ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

2014年の芝居の回顧

2015-03-26 21:27:38 | 回顧
毎年恒例の記事ですが、今年はついにソメイヨシノに先を越されてしまいました…。

さて、(気を取り直して先に進みます)昨年は23コの芝居をみました。その中から特に印象深かったものを、いつものように時系列で
挙げていきます。

 2月 お気に召すまま      シェイクスピア  高瀬久男演出 文学座…一つ素晴らしいアイディアがあった。生涯忘れられないだろう。  
 3月 アルトナの幽閉者     サルトル     上村聡史演出 ………… 難解だが、演出と役者たちのお陰で実に面白かった。
     幽霊           イプセン     森新太郎演出 ………… いかにも北欧。暗い。だがこれも演出のお陰で見応えがあった。 
 4月 酒と涙とジキルとハイド  三谷幸喜     三谷幸喜演出 ………… バカバカしいけどまた見たい。同じ配役で。 
 5月 錬金術師         ベン・ジョンソン 鈴木勝秀演出 演劇集団円…シェイクスピアと同時代のこの作家の作品を初めてみること
                                        ができた。橋爪功の芸と朴璐美の迫力ある美しさを堪能!
 6月 ビッグ・フェラー     R.ビーン     森新太郎演出 ………… ビーンの作品は「ハーヴェスト」に続き2作目。
 7月 ブレーメンの自由     ファスビンダー  立川三貴演出 演劇集団円 …初めてみたが、作品も演出も素晴らしい。 
 8月 兄おとうと        井上ひさし    鵜山仁演出  ………… にぎやかな芝居。朴勝哲のピアノ伴奏がいい。
 10月 ブレス・オブ・ライフ   D.ヘア      蓬莱竜太演出 ………… 女性2人の芝居。
 11月 紫式部ダイアリー     三谷幸喜     三谷幸喜演出 ………… 同上。三谷さん、ぜひとも後半を書き直して下さい!
     ご臨終          パニッチ     ノゾエ征爾演出 ……… 2人芝居。とにかくユニーク。


☆ 最優秀男優賞  岡本健一…「アルトナの幽閉者」の長男フランツ役

☆ 最優秀女優賞  宮本裕子…「兄おとうと」の女中、窃盗犯、袁世凱の娘、説教強盗、大連のカフェの経営者役



★ その他、特に印象に残った役者たちは次の通り。

 ・吉見一豊(幽霊)
 ・内野聖陽(ビッグ・フェラー)
 ・若村麻由美(ブレス・オブ・ライフ)
 ・長澤まさみ(紫式部ダイアリー)
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蜷川「ハムレット」

2015-03-13 22:16:41 | 芝居
1月23日彩の国さいたま劇場で、シェイクスピア作「ハムレット」をみた(演出:蜷川幸雄)。

久しぶりに与野本町に来てびっくり。駅から劇場へと向かう道に点々とシェイクスピア劇のセリフが埋め込まれ、夜の闇の中に
下から明るく照らされているのだ!与野本町、あなどれん!ただ、誰がこれらのセリフを選んだのか知りたいし、誰の訳なのかも
ちょっと分からなかった。この小さな空間のために、ひょっとすると誰かが訳し直したのだろうか。

ハムレットが藤原竜也、叔父クローディアスが平幹二朗、母ガートルードが鳳蘭、オフィーリアが満島ひかり、という豪華な配役
を見た時には、これ以上ない布陣だと期待したのだが…。

中に入ると、舞台のセット(古い日本の長屋)の上に説明が日本語と英語で書かれている。これをそのままロンドン公演でも使う
のだろう。だがなぜこういう枠構造にする必要がある?

平幹二朗危ない!冒頭のスピーチで間違えた。何とか言い直したが、その後はハラハラ。
王妃ガートルード役の鳳蘭は息子ハムレットの名を呼ぶ時、最後のトの母音を英語風に飲み込むのはいただけない。日本語でやって
いるのだから、それに夫である王も他の人々もちゃんと「ト」と言っているのだから。あっそうか、ロンドン公演のために今から
英語圏の観客用の発音にしているのか。でもいやだ。

藤原くんは演技過剰。これほど情緒的で泣きぬれるハムレットは初めてみた。しかも元々さほど美声でもない上に力が入り過ぎて
声がつぶれ、セリフが聞き取りづらい箇所がたくさんある。演技はもちろんうまいし、絵になってはいるが。演技している自分を
もっと突き放して客観的にみることが必要だ。

ポローニアス役のたかお鷹は安心して見ていられるし、客席から笑いも取れて劇場内の雰囲気もよくなったが、必要以上に笑うのは
いただけない。特に息子レアティーズがフランスに出発する場面ではくだけ過ぎ。もっと威厳ある父親のはずだ。だからこそオフィ
ーリアは父の命令に従ってハムレットとの交際を断り、2人の関係は暗く複雑なものになってゆくのだから。
 
訳(河合祥一郎)が違うとこうも変わるものか。一神教の世界観が支配しているはずだが、神々というセリフが出てきて違和感があった。

ジャポニスム(声明・劇中劇にでかいひな壇出現等々)。

3幕3場、平幹二朗は半裸になって井戸の水をくみ、それを頭からかぶる!さすがに客席からアーッというどよめきが。次に細い布
で裸の背中を鞭打つ。これには驚いた。

オフィーリア役の満島ひかりも期待に反してパッとしなかった。まず正気と狂気の差が歴然としていないので面白くない。そこが
この役の見所なのに。

墓掘り1役の山谷初男も笑い過ぎ。せっかく観客を笑わせられるセリフを与えられているのだから、自分から笑ってはいけない。

奇妙なフォーティンブラス。青白くて長期入院患者のよう。全く意味不明。とても軍隊を率いる血気盛んな若武者には見えない。
奇をてらっているとしか思えない。蜷川さんは一体どうしたのだろうか。これをロンドンに持ってゆくのはやめてほしい。

総じてすべてに裏切られ、すべてが失望に終わった。
ところがまだその先があった。
1月29日の朝日新聞の夕刊に扇田昭彦氏の劇評が載った。
演出家への敬意を込め、言葉を選びながら褒めることのできる箇所を探して褒め、意見は穏やかに書き添えておられた。
本当に「文は人なり」だと改めてその人柄に打たれ、さすがはこの道のプロと感嘆した(評者などとは人間の出来が違うと)。

ところが翌日の同じ朝日の夕刊に、蜷川氏が自身のコラムで「きのう、朝日の夕刊に扇田昭彦氏の最低の劇評が出た」と書いている
ではないか。しかもその後は、久しぶりに現場に戻れて嬉しい…という話がダラダラ続くばかりで、何が「最低」なのかについて
全く触れていない。
これほど失礼なことがあるだろうか。演出家としてはもちろん、人間として道を踏み外しているのではないだろうか。
奇をてらっただけのフォーティンブラスについても恥ずかしげもなく手放しで自慢しているし、一体どうなってしまったのか、本当に
悲しい。






コメント (2)
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寺山修司作「千一夜物語」

2015-03-06 20:31:36 | 芝居
1月16日東京芸術劇場シアターウエストで、寺山修司作「新宿版千一夜物語」をみた(Project Nyx 公演、演出:金守珍、構成・美術:宇野亜喜良)。

1968年初演の作品の由。

マーラーの5番、ワーグナーのローエングリン、プッチーニのトゥーランドット、ベートーベンの5番の1楽章、7番の2楽章などなど
名曲のオンパレード。ただしその半分は必然性もなく流れる……。

時代色が濃いので、今の若い人たちに理解できたかどうか疑わしい言葉がたくさん出てくる。たとえば「トルコ(風呂)」、内ゲバ…。

成田闘争の映像も割と長く挿入されるが、これはプリントを配って説明してあげないといけないのでは?

「四畳半襖の下貼り」の一部を朗読するシーンなど、1968年当時としては、まさに旬な話題を取り上げているわけだが。

アラビアのロレンス⇒D.H.ロレンス⇒「チャタレイ夫人の恋人」⇒裁判・・・という連想を下敷きにしたセリフがあるが、「ロレンス⇒
チャタレイ⇒森番⇒裁判・・・」という、あっと言う間の流れなので、客が果たしてついて行けたかどうか。

「森繁の声」も同様。我々世代には懐かしいが。

いつもながらのごった煮だが、それでもやっぱり独特の楽しさが味わえた。
シェヘラザード役のサヘル・ローズの美しさは言うまでもない。
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