿澤勇人、横田栄司、たかお鷹、佐藤B作、山崎一、吉見一豊、迫田孝也・・と、以前から舞台で見て
注目していた人たちが惜しげもなく次々と出て来るので、とにかく目が離せなかった。

柿澤勇人は、かつて「コリオレイナス」と「アテネのタイモン」で、いずれも勇敢な武将を演じていたので、
静かな貴公子・源実朝として登場した時には驚いた。
だが三谷さんは彼の素質を見抜いていたようだ。彼は、この悲劇の主君を見事に演じ切った。

実朝は周囲の強い勧めに逆らえず、京から美しい妻を迎えるが、一度も床を共にしない。
当時、人々の寿命は今よりずっと短かったので、権力を手にしたら、まずは早く後継ぎを作ることが重要だった。
このままでは後継ぎができないというので妻の立場も危うくなり、周囲にも不穏な動きが出てくる。
彼は今で言う LGBTQ らしいが、ドラマでは北条義時の長男・太郎(後の泰時・坂口健太郎)に惹かれているのだった。つまりゲイということ。
だが太郎の方はと言うと、妻がいて、しかも彼女にぞっこんなのだった。ああ、哀れな実朝・・。

そして今回の大河には、驚くほどのイケメンが続々と現れ、そして結局は、あっと言う間に(殺されて)消えて行った・・。
木曾義仲(青木崇高)の嫡男・義高役の市川染五郎、畠山重忠役の中川大志・・。
鎌倉時代が野蛮な時代だったことがよくわかった。
歴史は好きだが、この時代は盲点だった。
孫にも歴史好きになってもらいたいと思って買っておいたマンガ「日本の歴史」を読んで、予習復習する有り様(笑)

知らなかったことがたくさんあった。
まず、巴御前は木曾義仲と共に討ち死にしたとばかり思っていたが、そうではなく、生き延びて鎌倉側の和田義盛の妻となっていた!とか。
源義経は、戦上手だが兄・頼朝にねたまれ殺された悲劇の人だと思っていたが、実はすごく悪い奴だったとか(何の落ち度もない見知らぬ人をあっさり殺して
朗らかに笑う初出のシーンはショックだった)。
源頼朝に弟がたくさんいたこととか(もちろん異母弟も含めて)。姉妹もいたのだろうが、女性は数に入らない。

当時は男と女では、生まれた時から扱いがまったく違った。
唐突だが、それで思い出すのは「赤毛のアン」のこと。
19世紀末のカナダでは、男の子と女の子で寝かせるベッドが違った!したがって、あてがう部屋も。
孤児院から少年をもらうつもりが、手違いで少女アンが来たため、マリラは頭を抱える。
とりあえず、その夜は家に泊めることにするが、少年を寝せるつもりだった台所脇の小部屋のカウチに「少女を寝せるわけにはいかない」と彼女は考える。
そこで、二階の東側の小部屋に彼女を泊めることにしたのだった。

さて、大河ドラマに戻ると、今回は何と言ってもキャスティングがよかった。
映画「テルマエ・ロマエ」の「平たい顔族」じゃないけど、京側の役者さんたちは、それらしい人がそろっていた。
たとえば、アクの強い悪役・源仲章を憎々しげに演じて度肝を抜いた生田斗真。この人など、いかにもな公家顔!

そして、主役たちの変貌も見どころだった。
小四郎(後の北条義時・小栗旬)も姉・政子(小池栄子)も、頼朝との出会いによって人生が大きく変わってゆく。
小池栄子の演じる政子はごく普通の女性だったが、頼朝の死後、尼になってからの比類ない美しさと気品には驚嘆し、心打たれた。
最後には、尼将軍を演じられるのは小池さんしかいない、とまで思えた。

大江広元役の栗原英雄は、いつもながらの美声で、頼朝の知恵袋と言われる冷徹な男を好演。
上総広常役の佐藤浩市の壮絶な最期には、かつて「新選組!」で組員たちに襲われたシーンを思い出した。
だがあの時と今回とではまるで違う。
力のある者は、謀反の危険性があるから早いうちにつぶしておかねば安心できないと考えた頼朝の、あまりに冷酷な仕打ち。
恩を仇で返すとはこのことではなかろうか。
また、同じ源氏でありながら木曾義仲を攻めたのは、単に武勲で先を越されないためだった。
義仲の方には、頼朝と戦う気はまるでなかったのに。
頼朝の冷酷さが際立つが、それは彼の過酷な生い立ちから来るものだろう。
親族を皆殺しにされ、幼かった自分だけが乳母の執り成しで許されて伊豆に流されたのだから。
そして、自分が平家に対してずっと敵討ちしたいと願ってきたため、他の者も、どんなに幼くてもいずれ成長すれば敵討ちしようと思うはず、と考え、
弟・義経の子も男児だとわかるとすぐに殺したのだった。

藤原秀衡役の田中泯も大好きな人。かつて大河ドラマ「龍馬伝」で、この人の圧倒的な存在感に打たれ、名前を記憶に刻みつけた。
後白河法皇役の西田敏行は、まさに怪演&快演。

そして何と言っても、りく役の宮沢りえの美しさ!
りくは野心の塊のような女性で、北条時政(坂東弥十郎)が、この人と再婚しさえしなかったら、あの人もこの人も殺されることはなかっただろう、と
思うと恐ろしいが、宮沢りえの演技には説得力があった。

丹後局役の鈴木京香も、もちろん好演。今回は政子とその愛娘・大姫を田舎者と見下していじめたりもする、言わば悪役だが、
相変わらずの美貌と美声を楽しむことができた。

比企尼役の草笛光子は期待通り。この人は頼朝の乳母だったが、最後は自分の一族を北条家によって滅ぼされてしまう。
辛うじて逃げ延び、まだ幼い善哉(後の公暁)に近づいて北条家に復讐せよ、と言い聞かせるシーンが忘れられない。
大河ドラマ史に残る名場面ではなかろうか。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドラマ「黒井戸殺し」

2022-05-01 17:20:52 | テレビドラマ
先日、遅まきながら三谷幸喜脚本のドラマ「黒井戸殺し」を見た。



2018年4月14日放映なので、もう4年もたってしまった。
どうしてもっと早く、せめてその年の内に見なかったのか、と後悔しきりです・・。
でも、それでもやっぱり書かずにはいられないのです。三谷さんを賞賛したい点、ひと言言いたい点とかいっぱいあって。
どうぞ聞いてください。(なお、ネタバレありです。ミステリーですし、結末を知りたくない方は読まないでください)

以前書いたように、これはアガサ・クリスティー作の「アクロイド殺し」の翻案なので、まずそれを(ほとんど覚えていなかったので)読み直し、
さらに、その名作があまりに素晴らしかったので、その印象が薄れるのを待って、ようやく見たのだった。
(原作についての感想は、2021年8月30日のブログにあり)
結論から言うと、これはクリスティーの作品とは別の作品と言った方がいい。

まず登場人物について。
ポアロ役の勝呂武尊(すぐろたける)を演じる野村萬斎 ⇒ 例によって過剰な作り込み。そんな必要があるのか。
ワトソン役となる医師役に大泉洋 ⇒ 最近すっかり「三谷組」。結末を知らない視聴者には、この配役はうまい。
医者の姉を斉藤由貴が演じている。これには驚いた。
可憐で美し過ぎる。
弟とは10歳くらい離れている設定だし、ゴシップ好きな中年女性なのだから、もっとふさわしい役者がいるだろう。と不可解だったが、
全部見終わって納得した。
なんと、彼女は脳腫瘍で余命半年なのだそうだ。
そしてそのことを知っているのは弟だけ。本人は知らない。
この処理がうまい。
と言うのも、原作では、どう考えても警察が村人たちに真相を明かさないでごまかし通すことなどできないと思われるからだ。
だから姉が病気で死んだ後(これから約半年後)に医者の手記が「発見される」という形に勝呂は持っていこうとしている。
これで原作の最大の欠陥がうまくカバーされたわけだ。

令嬢花子役の松岡茉優 ⇒ 暗い役なのに終始笑いをこらえているようで違和感を覚えた。
だってこの人は、一応名家の令嬢のはずだが、内実は伯父の黒井戸(遠藤憲一)がケチなため、金欠で身の回りのものを買うにも不自由な暮らしを強いられている。
挙句、伯父の部屋から金を盗んでしまう・・という惨めな境遇なのだ。
そんな彼女に一人の男性がアプローチして来て、罪に怯える彼女が次第に明るくなってゆくのが面白いのに。
この人はうまい役者だと思っていたが、演出がいけないのか。
彼女にアプローチして来るのは、原作では無骨な初老の探検家だが、ここでは女たらしの作家(今井朋彦)に変わっている。
この探検家は、原作中、評者から見て最も好感の持てる人物なのだが、それをまさかの女たらしのふざけた文士にするとは!
これでは二人の恋を応援する気が起きない。
クリスティーの作品には、よく若い男女が出会って惹かれ合い、最後に結ばれる、という副筋があり、それもまた魅力の一つなのだが。
ただ、時代設定を考えると、こうするのが自然だし仕方ないか、とは思う。(念のためにつけ加えると、今井朋彦さんは好きな役者さんです。)
黒井戸の義理の息子・春雄役を向井理・・苦労知らずのお坊ちゃん役。なかなか合ってる。
執事役を藤井隆・・これがいい。挙動不審で、いかにも怪しい(笑)。視聴者をミスリードするにはもってこいだ。
家政婦長を余貴美子・・・いかにもしっかり者らしく、かつ、どこか影のある女性がぴったり。
令嬢花子の母を草刈民代・・・この人は、娘に盗みをするよう指図するなど、かなり悪い人に変えられている。

三谷版の大きな特徴としては、冷血漢の医師が、より人間味ある人に変化していることが挙げられる。
原作では、ただ金が欲しくて「欲望が抑えられず、もっともっとと」未亡人をゆする下劣な奴だが、ここでは「病気の姉の治療費のため」という、はっきり言って
お涙頂戴的な動機(設定)になっていて啞然とさせられる。
だが前述のように原作の欠陥をカバーするためにはそうするしかなかっただろう。
それでもなお、何の罪もない、しかも自分を信じて疑わない黒井戸を殺し、やはり自分を信頼し切っている春雄にその罪をなすりつけようとした罪は重いが。

結論としては、これはクリスティーの小説とは別の話と考えた方がいい。
三谷氏が、あれを元に別の物語を創り出した、と考えるべきだろう。
それと、原作で重要なのは、佐奈子が自殺したのは犯人に脅されていたからではないこと。愛する黒井戸に過去の罪を告白した時、彼の心が彼女から
サーッと離れていったのを見たからだ。彼は彼女を愛し、プロポーズし続けていたが、彼女の告白を聞いて、それを許し、受け入れることができなかった。
彼の表情からそれを読み取った彼女は、絶望し、自分の罪は、やはり死ぬことでしかあがなえないのだ、と悟って死を選んだのだ。
たぶん話が複雑になるのを避けたのだろう。何と言ってもテレビドラマの尺に合わせないといけないのだから。
でもここは重要なポイントなので、忘れてはいけないと思う。

原作に登場する料理も、鍋焼きうどんとかカレーライス(もどき)とかになり、精神病患者のための療養所が、村のお寺になっている。
野村萬斎と大泉洋とは、2011年に三谷幸喜の「ベッジ・パードン」で共演しているので、息はぴったり。
その他、吉田羊や佐藤二朗、浅野和之など、三谷組がたくさん起用されていて楽しい。

今回も楽しませてもらいました。しばらくは録画を保存します。
名作「三谷版オリエント急行殺人事件」の方は、永久保存です。
あれはケネス・ブラナー監督・主演の映画を超えていると思います💖


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドラマ「ハケンの品格 パート2」

2020-09-09 12:11:32 | テレビドラマ
13年ぶりに大好きだったドラマの続編をやるというので、楽しみにしていた。
まず再放送された懐かしい本編を全部見て復習してから臨んだ。

大泉洋と篠原涼子の掛け合いが、相変わらず楽しくはあったが。
脚本家・中園ミホは、今回なぜ一回置きに別の人に脚本を書かせたのだろうか。
そのためかどうか分からないが、全体に、乱暴な印象になったのは確かだ。

冒頭、29歳の派遣社員・福岡亜紀(吉谷彩子)が田舎の親と電話で話している。
相変わらず派遣社員を続けている、と言うと、誰かいい人いないの?結婚したら?とか言われたらしく、「あたしだってそげん人おったら、したいっちゃけど」と答える。
この短いやり取りで、彼女の出身地域、そして現在の状況が手に取るように分かるところは、さすが手練れだと思ったが。
一方、春子はと言うと、その頃スペインのバルでフラメンコを踊っている。
本編オープニングでは、現地の友人たちとピクニックに行って、みんなでパエリア食べてるという鮮烈な出だしだった。
同じではまずいと思ったのだろうが、日本でスーパー派遣であり続けるだけですごいことなのだから、フラメンコの本場で踊れるほど上達しているという設定は
どうか。しかも現地の青年からの、取ってつけたようなプロポーズ。一体どういうつもりなんだか。
(この後、彼女は彼にすげなく別れを告げて帰国するが、別に頭の片隅に東海林のことがあってというわけではなさそうだし)

前回はそれほどでもなかったが、今回アラが目立つ。
ツッコミどころを挙げていくときりがないが、例えば
① カレーマイスターの資格を持つ春子が、カレー作りには玉ねぎを弱火で長時間炒めることが肝心だという初歩的なことを知らないのはおかしい。
② 春子が明け方、会社の調理室で密かにアジフライを作っていると、ドローンが飛んできて「やめなさい」と警告したり、それを彼女が壊したり・・って、
  あまりにも荒唐無稽でバカらしい。笑わせたいのか?
・・等々
春子の態度がますます偉そうになっているのも気になった。
何よりも、13年前の本編では、大泉演じる東海林武が篠原演じる大前春子と出会って惹かれ、求婚して玉砕する、という大きな流れがあったのに対して、
今回、二人は再会するものの、彼らの関係にはまったく変化がない。
相変わらず二人は会社で衝突を繰り返し、春子は仕事上の危機を幾度も土壇場で救い、東海林の彼女への思いは変わらない。
二人はお互い気になる存在のようなのに、どうしてそこから新たな展開へと持って行かないのか?
東海林は上司にへつらい、部下の手柄を自分のものにする、薄っぺらい嫌な奴だ。
長所は親友を大事にするところくらいだが、それでも彼の一途な思いは報いられるべきではないだろうか?
本編で、春子にすげなく振られた後に、彼女の踊る姿を見つめていた東海林の切ない表情が忘れられない。
このままの状態が今後も続く・・みたいなラストはいかがなものか。
多くの人が、二人がどうにかなるのを期待していたのではないだろうか。
このフラストレーションの持っていき場がありません。

それから東海林の親友・里中賢介を演じる小泉孝太郎という人について。
かつて初めて見た時は、爽やかな好青年だと思ったが、この人は、残念ながら演技にあまり幅がない。
特に、困った時に困った顔ができないという困った人だということが改めて分かった。
脚本家は彼に合わせて宛書きしているようなので、だいたいはうまく行くが、それでも時々は困った状況に陥るので、どうしてもボロが出る。
例えば今回、親友がリストラの対象になっていると知った時も、特に苦悩とか苦悶とか感じられなかった。
見ている方は、あちゃ~だ。
そう言えば、13年前エレベーターの中に閉じ込められて絶体絶命という回があったが、その時でさえ彼は(さすがにいつものように爽やかな笑顔ではなかったが)、
それでもやっぱり笑顔なのだった。
ちなみにこの里中という男は、今回の最終回で、日本語のリテラシーのない、はた迷惑な草食系だと分かるわけだが。

前回ドラマを彩ってくれた脇役の何人かの不在も残念だったが、新たに梅沢昌代さんなど、演技派の人々が脇を固めていたのは救いだった。
芸達者な大泉洋と篠原涼子の演技対決?も楽しめた。
驚いたのは、札幌支社から東京の本社に戻って来た東海林が、春子に再会するシーン。
課長として戻り、得意満面の東海林だが、篠原が彼に向かってにっこり微笑むと、サッと表情が変わり、呆然とする。
だって春子が彼に向かって微笑んでくれたことは、今までなかったから。
これは、ひょっとして関係改善?脈ありってこと??・・・そう彼が思うのも無理はない。
ところが、春子の笑顔が少しずつ消え、目がギラギラし出して、ついにはにらみつけ・・。
これには東海林も驚いて同様ににらみ返すしかなくなり・・。
ここの台本、どんな風に書いてあるのだろう。
とにかく、この二人以外の俳優さんにはなかなか真似できない技です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする