12月27日シネ・リーブル池袋で、映画「冬物語」をみた(シェイクスピア作、演出:ロブ・アシュフォード、ケネス・ブラナー、
主演:ケネス・ブラナー)。
ロンドンのギャリックシアターでの上演をそのまま映画化したもの。
幕が開く前に、クリスマスキャロルのような素敵な曲が流れてきた。歌詞は「我々は双子の子羊のようでした・・・」。
これは!この芝居の始めの方で、シチリア王とボヘミア王とが共に遊んだ子供の頃を思い出して語るセリフではないか!それが合唱曲になって
聞こえてきて、それだけでもうぐっと来た。こういうアイディアが嬉しい。
シチリア王レオンティーズは妻のハーマイオニーと親友のボヘミア王ポリクシニーズの不義を疑い嫉妬に狂う。しかし不義はなかったという
神託のお告げを認めなかったことから世継ぎである一人息子が死に、王妃も死んだと聞かされ、後悔と悲嘆にくれる。時は移り、16年後に
一同は再会。驚くべき真実が明かされる。
幕が開くと右手に大きなクリスマスツリー。
家臣の妻ポーライナ役のジュディ・デンチが王子マミリアスと登場。ツリーのそばに来て二人で話している。
右手に宮廷の人々が座り、斜め前に白い幕を張って、古いフィルムを見る。白黒。二人の王が子供だった頃の懐かしの映像らしい。
王たちと王妃はセリフの合間にプレゼントの箱を贈り合う。レオンティーズ(ケネス・ブラナー)は大きめのスノードームをもらい、身重の
ハーマイオニーは厚地のスカーフ。
レオンティーズは忠臣カミローにボヘミア王毒殺を命じ、悩んだカミローはその場では仕方なく承諾する。別れる時、王はカミローの唇に強く
キスする!これはやり過ぎ。
その後、カミローはボヘミア王に危険を知らせ、共に密かにボヘミアに逃亡する。
映画版用に音楽を入れている。
レオンティーズは神託が告げられる前の時点で、もうすでに苦悩のあまり倒れんばかり。
王妃は王の命令で牢に入れられ、そこで女児を産む。王は生まれたばかりの娘を不義の子として遠くに捨てて来いと命じる。命じられた気の毒な
家臣は熊に襲われて死ぬ。白熊の映像が大きく映し出され、男が「もうダメだ!」と中央で後ずさりしたところで幕が下りる。
ここで休憩(映画も芝居と同じように休憩を入れている)。
後半。
「時」が擬人化されて登場するのだが、その役もジュディ・ディンチが演じる!
さて、あれから16年の時が流れている。
レオンティーズ王は嘆きと後悔の日々を送っている。
ボヘミアでは王子が羊飼いの娘パーディタと身分違いの恋に落ち、結婚の約束を固めようとするが、父王にバレ、身分違いの娘と、しかも
父である自分の許可も得ずに結婚しようとした息子に激怒した父は結婚を許さない。王子は駆け落ちしようとする。
そこで、今ではボヘミア王の宮廷の重臣となったカミローが、王子を助けるべく、王子たちをシチリアのレオンティーズの元へ逃がし、その後を
追って、ボヘミア王と共にシチリアへ向かう。彼は懐かしいシチリアに帰りたくもあったのだ。
このパーディタという娘は、実はあの時捨てられたシチリア王の娘だった。
王子たちがシチリアに到着し、王に挨拶すると、パーディタを初めて見たポーライナは、奥へ連れて行きながら彼女の顔をじっと見つめる。
よしっ、そうでなくては!亡き王妃にそっくりの若い女性が現れたのだから。
その後ボヘミア王も到着するが、パーディタが実はレオンティーズ王の娘であるという証拠が見つかり、王女と分かったため王は王子の結婚を
許し、一同再会と和解の喜びに浸る。
そんな時、ポーライナが、名彫刻家に亡き王妃の彫像を作らせたと言う。
彫像を見たレオンティーズの「妻はこんなに老けてはいなかった」というセリフは笑いを起こすので、適切にもカットされていた。
パーディタが泣き濡れて、初めて会う母を見上げる姿がいじらしくて胸を打つ。
音楽が流れる中、ポーライナが合図すると彫像は・・・。
ラスト、ポーライナとカミローは、王に夫婦になれと言われるとしっかり抱き合う。ちょっと珍しい。
結局この劇では国王二人が共に怒りにとらわれる。一人は妻と友人に対して。一人は息子とその恋人に対して。
字幕はイマイチ。みんなポーライナと発音しているのに「ポーリーナ」で通すし、「コキジバト」などの変な日本語には工夫がほしい。
この劇の一番の見所である神託の場。神託が読み上げられる間、一同の顔は喜びを表すものの、シーンとなる。するとレオンティーズ王が
「それは真実ではない!」と否定し、皆が騒がしくなる。と、そこに使いが入って来て、世継ぎの王子が死んだと知らせる。
王妃が倒れ、王はすぐに、天罰が下った、と後悔する。それが早過ぎる。
その点、かつて見たRSCの方がよかった。
神託が読み上げられると、一同喜びの声を上げて大騒ぎ。その騒ぎに負けじとレオンティーズが大声で否定すると、皆ゾッとなって黙り込む。
ひと呼吸置いて使いが走り込んで来る。この「ゾッとなって黙り込む」瞬間が素晴らしい。このやり方がベストだと思う。
神の言葉の否定。その報いとしての愛息の死。これがレオンティーズの心に一大転換をもたらす。憑きものが落ちるように、それまで彼を
支配していた強迫観念が消えるが、その時にはもう遅かった・・・。
この映画はジュディ・デンチ出演を大きく宣伝していて、まるで主演俳優のよう。確かに彼女にはそれだけの価値と重みがある。
休憩中のインタビューで知ったが、エイドリアン・レスター健在!しかもまだ若々しい。
この人は黒人男性にして、かつて「お気に召すまま」でヒロイン・ロザリンドを演じて評者に衝撃を与えた人。
それ以前もその後も、彼を超えるロザリンドは見たことがない。
ブラナーは、ケネス・ブラナー・シアター・カンパニーというのを作ったらしい。
この冬、他にも2つの芝居を映画化したものを上映する由。
もちろん全部見るつもり。
そのうち1つは「ロミジュリ」なので、またここに書きます。
主演:ケネス・ブラナー)。
ロンドンのギャリックシアターでの上演をそのまま映画化したもの。
幕が開く前に、クリスマスキャロルのような素敵な曲が流れてきた。歌詞は「我々は双子の子羊のようでした・・・」。
これは!この芝居の始めの方で、シチリア王とボヘミア王とが共に遊んだ子供の頃を思い出して語るセリフではないか!それが合唱曲になって
聞こえてきて、それだけでもうぐっと来た。こういうアイディアが嬉しい。
シチリア王レオンティーズは妻のハーマイオニーと親友のボヘミア王ポリクシニーズの不義を疑い嫉妬に狂う。しかし不義はなかったという
神託のお告げを認めなかったことから世継ぎである一人息子が死に、王妃も死んだと聞かされ、後悔と悲嘆にくれる。時は移り、16年後に
一同は再会。驚くべき真実が明かされる。
幕が開くと右手に大きなクリスマスツリー。
家臣の妻ポーライナ役のジュディ・デンチが王子マミリアスと登場。ツリーのそばに来て二人で話している。
右手に宮廷の人々が座り、斜め前に白い幕を張って、古いフィルムを見る。白黒。二人の王が子供だった頃の懐かしの映像らしい。
王たちと王妃はセリフの合間にプレゼントの箱を贈り合う。レオンティーズ(ケネス・ブラナー)は大きめのスノードームをもらい、身重の
ハーマイオニーは厚地のスカーフ。
レオンティーズは忠臣カミローにボヘミア王毒殺を命じ、悩んだカミローはその場では仕方なく承諾する。別れる時、王はカミローの唇に強く
キスする!これはやり過ぎ。
その後、カミローはボヘミア王に危険を知らせ、共に密かにボヘミアに逃亡する。
映画版用に音楽を入れている。
レオンティーズは神託が告げられる前の時点で、もうすでに苦悩のあまり倒れんばかり。
王妃は王の命令で牢に入れられ、そこで女児を産む。王は生まれたばかりの娘を不義の子として遠くに捨てて来いと命じる。命じられた気の毒な
家臣は熊に襲われて死ぬ。白熊の映像が大きく映し出され、男が「もうダメだ!」と中央で後ずさりしたところで幕が下りる。
ここで休憩(映画も芝居と同じように休憩を入れている)。
後半。
「時」が擬人化されて登場するのだが、その役もジュディ・ディンチが演じる!
さて、あれから16年の時が流れている。
レオンティーズ王は嘆きと後悔の日々を送っている。
ボヘミアでは王子が羊飼いの娘パーディタと身分違いの恋に落ち、結婚の約束を固めようとするが、父王にバレ、身分違いの娘と、しかも
父である自分の許可も得ずに結婚しようとした息子に激怒した父は結婚を許さない。王子は駆け落ちしようとする。
そこで、今ではボヘミア王の宮廷の重臣となったカミローが、王子を助けるべく、王子たちをシチリアのレオンティーズの元へ逃がし、その後を
追って、ボヘミア王と共にシチリアへ向かう。彼は懐かしいシチリアに帰りたくもあったのだ。
このパーディタという娘は、実はあの時捨てられたシチリア王の娘だった。
王子たちがシチリアに到着し、王に挨拶すると、パーディタを初めて見たポーライナは、奥へ連れて行きながら彼女の顔をじっと見つめる。
よしっ、そうでなくては!亡き王妃にそっくりの若い女性が現れたのだから。
その後ボヘミア王も到着するが、パーディタが実はレオンティーズ王の娘であるという証拠が見つかり、王女と分かったため王は王子の結婚を
許し、一同再会と和解の喜びに浸る。
そんな時、ポーライナが、名彫刻家に亡き王妃の彫像を作らせたと言う。
彫像を見たレオンティーズの「妻はこんなに老けてはいなかった」というセリフは笑いを起こすので、適切にもカットされていた。
パーディタが泣き濡れて、初めて会う母を見上げる姿がいじらしくて胸を打つ。
音楽が流れる中、ポーライナが合図すると彫像は・・・。
ラスト、ポーライナとカミローは、王に夫婦になれと言われるとしっかり抱き合う。ちょっと珍しい。
結局この劇では国王二人が共に怒りにとらわれる。一人は妻と友人に対して。一人は息子とその恋人に対して。
字幕はイマイチ。みんなポーライナと発音しているのに「ポーリーナ」で通すし、「コキジバト」などの変な日本語には工夫がほしい。
この劇の一番の見所である神託の場。神託が読み上げられる間、一同の顔は喜びを表すものの、シーンとなる。するとレオンティーズ王が
「それは真実ではない!」と否定し、皆が騒がしくなる。と、そこに使いが入って来て、世継ぎの王子が死んだと知らせる。
王妃が倒れ、王はすぐに、天罰が下った、と後悔する。それが早過ぎる。
その点、かつて見たRSCの方がよかった。
神託が読み上げられると、一同喜びの声を上げて大騒ぎ。その騒ぎに負けじとレオンティーズが大声で否定すると、皆ゾッとなって黙り込む。
ひと呼吸置いて使いが走り込んで来る。この「ゾッとなって黙り込む」瞬間が素晴らしい。このやり方がベストだと思う。
神の言葉の否定。その報いとしての愛息の死。これがレオンティーズの心に一大転換をもたらす。憑きものが落ちるように、それまで彼を
支配していた強迫観念が消えるが、その時にはもう遅かった・・・。
この映画はジュディ・デンチ出演を大きく宣伝していて、まるで主演俳優のよう。確かに彼女にはそれだけの価値と重みがある。
休憩中のインタビューで知ったが、エイドリアン・レスター健在!しかもまだ若々しい。
この人は黒人男性にして、かつて「お気に召すまま」でヒロイン・ロザリンドを演じて評者に衝撃を与えた人。
それ以前もその後も、彼を超えるロザリンドは見たことがない。
ブラナーは、ケネス・ブラナー・シアター・カンパニーというのを作ったらしい。
この冬、他にも2つの芝居を映画化したものを上映する由。
もちろん全部見るつもり。
そのうち1つは「ロミジュリ」なので、またここに書きます。