11月9日パルコ劇場で、デイヴィッド・マメット作「オレアナ」をみた(演出:栗山民也)。
1992年の初演後、全世界で上演が続く傑作2人芝居。アメリカ演劇界の鬼才デイヴィッド・マメットの代表作(チラシより)。
昇進目前の大学教師ジョン(田中哲司)の研究室に訪ねて来た女子学キャロル(志田未来)は、授業についていけない、どうか単位を取らせてほしいと
懇願する。後日、ジョンはセクハラで訴えられ、立場は逆転してゆく…。
<1幕>
舞台の床は全体に左に傾いている(美術:松井るみ)。教授の研究室。抽象画が1つ。電話がひっきりなしにかかってくる。妻からと男の友人から。ジョンは「終身在籍権」を得られそうなので、それを機に新しい家を買おうとしているが、契約上厄介な問題が生じているらしい。
キャロルは授業中のみんなの議論について行けないと訴える。ジョンは、レポートがひどいのでいい点をつけられないと言う。彼女はその授業の単位をどうしても落とすわけにはいかないから何とか助けてほしい、と懇願する。
途中、彼女は何度か諦めて帰ろうとしたので、彼女から逃れるチャンスはあったのに、彼は親切心と責任感から彼女を引き留め、自分の若い頃の話などをして、何とか彼女を理解しようとする。彼は親切にも彼女のために一対一で特別授業をしてやろう、と提案。「何回かやったら今学期の君の成績はAだ」と言う。どうしてそこまでしてくれるの?と尋ねる彼女に「君が好きだから」と答える彼。「ハァ~?」と衝撃を受ける彼女。
ここまで見ての感想は「どう見てもキャロルはおかしい」。
<2幕>
1幕後、キャロルがジョンをセクハラで訴えたことが彼のセリフから分かる。キャロルは青いカーディガンに黒っぽいスカート。教授は背広。
キャロルは1幕とはがらりと変わってすっかり落ち着き、自信たっぷり。1幕ではおどおどし、教授の使う専門用語がどれも理解できず、「助けて!」
と泣き叫んでいたのに、「君を救いたくて」と彼が言うと、「誰がそんなこと頼みました?」と言う。明らかに矛盾していると思うが。
「私の仲間たち」と彼女は言う。1幕では1人も友人がいないように見えたが、性差別主義者として彼を訴えたことで同じ大学の女子学生たちの
賛同を得たのかも知れない。
彼の側も不用心だった。時代の変化について行けない(気づいてなかった)こともあるが、女子学生と2人きりで部屋にいること自体危険だと
いうこと、自分が圧倒的な権力を持つ側だということをわきまえておくべきだった。結局彼はこれまで築いてきたものすべてを失うことになる…。
彼女の言い分にももっともな点はある。始終メモしている彼女のノートには、彼が何月何日に女子学生に性差別的発言をしたかが記録されていた。
肝心なことは、彼が何をしたかでなく、彼女がどう感じたか、ということなのだろう。
これは中国や朝鮮半島の人々と日本との関係にも通じることだ。
キャロル役の志田未来がすごい。熱演と言っていいだろう。初めて見たが、うまい。
教授役の田中哲司ももちろんうまい。この人は8月に新国立劇場でやった2人芝居「RED」の上演中に、この芝居のセリフを覚えたという。
そんなことができるのか?!どちらもかなりのセリフの量だが、中身が全く違うから可能なのかも知れない。
タイトルの意味は?てっきり女子学生の名前かと思ったが、彼女はキャロルと呼ばれているし…?
前半と後半のキャロルがまるで別人のようなのが解せない。そこが説明不足で、唯一残念な点だ。
マメットと言えば、「グレンギャリー・グレンロス」というすごく面白い芝居を書いた人だ。この作品も、上記のような弱点はあるものの、
迫力ある2人芝居で、観客を全く飽きさせない。
1992年の初演後、全世界で上演が続く傑作2人芝居。アメリカ演劇界の鬼才デイヴィッド・マメットの代表作(チラシより)。
昇進目前の大学教師ジョン(田中哲司)の研究室に訪ねて来た女子学キャロル(志田未来)は、授業についていけない、どうか単位を取らせてほしいと
懇願する。後日、ジョンはセクハラで訴えられ、立場は逆転してゆく…。
<1幕>
舞台の床は全体に左に傾いている(美術:松井るみ)。教授の研究室。抽象画が1つ。電話がひっきりなしにかかってくる。妻からと男の友人から。ジョンは「終身在籍権」を得られそうなので、それを機に新しい家を買おうとしているが、契約上厄介な問題が生じているらしい。
キャロルは授業中のみんなの議論について行けないと訴える。ジョンは、レポートがひどいのでいい点をつけられないと言う。彼女はその授業の単位をどうしても落とすわけにはいかないから何とか助けてほしい、と懇願する。
途中、彼女は何度か諦めて帰ろうとしたので、彼女から逃れるチャンスはあったのに、彼は親切心と責任感から彼女を引き留め、自分の若い頃の話などをして、何とか彼女を理解しようとする。彼は親切にも彼女のために一対一で特別授業をしてやろう、と提案。「何回かやったら今学期の君の成績はAだ」と言う。どうしてそこまでしてくれるの?と尋ねる彼女に「君が好きだから」と答える彼。「ハァ~?」と衝撃を受ける彼女。
ここまで見ての感想は「どう見てもキャロルはおかしい」。
<2幕>
1幕後、キャロルがジョンをセクハラで訴えたことが彼のセリフから分かる。キャロルは青いカーディガンに黒っぽいスカート。教授は背広。
キャロルは1幕とはがらりと変わってすっかり落ち着き、自信たっぷり。1幕ではおどおどし、教授の使う専門用語がどれも理解できず、「助けて!」
と泣き叫んでいたのに、「君を救いたくて」と彼が言うと、「誰がそんなこと頼みました?」と言う。明らかに矛盾していると思うが。
「私の仲間たち」と彼女は言う。1幕では1人も友人がいないように見えたが、性差別主義者として彼を訴えたことで同じ大学の女子学生たちの
賛同を得たのかも知れない。
彼の側も不用心だった。時代の変化について行けない(気づいてなかった)こともあるが、女子学生と2人きりで部屋にいること自体危険だと
いうこと、自分が圧倒的な権力を持つ側だということをわきまえておくべきだった。結局彼はこれまで築いてきたものすべてを失うことになる…。
彼女の言い分にももっともな点はある。始終メモしている彼女のノートには、彼が何月何日に女子学生に性差別的発言をしたかが記録されていた。
肝心なことは、彼が何をしたかでなく、彼女がどう感じたか、ということなのだろう。
これは中国や朝鮮半島の人々と日本との関係にも通じることだ。
キャロル役の志田未来がすごい。熱演と言っていいだろう。初めて見たが、うまい。
教授役の田中哲司ももちろんうまい。この人は8月に新国立劇場でやった2人芝居「RED」の上演中に、この芝居のセリフを覚えたという。
そんなことができるのか?!どちらもかなりのセリフの量だが、中身が全く違うから可能なのかも知れない。
タイトルの意味は?てっきり女子学生の名前かと思ったが、彼女はキャロルと呼ばれているし…?
前半と後半のキャロルがまるで別人のようなのが解せない。そこが説明不足で、唯一残念な点だ。
マメットと言えば、「グレンギャリー・グレンロス」というすごく面白い芝居を書いた人だ。この作品も、上記のような弱点はあるものの、
迫力ある2人芝居で、観客を全く飽きさせない。